ウィルソンの定理について 風あざみ 2014/04/07 1 証明の準備編 定理1:素数 p と正の整数 a を任意にとるとき、以下が成り立つ。 ap ≡ a (mod p) 証明:数学的帰納法を用いる。 a = 1 のときは明らか。 a = k のとき正しいと仮定する。 p−1 ( ) ∑ p (k + 1)p − (k + 1) = k p − k + · k p−i i i=1 ( ) p p! = の分子は素数 p で割り切れ、分母は割り切れないから i i!(p − i)! ( ) p は p で割り切れることがいえるので、 i p−1 ( ) ∑ p p k −k+ · k p−i ≡ k p − k ≡ 0 (mod p) i i=1 したがって a = k + 1 のときも正しい。 以上より、定理1がいえた。 □ 定理2:p − 1 以下の 0 以上の整数 m をとる.。整数係数のモニックな m 次式 f (x) をとるとき、f (x) ≡ 0 (mod p) の解は法 p で m 個以下である。 証明:m = 0 のときは明らか。m = e のとき、定理2が成立すると仮定する。 m = e + 1 のとき f (x) ≡ 0 (mod p) が解を持たないとき解は 0 個だから、当然成り立つ。 f (x) ≡ 0 (mod p) が解 x0 を待つとき f (x) を x − x0 で割り、商を q(x)、余りを r とすると f (x) = (x − x0 )q(x) + r 1 とかける(ここで q(x) は h 次式である)。 r ≡ (x0 − x0 )q(x0 ) + r ≡ f (x0 ) ≡ 0 (mod p) より r ≡ 0 (mod p) よって f (x) ≡ (x − x0 )q(x) (mod p) がいえる。p は素数だから、x ≡ x0 (mod p) あるいは q(x) ≡ 0 (mod p) が成り立つことがいえる。帰納法の仮定 より、q(x) ≡ 0 (mod p) をみたす x は法 p での個数は e 以下だから f (x) ≡ 0 (mod p) の解の個数は法 p で e + 1 個以下であることが言える。したがって、 m = e + 1 のときも定理2は正しい以上から任意の 0 以上の整数 m に対し て、定理2が成立することがいえた。 2 □ ウィルソンの定理及びその逆の証明編 定理3:p を素数とするとき、(p − 1)! ≡ −1 (mod p) が成り立つ。 証明:整数を係数とする多項式 f (x), g(x) を f (x) = x(x + 1)(x + 2) · · · x + (p − 1)、g(x) = xp − x とおく 0, 1, · · · , p − 1 から任意に a をとると、定理1より g(a) ≡ 0 (mod p) がいえ るから f (a) − g(a) ≡ 0 − 0 ≡ 0 (mod p) がいえるから f (x) − g(x) = 0 の 解は法 p で p 個である。f (x) − g(x) は明らかに p − 1 次以下である。ここで f (x) − g(x) がある 0 以上 p − 1 以下の整数 h に対して h 次式と仮定すると、 定理2より f (x) − g(x) の解の個数は h 個以下でなければならないので、こ のことは上記の事実に反する。したがって、f (x) − g(x) の任意の係数が素数 p で割り切れることがいえる。とくに、f (x) − g(x) の 1 次の係数を比較して (p − 1)! + 1 が p で割り切れることつまり、(p − 1)! ≡ −1 (mod p) が成り立 つことがいえた。 □ 定理3はウィルソンの定理そのものである。 定理4:n を合成数とするとき、(n − 1)! ≡ −1 (mod n) は成立しない。 証明:n の 1 より大きな約数 d をとる。 このとき 0 ≡ (n−1)! ≡ −1 (mod d) がいえるが、これは不合理、したがって 定理4が成立することが言えた。 □ 定理4はいわゆる「ウィルソンの定理の逆」である。 また、定理3と定理4を合わせると、以下がいえる。 n を 2 以上の整数とするとき、n が素数であるための必要十分条件は (n − 1)! ≡ −1 (mod n) が成り立つことである。 2
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