Clinical Case Study Persistently Increased

Clinical Case Study
Persistently Increased Acetaminophen Concentrations in a Patient with Acute
Liver Failure
Bonnie Mei-wah Fong1, Tak Shing Siu1 and Sidney Tam1,*
1
Division of Clinical Biochemistry, Queen Mary Hospital, Hong Kong.
* Address correspondence to this author at: Division of Clinical Biochemistry, Queen Mary Hospital, LG 131, Block K,
Queen Mary Hospital, 102 Pokfulam Road, Pokfulam, Hong Kong SAR. Fax +852-28559915; e-mail [email protected].
臨床症例研究
急性肝障害患者における持続したアセトアミノフェン濃度の上昇
症例
31 歳の女性が腹痛および食欲不振、倦怠感、混乱、紅茶色の尿を訴え、地域病院に入院した。検査によりア
ミノトランスフェラーゼやビリルビン濃度、プロトロンビン時間、プロトロンビン国際標準比の顕著な増加に
よって特徴づけられる、著しい肝機能障害を伴った急性肝障害であることが判明した。肝疾患の既往歴や漢方
薬、店頭薬の摂取はない。彼女の状態は 2 日後に悪化し、さらなる管理および肝臓移植の可能性のために、私
たちの病院に転院された。身体検査により、女性は黄疸を発症し,かつ右上腹部は柔軟で、腹部の防御反応も
しくは反跳痛がないことが明らかとなった。彼女は 1 日後に半昏睡状態の状態に入った。病院で彼女の到着時
に得られた血液サンプルの日常検査では、次の結果明らかになった:ビリルビン、1210 μmol/ L(基準範囲、
7-19μmol / L)、アラニンアミノトランスフェラーゼ、6170 U / L(基準範囲、5-31 U / L)、アスパラギン酸ア
ミノトランスフェラーゼ、5080 U / L(基準範囲、12-28 U / L)、アルカリホスファターゼ、150 U / L(基準範
囲、34-104 U / L)、アンモニア、171 μmol / L(基準範囲、0-33 マイクロモル/ L); 乳酸脱水素酵素、6830 U /
L(基準範囲、200-360 U / L)、プロトロンビン時間、39.7 秒(基準範囲、11.3-13.2 秒)、国際標準比、3.3;ア
セトアミノフェン、121μmol / L(100μmol / L まで治療量)。他の結果は正常だった。血清学的評価は、A 型
肝炎と B は陰性であった。血漿アセトアミノフェン濃度により、薬物過剰摂取の疑いをもたれたが、彼女はア
セトアミノフェンを服用したことを否定した。患者の肝酵素やプロトロンビン時間、国際標準比、アセトアミ
ノフェン濃度は、後日モニターした。彼女の全身状態や肝機能が徐々に改善したが、彼女の血漿中アセトアミ
ノフェン濃度は、>100μmol / L であった。肝臓の薬物代謝障害が疑われ、肝移植はその時点で予期された。
1
疑問点
1.
急性肝不全の一般的な原因は?
2.
摂取後のアセトアミノフェンの通常の薬物動態パターンは?また、過剰摂取は、どのように肝障害を
引き起こすのか?
3.
アセトアミノフェンを測定するために、どのような手法が利用可能か?
4.
アセトアミノフェンの測定を干渉する要因は、何か?
