高次修練 構造化抄録 A*MB**** J.T. タイトル(日本語) 転移した非小細胞肺癌患者に対する、早期緩和医療の導入 タイトル(英語) Early Palliative Care for Patients with Metastatic Non-Small-Cell Lung Cancer 著者名 Jennifer S. Temel 雑誌名、巻;貢 The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE. 2010; 8:36-38 目的 診断後早期に緩和ケアを導入することで、QOL、抑うつ状態、積極的医療介入 を含めた医療資源の利用の頻度の変化を評価する。 研究デザイン Randomized Controlled Trial 研究施設 Massachusetts General Hospital in Boston 例数:151 例 対象患者 年齢:65 歳 性別:男性 73 例、女性 78 例 転移性非小細胞肺癌の診断がついて 8 週間以内の患者 ECOG で 0~2 まで、かつ英語で意思疎通ができる患者 介入 標準的な癌治療に加えて緩和医療を行った群(PC 群:74 人)と標準的な癌治療 のみを行った群(SC 群:77 人)に分けた。PC 群では診断後 3 週間以内に緩和ケア チームと面談し、以降も死亡するまで月に一回以上は面談を行った。 主要評価項目(定義) ①身体的満足度を FACT-L(Functional Assessment of Cancer Therapy-Lung) LCS(Lung Cancer Subscale)とその合計 TOI(Trial Outcome Index)で評価した。 ②精神的満足度を HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale) PHQ-9(Patient Health Questionnaire 9)で評価した。 ③積極的治療の定義をし、心肺蘇生などを含めた医療資源(End of Life Care) 利用を評価した。 統計学的手法 ・最初と 12 週間後に評価項目に回答してもらう。 ・統計学的検定法は Fisher's exact test, Chi-square test, Student's t-test など を用いた。 ・統計解析には SPSS software を用いた。 結果 ①FACT-L、LCS 共に PC 群が有意に良い結果で、TOI は PC 群が 6point 高か った。 ②抗うつ薬の新規導入は同じ割合だったが、HADS,PHQ-9 共に PC 群が有意に 低かった。しかし、不安症状には差がなかった。 ③PC 群が End of Life Care の利用は少なかったが、心肺蘇生は多く行っていた。 また、PC 群では End of Life Care を積極的に受けている割合が少なかったにも 関わらず、SC 群に比べ 2.7 ヶ月生存期間が延長した。(11.6 ヶ月 VS 8.9 ヶ月) 結論 転移した非小細胞肺癌患者に早期に緩和医療を導入することで、患者の QOL は 向上し、抑うつ状態も低下した。それにより、副次的に患者の生存期間が延長 したのではないかと筆者は考えている。また、積極的で高価な癌治療を患者に 提供することが現在の主流だが、良いタイミングで緩和医療が介入することで、 社会にとっても患者にとっても重荷となるコストを軽減できるかもしれない。 研究の限界 ・肺癌患者を対象にした研究なので、他の癌腫においても同様の結果が得られ るとは限らない。 ・人種、民族に考慮していないので、それらが結果にどう影響を及ぼすかにつ いては評価できていない。 ・盲検化していない。 コメント 緩和ケアの早期導入が患者の身体的、精神的満足度を向上させることが、無作 為化試験という質の高い研究により証明された。また、それにより患者は症状 に対しての的確なマネージメントができ、生存期間が延長したのではないかと 考えている。
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