2章 こどもの自然体験学習(IV部 環境学習) - NAOSITE

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
2章 こどもの自然体験学習(IV部 環境学習)
Author(s)
陣野, 信孝
Citation
地域環境の創造 (長崎大学公開講座叢書 12) p.265-275
Issue Date
2000-03-15
URL
http://hdl.handle.net/10069/6452
Right
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2章
こどもの自然体験学習
陣野 信孝
1節
まず親が 、教 師が 自然観察 ・自然体験 を
数年前に長崎大学の公開講座で "
お母さんのための自然観察'
'を企画 したこ
とがある。 学内に人手の加わりの度合いが異なる数カ所を選び、四季を通 じて
植物の観察を行 った。かなりの年配の方か ら赤ん坊を背負ってた若いお母 さん
まで幅広 く十数名の参加があった。お母さんたちも楽 しく参加 されていたよう
で大変意義あるものであった。なぜこの企画を したかというと、先ず、母親に
自然体験をもってもらって、親子で自然体験 ・自然観察ができればと考えたか
らである。
本学教育学部のカ リキュラムの理科実験で野外実習をとりいれて指導 してい
るが、殆どの学生が野外実習の未体験者であり、野外実習で ミミズやクモに出
会 うと奇声をあげて遠ざかろうとする。彼等自身の責任ではないが自然体験が
非常に貧弱である。将来、教師になって、子供たちの指導ができるのか危供さ
れるところである。また、時に自然保護団体などが催す自然観察会などに指導
者 として参加 しているが、興味感心をもっ保護者が子供 と一緒に参加されてい
ると大変充実 した観察になる。親が興味関心をもっていると子 も積極的に参加
する。教師の場合で も全 く同 じことがいえるのではないだろうか。多 くの子供
は好奇心旺盛でいろんな生 き物や事物に興味関心をもっている。幼少のころか
ら、いろいろな原体験を もたせることが重要で、子供たちの興味関心の芽を摘
んで しまってはいけない。それには、まず保護者がそ して教師が自然体験を十
分に積んでお く必要があると常々思っている。
学校教育のなかで自然体験学習の指導ができれば一番よい。そのために教師
が校庭や学校の回りで四季を通 じて自然観察をすることである。教師同志で相
互研修を して観察の技術を磨いてお く必要がある。教師が自ら自然観察を して
自然体験を もって感性を豊かにしておかないと子供の指導は難 しい。保護者 も
身近なところで子供 と一緒に野外に散歩に出ることか ら始めるとよい。いろい
ろな自然 との出会いがある。教師がそ して保護者が子供たちと同 じ目線で喜々
として楽 しく自然を観察 し体験 してい くことが大事である。
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2節
自然体験学習を実施するうえでの身構えと心構え
自然はヒトにやさしいばかりではない。危険なことも多 く、きちんと取 り組
まないと大変なことになりかねない。それで、実施するための身構えが必要で
ある。 帽子、長袖 シャツ、長ズボンは少な くとも着用させる。できるだけ肌を
●●●●●●
露出させないようにさせる。蜂 とかうるしかぶれなどか ら身を守 るためであ
る。
また、子供たちに最良の体調で観察できるよう気配 りも必要である。ちょっ
とした傷などの救急医療用具の準備 も必要である。そして、後述するように観
察にあたっては五感を駆使 して、積極的に自然に働 きかけるように指導する。
●●●●●
そうすることによってはじめて自然か らいろいろなことが学べる。心 ここにあ
●●●●●●●●●●●
らざれば見れども見えずということである。
3節 自然観察あるいは自然体験学習で何を学ばせるか
自然観察あるいは自然体験学習で、単に楽 しいとか面白いとかで終わ らない
ようにしたい。.
観察を通 して、下記のようなことを学ばせ、琴境教育や自然保
護教育まで高めるようにしたい。
① 自然界には多種多様な生 き物がさまざまな生活を していること。
(
参自然にはマムシ、蜂など危険な生き物 もいる.
