IE 実践教育のツールを専用キットから多目的キット(レゴブロック)に

ISSN 2186-5647
−日本大学生産工学部第47回学術講演会講演概要(2014-12-6)−
5-52
IE 実 践 教 育 の ツ ー ルを 専 用 キ ット か ら 多目的 キ ッ ト( レゴ ブ ロ ック )に 変 え る狙 い
日大生産工
1.は じ め に
酒井 哲也
○元日大生産工
村田 光一
大切な要素となっている。従来と今回
IE( イ ン ダ ス ト リ ア ル ・エ ン ジ ニ ア リ ン グ )
の実習では学生の取組む姿勢がつぎの
は 生 産 現 場 の 作 業 を 管 理 ・改 善 (カ イ ゼ ン )
ように相違する。
す る 手 法( 学 問 )で あ る 。F.W.テ イ ラ ー
1)従 来 : 課 題 の 比 較 対 照 、優 劣 ・効 果 原
が 科 学 的 管 理 の 手 法 1) を 考 案 ・ 実 践 し
因 を 追 究 す る 、分 析 的 取 組 み … 差 異
て 以 来 、IE は 近 代 工 業 の 発 達 と 効 率 的
の原因を明らかにする課題消化型の
な管理に貢献してきた。
“先割れスプー
実習である。じっくり考えて効果を
ン”はスプーンとフォークを食事中に
分 析 す る 経 験 を 経 て 、改 善 の 要 点 を
持ち替える手間を省いている(動作時
学ぶ“個の学習”である。実習は専
間 の 短 縮 、作 業 負 荷 の 軽 減 )。 こ れ を 定
門キットを用いた作業で、専門的な
量 的 に 評 価 す る の が IE で あ る 。
ス ト ッ プ ウ ォ ッ チ( 10進 法 )に よ っ て
従 来 、我 々 は IE を 理 解 さ せ る 実 践 教
時間観測する。
育( 実 習 )の ツ ー ル に 専 用 キ ッ ト を 使 っ
2) 今 回 : 課 題 を も と に 改 善 し て ゆ く 、
てきた。比較要件を与えて学生個々が
挑戦的取組み…知恵を出し合って改
課題を消化する体験学習である。しか
善効果を導く問題解決型の実習であ
し、近時教育現場でコミュニケーショ
る。改善策を話し合いながら効果を
ン能力を向上させることが関心事とな
求 め る 経 験 を 経 て 、改 善 の 進 め 方 を
り 、こ れ に 呼 応 し た 教 育 の 態 勢 づ く り
学ぶ“輪の学習”である。実習は多
が急務となっている。
目 的 キ ッ ト ( レ ゴ ブ ロ ッ ク 2) ) を 用 い
そ こ で 本 実 習 で は 、多 目 的 キ ッ ト( レ
た 作 業 で 、一 般 的 な ス ト ッ プ ウ ォ ッ
チ ( 60進 法 ) に よ っ て 時 間 観 測 す る 。
ゴ ブ ロ ッ ク 2) ) を 用 い 、達 成 目 標 を 与 え
て学生のグループが問題解決の道を探
る 過 程 で IE を 理 解 し て ゆ く 教 育 に 変
3.具 体 的 な ツ ー ル
えた。レゴブロックは幼少時の体験と
1) 専 用 キ ッ ト … 専 門 実 践 教 育 の た め
と も に 受 入 れ ら れ や す く 、違 和 感 な く
に考案された卓上用作業キットであ
扱える。コミュニケーション能力の向
る 。実 習 で は 工 業 製 品 の 組 立 作 業( 単
上 を 実 践 す る の に 、共 同 で 取 組 み や す
独 作 業 )を 想 定 し 、改 善 前 と 改 善 後 の
いツールとして相応しいキットである。
作業動作や作業時間を比較できるキ
ッ ト に よ っ て IE の 手 法 を 理 解 さ せ
2.実 習 に 取 組 む 姿 勢
る。ボルトワッシャ組立作業やピン
実 習 は グ ル ー プ 実 習 で あ り 、作 業 者
ボード組立作業などのキットが知ら
と 観 測 者 で 構 成 す る 。実 習 で は 、学 生 の
れている。
観 測 体 験 が 主 で あ る が 、作 業 者 を 模 擬
2) 多 目 的 キ ッ ト ( レ ゴ ブ ロ ッ ク ) … レ
体 験 す る こ と は IE を 理 解 す る う え で
ゴブロックは色々なものを組立てる
Intention of Change of the Education Tools to Multipurpose Kit(LEGO block)
from Special Kit for Industrial Engineering Practice Education.
