1 V. メモリ 一般に計算機は、演算を行う中央処理ユニット(CPU)と情報を記憶するメモリ部から成る。 CPUはメモリから随時データを出し入れして演算処理を進める。本章はメモリについて。 基本構成 1ビット情報を記憶するメモリセルが、ワード線とビット線によりマトリックス状に接続。 これにより、アドレスAi にNビットのデータを収容する。 ROM(Read Only Memory) 書き込まれてあるデータを読み出すのみのメモリ。文字フォント情報や算術演算プログラムなど。 左図のNOR型ROMでは、 アドレスAには「1010」、アドレスBには「1101」 アドレスCには「1001」、アドレスDには「0100」 が格納されている。 VDD nMOS A ● B ● C ● ● ● ● ● ● ● ● ● 例えば、アドレスAのデータを読み出すには、 A = high、 B = C = D = low、とする。 ワード線Aに接続されている nMOS がオン ● ● ● そのnMOSのドレイン電圧=0 D ● ● f3 f2 f1 f0 そのドレインが接続されているビット線出力=0 他のビット線出力=VDD {f3, f2, f1, f0 } = {0, 1, 0, 1} VDD ● A B ● ● ● f2 ● C D ● f3 f1 f0 あるいは左図のNAND型ROMでは、 アドレスAには「1010」、アドレスBには「1100」 アドレスCには「0110」、アドレスDには「1001」 が格納されている。 2 ● 例えば、アドレスAのデータを読み出すには、 A = low、 B = C = D = high、とする。 ● ● ワード線Aに接続されている nMOS がオフ、 その他はオン ● ● ● nMOSオフが接続されているビット線は遮断、 その他は導通 nMOSオフが接続されているビット線出力=VDD その他のビット線出力=0 {f3, f2, f1, f0 } = {1, 0, 0, 1} PROM(Programmable ROM) 上記ROMでは、MOSトランジスタの有無によりビット情報が書き込まれていた。 実効的にMOSの有無が任意に設定できれば、記憶内容が変更できる。 そのようにしたROMがPROM(Programmable ROM)。 上記ビットの読み出しは、MOSのゲート端子に電圧印加→ソース-ドレイン間が導通、という原理に よる。 ゲート端子に電圧印加してもソース-ドレイン間が導通しなければ、MOSゲートが無いの同じ。 ところで、MOSにはしきい値電圧VTがあり、ゲート-ソース間電圧>VTのときにMOS=オン。 そこで、全てのセルにMOSを配置し、各MOSのしきい値を変更すれば、実効的にMOSの有無を任 意に設定することになる。 VDD 3 ● A ● f3 ● ● ● ● f2 f1 ● f0 ● B ● ● ● ● C ● ● ● ● D ● ● ● ● 左図のNAND型ROMにおいて、 実線MOSのVT:高、点線MOSのVT :低、とする。 点線MOSは存在しないのと同じなので、 前ページのNAND型ROMと等価。 PROMの中でも、電気的に記憶内容を変更できるものをEEPROM(Electrically Erasable PROM) と呼ぶ。 EEPROMを実現するには、しきい値可変のMOSトランジスターが必要。 このためには、MOSの絶縁膜の中に第2のゲート(フローティングゲート)を挿入する。 これに対応して、通常のゲートを制御ゲートと呼ぶ。 制御ゲート フローティングゲート(FG) V (i) FGに何も施さない時: 制御ゲートに電圧印加 → FG上部に負電荷 → FG下部に正電荷 → 半導体表面に負電荷=nチャネル形成 -------- ++++++++ 通常のnMOS動作 (ii) FGが負に帯電: 制御ゲートに電圧印加 → FGの負電荷は上部に偏るものの、下部にも分布 → 半導体表面にnチャネルは形成されず=MOSはオフ状態 しきい値が高くなったのと等価 -------- 4 (iii) FGが正に帯電: 制御ゲートに関わらず、半導体表面にnチャネル形成 → MOSはオン状態 以上をまとめると、 なお回路記号としては、 フローティングゲート帯電/リセット方法 フローティングゲートを帯電/リセットするには、ホットエレクトロン及びトンネル現象を利用する。 (ホットエレクトロン:強い電界で加速されて大きな運動エネルギーを得た電子の集団) (トンネル現現象:エネルギー障壁を電子が通り抜ける量子力学的現象) 帯電法: ゲート端子に電圧印加して半導体表面にnチャネルを形成したうえで、 ソース・ドレイン間に十分大きな電位差を与える。 半導体表面で電子が加速され、大きな運動エネルギーを得る (ホットエレクトロン)。 ホットエレクトロンがエネルギー障壁を飛び越えてフローティング ゲートに乗り移る。=FGが負に帯電 リセット法: FGと半導体間の絶縁膜を一部薄く作っておいたうえで、 FGと半導体間に大きな電位差を与える。 FG内の電子がトンネル現象により、半導体側へ移動=FGは中性 上記手法によりMOSトランジスタのしきい値を制御し、書き換え可能としたのが フラッシュメモリ 5 USBメモリや形態電話、デジタルカメラなどに広く用いられている。 SRAM(Static Random Access Memory) EEPROMでは、記憶内容変更のために高い印加電圧が必要。 これに対し、読み出しと同じ電圧で書き込みできるメモリとしてRAM(Random Access Memory) がある。 RAMにも、SRAM(Static RAM)とDRAM(Dynamic RAM)の2種類あり。 SRAMの基本は2個のCMOSインバータからなる双安定回路。 VDD ● ● ● ● LOW (HIGH) これに外部から双安定状態をスイッチするための回路を付加する。 VDD VDD M8(pMOS) M7(pMOS) 双安定回路部 VDD M5 M6 ● ● ビット線2 ● M4 ● ● ● ビット線1 M3 M2 M1 ● 左図において、 {M3、M4}はスイッチング用nMOS。 ● ワード線 ワード線がhighだと {M3、M4}導通状態。 ビット線への印加電圧によって{M7, M8}は導通または遮断 ワード線をhighにして、ビット線に電圧を印加すると、それに応じて双安定回路がスイッチ。 いったんスイッチすれば、ワード線/ビット線を0に戻しても、その状態を保持。 読み出しには、ワード線をhighにして、ビット線の電圧を見る。 6 DRAM(Dynamic Random Access Memory) 1トランジスタ1容量でメモリセルを構成(→小さいセルサイズ)。 コンデンサの充電/放電で「1」「0」を記憶。 ● ● DRAMセル HIGH ● HIGHの書き込み ● LOW ワード線 HIGH ビット線 ● HIGH ● LOWの書き込み ① ワード線high → MOSオン ② ビットにhigh/lowを印加 ③ コンデンサが充電/放電 ④ ワード線low → 書き込み終了 ⑤ 読み出すには、ワード線highにしてビット線の電圧をみる。 ただし実際には、 セルサイズを小さくするため、コンデンサ容量:小 → 蓄積電荷量:小 一方、ビット線はある程度の長さ → 寄生容量:大 読み出し時に、 蓄積された電荷がコンデンサ容量とビット線容量とで再配分 → 読み出し電圧:小 そこで、 小さい電圧変化を読み出すため、コンデンサ容量が1/2のダミーセルを用意して、 ダミーセルと正規セルとの電位差からビット読み出し。 7 ● ● ワード線 ダミーセル ● CC ビット線 ビット線 CD = CC/2 ● ● ● CB CB 実際のデバイス構造 データ出力 センスアンプ SRAMとDRAMの比較 SRAM DRAM 6Tr 1Tr + 1C セルサイズ 大 小 動作速度 高速 やや遅い キャッシュメモリ メインメモリ 素子数 応用例
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