物理化学4(第10回)
演習3の解説 分子の磁気的性質1
(プリント)
演習3
1. 2個のメタンの分子の誘起双極子−誘起双極子相互作用(分散相互作用)のを
求めよ。ただし,メタンの分極率体積:2.6 x 10-30 m3,イオン化エネルギー:700
kJ/mol,分子間距離:0.3 nmとする。
2.アルゴン(ε= 128 kJ/mol,r0 = 342 pm)に関して,
(1)レナード−ジョーンズポテンシャルV(r)を計算し,図示せよ。
(2)ε およびr0 は何を表すか示せ。
(3)V(r)minのrはいくらか。
3.25℃における,0.5 nm 離れた双極子モーメントが1Dの分子間の双極子−双極子
相互作用はいくらか。
4.双極子モーメントが1Dの分子と分極率体積が1.0 x 10-29 m3の分子が0.3 nmの
距離にあるときの双極子−誘起双極子相互作用はいくらか。
1. 2個のメタンの分子の誘起双極子−誘起双極子相互作用(分散相互作用)のを
求めよ。ただし,メタンの分極率体積:2.6 x 10-30 m3,イオン化エネルギー:
700 kJ/mol,分子間距離:0.3 nmとする。
α1$α 2$ 2 I1I2
V =− 6 ⋅ ⋅
r
3 I1 + I2
(α1$ ) 2 2 I 2 (2.6 × 10 −30 ) 2 2 (700 × 10 3 ) 2
=− 6 ⋅ ⋅
=
⋅
−9 6 ⋅
r
3 2I (0.3 × 10 ) 3 2 × 700 × 10 3
€
= −2.16
kJ/mol
€
€
ちなみに,メタンの蒸発エンタルピー: 8.2 kJ/mol
2.アルゴン(ε = 128 kJ/mol,r0 = 342 pm)に関して,
(1) レナード−ジョーンズポテンシャル V(r) を計算し,図示せよ。
(2) ε および r0 は何を表すか示せ。
(3) V(r)minの r はいくらか。
*# r &12 # r & 6 V = 4ε +% 0 ( − % 0 ( .
,$ r ' $ r ' /
r = r0 のとき,
€
384 pm
V = 0
1
dV
= 0 より, r = 2 6 r0
dr
= 384 pm
342 pm
1
6
128 kJ/mol
€
€
r = 2€r0 のとき,
V = −ε
3.25℃における,0.5 nm 離れた双極子モーメントが1Dの分子間の双極子−双極子
相互作用はいくらか。
2µ12 µ 22
V =−
3(4πε 0 )2 kTr 6
1モルあたりに換算して
-0.07 kJ/mol
4.双極子モーメントが1Dの分子と分極率体積が1.0 x 10-29 m3の分子が0.3 nmの
距離にあるときの双極子−誘起双極子相互作用はいくらか。
µ12 α 2$
V =−
πε 0 r 6
1モルあたりに換算して
€
-3.3 kJ/mol
分子の磁気的性質
qm q"m
磁場のクーロン力 F =
4 πµ0 r 2
(0) 復習
N
r
+ qm [Wb]
r
+ qm
S
- q’m [Wb] = [J/A]
H
[N/Wb]
µ0: 真空の透磁率
€
4π × 10-7 [N/A2]
qm
磁界の強さ H =
4 πµ0 r 2
q’m が磁界 H から受ける力
€
F = q’m H
i [A]
直線電流が作る磁界
r
i
H=
2πr
H
€ 円形電流が作る磁界
r
H
i
H=
2r
i [A]
€
(クイズ)
磁気の担い手は何か
制限時間3分
(クイズ)
制限時間3分
磁気の担い手は何か
答え. 電荷を持った粒子(電子,原子核)の回転
分子の磁気的性質
(1) 磁気の担い手は何か
磁気モーメント
(2) 磁気モーメントを磁界の中に入れたら 磁気分極・磁化
(3) 磁化(磁気分極)の起こりやすさの指標
磁化率
(4) 磁化率の測定法
Faraday法
(5) 磁化率から何がわかる
スピンの数
(1) 磁気の担い手は何か
電荷を持った粒子(電子,原子核)の回転
N
+qm
電流
磁気モーメント
電子
-q m
S
磁気双極子
電子スピン
核スピン
軌道角運動量
(2) 磁気モーメントを磁界の中に入れたら
S
-q m
+σm
磁場中で磁気双極子は
磁界(H)に平行になりたい
M
-σm
H
+qm
N
+qm
磁気モーメント(m)の配向
誘起磁気モーメントの発生
磁化(M),磁気分極(σm)
-q m
磁気双極子
磁化(M)の大きさは,単位体積あたりの
磁気双極子モーメント(m)
∑m
1 i i
磁化 M =
µ0 ΔV
[Wb⋅ m]
= [A /m] = [N /Wb]
[Wb / A⋅ m][m 3 ]
€
€
磁化は磁界の強さに比例 M ∝ H
∴ M = χH
€体積磁化率
€
[無次元]
χ > 0 常磁性:永久磁気双極子モーメントをもつ χ < 0 反磁性:誘起磁気双極子モーメントの発生 (外部磁場→磁束密度変化→電磁誘導→レンツの法則(逆磁場)
磁性体があるときの磁界の強さ
(真空中)
N
磁束密度
(磁性体があるとき)
H
S
N
B = µ0 H
H+M
S
B = µ0 (H + M)
= µ0 (H + χH)
€
= µ0 (1+ χ )H
€
€
€
(3)磁化(磁気分極)の起こりやすさの指標
χ : 体積磁化率
€
€
[無次元]
χm : モル磁化率
[m3 mol-1]
χg : 質量磁化率
[m3 kg-1]
€
€
€
= χ ⋅ Vm
M
=χ⋅
ρ
χ
=
ρ
(Vm: モル体積)
€
磁化率(磁気分極)と磁気モーメントの関係
2 '
$
m
χ = N µ0 &ξ +
)
3kT (
%
誘電率,電気分極と電気双極子
モーメントの関係と同じようにして
L $
µ2 '
Pm =
&α +
)
3ε 0 %
3kT (
N : 単位体積あたりの個数(数密度)
€
ξ : 誘起磁気双極子モーメント
m : 永久磁気双極子モーメント