考察
鑑別診断
急性肝不全は肝疾患の兆候後、急速な最初の重篤な合併症の発症(肝性脳症や障害タンパク質合成)と定義さ
れている。これらの合併症は、凝血障害によって特定される。急性肝不全を引き起こす一般的な原因は、毒性
傷害および薬物やアルコール性肝炎、ウイルス性肝炎、虚血性傷害、(明らかな原因がない)特発性に対する
特異的な反応に起因する。多くの国において急性ウイルス性肝炎の発症率は、A 型および B 型肝炎に対するワ
クチンの導入や、C 型肝炎に対する血液供給の検査により劇的に減少している。薬物性肝炎は、増加傾向にあ
り、全体の中でもっとも一般的な要因である。薬物性肝炎において、アセトアミノフェンは急性肝不全を引き
起こす最も一般的な薬物である:それはまた、死亡原因の第一位である。肝炎を引き起こす薬剤として、非ス
テロイド性抗炎症剤や抗けいれん薬もある。東南アジアでは、漢方薬性肝炎が一般的である。漢方薬の摂取、
もしくは肝臓毒の暴露を含む詳細な病歴を除いて、急性肝不全患者の初期の検査項目として、A および B、C
型肝炎の検査を含むべきである。そのほかに、急性肝不全のまれな原因として、自己免疫性肝炎やウィルソン
病が挙げられる。
アセトアミノフェンの効果動態と、過剰摂取による肝障害への影響
治療用量において、90%のアセトアミノフェンは、肝臓により不活性で無毒性の硫酸およびグルクロニド抱合
体に代謝され、尿中に排出される(1)。5%未満が、肝臓や腎臓においてシトクロム P450 2E1 によって代謝
され、反応性が高く毒性のある中間体 N-アセチル P-ベンゾキノンイミン (NAPQI) 2 に変換される(1-4)。
NAPQI は、通常グルタチオンによって無毒のメルカプテート複合体に還元される。過剰摂取の状況では、硫酸
およびグルクロン酸経路は飽和し、アセトアミノフェンのアセトアミノフェンへの分路(シャント)を引き起
こし、NAPQI が過剰に産生されるようになる(3-5)。NAPQI の増加は、体内のグルタチオン貯蔵を枯渇させ
る。グルタチオンの供給が通常の 30%に下がる場合、NAPQI は、細胞内タンパク、特にスルフヒドリル基を有
するタンパクと非特異的に結合し、細胞不全や細胞死を引き起こす。グルタチオン前駆体 N-アセチルシステ
イン(NAC)の迅速な投与により、肝細胞障害を最小限または予防することができるが、その効果はアセトア
2
ミノフェン暴露後 12-24 時間までに急速に減弱する(6)。急性期における血漿アセトアミノフェンの測定は、
NAC 投与の有効性を判別することができる。したがって、薬物中毒が疑われるすべての場合において、血漿ア
セトアミノフェン濃度はできるだけ早くに測定されるべきだ。アセトアミノフェンが検出されない場合および
/または、既往歴が不明な場合、血清タンパク質のアセトアミノフェン結合体の測定は、アセトアミノフェン
の毒性の診断に役立つ(7)。
アセトアミノフェンの測定方法
様々なクロマトグラフィーおよび分光技術を含む多くの方法が、アセトアミノフェンの測定に用いられている。
後者は主に臨床検査室で自動化されている。GLC 及び HPLC は、生体試料中のアセトアミノフェン濃度を定量
する、信頼性のある正確な方法であることが証明されている。しかしながらこれらのアッセイは、手順の多い
分析方法であり、高価の計測機器や実行するための高い技術力を必要とする。臨床現場におけるアセトアミノ
フェンの迅速なアッセイのために単純化あるいは自動化された酵素結合比色法が、最も一般的に用いられてい
る。近年では、自動化された免疫測定法が利用可能になっているが、それらは一般的に高価であり、広く採用
されていない。2008 年、アセトアミノフェンのためのアメリカ病理学会能力テストプログラム(College of
American Pathologists proficiency-testing program for acetaminophen)に所属している 3095 研究室のうち 1972 研
究室では、比色測定法を用いていた。当研究室では、アセトアミノフェンは分光光度計の原理に基づく Vitros
システム(Ortho Clinical Diagnostics)を用いて測定されている。
アセトアミノフェン測定にて干渉する要因
酵素を基にした測定法は、免疫測定法にくらべて簡便で経済的であるものの、それらは一般的に患者の検体に
含まれるビリルビンやヘモグロビンなどの生体分子らの干渉を受けやすい。ビリルビンは、紫外および可視領
域の電磁スペクトルにおいて、広範囲で強力な吸光性をもつため分光光度測定を強く干渉する(8)。Vitros
アセトアミノフェン法は、酵素作用によるアセトアミノフェンの p-アミノフェノールへの変換と、それに続く
O-cresol との反応による青色のインドフェノール形成に基づくものであり、600 nm における吸光度の変化を測
定する。ビリルビンの存在による 600 nm のバックグラウンドの吸光度の増加は、アセトアミノフェンの誤っ
た増加に寄与するかもしれない。製品資料によれば、干渉作用はビリルビン濃度が 342 μmol /L 以上になった
ときに生じる。いくつかの酵素学的測定法もまた、NAC の治療濃度域において干渉を受ける。反して免疫学的
測定法は、NAC の存在に影響を受けず(8)、ビリルビンやヘモグロビンによる干渉作用も受けにくい。
このケースの解決法
持続した血漿アセトアミノフェン濃度の増加は、薬物動態から予想されたものとは一致しなかったので、私た
ちはビリルビンによる干渉がアセトアミノフェン濃度を誤って高く評価しているかもしれないと考えた。私た
3
ちは、アセトアミノフェンが酵素学的手法により測定される前に、干渉物質を除去するために血漿限外ろ過の
使用を評価した。限外ろ過は、小分子の濃度において血漿と同様であるが、実質タンパクを結合しているビリ
ルビンやヘモグロビン、リポタンパクなどを含むタンパクが除去されている(10)。私たちは、Amicon
