メモリ

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V. メモリ
一般に計算機は、演算を行う中央処理ユニット(CPU)と情報を記憶するメモリ部から成る。
CPUはメモリから随時データを出し入れして演算処理を進める。本章はメモリについて。
基本構成
1ビット情報を記憶するメモリセルが、ワード線とビット線によりマトリックス状に接続。
これにより、アドレスAi にNビットのデータを収容する。
ROM(Read Only Memory)
書き込まれてあるデータを読み出すのみのメモリ。文字フォント情報や算術演算プログラムなど。
左図のNOR型ROMでは、
アドレスAには「1010」、アドレスBには「1101」
アドレスCには「1001」、アドレスDには「0100」
が格納されている。
VDD
nMOS
A
●
B
●
C
●
●
●
●
●
●
●
●
●
例えば、アドレスAのデータを読み出すには、
A = high、 B = C = D = low、とする。
ワード線Aに接続されている nMOS がオン
●
●
●
そのnMOSのドレイン電圧=0
D
●
●
f3
f2
f1
f0
そのドレインが接続されているビット線出力=0
他のビット線出力=VDD
{f3, f2, f1, f0 } = {0, 1, 0, 1}
VDD
●
A
B
●
●
●
f2
●
C
D
●
f3
f1
f0
あるいは左図のNAND型ROMでは、
アドレスAには「1010」、アドレスBには「1100」
アドレスCには「0110」、アドレスDには「1001」
が格納されている。
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●
例えば、アドレスAのデータを読み出すには、
A = low、 B = C = D = high、とする。
●
●
ワード線Aに接続されている nMOS がオフ、
その他はオン
●
●
●
nMOSオフが接続されているビット線は遮断、
その他は導通
nMOSオフが接続されているビット線出力=VDD
その他のビット線出力=0
{f3, f2, f1, f0 } = {1, 0, 0, 1}
PROM(Programmable ROM)
上記ROMでは、MOSトランジスタの有無によりビット情報が書き込まれていた。
実効的にMOSの有無が任意に設定できれば、記憶内容が変更できる。
そのようにしたROMがPROM(Programmable ROM)。
上記ビットの読み出しは、MOSのゲート端子に電圧印加→ソース-ドレイン間が導通、という原理に
よる。
ゲート端子に電圧印加してもソース-ドレイン間が導通しなければ、MOSゲートが無いの同じ。
ところで、MOSにはしきい値電圧VTがあり、ゲート-ソース間電圧>VTのときにMOS=オン。
そこで、全てのセルにMOSを配置し、各MOSのしきい値を変更すれば、実効的にMOSの有無を任
意に設定することになる。
VDD
3
●
A
●
f3
●
●
●
●
f2
f1
●
f0
●
B
●
●
●
●
C
●
●
●
●
D
●
●
●
●
左図のNAND型ROMにおいて、
実線MOSのVT:高、点線MOSのVT :低、とする。
点線MOSは存在しないのと同じなので、
前ページのNAND型ROMと等価。
PROMの中でも、電気的に記憶内容を変更できるものをEEPROM(Electrically Erasable PROM)
と呼ぶ。
EEPROMを実現するには、しきい値可変のMOSトランジスターが必要。
このためには、MOSの絶縁膜の中に第2のゲート(フローティングゲート)を挿入する。
これに対応して、通常のゲートを制御ゲートと呼ぶ。
制御ゲート
フローティングゲート(FG)
V
(i) FGに何も施さない時:
制御ゲートに電圧印加 → FG上部に負電荷 → FG下部に正電荷
→ 半導体表面に負電荷=nチャネル形成
--------
++++++++
通常のnMOS動作
(ii) FGが負に帯電:
制御ゲートに電圧印加
→ FGの負電荷は上部に偏るものの、下部にも分布
→ 半導体表面にnチャネルは形成されず=MOSはオフ状態
しきい値が高くなったのと等価
--------
