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平成25年度共同研究講座活動実績報告書
共同研究講座名:生体免疫制御学講座
所
1
属
長:
吉
川
敏
一
共同研究講座の目的
京都府立医科大学が有するソフトおよびハードを活用し、乳酸菌製剤が生体に与える生
理活性を明らかにする。
2
報告年度に係る取組状況
酸化ストレスに起因する肝障害のリピドミクス解析
[一般目的]質量分析法を用いて肝障害のマーカーとなる脂質種を探索・同定し、疾患
のメカニズムを解明し、その手法を臨床検体に応用させる。
[課題目的]フリーラジカルによって誘起される酸化ストレスに起因する肝障害につい
て質量分析法を用いたリピドミーム解析を行い、臨床分野に応用することを目的とす
る。動物モデルを用いて、酸化ストレスによって誘発が予想される炎症や病態の進行に
伴う脂質分子種ごとの量的・質的変化(脂質分子種プロファイル)を明らかにする。次
に臨床検体についても同様の解析を行い、病態の進行・重度の違いによる脂質の量的・
質的変化を明らかにする。生体内で発生するフリーラジカルによって肝障害が発症する
メカニズムを解明し、発症予防や病態進行の抑制、発症の早期発見へ向けた基礎的な知
見の集積を行うことを目的とする。
[これまでの実績]TLCやGC-MS、LC-MSを用い、組織や血液の脂質分子種プロファ
イルを明らかにする解析手法を立ち上げた。消化器内科では脂肪肝、脂肪肝炎モデル
マウスを確立に成功している他、多くの脂肪肝、脂肪性肝炎患者を診察している。モデ
ル動物だけではなく臨床検体での評価が可能であり、基礎研究から得られた知見を臨床
検体でも評価できる点も大きい。
[今年度の成果]
1) 酸化ストレスに起因する肝障害モデルのマウス肝臓の脂質分子プロファイルと
量的変動を確認した。
2) 肝障害によって生じる酸化脂質の量的変動を確認した。
3) マーカーとなり得る脂質の病態の進行に伴う量的・質的変動を確認した。
4) マーカーとなり得る脂質の局在と病態進行との関連性を確認した。
5) 確立したリピドーム解析手法の臨床検体への応用をはかった。
乳酸菌(FK-23)の脂肪肝抑制効果
高脂肪食に起因する脂肪肝に対する乳酸菌(FK-23)の効果を検討した。6週齢のマウ
スを1週間の予備飼育をした後、高脂肪食を12週間した。FK-23の投与は飲料水へ混合し
て行った。12週間の特別食の投与後、肝臓を採取しHE染色脂肪肝の発症、進展を確認後
した。HE染色により組織学的に評価した。FK-23の投与により、脂肪肝の発症の抑制は
みられなかったものの、脂肪肝の重度が軽減していることが示唆された。Real time-PCR
を用いて遺伝子発現変動を行い、高脂肪食群投与群において、FK-23の投与によりPPARα
および脂肪酸分解に関わる遺伝子の発現が増加していた。以上より、PPARαの発現増加
に伴い脂肪の分解促進、脂質抑制が起こっていることが示され、乳酸菌投与による肝機
能改善が示唆された。
3
報告年度における著書、論文、学会発表、講演、研究助成等の実績
論文
Morita M, Ishida N, Uchiyama K, Yamaguchi K, Ito Y, Shichiri M, Yoshida Y, Hagihara Y,
Naito Y, Yoshikawa T, Niki E. Fatty liver induced by free radicals and lipid peroxidation. Free
Radic Res 46:758-765, 2012.
研究助成
科学技術振興調整費
成23〜24年度
者嶋田貴志)
研究成果最適展開支援事業(A-STEP)(シーズ顕在化タイプ)平
リピドミクスを活用した脂肪肝を抑制する乳酸菌製材の開発(研究代表