Bioseparations/Millipore から Centrifree® micropartition devices を購入した。私たちは、その装置のリザーバーに
1 ml の患者の血漿およびポジティブコントロールを置き、固定角ローター遠心機により 1,000-2,000 g で 10 分
間遠心し、限外ろ過液を回収し、Vitros システムを用いてアセトアミノフェンとビリルビンを定量した。
Centrifree micropartition device による限外ろ過は、横断による干渉を取り除いた(表 1)。限界ろ過のデータは、
患者はアセトアミノフェンを摂取していないことを示した。彼女の肝臓の機能は、補助的治療に伴って徐々に
改善し、3 週間後に無事に回復した。しかしながら、急性の肝異常の正確な病因は、不明のままだ。この原因
は、患者の病歴が明らかではないが、潜在的に肝毒性成分を含む市販の健康補助食品をとった可能性がある。
Epstein-Barr ウイルスによって引き起こされるそのような稀なウイルス性肝炎は、厳密にこのケースでは除外
されていない。
私たちは、酵素学的手法を用いてアセトアミノフェンの測定が行われるすべてのサンプルにおいて、ビリルビ
ンを同時に測定することを推奨する。ビリルビン濃度がアセトアミノフェン測定を干渉するほど高い場合、測
定を行う前に限界ろ過が行われるべきである。
覚えておくべきポイント
・
詳細な薬歴およびウイルスマーカーの評価が、急性肝不全の初期検討に望まれる。
・
分光光度法に基づいたアセトアミノフェン測定を行う研究室においては、ビリルビン測定はすべての
サンプルで望まれる。もしビリルビン濃度が、アセトアミノフェン濃度を干渉するといわれる濃度以上の場合、
アセトアミノフェン測定の前にサンプルの限界ろ過が望まれる。
4
・
グルタチオン前駆体 NAC の迅速投与が、肝細胞の障害を最小化もしくは予防するはずだ。しかしその
効果は、アセトアミノフェン暴露後 12-24 時間までに急速に減弱する。信頼性の高い薬物の測定値に基づいた
時宜にかなった治療介入が重要だ。
・
黄疸患者のアセトアミノフェンの結果を解釈する場合、注意が必要であり、研究室との協議が必要で
ある。
脚注
2
Nonstandard abbreviations: NAPQI,
N-acetyl-p-benzoquinoneimine; NAC,
N-acetylcysteine.
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication February 1, 2010.
Accepted for publication June 15, 2010.
© 2010 The American Association for Clinical Chemistry
参考文献
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5
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論説
Roger L. Bertholf*
Author Affiliations
Department of Pathology, University of Florida Health Science Center/Jax, Jacksonville, FL.
* Address correspondence to the author at: University of Florida Health Science Center/Jax, Department of Pathology,
655 W. 8th St., Jacksonville, FL 32209. Fax 904-244-4290; e-mail [email protected].
劇症肝炎は予後不良と生命にかかわる状態であり、臨床的評価は通常、3 つの最も一般的な原因(ウイルス性
肝炎、アルコール性肝疾患、薬物毒性)に焦点を当てる。稀な原因として、胆管閉塞や化学的および生物学的
毒素が挙げられる。薬物性肝障害は、ほとんどの場合アセトアミノフェン(パラセタモール)過剰摂取による
ものである。Rumack-Matthew ノモグラムに併せて、血漿アセトアミノフェン濃度の測定は、(薬物の単一
の大規模な量の摂取による)肝臓に対する毒性傷害の程度の予測、および N-アセチルシステインによる治療
が有用であるかを調べることに役立つ。N-アセチルシステインの治療は、以前はピーク血漿アセトアミノフェ
ン濃度後、12〜24 時間以上では無効であると考えられていたが、最近の検証により治療が摂取や薬物の血漿
中濃度からの経過時間に関係なく、有益であることが判明した。効果は、組織への酸素運搬の増加に関与する
機構を介して起こると考えられている(1、2)。
6
線形テトラピロールビリルビン構造の芳香族性は、紫外•可視スペクトルに幅広い吸収性を付与すすが、ヘム
代謝物であるこの生成物はまた、生物学的システムで非常に反応性の高い化学種であり、その毒性に寄与する
可能性がある特性を持つ。分析方法におけるビリルビンの干渉は、必ずしもその波長特性に限定されるもので
はなく、試薬との化学反応からも生じる。さらに、ビリルビンは生理学的に複数の形態-単体や、一量体、2
量体、アルブミン結合体-として存在し、純ビリルビン添加によるビリルビンの干渉の評価は内因性の高ビリ
ルビン血症サンプルものと比較して、誤った結果が生じる。ビリルビンによる化学的および分光的干渉は、多
くの臨床検査法において面倒なほど分析にばらつきを与え、この症例報告は説得力のあるものである。
幸いなことに、不必要な N-アセチルシステインの治療は、医学的リスクをほとんど持たないが、誤った測定
によってアセトアミノフェン濃度が増加しているようにみえることは、肝障害の真の原因から注意をそらし、
適切な治療介入を遅らせる可能性がある。
脚注
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication August 16, 2010.
