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2014
系統生物研究センター 仁木研究室紹介
左図 ジャポニカス分裂酵母の菌糸は青色光の明暗サイクルに応答し
て、細胞分裂が同調的に活性化される。その結果、菌糸の増殖パ
ターンに明暗の縞模様が生じる。上図 光や温度の受容体を経て日周
的な変動に応答する機能も持っていると考えられる。
日本産分裂酵母を使っての細胞生物学
原核生物遺伝研究室と名乗っていま
温度の日周的な変動を感知して、同
生生物は核膜を持ったまま染色体分
すが、日本で発見されたジャポニカ
調的に細胞分裂を活性化させること
配を行ない、高等真核生物では核膜
ス分裂酵母という真核細胞の研究も
を見出しました。そのため、菌糸の
は一旦消失しています。が、ジャポ
行っています。分裂酵母は系統的に
つくるコロニーは綺麗な同心円状の
ニカス分裂酵母は、核膜はあるもの
4種類います。その中でも、ジャポ
縞模様を作り出します。光受容体は
の、それが切断され、核内と細胞質
ニカス分裂酵母は進化的には最も早
見つかっていますが、温度の受容体
の隔たりが一時的になくなります。
く分岐した酵母です。実際、カビや
はまだ不明です。また、この反応で
進化の中間的な様相を示す現象で
キノコのように菌糸になって生育す
細胞分裂を活性化させる仕組みも
す。新しい核膜の機能がわかること
ることが可能です。この菌糸は光や
解っていません。また、真菌類や原
を期待して研究を行っています。
Sz.pombe
Sz.japonicus
Sz.octosporus
分裂酵母属の3種
核膜分断が起らない変異株
温度の変動サイクルでも生じる
菌糸の縞
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ジャポニカス分裂酵母は、これまで
のモデル酵母では見られない性質を
幾つも持っていることから、新しい
研究領域を開拓しているところで
す。
一方、バクテリアの研究は細胞分
裂の仕組みの解明に取り組んできま
した。今、関心を寄せているのはバ
クテリアの染色体を束ねている仕組
みです。真核生物と同じく,コンデ
ンシンという因子が必要です。この
因子が染色体のどのような配列や状
態の情報を元にして、その機能を発
揮しているのかについて新しいアプ
ローチで研究を進めています。
微生物の持つ豊かな生命現象を遺
伝学、細胞生物学、生化学などを
使って解き明かすことを楽しみに、
そしてそれを基盤として、新しい考
えや知識の創造を期待して地道な研
究を積み重ねています。
最近の主な発表論文
•Niki, H.(2014)
Schizosaccharomyces japonicus:
the fission yeast is a fusion with
yeast and hyphae. Yeast 31, 83-90
•Okamoto, S., Furuya, K., Nozaki,
S., Aoki, K.,& Niki, H.(2013).
Synchronous activation of cell
division by light or temperature
stimuli in the dimorphic yeast
Schizosaccharomyces japonicus.
Eukaryot Cell 12, 1235-1243.
• Aoki, K., Shiwa, Y., Takada, H.,
Yoshikawa, H., & Niki, H.(2013).
Regulation of nuclear envelope
dynamics via APC/C is necessary
for the progression of semi-open
mitosis in Sz japonicus. Genes
Cells 18, 733-752.
環状染色体
• Furuya, K., & Niki, H. (2010). The
DNA damage checkpoint regulates
a transition between yeast and
hyphal growth in Sz japonicus. Mol
Cell Biol 30, 2909-2917.
• Shiomi, D., Sakai, M., & Niki, H.
(2008). Determination of bacterial
rod shape by a
novel
cytoskeletal
membrane
protein.
EMBO J
27,
3081-3091.
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バクテリアの
在 籍 の 研 究者
超らせん化に
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よる凝集
コンデンシンによる
核様体の形成
バクテリアは千倍以上の長さのDNAを細胞内に包含
している。ねじれによる超らせん化は、長いDNAを
凝縮させるための第一段階である。バクテリアのコ
ンデンシンであるMukBは細胞の中で、DNAの塊で
ある核様体の中心に局在している。