Tetsuya SAKAI and Koichi MURATA
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ことができるキットである。実習で
表.アンケート集計結果(一部抜粋)
7.グループ実習では何が大切だと思いますか。(複数回答可)
は ミ ニ カ ー ( 写 真 1) を 模 し た 組 立 作 7.グループ実習では何が大切だと思いますか。(複数回答可)
②意見交換(話し合い)
②意見交換(話し合い)
③協調性
③協調性
71%
71%
62%
62%
⑥状況の理解・判断
⑥状況の理解・判断
④役割の分担④役割の分担
62%
62%
48%
48%
⑦実習内容の分析・整理
⑦実習内容の分析・整理
①リーダーシップ
①リーダーシップ
33%
33%
19%
19%
19%
19%
14%
14%
5%
5%
5%
5%
11.実習を終えてどのように思いましたか。(複数回答可)
11.実習を終えてどのように思いましたか。(複数回答可)
④面白かった④面白かった
28%
28%
業を分業によるライン生産(連携作
業 ; 写 真 2) と し て 扱 い 、改 善 に よ っ
て 出 来 高 や ラ イ ン 編 成 効 率 3) の 向 上
を 図 る IEr( エ ン ジ ニ ア ) の 取 組 み 方
を理解させる。
⑨集中力
⑨集中力
⑧臨機応変 ⑧臨機応変
⑤知識
⑤知識
⑩その他(静かにしてほしい)
⑩その他(静かにしてほしい)
写 真 1. ミ ニ カ ー ( レ ゴ ブ ロ ッ ク )
②満足できた②満足できた
①充実できた①充実できた
24%
24%
19%
19%
⑨二度とやりたくない
⑨二度とやりたくない
⑤つまらなかった
⑤つまらなかった
19%
19%
9%
9%
⑥やることが多すぎた
⑥やることが多すぎた
③物足りなかった
③物足りなかった
5%
5%
0%
0%
⑦何が何だか分からなかった
⑦何が何だか分からなかった
⑧今後も続けたい
⑧今後も続けたい
0%
0%
0%
0%
⑩その他( )
⑩その他( )
5%
5%
5.考 察
IE 実 践 教 育 の ツ ー ル を 従 来 の 専 用
キットから多目的キット(レゴブロッ
写 真 2.ミ ニ カ ー の 組 立 て( ラ イ ン 生 産 )
ク ) に 変 え た 。 こ れ に よ り 、 IE実 践 教
育とコミュニケーション能力向上を意
4.実 習 の 成 果 (例 )
図した実習は一応の成果を上げたと考
ラ イ ン 生 産 の 改 善 を 例 示 す る ( 図 )。
える。教育は日々進化し、新旧比較を
改善の段階や効果はグループによって
定量的に扱うことは難しい。しかし、
異 な る が 、学 生 へ の ア ン ケ ー ト( 表;集
コミュニケーション能力の向上に有効
計結果の一部)から成果が窺える。ま
なツールを模索して実践することは大
た 、成 果 発 表 ・討 議 を 行 い 、互 い の 知 見
切であると考える。
を共有したことは“コミュニケーショ
ン ”を 体 感 す る の に 役 立 っ た と い え る 。
100
1)1911年 、「 科 学 的 管 理 の 原 理 」出 版( 生
90
編成効率
80
(
出 120
来
高
100
台
/
時 80
・
ピ 60
ッ
チ 40
タ
イ
ム 20
秒
0
注釈
出来高
産現場に近代化をもたらし、マネジ
70
)
(
編
60 成
50 功
率
40
%
30
2) 9387 レ ゴ ® バ ラ エ テ ィ 車 輪 セ ッ ト
)
ピッチタイム
メントの概念を確立)
( ピ ー ス 数 : 360、 「車 」を 組 立 る バ ラ
20
(
10
)
0
1
2
3
現状から改善(3段階)まで
4
エティに富んだパーツセット)
3)ラ イ ン 編 成 効 率 は 工 程 間 の 作 業 時 間
のバランスを評価する指標である。
図2.ライン改編(現状から3段階)の効果比較
図 .生
産 ラ イ ン 改 善 の 成 果 (例 )
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