③生き物は、 ヒトも含めて互いに関わ り合 って生 きている。
④緑の植物が無 くなると、 ヒトを含めて動物は生きていけない。
⑤ 自然の環境は年々悪化 しており、環境にやさしい生活をこころがける。そう
しないと、最後はヒ トが しっぺ返 しを うけること。
4節
こどもたちに体験させる対象の自然 とは
h自然"とは国語辞典によると、まず一番 目に人間の力が加わ らないありの
ままの状態 とあ尋.太古より人間の力が加わ らない森林は原生林 とも呼ばれ
る.厳密な意味での原生林は、少な くとも日本では皆無だと言われている。t
こ
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2章
こどもの自然体験学習
こでは、 "自然"を もう少 し広い意味で考えてみたいと思 う。
"自然'
'を観察
あるいは体験する場 として、(1)
原生的自然一人間の力が殆ど加わっていない
自然、あるいはかつては人間の力が加わっていたが現在は安定 して森林に回復
した自然、(2)
農山漁村的自然一 一次産業を行 う上で人間の力が加わってい
る自然、(3)
都市的自然 一人間の力が比較的強 く加わっている自然、の 3つに
分けて考えてみる。
自然の豊かさの度合いは、(1)
、(2)
、(3)
の順に低 くなるが、まず、足元
の ごく普通の自然か ら見ていくことが大事である。 都市的自然は自然度が低い
か ら、自然観察や自然体験学習の対象にな らないという訳ではない。人間と生
き物 との関わ りという視点でみるときは、む しろの望ま しい場合 もある。
自然観察や 自然体験学習を実践 ・指導す るときは、(1)自然に親 しもう
(2)自然の しくみを知 り、自然のすぼ らしさを学ぶ
(3)自然を大切にす ると
いう視点を もつ ことが必要で、 このステ ップアップが大事である。 このことを
考えると、都市的自然、農山漁村的自然、原生的自然をできれば観察 し体験す
るように したい。
5節
自然体験学習 とは一五感 を駆使 して観察 し触れてみること
私たち人間は、視覚、触覚、嘆覚、味覚、聴覚の 5つの感覚器官を もってい
る。つまり五感がる。 自然のなかでは五感の働 きで事物 ・現象を確認 していく
ことが第 1歩である。その体験的事実を もとに して論理的に認識 していくこと
になる。そ して、観察や野外体験学習のスター トは、事実を事実 として、素朴
にありのままに、いっ も心をオープンに してみることにある。最近は、生 き物
に関 して も映画、コンピューターグラフィクスなどすぼ らしい教材がある。私
たちが普段みることができないものやところを映像 として提供 して くれるよさ
はある。 しか しなが ら、視覚、聴覚で しかみることがで きないという限界があ
る。幼児などが、おそるおそるなが らも蝉をっかみ、蝉の体の震えや動 きに喪
いたりす るような感動は、映画などでは到底味わえないものである。 ここに、
映像で見 るのではな く、身近な自然を自分の五感でみる感動体験、原体験がと
くに幼少の ころか ら求め られて くる. レイチ ェルカ-ソンがいうセ ンス ・オ
ブ ・ワンダーを養 うことである.
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.教員養成学部の理科のカ リキュラムに理科実験 という授業科 目がある。この
理科実験の中でヾ 1コマ野外実習を取 り入れ七いる。主に校舎の周辺で、つま
り前途の都市的自然のなかで、植物がまわりの環境 とどのように関わって生育
しているかを観察させている。草花遊びなども取 り入れなが ら、五感を駆使 し
て自然をみるように指導 している。始めての野外実習を体験する学生が多 く、
人 と植物 との関わりや植物の種間の競争などじかにみて新鮮な気持ちで参加 し
ている.観察の中で、ジャゴケの葉状体を観泰させた後その名前付けや、カタ
0円硬貨をこすると汚れが落ちて ピタピカになることを実践させた
バ ミの葉で1
後その名前付けを遊びとしてさせる。 しか し、学生時なかなかぴったしの名前
がイメージできないようである。と.