Accepted for publication September 1, 2010.
© 2010 The American Association for Clinical Chemistry
参考文献
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hepatic failure by late administration of acetylcysteine. Lancet 1990; 335: 1572–3.
7
論説
William M. Lee*
Division of Digestive and Liver Diseases, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX.
* Address correspondence to the author at: Division of Digestive and Liver Diseases, University of Texas Southwestern
Medical Center, Dallas, TX. E-mail [email protected].
重度の肝障害や急性肝不全につながるアセトアミノフェンの過量投与は、非常に一般的であり広く研究されて
いる(1)。血漿アセトアミノフェン濃度を測定することは非常に簡単なように見えるが、実際はそうではな
いだろう。患者がさまざまな理由で、その使用を報告しないことがあるため、アセトアミノフェン定量は、摂
取量を決定し、真の化合物量の存在を検出するために使用される。著者が示しているように、これらのアッセ
イは偽陽性の結果を示す。アセトアミノフェン濃度が初期値から後続の値に変化しない場合や、患者がアセト
アミノフェンの使用を否定している場合でも、その値が有毒な摂取量である場合は偽陽性の疑いが生じる。
妨害物質は、あらゆる検査において問題になりうる。著者らは、ビリルビンを除去するカラムを使用すること
により、アセトアミノフェンに関してこの可能性を指摘している。ビリルビン以外の多くの物質は、間違いな
く除去されたものの、(最も可能性が高いが)ビリルビン自体が問題となっている物質であることは、まだ証
明されていない。
我々は上記の場合と同様の 2 例を観察した後、何が問題であったかを調べるために、別の定量法を試みた
(2)。我々はこれらの報告と、同様の結果を得た。つまり比色分析法は、特に非常にビリルビン濃度が高い
場合、偽陽性の結果が得られる。アセトアミノフェンに起因していない急性肝不全患者 36 名からのサンプル
を使用し、6 つの異なるアッセイプラットフォームの再現性を調べた。これら 6 つの測定法は、地元の病院の
検査室で使用されるものあった。6 つのうちの 4 つの定量法では、36 サンプルのうち 5~27 サンプルが偽陽性
の結果を示した。ある比色分析法は完璧だったものの、ある免疫分析法は、少数のサンプルが偽陽性を示した。
VITROS アッセイは、6 つの中で最も影響を受けた。その原因は、血清ビリルビンの高濃度にあるようだ。一方、
ビリルビン濃度が 10 mg / dL 以下の場合は、その影響は観察されなかった。
注目すべきは、アセトアミノフェンによる肝障害で入院した患者は、アミノトランスフェラーゼ濃度が非常に
高く、比較的ビリルビン濃度が低いことが知られているので(1 つのシリーズでは中央値 4.2 mg/dL 未満)、
様々なケースのアセトアミノフェン過剰摂取において、ビリルビン値が非常に高いことは極めて特殊であり、
他の誤った診断結果を導くことになるであろう(3)。
(訳者:間下 有子)
脚注
8
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the
Disclosures of Potential Conflict of Interest form. Potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: None declared.
Consultant or Advisory Role: W.M. Lee, Eli Lilly, Novartis, GlaxoSmithKline, Pfizer, and Forest Laboratories.
Stock Ownership: None declared.
Honoraria: None declared.
Research Funding: W.M. Lee, Bristol-Myers Squibb, Gilead Sciences, Merck/Schering-Plough, Roche, Aegerion
Pharmaceuticals, Globeimmune, OraSure Technologies, and Siemens.
Expert Testimony: None declared.
Role of Sponsor: The funding organizations played a direct role in the final approval of the manuscript.
Received for publication October 4, 2010.
Accepted for publication October 11, 2010.
© 2010 The American Association for Clinical Chemistry
参考文献
1. Larson AM, Fontana RJ, Davern TJ, Polson J, Lalani EK, Hynan LS, et al., the Acute Liver Failure Study Group.
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9