KRN125
第 2 部(モジュール 2):
CTD の概要(サマリー)
2.2 緒言
協和発酵キリン株式会社
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KRN125
2.2
2.2 緒言
緒言
好中球は細菌、真菌に対する感染初期の防御機構を担い、好中球減少時には感染のリスクが
増大する。がん化学療法における抗がん剤の多くは標的腫瘍のみならず好中球の産生部位であ
る骨髄の正常増殖細胞に対しても毒性を示すため、抗腫瘍効果の強いがん化学療法を受けたほ
とんどのがん患者で好中球減少症が発現する。この好中球減少症に発熱を伴う場合には発熱性
好中球減少症(FN)と呼ばれ、急速に重症化して死に至る危険性が高くなる。
顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)はサイトカインの一種であり、顆粒球系前駆細胞に
作用し分化・増殖を促すとともに、成熟好中球に作用し、骨髄中から末梢血中への好中球の放
出や好中球の活性化等の効果を示す。G-CSF 製剤は FN の発症を抑制するため現在国内外で広
く臨床使用されているが、海外の G-CSF 使用ガイドラインにおいては、がん化学療法が施行さ
れる患者の FN 発現リスクから G-CSF 製剤の予防投与の必要性を評価して使用することが推奨
されている1-3)。一方で既存の G-CSF 製剤(商品名グラン®、一般名フィルグラスチム(遺伝子
組換え)等)の、国内におけるがん化学療法を受けた患者に対する承認用法・用量は、FN 発現
リスクではなくがん腫に基づき設定されている。従来から強力な骨髄抑制を有するがん化学療
法レジメンが使用されるがん腫に対しては、患者の好中球数によらず、がん化学療法剤投与終
了後の翌日以降から G-CSF 製剤を投与する予防投与が認められているが、乳癌を含むその他の
がん腫に対しては予防投与が認められていない。
しかし、G-CSF 製剤承認以降、抗腫瘍効果の強いがん化学療法剤を含む抗がん剤レジメンに
よる治療でより高い有効性が見出され、同時に抗がん剤の投与量の増量や投与間隔の短縮によ
り治療強度を高めることが生存の延長に寄与することが明らかとなってきた。こうしたエビデ
ンスの蓄積により、日本では G-CSF 製剤の予防投与が認められないがん腫においても、海外で
は G-CSF 製剤を予防投与しながら強いがん化学療法が行われるようになっており、本邦におい
ても海外と同様の予防投与の適応が求められている4,5)。
KRN125 は、フィルグラスチムの N 末端に分子量約 20000 のポリエチレングリコール(PEG)
を化学的に結合させたものである。海外においては、がん化学療法 1 サイクルにつき 1 回の予
防投与で、既存の G-CSF 製剤連日投与と同等のがん化学療法後の好中球減少症に対する有効性
を示すこと、プラセボと比較して有意に FN の発現リスクを低減させることが既に示され、広
く使用されている6-8)。KRN125 は既存の G-CSF 製剤と比較して、患者には注射のための来院や
投薬に伴う疼痛機会の減少による QOL 維持、医療従事者には業務負担の軽減、医療事故リスク
の低減、及び医療廃棄物の削減等が期待されている。特に国内でも昨今増加している外来がん
化学療法を、患者の連日の通院を必要としない形で安全かつ確実に遂行できるようになるとい
うベネフィットを提供する薬剤となることが期待されることから、麒麟麦酒株式会社(現、協
和発酵キリン株式会社)は 2003 年に国内の開発に着手した。
今回国内で実施した KRN125 の治験では、造血器腫瘍、固形癌を問わず好中球減少症に対す
る有効性を指標として同様の用量反応プロファイルを示すこと、海外と同様にがん化学療法 1
サイクルにつき 1 回の投与で、既存の G-CSF 製剤を連日投与した際のがん化学療法後の好中球
減少症に対する有効性に劣らないこと、及びプラセボと比較して有意に FN の発現リスクを低
減させることが示された。以上より、KRN125 の承認申請においては、既存の G-CSF 製剤で承
認されているがん腫ごとの適応ではなく、がん腫やレジメンによらず FN の発症が予想される
患者を対象として以下の効能・効果及び用法・用量で申請を行うこととした。
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KRN125
2.2 緒言
効能・効果:がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制
用法・用量:通常、成人にはがん化学療法剤投与終了後の翌日以降、ペグフィルグラスチム
(遺伝子組換え)
として、
3.6 mg を化学療法 1 サイクルあたり 1 回皮下投与する。
参考文献
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