中国自動車市場 –日系自動車メーカーのあるべき姿– 10207GHU 須崎永梨奈 1.問題 中国自動車産業と自動車市場の発展は、2001 年の WTO 加盟以降、中国経済の高度成長とともに、自 動車産業も凄まじい成長が成し遂げられた。現在、中国の自動車生産台数と販売台数はいずれも世界一 の規模に成長した。しかし、日系自動車メーカーのシェアが低下する一方、中韓自動車メーカーのシェ アは上昇している現状もあるため、国内では日系自動車メーカーの中国戦略を疑問視する見方が多く、 中には、現地ニーズに応じた低価格の車への供給に尽力すべきという主張が目立っている(参考文献参 照)。さらにメディアは中国自動車市場での日系メーカーの成果について問われることも多い。 これらの見方に私は疑問に感じ、日系自動車メーカーが中国でどのような戦略で現状に対応するべき かを分析、推測したいと考えた。 2.方法 中国自動車産業の現状を踏まえ、急速に拡大した理由に着目し、日本自動車市場発展と異なる点に 対する日本側の対応を分析し、今後期待される新エネルギーの利用を確認した上で、中国自動車市場 における日系自動車メーカーの成果と戦略を明らかにした。 3.結果 2040 年までの中国自動車販売台数を中長期的にみると、自動車保有率が高まるにつれ、新規需要は 伸び悩み、代わって買い替え需要が増加していくと分析した。この現状によって、差別化を図っている 日系自動車メーカーが有利に進むと考えられる。今後中国消費者の所得水準は一段と上昇することによ って、低価格自動車より、アフターサービスを含めた高付加価値戦略をとる日系自動車メーカーが、中 国の市場に高く評価され、今後の発展も期待できるという結論に至った。 4.考察 中国において、日本車は以下の3点で高く評価されている。 第1に、品質が高い。アメリカの市場調査会社のJ.D.パワーが、2012年7〜9月に中国の37都市で行った 品質調査によると、調査した全11セグメントのうち、ラグジュアリーやアッパー・プレミアム・ミドル サイズなど7セグメントで日系ブランドの車がトップを獲得した。 第2に、アフターサービスが良い。同じく米J.D.パワーが、2012年に37都市で、2010年2月から2011年5 月に新車を購入した消費者を対象に、整備や修理など正規販売店のアフターサービスに関する顧客満足 度を調べたところ、主要日系ブランドはいずれも平均値を上回った。さらに、平均を上回った23ブラン ドのうち、トップ3はいずれも日系ブランドであった。 第3に、燃費が良い。2012年に37都市で、2010年2月〜2011年5月に新車を購入した消費者を対象者に したアンケートによると「76.20%のカーオーナーは日本車が最も燃費が良い」と認識している。「最も 燃費の良い車は」との質問に対し、回答した1,883人のうち日系ブランドと回答したのは1,435人と76.2% にのぼる。これに続き、欧州系9.7%、中国系8.2%、韓国系4.8%、アメリカ系1.2%という回答であった。 これらの結果から、中国人の日系メーカーへの圧倒的な支持がよくわかる。品質やアフターサービスな どの面で中国メーカーや韓国メーカーの追い上げも予想されるが、より良い車を望む中国消費者のニー ズに応え続ければ、短期的にシェアを落とすことがあっても、中長期的にシェアは上昇していくものと 見込まれる。よって、日系自動車メーカーは更なる差別化戦略を図る努力で中国自動車市場において成 長することができると判断する。 【参考文献】周磊(2010 年)『中国次世代自動車市場への参入戦略現地発イノベーション最前線』日経 BP 社 など。
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