(別表)次世代自動車

(別表)成長産業への参入促進戦略(分野別)
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次世代自動車
最先端の高機能素材の活用など次世代自動車に関連する新商品、新技術開発により、自動車産
業での競争力強化、新規参入を促進する
1 背景
■ 自動車産業の市場動向
・国内の自動車市場(新車販売台数)は、少子高齢化、都市部や若者における車離れ等の要因に
より、1990 年の 778 万台をピークに、2013 年では、537 万台まで減少。
(万台)
12,000
表1 次世代自動車市場予測(富士経済研究所 2013)
10,000
その他
8,000
中国
6,000
日本
世界
現況
(2011)
将来予測
(2030)
現況
(2011)
将来予測
(2030)
109万台
193万台
173万台
1,364万台
インド
4,000
北米
2,000
日本
0
00 05 10 15 20
表2 次世代自動車の普及割合予測(経産省 次世代自動車戦略2010)
2012年
2020年
図1 世界自動車販売予測(2010 みずほ銀行)
現況
政府目標
HV
19.6%
EV/PHV
0.0
FCV
0.0
20~30%
15~20%
~1%
世界予測
17~30%
3~9%
-
・ 国内市場は、今後も中長期的に減少が見込まれている一方、中国、インドなど新興国を中心
として世界市場は、今後も堅調な市場拡大が見込まれる(図1)
。
・ 世界市場については、環境や安全性能などに優れた先進国向けの高機能車と新興国向けの低価
格車に大別される。
・ ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド(PHV)
、
電気自動車(EV)
、燃料電池車(FCV)など次世代自動車の市場動向をみると、国内および世
界市場の 2030 年における予測は表1のとおりである。また、次世代自動車の普及予測は表2
のとおりである。従来の内燃機関車に替わり、HV や PHV が大きく市場拡大すると見込まれ
るものの、EV や FCV については、インフラ整備がネックとなり、本格的な普及拡大は遅れる
見込みである。
■ 自動車産業の技術動向
・近年の自動車における技術開発の大きな方向性は、極論すると、自動車1台における「快適性」、
「安全性」
、
「環境性」の向上を目指すものではなく、社会全体としてそれを向上するための技
術開発に向かっている。次世代自動車の究極として、環境性能においては、EV、FCV が挙げ
られ、安全性能については、情報処理技術(ICT)を駆使した完全な自動運転システムが挙げ
られる。あるべき社会の将来像に向かい、次世代自動車の技術開発が進むと予想されることか
ら、長期的には、これら技術への対応について、世界的に競争が激化すると思われる。しかし
ながら、短中期的には、従来の内燃機関車をはじめ、過渡期の HV、PHV における競争力強化
(技術対応)が、先に示した市場普及予測からも最も重要な技術開発のボリュームゾーンと考
えられる。
・
「環境性能面」における技術開発については、HV、PHV においては、航続距離や加速性能など
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(別表)成長産業への参入促進戦略(分野別)
車両の運動性能を決定付ける「モーター」や「バッテリー」などの電気系統部品の技術開発が
不可欠である。また、従来の内燃機関車においても、ますます厳しくなる燃費基準への対応な
どから、
「車両軽量化」の重要性がより一層高まっており、フレームや外板など構造部材を中
心として、今後は、次世代自動車に限らず、全ての自動車で軽量化技術への対応がより強く求
められていく。さらに、日本がその対応に遅れる中、ドイツなど欧州メーカーで既に幅広い車
種に採用されている「加給ダウンサイジング技術」や「デュアルクラッチトランスミッション
(DCT)」などは、燃費向上技術としても、HV など複雑なシステムを用いず低コストで大き
な効果があるため、これら技術の積極的な普及展開が見込まれる。
・
「安全性能面」における技術開発については、現在一部の車種において、
「ステレオカメラ」や
「ミリ波レーダー」などセンシング技術を用いた追突回避システムが実用化されているが、将
来的には、これらセンシング技術の高度化とともに、GPS やインターネットなどを駆使して、
ある程度車両間でコミュニケーションを取りながら安全性能を高めるシステムなどへの対応
が重要になってくると考えられる(充電スタンドなどインフラの効率的な運用など、スマート
コミュニティへの対応も重要となると考えられる)
。
・また、車両の低コスト化、軽量化、生産の柔軟性を実現するため、トヨタ自動車㈱や日産自動
車㈱、フォルクスワーゲン(VW)などで展開が加速されている「メガプラットフォーム戦略
(小型車と普通車などセグメントを越えた車体など基本部分の共用化)」の拡大から、部品・
製品のモジュール化に対応した技術開発がより強く求められてくるものと考えられる。
衝突回避センシング
電動パワートレイン(モーター、バッテリー)
車両軽量化
モジュール化
加給ダウンサイジング
DCT
2 現状と課題
■ 本県における自動車関連産業の現状
・本県は、工作機械関連はじめ、金属素材、金属部品、プラスチック成形部品、金型、電気・電
子部品、繊維製品など、自動車産業を支える優良な部品メーカーが、幅広い分野で集積してい
る。特にアルミニウム関連製品においては、素材から加工製品まで、競争力のある産業クラス
ターが形成され、地域の強みとなっている(鋳造、押出、鍛造、接合、切削、熱処理、表面処
理等のコア技術の連携体制が構築されている)。
