宇宙における元素合成 IABS-IBARAKI 1 元素の周期律表 ●原子番号順 (同位体は同じ場所に) ●白字は人工元素[T1/2(98Tc)=420万年、T1/2(145Pm)=17.7年] 2 β+崩壊 β-崩壊 3 核図表 重い核はどこ まで存在する のか? 陽子数より中性 子数がやや多い 核が安定なのは なぜ? 安定な原子核が 狭い範囲にしか 存在しない理由 は? 陽 子 数 中性子数 宇宙でさまざまな原子核(元素)は どのようにつくられたのか? 4 星の誕生から死、そして再生 5 太陽系における核種存在量 H He O C Ne Si 宇宙に存在する物 質の99.9%はHとHe (原子数比) Fe Ge Li Be Sr Xe Ba Pt Pb 6 元素の起源についての2つの学説 1.宇宙起源説 膨張宇宙初期(ビッグバン)の高温・高密度状態で、数分の間に 元素が作られたとする説。このためには、銀河が形成される原始 ガスはすでにある程度の重元素(炭素以上)を含んでいなければ ならない。 (ジョージ・ガモフのビッグバン宇宙論がめざした考え方) 2. 星起源説 星の中で起こった核反応によるエネルギー生成の燃えかす として、数億年もの年月をかけて中心部に蓄積された元素と、 爆発時の1分にも満たない短時間に作られる元素が、超新星 爆発で星間空間に放出される。したがって、後世代の星になる ほどヘリウムや重元素の含有率が大きくなると考えられる。 7 (1) ビッグバンによる元素合成 膨張宇宙が始まった瞬間の大爆発時にまず 中性子がβ-崩壊して陽子Hができ、それから 次の過程を経て、重水素DとヘリウムHeが順次 合成された。 H + n→D β- D + n →T→3He 3He + 3He→ 4He + 2H この段階で温度が低くなりすぎたため、それ以上の 元素は形成されなかった。 8 (2) 恒星内部での元素合成 ●内部温度107K(1000万度) → 水素燃焼(融合)反応開始 (太陽: 毎秒約6000億kgの水素が燃焼) ●内部温度1億度 → 内部の燃焼によって外部が膨張し (赤色巨星)、高温・高密度の中心部では Heが融合反応をはじめ、Be、C、Oが つくられる。 (生命をつくる基本となる材料がそろう) 9 人体をつくっている元素 酸素(16O) 61%(重量) 炭素(12C) 23% 水素(1H) 10% 窒素(14N) 2.6% カルシウム(40Ca等) ......... 1.4% ウラン(238U) 生物は主に 軽い元素で できている 重い元素も 微量ながら 重要 0.000001% cf. 「僕らは星のかけら」(マーカス・チャウン、無名舎刊) 10 ●太陽の4倍以上の質量をもつ星の場合: He燃焼が進むと星の中心部は再び収縮して 109K(10億度)にまで上昇 →CとOの燃焼が始まりネオンNeが合成 ●以上の過程がくりかえされて、Na、Mg、Si、S などがつくられる。 (地上の環境をつくっている物質がほぼそろう) H燃焼→He燃焼→C, O燃焼→Ne燃焼 →Si, Mg燃焼→Fe 11 s-過程 (slow process) ●星の中の原子核は、中心部でおこる核反応で 生成された強力な中性子の流れにさらされる →中性子捕獲により重い原子核に変わる ●中性子を必要以上にかかえこんで不安定に なった核はβ-崩壊によってバランスを回復する →原子核の中の陽子の数が増えて落ちつく ので、また中性子を食うようになる。 ●このくり返しによって順次、原子番号が大きな 原子核がつくられる。 この中性子捕獲過程はβ-崩壊の時間に 比べてゆるやかに起こる 12 N=82(魔法数) 147 62Sm 148 149 147 61Pm 60Nd 142 59Pr 141 143 144 145 146 中性子捕獲 58C e 140 β-崩壊 13 進化が進んだ星はタマネギ構造をもつ しかし、s過程ではウランまで 到達できない ●原子番号が83(Bi)を越える と安定な原子核は存在しない。 ●最高でBiまでは合成されるが、210Po(Z=84)の α崩壊の半減期が短い(138日)ため、また206Pb (Z=82)まで押し戻されてしまう Th、Uの合成を説明できない 14 15 84Po-210 s-process 安定核が存在 しない領域 16 結合エネルギー曲線と核反応エネルギー 核分裂=発熱反応 弱く結合した原子核から 強く結合した原子核へ移行 吸熱反応 質量の一部Δmが失われる E = Δ mc2 の エネルギーが発生 核融合 鉄より重い元素の合成 反応は吸熱反応 星の中で鉄以上の元素が合 成され始めると星は冷える 17 r-過程による重元素の合成 進化が進んだ星= タマネギ構造 コア部分の鉄の分解 →吸熱反応→重力崩壊 中性子、ニュートリノの大量生成 →鉄などに多重吸収→重元素合成 ウラン、トリウムなどの重い原子核 =超新星の爆発エネルギーの缶詰 18 超新星SN1987A 超新星の残骸と 中性子星 中性子星の直径~10km (大阪環状線の直径) 小柴昌俊氏はこの爆発時のニュートリノを観測 19 太陽系における核種存在量 H ビッグバン元素合成 s-process (Biまで) He O C Ne Si r-process (Uまで) Fe r-process s-process Ge Li Be Sr Xe Ba Pt Pb 20 元素合成: 軽い元素から重い元素へ 21 まとめ : 宇宙での元素合成 ・ビッグバンの際に: 10分間にH, Heが形成 (どの星でもH/He原子数比≒12) ・鉄までの元素: 星の内部で合成 (s過程) ・鉄以上の重い元素: ●超新星の爆発で生まれた多量の中性子が 鉄などの元素に吸収されて合成(r過程) ●宇宙に飛散した元素が再び星を形成し、 その中で中性子吸収により合成(s過程) 星は元素を創り出す原子炉 22 23 可視光線 24
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