(平成14年度)(28KB)(PDF文書)

[普及事項]
新技術名:秋田県におけるリンゴ病害に対する散布回数の削減モデル (平成10∼14年)
研究機関名
担 当 者
果樹試験場環境部病害担当
佐藤 裕・深谷 雅子
[要約]展着剤KKステッカー(スプレーステッカー)2,500倍加用パスポートフロアブル1,0
00倍、ベフラン液剤1,500倍加用オーソサイド(キャプタン)水和剤800倍は散布間隔を3週間
程度にしても主要病害に対して高い防除効果が得られる。これらの薬剤を用いて組み立てた防
除回数を8回とした新防除体系は慣行防除と同等の防除効果が得られる。
[ねらい]
秋田県のリンゴ病害に対する平均防除回数は10∼11回であるが、残効期間の長い殺菌剤および
残効性を持続させる資材等を明らかにし、現在の散布回数を2回削減する病害防除体系を確立す
る。
[技術の内容・特徴]
1.年間の殺菌剤散布回数を8回にした散布体系モデルの使用薬剤は以下の通りとする。
回数 散布時期
殺菌剤
1
開花直前
アンビル FL×1,000+デランFL×2,000
2
落花直後
アンビル FL×1,000+デランFL×2,000
3
落花15日後 ジマンダイセン水和剤 ×600
4
落花30日後 アントラコール水和剤 ×500
5
落花45日後 パスポートFL×1,000+KKステッカー×2,500
6
3週間後 パスポートFL×1,000+KKステッカー×2,500
7
3週間後 ベフラン液剤 ×1,500+ オーソサイド水和剤 ×800
8
3週間後 ベフラン液剤 ×1,500+ オーソサイド水和剤 ×800
注)FLはフロアブル、最終散布時期は慣行散布区9月上旬、削減区8月下旬
2.パスポートフロアブルはKKステッカーを加用することで、3週間程度の残効期間が認めら
れた。また、8∼9月はベフラン液剤とオーソサイド水和剤を混用することで3週間の散布間
隔で防除が可能である(図1 )。
3.葉については黒星病、うどんこ病および赤星病の発生は見られず、斑点落葉病、褐斑病は少
∼中程度の発生であり、落葉被害は認められなかった(図2 )。
4.果実についてはすす斑病、炭疽病、輪紋病や黒点病、斑点落葉病の発病も無∼わずかな発生
量であり、高い防除効果が認められた(図2 )。
5.KKステッカー×2,500加用パスポートFL×1,000を場内圃場の中生種「千秋」に2週間間隔で
連続2 回散布し、その45日後に収穫した果実の TPN 残留量は残留基準値(5ppm)以下である。
[普及対象範囲]
県内リンゴ栽培地域
[普及・参考上の留意事項]
1.慣行防除体系に比較すると散布回数が2割削減でき、フェロモン剤利用技術を併用すること
により「持続性の高い農業生産方式の導入に関する法律(持続農業法 )」に関する秋田県導入指針
に適合できる。
2.早生品種に散布される場合には、収穫予定日から14日以上前に8回目散布を行う。
3.薬液が樹全体に付着しないと、防除効果が劣る。
4.斑点落葉病に対しては本体系下で「王林」に防除効果がやや劣る試験事例があったため、斑
点落葉病り病性品種では発生に応じて本病防除剤の使用を考慮する。
[具体的なデータ等]
削減区の散布時期
散布回数
①
↓
4月
散布回数
慣行区の散布時期
↑
①
開
花
直
前
②
↓
5月
↑
②
落
花
直
後
図1
③
↓
④
↓
6月
↑
④
落
花
25
日
後
↑
③
落
花
10
日
後
0
0
100
発
病
葉
率
0
-100
100
100
発
病
果
率
00
100
発
病
果
率
-1000
⑤
↓
⑥
↓
7月
↑ ↑
⑥ ⑦
↑
⑤
落
花
40
日
後
⑦
⑧
↓
↓
8月
9月
↑ ↑ ↑
⑧ ⑨ ⑩(回)
散布間隔は
2週間
散布回数削減モデル
100
100
発
病
葉
率
散布間隔は
3週間
慣行区に同じ
100
斑点落葉病
現地試験(慣行 平均11回)
19.6 10.9
4 6.5 7.6
3.1 5.4
4.5 3.8 4.8
斑点落葉病
場内試験(慣行 平均10回)
3.2 1.7
5.8
2.4
0
1.8 2.1 5.4
褐斑病
現地試験(慣行 平均11回)
無散布は
データ無し
無散布は
データ無し
0
96.2
75
56.9
0 0 0 0 0
0 2.1 0 0 0
褐斑病
場内試験(慣行 平均10回)
98.3
96.2
47.6
18.3
38.1
-100
100
すす斑病
現地試験(慣行 平均11回)
4.8 0 0 7.2
0 0 0 1.1
炭疽病
現地試験(慣行 平均11回)
無散布は
データ無し
2.7 0 0 0 0
1999年A
2000年A
2001年A
2002年A
2002年B
0 0 0 0 0
93.6 0
すす斑病
場内試験(慣行 平均10回)
無散布は
データ無し
0 0 0 0
0 0 0 0
炭疽病
場内試験(慣行 平均10回)
56.3
26.7
17.7
0 0 0 0
0 0 0 0
8回
慣行
13.1
-100
無散布
0
0
8回
0
0
0
慣行
図2 散布回数削減区における各病害に対する防除効果
[発表文献等]
北日本病害虫研究会報(投稿中)
0
2.2 0.2
無散布