Kwansei Gakuin University Repository

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Title
開曲線に対するキネマティック方程式と接線速度
Author(s)
佐藤, 宏俊
Citation
関西学院大学
Issue Date
URL
http://hdl.handle.net/10236/12323
Right
http://kgur.kawansei.ac.jp/dspace
2013 年度 修士論文要旨
開曲線に対するキネマティック方程式と接線速度
関西学院大学大学院理工学研究科
数理科学専攻 大崎研究室 佐藤宏俊
1
時間発展する平面曲線
平面開曲線をx(u, t) とおき、パラメータを u ∈ [0, 1]、時刻を t = 0 とする。このとき、法線速度を
β(u, t)、接線速度を α(u, t) とすれば、開曲線の運動は、
∂t x = βn + αt, 0 < u < 1, t > 0, x(u, 0) = x0 (u)
(E)
と表される。ここで、nは単位法線ベクトル、tは単位接線ベクトルを表す。曲線の局所長係数 g(u, t), 弧
長 s(u, t)、全長 L(t) を以下のように定義する。
g(u, t) = |∂u x(u, t)|, 0 < u < 1, t > 0,
∫ u
s(u, t) =
g(u, t)du, 0 5 u 5 1, t > 0,
0
∫
∫
1
L(t) = s(1, t) =
(1.2)
L(t)
g(u, t)du =
0
(1.1)
ds, t > 0.
(1.3)
0
また、x(u, t) の曲率 k はフルネ・セレの公式で定義することができる。
∂s t = −kn, ∂s n = kt.
これらの設定の下で、曲率 k 、弧長 s、全長 L の時間発展方程式を得る。
∂t k(u, t) = −(∂s2 β + k 2 β) + α∂s k, 0 < u < 1, t > 0
∫ s
∂t s(u, t) =
kβds + α(u, t) − α(0, t), t > 0
∫
(1.4)
(1.5)
0
∂t L(u, t) =
L(t)
kβds + α(1, t) − α(0, t), t > 0
(1.6)
0
また境界条件は、次の式 (B) で与えられる。
{
∂s k(0, t) = 0, k(1, t) = KL (t)
α(0, t) = 0, α(1, t) = γ(Kc − k(1, t))
(B)
KL : 与えられたパラメータ、γ : 正定数、Kc : 臨界曲率
Mikhailov-Davydov-Zykov らは、らせん波を平面内の曲線として近似的に捉えて、その運動の法線速
度を
β = β0 − Dk
(V)
と仮定した。ここで、β0 は直線波の速度、D は正定数である。
2
接線速度の任意性
接線速度 α を別の速度に取り替えても、パラメータ表示のみが変わるだけで、曲線の幾何学的形状に
は影響しない。したがって、接線速度を適切に選択すれば、曲線の挙動の解析を簡単にし得る。パラメー
タ表示をし直すことにより、接線速度の任意性を示すことができる。そのことにより、本研究では、新
しい接線速度を 1 つ提案した。局所長係数 g(u, t) が u に依存しない、すなわち、
g(u, t)
≡ 1, 0 5 u 5 1, t > 0
L(t)
であるとする。このとき、∂t g = ∂t L となる。補題 ∂t g = (kβ + ∂s α)g より、∂t log L = kβ + ∂s α を得
る。これを 0 から s まで、s で積分すると、次の新しい接線速度が得られる。
∫ s(u,t)
α(u, t) = α(0, t) + s(u, t)∂t log L −
kβds
(α)
0
端点での境界条件は (B) によって与えられる。(V) と (α) と (B) を課した方程式 (1.4),(1.5) が、接線速
度が具体的に定義された、開曲線に対する新たなキネマティック方程式である。
3
弧状波に対する厳密解の構成
伝播する弧状波に対するキネマティック方程式の厳密解を考える。キネマティック方程式の定常問題
˜ について、次の 2 階境界値問題に定式化される。
は、関数 k(s)

)
p˜2 ˜2 (
 ˜
+ k Kβ − k˜ ;
(3.1)
∂s k = p˜, ∂s p˜ =
k˜

p˜(0) = 0, p˜(L) = γ¯ KL (KL − Kc ) .
(3.2)
Kβ : 定数
˜
ここで、k(u) = k(s(u)),
p(u) = p˜(s(u)) である。 Brazhnik[3] は (3.1) の厳密解を構成したが、対応する
曲線の長さは無限であった。本研究では、これが条件 (3.2) をさらに満たすようにすることで、有限長の
曲線に対応する厳密解を構成した。
定理 KL ∈ (0, 2Kβ ) とする。そのとき、曲率の関数は
˜
k(s)
=
k0 (2Kβ − k0 )
√
, 05s5L
Kβ + (Kβ − k0 ) cos k0 (2Kβ − k0 )s
(3.3)
で表され、全体の長さは
}]
[
{
k0 (2Kβ − k0 )
1
1
L= √
arccos
− Kβ
Kβ − Kc
KL
k0 (2Kβ − k0 )
(3.4)
となり、(3.1), (3.2) の唯一の厳密解となる。ここで、k0 は与えられた値 KL から、
√
k0 = Kβ − Kβ2 + γ¯ 2 (KL − Kc )2 − KL (2Kβ − KL )
として、計算することができる。
参考文献
[1] 矢崎成俊, 曲率流方程式の世界への誘い, 九州大学集中講義資料, 2009.
[2] K.Osaki, H.Satoh and S.Yazaki, Towards modelling spiral motion of open plane curves, 投稿中.
[3] Pavel K. Brazhnik, Exact solutions for the kinematic model of autowaves in two-dimensional
excitable media, Phys.D 94 (1996) 205-220.