ころが、最近卒業 した中学校の理科の教師
が理科の授業で同 じような野外実習を実施 したところ、生徒はジャゴケを葉状
体が蛇q)
甲羅に似ていることか らヘ ビゴケとかヘ ビグサ、カタバ ミは銭を磨 く
ことか らゼニ ミガキとか意外 と簡単に名前を付けたことに、本人がびっくりし
たと報告にきて くれた。学生は感性がにぶってきているのであろうか。教師を
目指す学生に自然観察を指導 した くさんの自然体験を もたせて、将来教壇に
立 った時子供たちに喜々として自然観察 ・自然体験学習を指導できるように育
てたいと思っている。
さて、 ここに植物を例にとってその観察の仕方にらいて述べる。植物は多種
で花、実、葉、垂の形はまさに多様である。植物を知るためには、まず親 しむ
ことか らはじめるとよい。そのためには五感で観察するのが一番である.
(1) 見て調べる
ただみるのではな く、草花であれば、葉の裏側や花の中までのぞきこんでよ
くみることが大事である。
I
(2.
) 触れてみる
たとえば、刺があったり、毛があ'
ったりしざらついたり、触れてみてはじめ
て目では気づかなかった特徴がわかる。ただ し、ウルシ科の植物はかぶれるこ
とがあるので経験を必要 とする。,
(3) 嘆いで調べる ・
花にはたいてい香 りがある。葉や茎にも香 りがあるものがある。たとえば、
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こどもの自然体験学習
クサギの葉を喚いでみると、その名前がす ぐにイメージできるほどに特徴のあ
る臭いがある
。
(4) 味で調べる
葉や実を口にいれて味わってみる。たとえば、イタ ドリのクキでは酸味や渋
みがわかる。ニガキという木があるが、その皮を剥いで口にいれるとその名前
にぴった しの苦さがある。
(5) 聞いて調べる
植物の葉どうし、葉と実が擦れ合 ったりするとき、植物によってシャラシャ
ラという独特な音がする。クスノキ、シイノキ、ソヨゴなどはよくその昔がす
る。ソヨゴという植物があるが、葉が風にそいでよくシャラシャラ音がでるか
らその名が付いたといわれる。
6節
自然 を観察 し体験学習す るときの 自然 をみ る視 点 は ?
ある場所に森があり、木が生育 し、そこに昆虫が、タヌキが生息 していたと
しよう。 このような場所で、 自然を観察 ・体験するとき、(1)マクロにみる
(2)
時間の軸でみる (3)自然の しくみをみる (4)
人 と自然 とのかかわ りを
みる、という視点を もって指導 したい。
(1) マクロにみるということは、植物が、動物がまわりの環境 とどう関わっ
て生活 しているか、 という視点でみること。
(2) 時間の軸でみるとい うことは、そこにある自然はず っと以前 はどうで
あったろうか、今後 はどうなってい くだろ うか、 とい う視点でみるこ
と。
(3) 自然の しくみを知るということは、自然の還元作用、食 う食われるの負
物連鎖、植物であれば光の奪い合い競争で生 きている、という視点でみ
ること。
(4) 人 と自然 とのかかわ りをみるということは、土地利用、道路工事などは
そこの自然にマッチ しているかどうか、という視点が必要で しょう。
たとえば、校庭の一角にサクラの木が植栽されているとしよう このサクラ
。
の木をみるとき、この木はバラ科のソメイヨシノという種です と言って しまっ
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てはそれで終わって しまう。 子供たちに教え込むことで終わらないようにする
ことが重要である。子供たちの主体的活動を引き出すように留意 したい。
そこで、まず離れて枝振 りや葉の付き方などを眺め南側 と北側 とではどのよ
うi
=違 うか観察 した後、近づいて木の下に入 り明るさや気温がどのようにちが
