公立学校共済組合 中 国 中 央 病 院 教えてDr. !! 結 核 に つ い て 内科医長 栗本悦子 結核は,世界的には年間 900 万人が発症し,300 万人が死亡している疾患です。結 核罹患者数,死亡率は毎年減少しています。日本の現況としては,戦後の混乱が続く 1950 年代は死亡者数が年間 10 万人を超えていました。その後,死亡者数は着実に減 少してきました。1997 年,新登録患者数が前年に比べわずかに上昇したことから厚生 省は 1999 年結核緊急事態宣言を発しました。その後はまずまずの減少を続けています。 しかし,世界的に見て日本は依然として中蔓延国です。先進国の中では日本の結核罹患 率は依然高く,カナダ,米国の4倍です。一つに 20,30 歳代での減少速度が鈍いこと があります。最近,若い芸能人でも,結核を発病し治療を受け復帰されている話題があ りましたが,若くて健康そうな人でも結核になる可能性があるということです。また, 高齢者結核の増加があります。既感染率が高いことや,糖尿病,悪性腫瘍,認知症等の 合併症が多いこと等が原因として考えられます。医療機関受診の遅れ,診断の遅れ,結 核の重症化,軽症でも全身状態が悪化しやすい等のことが考えられます。 結核は結核菌が体に入ることで生じる感染症です。肺以外にも,腎臓,リンパ節,骨, 脳などに感染します。結核菌は非常に小さく,長時間空中を浮遊し,空気の流れにより 広く伝播されます。従って,発病して排菌している人は隔離が必要となります。ところで, 感染しても発病するのは5∼ 10%ですので,感染すなわち発病ではありません。発病は, 感染後2年以内が最も高率で,その後発病する率は低くなってきますが,数十年後に発 病する場合もあります。肺結核の主な症状としては,咳,痰,発熱,疲労倦怠感,体重 減少等がありますが,特に症状がない場合もあります。一時的に症状が改善したように 見えながら悪化するため本人も気がつかないうちに周囲に感染を広げてしまうこともあ ります。咳,痰が2週間以上続く場合は,診察を受けることが必要です。 結核の最も確実な診断は,痰や胃液,気管支洗浄液などから結核菌を検出することで す。従来の方法では,たくさんの結核菌がいないと検出できないことや,時間がかかる という欠点がありましたが,現在では,微量の結核菌の遺伝子を増幅して検出する方法 によって数日間で非常に高感度に結核菌を検出できるようになりました。また,感染し ているかどうかの検査も,従来のツベルクリン反応検査では,BCG による反応と結核 菌感染の鑑別ができないという欠点がありましたが,近年は,クォンティフェロン検査 によって,鑑別可能となりました。 結核の治療は,最初の2週間から2か月程度は入院が必要です。抗結核薬の内服を開 始し,副作用がなく確実に内服でき,痰からの排菌がなくなれば,退院可能です。退院 後も全過程で約6か月∼1年程度の服薬の継続が必要ですが,治療をきちんと行えば, 治る疾患です。服薬が不規則であったり,途中で中断した場合は,薬が効かない耐性菌 となることがあり,治療困難になります。治療が効かず,結核病棟から退院できなくな る可能性があります。 結核は,疑って検査を受け,確実に治療することが大事です。 17
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