4.3 辺彩色 同色の辺が互いに隣接しないようにグラフの 辺に色を塗ることをグラフの辺彩色という. H26 グラフ理論 あるグラフの辺彩色が k 以下の色で可能なとき, そのグラフはk-辺彩色可能であるという. ー第9回ー 辺彩色問題 あるグラフがk-辺彩色可能でかつ (k-1)-辺彩色 不可能であるとき,kを辺染色数χ’(G) と呼ぶ. 1 A~Dの頂点を持つグラフを考え, ペアを頂点間の辺で表す 辺彩色の応用 2 スケジューリング問題 A B D C 何人か(A~D)がペアになって打ち合わせする (異なる組み合わせ) (A,B), (A,C), (A,D), (B,C), (B,D),(C,D) 異なるペアが同じ時間帯に打ち合わせできない できるだけ短時間に時間割を組むには? 隣接辺を 異なる色で塗る A B D C 打ち合わせの種類: 1 2 3 時間の流れ 3 同色辺は接続していないので,その辺が表す打ち合わせ は同一時間帯に可能.よってこの場合3単位時間で可能. 3 ≤ χ’(G) ≤ 3 ⇒ χ’(G) = 3 4 1 定理5.11: (前半) 完全グラフKpに対して, pが奇数ならば,χ’(Kp)=Δ(Kp)+1 = p. 定理5.11:(前半) 完全グラフKpに対して, pが奇数ならば,χ’(Kp) =Δ(Kp)+1 = p. 1 c3 c4 2 5 c1 c5 証明: まずχ’(Kp)≦Δ(Kp)+1=p を示す. pが奇数のとき,図のように正p角形の周囲 の辺を色c1~cpで彩色し,それ以外の辺 (vi-1, vi+1)をそれと平行な辺と同色で彩色. このときχ’(Kp)≦Δ(Kp)+1=p. c2 3 c1 1 2 この2辺を同色に塗ることができ, 他も同様にすることで,周囲の色だけで すべての辺を彩色できる. 4 5 3 4 これ以上選べない 証明: 次にχ’(Kp)≧Δ(Kp)+1=pを示す. {v1,v2,…,vp}から互いに隣接しない辺は 最大で(p-1)/2以下しか選べない. また,辺数はp(p-1)/2なので, χ’(Kp)≧Δ(Kp)+1=p. 以上によりχ’(Kp)=p. {1,2,3,4,5} から辺 (1,2) を選ぶと,それに接続して いない残りの頂点は {3,4,5} となる.そこからさらに 辺 (3,4) を選ぶと残りは {5} でそれ以上選べない. このとき同色に彩色できるのは (1,2 )と (3,4) の 2辺のみ.( 5(5-1)/2 = 2 ) 5 6 定理5.11: (後半) 完全グラフKpに対して, pが偶数ならば,χ’(Kp)=Δ(Kp)=p-1. 定理5.12: χ’(Kn,m)=max{n,m} 証明: p が偶数ならば,χ’(Kp)=Δ(Kp)=p-1を示す. p が偶数のとき,全体を Kp-1 と K1,p-1 に分ける(下図). p-1 で Kp-1に p-1 彩色をする. K1,p-1 の各辺に,それに未 接続の辺の異なる色を彩色 c1 1 でき,Kp全体は p-1. したがってχ’(Kp)=p-1. 2 証明:一般的に m≧n としてよい.このとき以下のように 辺彩色すれば,隣接辺は異なる色で彩色可能. m 5 Kp-1 c1 同じ色で彩色できる 3 4 6 K1,p-1 7 赤, 緑, 青, 紫 緑, 青, 紫, 赤 青, 紫, 赤, 緑 n 8 2 定理5.14: (V.G. ビジング) 空でない任意の単純グラフGに対して, χ’(G) = Δ(G) または Δ(G)+1 定理5.15: G を位数3以上の奇閉路でない連結グラフ とすると,G の2-辺着色で,次数2以上のすべての点で 2色が共に現れるものが存在する. χ’(G) ≦ Δ(G)+1 を示せば十分. そのためにいくつかの準備をする. 図形的に説明すると. . . 定義:グラフの辺に色を付けるとき,なんの制約 もない場合を,辺着色といい,k-色による着色を k-辺着色という. 奇閉路 辺彩色 辺着色(辺彩色を含む) 9 定理5.15: G を位数3以上の奇閉路でない連結グラフ とすると,G の2-辺着色で,次数2以上のすべての点で 2色が共に現れるものが存在する. 証明:Gがオイラーグラフの場合: (かつ, Gが偶閉路のとき) 図のように色を閉路に沿って 交互に色を塗れば,各点に 接続する少なくとも2辺は異なる ように辺彩色できる. 11 奇閉路でないグラフ (次数2以上の点(黒丸)で 2色が共に現れる) 10 定理5.15: Gを位数3以上の奇閉路でない連結グラフ とすると,Gの2-辺着色で,次数2以上のすべての点で 2色が共に現れるものが存在する. 証明:Gがオイラーグラフの場合: (Gが偶閉路でないとき) Gは次数4以上の点vを少なくともひとつは含む. (奇点がないオイラーグラフだから) vの次数が4以上 ⇒ v を開始点にして, vは2回以上回路に現れる. オイラー回路に 交互に色を塗れ G のオイラー回路 ば必ずすべての v 頂点が2色に接する. v 12 3 定理5.15: G を位数3以上の奇閉路でない連結グラフ とすると,G の2-辺着色で,次数2以上のすべての点で 2色が共に現れるものが存在する. 