2013 年度採択 学術図書出版推進プログラム 研究成果

立命館大学研究部
2014 年 4 月 17 日
2013 年度採択 学術図書出版推進プログラム 研究成果報告書
所属機関・職名: 立命館大学産業社会学部・准教授
採択者
書名
氏名: 樋口耕一
社会調査のための計量テキスト分析――内容分析の継承と発展を目指して
出版物の概要
出版の目的・意義、出版物の目次(項目)等について、概要を記入してください。
目的と意義
(1) 計量テキスト分析の提案 社会調査では、人々の自由記述・インタビュー記録・新聞記事など、様々なテキ
スト型データを扱う。しかし日本語をコンピュータで扱うことが従来は困難だったこともあって、国内ではこう
したデータをコンピュータで扱ったり、計量的に分析したりする方法についての研究がほとんど進んでいない。
こうした分析の方法は内容分析(content analysis)と呼ばれ、1950 年代に国内で紹介されているものの、その
後の発展・普及は著しく低調である。そのため、調査によって大量にデータが得られた場合でも、従来はその分
析が事例的な解釈にとどまることが多かった。そこで本書では、大量のデータの全体像を把握するのみならず、
事例的な解釈では発見が難しいデータの潜在的な構造を抽出するなど、計量的手法の利点を活かした方法「計量
テキスト分析」を提案する。
(2) 分析用ソフトウェアと利用手順の提示 こうした計量的分析を手作業のみで行うことは時間と労力の面で難
しく、適切なコンピュータ利用が不可欠である。しかし従来は、研究者が自らソフトウェアを開発するか、ある
いは数十万円から数百万円と高価な市販のテキストマイニング・ソフトウェアを援用する必要があった。そこで
筆者は、計量テキスト分析のためのフリーソフトウェア「KH Coder」を開発・頒布しており、本書では KH Coder
を用いて分析を実践する具体的な手順についても提示する。
(3) 完結した研究事例 新たな分析方法を提案する際には、その方法を使った分析結果として紹介的ないしは例
題的なものが掲載される場合が多い。それに対して本書では、紹介的な分析にとどまらず、実質的な社会学的研
究課題に答える分析を積み重ねることで、方法とソフトウェアの有効性を示す。
目次
第 1 章 内容分析から計量テキスト分析へ――継承と発展を目指して
第 2 章 計量的分析の新たなアプローチ―― 2 つのアプローチの峻別と接合から
第 3 章 新たなアプローチによる分析の手順と実際――漱石「こころ」によるチュートリアル
第 4 章 手作業による伝統的な方法との比較――新聞記事の分析結果から
第 5 章 現代における全国紙の内容分析の有効性――社会意識の探索はどこまで可能か
第 6 章 情報化イノベーションの採用と富の有無――自由回答データを用いた研究事例
第 7 章 社会調査と計量テキスト分析
文献
資料 A KH Coder リファレンスマニュアル
資料 B KH Coder の使用条件とその考え方
索引
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