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(iii) FGが正に帯電:
制御ゲートに関わらず、半導体表面にnチャネル形成
→ MOSはオン状態
以上をまとめると、
なお回路記号としては、
フローティングゲート帯電/リセット方法
フローティングゲートを帯電/リセットするには、ホットエレクトロン及びトンネル現象を利用する。
(ホットエレクトロン:強い電界で加速されて大きな運動エネルギーを得た電子の集団)
(トンネル現現象:エネルギー障壁を電子が通り抜ける量子力学的現象)
帯電法:
ゲート端子に電圧印加して半導体表面にnチャネルを形成したうえで、
ソース・ドレイン間に十分大きな電位差を与える。
半導体表面で電子が加速され、大きな運動エネルギーを得る
(ホットエレクトロン)。
ホットエレクトロンがエネルギー障壁を飛び越えてフローティング
ゲートに乗り移る。=FGが負に帯電
リセット法:
FGと半導体間の絶縁膜を一部薄く作っておいたうえで、
FGと半導体間に大きな電位差を与える。
FG内の電子がトンネル現象により、半導体側へ移動=FGは中性
上記手法によりMOSトランジスタのしきい値を制御し、書き換え可能としたのが フラッシュメモリ
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USBメモリや形態電話、デジタルカメラなどに広く用いられている。
SRAM(Static Random Access Memory)
EEPROMでは、記憶内容変更のために高い印加電圧が必要。
これに対し、読み出しと同じ電圧で書き込みできるメモリとしてRAM(Random Access Memory)
がある。
RAMにも、SRAM(Static RAM)とDRAM(Dynamic RAM)の2種類あり。
SRAMの基本は2個のCMOSインバータからなる双安定回路。
VDD
●
●
●
●
LOW
(HIGH)
これに外部から双安定状態をスイッチするための回路を付加する。
VDD
VDD
M8(pMOS)
M7(pMOS)
双安定回路部
VDD
M5
M6
●
●
ビット線2
●
M4
●
●
●
ビット線1
M3
M2
M1
●
左図において、
{M3、M4}はスイッチング用nMOS。
●
ワード線
ワード線がhighだと {M3、M4}導通状態。
ビット線への印加電圧によって{M7, M8}は導通または遮断
ワード線をhighにして、ビット線に電圧を印加すると、それに応じて双安定回路がスイッチ。
いったんスイッチすれば、ワード線/ビット線を0に戻しても、その状態を保持。
読み出しには、ワード線をhighにして、ビット線の電圧を見る。
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DRAM(Dynamic Random Access Memory)
1トランジスタ1容量でメモリセルを構成(→小さいセルサイズ)。
コンデンサの充電/放電で「1」「0」を記憶。
●
●
DRAMセル
HIGH
●
HIGHの書き込み
●
LOW
ワード線
HIGH
ビット線
●
HIGH
●
LOWの書き込み
① ワード線high → MOSオン
② ビットにhigh/lowを印加
③ コンデンサが充電/放電
④ ワード線low → 書き込み終了
⑤ 読み出すには、ワード線highにしてビット線の電圧をみる。
ただし実際には、
セルサイズを小さくするため、コンデンサ容量:小 → 蓄積電荷量:小
一方、ビット線はある程度の長さ → 寄生容量:大
読み出し時に、
蓄積された電荷がコンデンサ容量とビット線容量とで再配分
→ 読み出し電圧:小
そこで、
小さい電圧変化を読み出すため、コンデンサ容量が1/2のダミーセルを用意して、
ダミーセルと正規セルとの電位差からビット読み出し。
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●
●
ワード線
ダミーセル
●
CC
ビット線
ビット線
CD
= CC/2
●
●
●
CB
CB
実際のデバイス構造
データ出力
センスアンプ
SRAMとDRAMの比較
SRAM
DRAM
6Tr
1Tr + 1C
セルサイズ
大
小
動作速度
高速
やや遅い
キャッシュメモリ
メインメモリ
素子数
応用例