証明:G がオイラーグラフでないとき: (奇点の個数は偶数) より,新たな v’ とすべての 奇点を結んでグラフG’を作る.(G’はオイラーグラフとなる) v’からのオイラー回路に 2-辺着色し,そこからv’の 辺を取り除いても次数 2以上の点vで2色は残る. Gのオイラー回路 v’ v 定義:あるグラフにk-辺着色が与えられているとする. c(v)を点vに現れる色の個数とし,Σc(v)が最大になる k-辺着色をそのグラフの最適なk-辺着色という. Σc(v) = 11 Σc(v) = 12 最適でない3-辺着色 最適な3-辺着色 13 定理5.16: {E1, E2, …, Ek}をグラフGの最適なk-辺着色 とする.点uにおいてuに現れない色cnとuに2度以上現 れる色cmがあるとき, cnの辺集合Enとcmの辺集合Emか ら誘導される部分グラフ< En∪Em>の成分でuを含む ものは奇閉路である. E2 E1 u E5 E4 E3 E7 E6 Gの最適な3-辺着色 {E1,...,E7} cn = {紫} cm = {緑} 誘導部分グラフ H=< En∪Em> ={破線の紫と緑からなるグラフ} =奇閉路 15 14 証明:< En∪Em>の成分でuを含むものを H とする. H が奇閉路でないと仮定する. (背理法) 定理5.15より, 2色cn, cmによる H の2-辺着色γn,mで, 次数 2 以上の点に両方の色が現れるものが存在する. Hの辺をこの着色で塗り替えるとGの新しいk-辺着色γ’ が得られるが, (1)cγ’(u)=cγ(u)+1 (2)cγ’(v)≧c(v) (vはu以外) したがって,Σcγ’(v) > Σcγ(v)となるが, これはGが最適なk-辺着色であることに矛盾する. 16 4 定理5.14: (V.G. ビジング) 空でない任意の単純グラフGに対して,χ’(G) ≤ Δ(G)+1. 証明(つづき) これを繰り返すと,点v1,… とその色c1,… の列は 以下を満たす. 証明(背理法)χ’(G)>Δ(G)+1を仮定する. Gに最適な(Δ(G)+1)-辺着色γを施すと, 仮定からこれは辺彩色ではないので, c(u)<deg uとなる点がある.(ある色がuで被っている) u に現れない色をc0とし,2度以上現れる 色をc1とする.(u,v1)はc1で塗られた辺. (1)(u, vj)は色 cj を持つ (2) cj +1 は vj の色でない (×がついた辺はない) c3 u u の次数は有限なので, vk=vn+1かつck=cn+1を満たす 1≤ k < nが存在する. v1 v3 c3 u c1 c2 c1 c4 着色数は同じ c3 v3 v2 v1 u 1≦ j ≦ k-1 ここをひとつ上の辺の 色と入れ替える (赤は重複するので色数 は減らない) c1 v2 c2 c1 v1 c3 c2 H’ × 証明(つづき) つぎに辺 (u, vj) (k≦ j ≦ n-1) の色を cj+1 に塗り替え, (u,vn) の辺を ck で塗り替えることにより,γ’から さらに,最適な(Δ(G)+1)-辺着色であるγ’’が得られる. ここでも ck は2度以上現れるので,< Ec0 ∪ Eck >の u を含む成分 H ’’ も奇閉路である. v3 v3 v4 c1 × × 18 v3 c3 c3 c4 u v3 17 証明(つづき) 辺 (u,vj) (1≦ j ≦ k-1) の色を cj+1 に塗り替え, これによって得られた着色をγ’とすると, これも最適な(Δ(G)+1)-辺着色である. このとき,<Ec0∪Eck> の u を含む誘導部分グラフ H ’ は 定理5.16より,奇閉路である.(c0はなく,ckは2色以上) c3 vk c3 v2 c1 vn+1 v4 v3 c2 v1にも現れない色c2が存在し,γが最適 c1 であることより,c2はuの接続辺に現れる. (そうでなければc1のどちらかをc2で塗ること でより最適な着色を得るが,これは矛盾する) v3 c3 c4 v4 c3 v3 u v2 c1 v1 19 c3 c2 v4 v3 v2 v1 c3 k≦ j ≦ n-1 ここを入れ替える c4 u 前回と同様に c1 着色数は変化しない c3 c2 H ’’ v4 v3 v2 v1 20 5 証明(つづき) H ’は奇閉路なので,vk の H ’ での次数は2であるが, H ’ の ck が ck+1 に置き換わったので(図ではc3がc4へ) H ’’ で vk の次数は1となるが,H ’’ が奇閉路であることに 矛盾する.(証明終) v3 v3 c3 c3 c4 c3 u c1 c3 c2 c3 v4 v3 v2 v1 H ’を含むグラフ c4 vk u c1 c3 c2 v4 v3 v2 vk v1 H ’’を含むグラフ vkで色が置き換わっているので,H’でvkの次数が2ならば,同じvkの次数は H’’では1となり,vkが閉路の一部であることに矛盾する. 21 6
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