・一方で、本県は、完成車メーカーが集積し世界有数の自動車産業地域となっている東海地域に
対し、距離的なディスアドバンテージもあることから、大手部品サプライヤーの数はそれほど
多くない。
・また、本県から完成車メーカーに供給している部品・製品の多くは、まとまった機能を有した
ユニット製品ではく、組立てを要する素形材である(バンパーなど外装部品やエンジン部品、
トランスミッション部品など)
。さらに、これら部品・製品の多くは、従来の内燃機関車向け
であり、次世代自動車が最終的に、EV や FCV など内燃機関を必要としないものになった際に
は、その構造、機能そのものが存在しなくなるものも多い。
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(別表)成長産業への参入促進戦略(分野別)
・本県では、H23 年度より「とやま次世代自動車ネットワーク」を組成し、県内の自動車関連産
への参入・技術高度化に意欲的な企業を対象に、次世代自動車に関する技術力向上の場を提供
することを目的として活動してきた(自動車産業に既に参入している企業においては、より一
層競争力を高め、異分野異業種の企業においては、自社の有するコア技術を次世代自動車へ応
用展開できるようなきっかけを提供)
。
・具体的には、大手完成車メーカーなどから講師を招へいし最先端技術や市場の動向を情報提供
する「技術セミナー」
、HV の分解や次世代自動車に応用できる先端加工技術にかかる「実習セ
ミナー」、大手自動車メーカーの工場見学を兼ねた「技術意見交換会」を開催している(これ
までの参加者は、延べ 752 名)
。
・また、新たな成長産業の柱として期待される分野においてものづくり技術を高度化し、国等大
型プロジェクトへの挑戦を支援する研究開発公募事業「新商品・新事業創出公募事業」におい
ても、
「次世代自動車枠」を平成 23 年度より設け、産学官の研究開発を推進してきた。
・このような取り組みなどから、本県においては、バッテリーフレームや高性能電池材料、エン
ジン部品成形用金型、マグネシウム合金素材、マグネシウム鍛造ホイール、炭素繊維強化樹脂
(CFRP)などの優れた技術が産出されている。
バッテリーフレーム
エンジン部品成形金型
高性能電池材料
マグネシウム合金
マグネシウムホイール
CFRPおよび加工技術
図3 本県企業の次世代自動車技術の例
■ 本県の課題
・前述の自動車産業における市場、技術動向および本県における現状から、以下の課題を挙げる。
〇産業として素形材の比率が高く、付加価値(競争力)を高める必要がある。
〇素形材産業に成熟感。幅広く展開できるイノベーティブな材料の創出・応用展開が必要。
〇異業種他社との連携を積極的に行い、新分野への挑戦を図る必要がある。
〇技術提案力、技術発進力を高める必要がある。
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推進方向
○EV、ハイブリッド、FCV 等の電子部品や部品産業へ参入
《目指す分野》
・高機能素材を活用した車両運動性能を高める高性能構造部材
(マグネシウム合金を用いた軽量・高強度な外板パネル、炭素繊維複合樹脂(CFRP)を
用いた軽量バンパーなど)
・3Dプリンターやナノテクなどを活用した高付加価値部品
(充電時間が短く、容量の大きな高性能バッテリー、複雑形状に対応した低
金型、超小型加速度センサ
コスト鋳造
など)
・次世代センサ技術を活用した高度な安全運転システム
(高度カメラ技術を用いた衝突回避システム、高度な情報通信技術(ICT)を用いた自動運
転システムなど)
4
振興施策
■
ネットワーク活動を通じた自動車産業分野における技術力強化、新規参入にむけた総合的支援
ネットワーク活動を通じた最先端技術、市場等の情報提供のほか、大手自動車関連メーカー訪
問による技術意見交換の実施、シーズ・ニーズマッチングの支援。
■ 高機能素形材における産業クラスターの形成支援
マグネシウム合金やCFRP等の次世代材料に対応した高機能素形材の産業クラスターの形
成支援(研究会等を通じ連携促進)
。
■ 高機能素材や3Dプリンターなどを活用した新たな機能性部品・製品創出支援
ものづくり研究開発センターの最先端ものづくり技術に対応する拠点機能の強化
■ ものづくり研究開発センターの最先端設備を活用した産学官共同研究の推進
5
振興施策にかかるロードマップ
H26
モデル企業における取組み
H27
研
究
の
推
進
H28
産
学
官
共
同
H29
試
作
品
提
案
市
場
参
入
高機能素材に係る
新たな産業クラスターの形成
(H35までに)
新たな産業クラスターの創出
■ネットワーク活動を通じた自動車産業分野における
技術力強化、新規参入に向けた総合的支援
(とやま次世代自動車ネットワーク)
H30
技術セミナーによる次世代自動車市場、技術動向の情報提供
実習セミナーによる先端加工技術等の紹介
大手自動車関連メーカー工場訪問を通じた技術交流
コーディネータによる県内情報の収集、マッチング支援(技術開発、販路開拓)
■高機能素材における産業クラスターの形成支援
研究会による先導的研究開発、産学官グループの形成
県および国の競争的研究資金の活用
■高機能素材や3Dプリンターなどを活用した
新たな機能性部品、製品創出への取組み
最先端ものづくり技術に対応する拠点機能の強化
(高機能素材、デジタルものづくりへの対応力強化)
最先端ものづくり技術の導入による基盤技術の高度化
(研究会開催、研究開発推進など)
■ものづくり研究開発センター拠点とした
産学官共同研究の推進
県および国の競争的研究資金の活用(再掲)
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