詳細 - 日本心理学会

日心第71回大会 (2007)
Attention Modulation Hypothesis の検証
―注意分割ブロック内計画による検討―
○大塚幸生・川口 潤
(名古屋大学大学院環境学研究科)
Key words: 意味活性化 注意分割 単語認知
純主効果の検定の結果,統制条件と低負荷条件における意味
的関連性の効果が有意であったが(それぞれ,F(1, 23)=28.40,
p<.01,F(1, 23)=15.81,p<.01),高負荷条件における意味的
関連性の効果は有意ではなかった(F<1)。続いて,各注意分
割条件のプライミング量を比較した(Figure 1)。統制条件の
プライミング量と低負荷条件・高負荷条件のプライミング量
の間に,それぞれ有意差が確認された(それぞれ,t(23)=2.30,
p<.05,t(23)=4.05,p<.01)。さらに,低負荷条件と高負荷条
件の間でプライミング量に有意差が見られた(t(23)=2.76,p
<.05)。
音の判断課題の誤反応率について分散分析を行った結果,
,注
注意負荷の主効果が有意であり(F(1, 23)=15.40,p<.01)
意分割の操作が適切に行われていたことが示された。
考 察
反応時間の結果より,注意分割条件をブロック内でランダ
ムに提示して参加者の反応バイアスの可能性を排除しても,
統制条件,低負荷条件,高負荷条件のそれぞれの間でプライ
ミング量に有意差が確認された。これらは大塚・川口(2007)
を追試する結果であり,Smith et al.(2001)が主張する Attention
Modulation を支持していると考えられる。本研究では,先行
研究のプライム課題で用いられたような文字レベルの処理を
行わせる課題ではなかった。従って,Smith et al.(2001)が
主張する Attention Modulation Hypothesis は文字レベルの処理
に限定されないように修正される必要があると考えられる。
今後の研究課題として,本実験ではプライム単語に対して
文字レベルの処理を行わせていない。そのため,単語認知モ
デルで言われる文字レベル,語彙レベル,意味レベルのどの
段階で聴覚的な注意分割が意味プライミング量を調節してい
るのかを厳密に検討することが必要であると考えられる。こ
の点を調べることで,意味活性化が注意資源を必要とするか
否かを検討することが可能になるだろう。
70
The magnitude of priming
(in milliseconds)
目 的
単語を提示する際に文字レベルのプライム課題を行うと,
単語の意味活性化の程度が影響を受けることが知られている
(Smith, Bentin, & Spalek, 2001)。大塚・川口(2007)では,
単にプライムを見るという視覚的処理と注意分割課題の処理
のモダリティを分離するために,聴覚的な注意分割課題を使
用し,プライム課題に使用される注意量が操作された。その
結果,プライム単語に向けることができる注意量によって,
プライミング量に違いが見られた。しかしながら,大塚・川
口(2007)では注意負荷条件がブロック間で提示されたため
に,参加者は高負荷条件で音の判断課題の成績を高めようと
して,プライム単語を無視していた可能性が残されたままと
なった。
本研究では,大塚・川口(2007)で使用された注意分割課
題の注意負荷条件がブロック内でランダムに提示されるよう
に設定し,参加者の反応バイアスの可能性を排除して追試実
験を行った。単語の意味活性化が,単語に向けられる注意量
によって影響されると仮定すると,注意分割の条件によって
プライミング量が異なることが予測される。一方で,単語の
意味活性化は単語に向けられる注意量によって影響を受けな
い場合には,注意分割の条件間でプライミング量に差は見ら
れないと予測される。
方 法
実験参加者 大学生 24 名が実験に参加した。
実験計画 注意分割(統制・低負荷・高負荷)×意味的関
連性(関連・無関連)の参加者内要因であった。
刺激 単語刺激として,関連のある名詞の単語―単語対
144 組と無関連の名詞の単語―単語対 144 組を作成した。さ
らに,単語―非単語対 144 組を作成した。注意分割課題で使
用される音刺激は,以下の 3 つの刺激セットであった。刺激
セット 1:基準音 440.00 Hz に対して,低負荷条件では 174.61
Hz と 1,046.50 Hz,高負荷条件では 349.23 Hz と 523.25 Hz。
刺激セット 2:基準音 587.33 Hz に対して,低負荷条件では
246.94 Hz と 1,396.90 Hz,高負荷条件では 493.88 Hz と 698.46
Hz。刺激セット 3:基準音 783.99 Hz に対して,低負荷条件
では 329.63 Hz と 1,975.50 Hz,高負荷条件では 659.26 Hz と
987.77 Hz。
手続き 実験は 288 試行で構成され,3 ブロックに分割さ
れた。注意分割条件はブロック内でランダムに提示された。
初めに,注視点と基準音が同時に提示された。注視点の提示
時間は 1,000 ms,基準音の提示時間は 200 ms であった。500 ms
のブランクが挿入された後に,プライム刺激とプローブ音が
同時に提示された。両刺激の提示時間は 200 ms であった。参
加者はプローブ音が基準音よりも高いか低いかを判断するが,
この時点ではキー押しを行わなかった。ISI は 50 ms であり,
その後にターゲット刺激が提示された。ここで,参加者はタ
ーゲット刺激に対して語彙判断課題を行い,キー押しで反応
した。1,000 ms のブランクの後に,画面中央に?マークが提
示され,最初に行った音の高さの判断をキー押しで反応した。
結 果
語彙判断課題の反応時間について 2 要因分散分析を行った
。単
結果,交互作用が有意であった(F(2, 46)=10.61,p<.01)
60
50
40
30
20
10
0
Control
Low
High
Divided-attention conditions
Figure 1. The magnitude of priming as a function of three
divided-attention conditions.
引用文献
大塚幸生・川口 潤(2007).日本認知心理学会第 5 回大会発
表論文集,138.
Smith, M. C., Bentin, S., & Spalek, T. M. (2001). J.E.P.: L., M.,
and C., 27, 1289-1298.
(OTSUKA Sachio, KAWAGUCHI Jun)