ジャカルタ 備忘 Rock 第8回 「en塾日本公演」 安齋 俊哉 去る4月4日、東京・四ツ谷区民ホールで行われたen塾「吾輩はニャンコである」日本 公演を観てまいりました。 隣のコラムではen塾代表の甲斐切先生が秘話・裏話なども書かれていると思います ので、併せて御拝読いただければと存じます。 まず、「大成功だった」ということをお伝えしなければなりません。 en塾の紹介は割愛します。要はインドネシア人大学生が日本語でオリジナル演劇作 品を披露するということなのですが、余りの出来栄えに、びっくりしました。もう、直ぐに ストーリーに引き込まれました。 観劇には疎いので、何がどう素晴らしかったのか説明しにくいのですが、途中では思 わず涙しましたし、最後には真っ先にスタンディングオベーションをしてしまいました。 それほどに伝わってくるものがあったということです。 家内が感心していた言葉の壁を凌駕したとか、真摯さに心打たれたとか、そういうこと もあるのですが、私は、創作芸術団体として、お客さんが支払った額に見合う(或いは それ以上の)ものを提供したこと、それを創り上げたことが凄いと思っています。もは やアマチュアではなく、セミ・プロ集団と言えるのかもしれません。大変素晴らしい公 演でした。 次に「大成功の鍵はなんだったのか?」ということを考えると、これは甲斐切先生の御 指導の賜物なのでしょうが、①高い意識、行動規範を維持するためには、脱落する団 員が相当出ることもいとわないということを団員同士が理解していること、②毎年団員 が入れ替わるen塾において質の維持は先輩が後輩を率先して指導することでしか成 し得ないことを理解していること、③成功体験を得るために主役から裏方さんまで一 体となって協働する姿勢が貫かれていること、があると思います。 これらのことは、表方の団員さんと話して分かるだけではなく、寄付を募る営業の団 員さん等と話してもそれがよくわかります。これが凄い。 また、団員のプロフィールを見ると、有名大学出身者が多いなぁという印象がありま す。「あらあら、東大、京大、六大学ばかりだなぁ、おや、やはり日芸もいるわけね。い いねぇ・・・」的な感覚を持ちました。どうやら学力的に優秀な人材が集ってきているの は明らかなようです。 資質に優れた人材が厳しく鍛えられれば、相当なところに到達するのは自明の理で すね。団員のリクルートメントに何か秘密があるかもしれません(笑)。 三つ目として、「en塾で育った人材は何処へ」を考えてみたいと思います。 このen塾卒業生を採用した会社の担当の方から聞いたところによると、そのen塾出 身の新入社員が「en塾の方が厳しかった」と言ったそうなのです。何を以てそうした発 言が出たのかは類推しにくいですが、恐らくen塾では「日本的/日本人的規範を以て 行動すること」が厳しく指導されているのでしょう。勿論、こちらの学生サン達ですから、 甲斐切先生のコラムに度々出てくるビックリ仰天なエピソードは沢山残しているので すが、それでも一貫したen塾を支えるフィロソフィーのようなものがしっかり存在し、 根付いてきているのだなと感心するばかりです。 日本に興味を持ち、日本語も(少し)出来て、しかも有名大学卒のen塾 OB/OG はこれ から日系企業の「金の卵」となるのではないでしょうか。en塾の公演はもとより、稽古 場などに赴き、青田買いする人事担当者が現れるのも時間の問題か もしれませ ん!? 最後が「人と人との交流が一番強い」かもしれないということです。 今回、en塾が日本公演を実現できた背景には Jenesys2.0 という安倍総理のイニシア チブで実施されている人材交流プログラムが活用されていますが、そのスキーム活 用と同等以上に、(ここでは御名前は出しませんが)沢山の支援者、関係者の方々の 並々ならぬ御尽力があったと伺っています。 今回のen塾日本公演の成功は、インドネシアを愛する、応援する方々の努力の結晶 だったと言えるのかもしれません。 この Jenesys2.0 プログラムは、数十名の日本の高校生にインドネシア体験の機会を与 えたりもしています。私も受入に少し御手伝いさせていただきました。 彼らは、進出している日系企業がどうだとか、ODAの使われ方がどうだとかいう点に は理解が進まないのですが、一般的なインドネシアの人々の生活に触れる場面では、 相当の興味を示していました。私も当地滞在期間が長くなったせいもありますが、も はや気にもかけないような事柄に、鋭い指摘や質問があり、期せずして、私自身が新 たな気付きを得ることになりました。 同様に、今回日本を訪問したen塾の団員さん達が、公演の他、各地で色々な方々と 交流していますが、憧れていただろう日本に何を見いだしたのか、何を感じたのか大 変興味があります。 きっと、そうした彼らの気付き点については、隣の甲斐切先生のコラムでもおいおい 紹介されていくのではないかと思います(先生、宜しくお願いします)。 en塾のみならずインドネシアの各方面で日本シンパが生まれ、日本にもインドネシア シンパが生まれていくことが両国の絆継承&強化に資することは間違いないです。私 もそういう意識を少し高めて日々の生活を充実させていきたいと改めて感じていま す。 今や、海外公演や、劇団四季とのコラボレーション等も視野に入ってきているようで すが、今後en塾はどこを目指すのか?大変興味のあるところです。 益々の活躍に期待しています!! 以上 ▲エネルギッシュな舞台!!(写真提供;中澤氏) ▲団員全員集合(写真提供;中澤氏)
© Copyright 2024 ExpyDoc