うか体感で調べる。その後、① この木にはどんなコケ類や地衣類が付いている
か、またどんな昆虫類がいるか、② この校庭は以前はどんなところであっただ
ろうか。今後、人間の力が加わ らなかったら校庭やこの木はどう変化するだろ
うか、③秋には落葉するが、葉はどのようにして土に還 るか。ここでは、木に
は落葉樹 と常緑樹があることを説明し、常緑樹で も葉を更新するときは落葉 ・
落枝することを説明する。そ して、④それが人間生活にどのように役立て られ
ているかなどを説明する。最後にこの木は実は先達の学者がソメイヨシノと名
付けたバラ科の植物だと説明するようにしたい。そのとき、名前の由来等 も話
すようにしたい。
7節
どんなフィール ドが望ま しいか
豊かな自然が身近にあれば一番よい。自然観察 ・自然体験に適 した豊かな自
然 とはどんな場所だろうか。里か ら里山にかけて、池、小川、湿地、草原、林
がそろって見 られるフィール ドがあれば最適だ。なかで も、子供たちが熱中す
る魚類、水生昆虫類、員類が生息する池、小川、湿坤があるとよい。草原は草
花や蝶などの昆虫の観察にはよい。里山にクヌギ林があれば、夏にはカブ トム
シなど甲虫頬の観察ができよう。
′しか し、今や農山漁村地域で も河川の改修などで、池、小川、湿地、草原、
林がそろっているフィール ドは殆ど見当た らない。それで、いろいろな生 き物
ごとに対応できる自分専用のフィール ドをもつ ことが望ましい.
都市部の学校では、そのようなフィール ドを見つけるのはさらに困難であ
る。学校の校庭をフイ-ル ドとしているのが現状だろう。それでは、
.以下に各
フィール ドでの活動にづいて述べてみよう.
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こどもの自然体験学習
(1) 校庭での実施
校庭に自然観察や自然体験ができる場所があれば一番望ましい。 しか し、最
近の学校の校庭はコンクリー ト張 りで緑地が少な く自然観察は困難だとよ く聞
く。 しか し、少なくとも花壇や畑は多 くの学校では設けてあるようである。そ
こで、花壇や畑を有効に利用することである。たとえば、昆虫はどんな色の花
に、何時ごろ飛来するかなどを調べると大変おもしろい.また、花壇や畑の一
角を深 く掘 り起 こして雑草の根や芽生えを取 り除きそのまま放棄する実験園を
つ くる。少なくとも 1年間四季を通 じて観察すると、植物遷移が観察できる。
数年放棄すると 1年生の雑草か ら多年生への雑草に替わ りさらに木本植物が侵
入 して くることも観察できる。是非、子供たちに観察させたいものである。
畑で土いじりをや らせて土に親 しませることも大事である。土の中には、 ミ
ミズを始めいろんな昆虫がいる。そして、双眼実体顕微鏡があれば、土壌中の
トビムシなどの微小な生 き物を観察させるとよい。 トビムシは大人で も感動 し
て しまうくらいかわいい形を している。このとき、土壌中の ミミズや微小な生
き物の分解者 としての働 きについて説明をすることが大事である。 植物 ・土 ・
土壌中の生き物 とのつなが りが理解できるように したい。
(2) 各地域で実施
自然保護団体などが、子供たちを対象にして身近な里∼里山で自然観察会を
催 していることがある。筆者 もボランティアで参加するが大変楽 しい。保護者
の参加があるとさらによい。学校教育か ら離れた活動になるので、その内容は
主催団体に一任することになるが、いろいろな生 き物や事物 と出会いがあって
多 くの自然体験できる場合が多い。
森であれば、草本、低木、亜高木、高木の 4階建のアパー トのような階層構
造を していることが観察でき、クリや ドングリなどの木の実ひろいもできる。
スギや ヒノキの植林であれば、亜高木層や低木層が欠けていることが観察でき
る。また、キノコは枯木などに着いていることが観察できる。キノコは木を土
にかえす森の掃除屋であることを説明 したい。このように、森や林の中には、
自然体験できるものがた くさんある。また、冬には落葉樹の葉があれば葉を布
団代わりにして寝てみるの も楽 しい。ナイ トハイキ ングを行 うと夜行性動物の
活動 もみ られる。指導者はこのような仕掛けをすることも大事である。
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(3) "自然の家"
など公的施設での実施
学校現場においては週 5日制が導入されて、自然体験学習が重要であると認
識されなが らも、その期間の縮小や行事そのものを取 りやめて しまったりする
学校もあるときく。
学校現場で自然体験学習ができないときは、このような施設を多いに活用 し
たらよいと思う。 このような施設では、施設周辺でできる野外活動のプログラ
ムが整備されておりそれにそって指導がなされる場合が多い。勿論、独自のプ
ログラムで実施される学校 もある。
筆者は "
国立諌早少年自然の家"で、 7- 8年間体験学習プログラム開発事
業に関わってきた.そのなかせ も、『
発見 !発見 !こちらは森の調査隊』- 自
1
9
9
7(
平成 9年)
)
lと 『
水の中のわ くわ く探検
然の家でできる理科学習一一(
1
9
9
8(
平成1
0
年)
)(
国立
(
長崎県長田川を中心 とした環境学習プログ ラム』 (
諌卓少年自然の家)は、小 ・中 ・高の教育現場の教師や県教育センター、教育
委員会か らもメンバーとして加わって、教育現場で実施が困難な理科学習や野
外体験等を当施設で実施するために開発 したプログラムである。
5
テーマ、動物編2
0テーマ、地学編 6テこの前者のプログラムは、植物編1
マからなっている。学校では実践できないテーマからなっている。 例えば、植
物編では①キノコをさがそう②森林の作りを観察 しよう③落ち葉めくりを しよ
うなど.動物編では①ア リジギクをさがそう②水生昆虫をさがそう③ トラップ
で昆虫をっかまえようなど。地学編では①川の流れる様子を観察 しよう②土の
できかたを観察 しようなど、である。
後者は、川の上流から下流までいくつかの地点を選び、その地点を植物、動
物、.
地学の各分野の内容で構成 している。碍動プログラムは、①魚と勝負 (
負
とり)②ホタルの点滅何秒間隔 (
ホタルの夜間観察)③サワガ二はどこに④川
原の石に新 しいいのちを (
ス トーンア- ト)などからなっている。
前者のプログラム開発でメンバーと.
して加わ?た教師がクラスの生徒を引率
?1例について紹介 しよう.
して野外で実践 した。こa
野外実習の行程時片道、林道 と山道あわせて約 1kmで、スギ林、二次林、
渓流がある。途中、アリジゴクの観察、つる植物の観察、スギ林と二次林q
)
つ
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2章
こどもの自然体験学習
くりの観察、最後のポイン トである渓流では水生昆虫を採集 し、運び込んだ双
眼実体顕微鏡で観察するプログラムで実施 した。
このプログラムでは、子供たちが熱中す るのは何 といって も水生昆虫の採
集 ・観察であった。なかで も、ヘ ビトンボの幼虫 (
マゴタロウムシ)の発見に
は大変な驚きようであった。また、双眼実体顕微鏡で動 く鯉などの観察は子供
たちにとっては大変貴重な感動体験であったようであった。子供たちの現場で
のスケッチも課 してあったが足の数、鯉などきちんと観察 してスケッチができ
ており感心 した。その体験は生 きた理科学習となって学校教育で発展 したに違
いない。
授業後の反省で、教師は①生徒は動 くものにとくに興味をもつようだ②水生
昆虫の観察にあれほど喜ぶ ものと思わなかった③状況がそろえば、子供の興味
はどんどん引き出せる④予想以上の反応だった、と述べている1)。
このようなことか ら、野外での自然観察に熱中できる条件について、①器具な
どが一人ひとりにゆきわたる②時間があって自由にできる③繰 り返 し試せる④
新 しい発見がある⑤楽 しい ・面白いということをあげている。
また、青少年の科学離れの対応する事業 としての 「
科学のとびら」にも参加
する機会をえた。植物編、昆虫編、火山 ・地震編、電気 と磁石編があり、植物
編を担当 した。昼間は①木の高さのはかりかた②ネジキなどの樹木に自由に名
前を付けよう③スギとヒノキのちがい④自然林 と人口林のちがい⑤地図の等高
線のみかたの内容で実施 した。
夜には、まず、林の中の腐植土の土壌中の微小な生物の双眼実体顕微鏡で観
察 した。生物の多さと面白い形にはびっくりしていたようだ。最後に、植物に
関するクイズで ビンゴゲームを楽 しんだ。
このイベ ン トで、子供たちに参加す る前 と後に植物や昆虫などついて、イ
メージマップを書いてもらった。その結果は図 1、 2の通 りである2)。 前後で
比較 してみると、明 らかに子供たちのイメージがふ くらんでいることがわか
る。 野外実習で体験 したことや学んだことがふ くらんで出て くることは、子供
たちが植物や昆虫に興味を抱 き、知識を獲得 していったと言えるのではないだ
ろうか。
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初
図 1 植物編における N君 (
小 6)
のイメージアップ
図 2 昆虫と自然編における T君
(
小 5) のイメージアップ
8節 野外体験学習の実施にはいろいろな仕掛けが必要
仕掛けは、対象学年、フィール ド、時期によってもことなるが、いろいろ工
・たとえば、
夫 してみよう. それには、まず 自然観察用の器具が必要である.
1
0
0
gまではかれる簡単なはか り)、小型
ルーペ、メジャー、
1ポス トスケール (
の懐中電灯、鏡 (
金属板で出来た もの もある)
、ナイフなどは常時必要であ
る。
フイ-ル ドは、事前に踏査 してどのような内容の観察ができるか、どのよう
な仕掛けができるか確かめてお くことが必要である。 しか し、ネズ ミの死骸な
ど予期 しなかった出会いや子供の発見があったりする。そのときは、チャンス
とばか り臨機応変に対応することも必要である。
自然観察や野外体験学習の仕方や仕掛けについては、下記を参考にされると
1
993)
② 日本自然保
よい.(
D植原彰 『
学校で気楽に楽 しく自然観察』地入館 (
護協会編集 ・監修 『
小さな自然かんさつ』 (こどもと楽 しむ身近な自然)平凡
-2
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こどもの自然体験学習
社 (
1
9
94
)③柴田敏隆 『
わんぱ く原 っぱ- 自然 とあ ・そ ・ぼ』小学館 (
1
98
4
)
④久居宣夫 『自然観察のガイ ド』朝倉書店 (
1
9
87
)⑤京都理科サークル編 『自
然のなかの遊び』創元社 (
1
9
8
0)⑥ 日本 自然保護協会編集 『自然かん さつ入
門』(
1
98
0
)⑦ 日本 自然保護協会編集 『
草はらの自然かんさつ』(
1
9
77
)⑧ 日本
1
97
8
)⑨ 日本 自然保護協会編集 『
雑
自然保護協会編集 『
川の自然かんさつ』 (
1
97
9
) ⑲ 日本 自然保護協会編集 『
いその 自然観察』
木林の 自然かん さつ』 (
(
1
9
81
)
参考文献
(1)
『
発見 !発見 !こちらは森の調査隊一 自然の家でできる理科学習-』
国立諌早少年 自然の家 (
1
9
9
7)
(2)
『
科学のとび ら』報告書、国立諌早少年 自然の家 (
1
99
5
)
ー
5
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