卒業研究成果パネル 平成26年2月 分娩前の乳房炎予防と乳房炎原因菌の特定(オンファ ームカルチャー)による乳房炎低減への取り組み 畜産学科酪農経営科 212406 多田奈実希 【選定理由】 乳房炎になると出荷停止、乳量・乳質低下など経済的に大きな損失になる。新規感染は乾乳後2週及び分娩2週間前に 起こりやすく、発症は分娩後10日以内に多いといわれている。 そこで、分娩前に乳汁を検査し、早期発見・治療をするため乳汁の細菌培養(オンファームカルチャー)により乳房炎原因 菌を特定したいと考えた。 【実施計画】 1. 供試牛 平成 25 年 2~8 月に分娩した 12 頭 48 分房(未経産牛 2 頭、経産牛 10 頭) 2. 検査項目 (1) 予防:分娩予定日の 14 日前からディッピング剤(ヨード系)でディッピン ブツ 初乳状 アメ状 水様状 (2) 予察:分娩予定日の 10 日前の乳汁と分娩直後の乳汁検査 ① 性状観察:乳汁の状態(アメ状、初乳状、水様状)、ブツの有無 ② PL 検査:PL 検査液で陽性か陰性かを判定 ③ 糖度測定:電子糖度計 ATAGO PAL-Patissier で Brix 値を測定 (3) 特定:乳汁細菌検査用寒天培地(EZ MEDIA 2)で細菌培養を行い、 原因菌を特定する。また有効な抗生物質(泌乳期用軟膏)を確認する。 図1 分娩前乳汁性状 【結果】 1. 予防 未経産牛で 1 頭(50%)、経産牛で 4 頭(40%)が乳房炎を発症した。 また、経産牛では前産次でも乳房炎にかかったことがある 3 頭(75%) が乳房炎を発症した。 図 2 分娩前ディッピングの様子 2. 予察 乳房炎を発症した 5 頭 14 分房の分娩前乳汁の性状は、水様状だった分房が 67%と高い確率で乳房炎を発症してい た。(表1) 乳房炎を発症しなかった分房の乳汁の糖度は 25 度を上回り、発症した分房は下回った。しかし、分娩前 43 度、51 度でも乳房炎を発症した分房があった。 表1 分娩前乳汁の性状と分娩後の乳房炎発症 分 娩 前 乳 汁 性状 分 房 数 乳 房 炎 発 症 分 房数 乳 房 炎 発 症率 ア メ 状 18 0 0% 初 乳 状 13 3 23% 水 様 状 15 10 67% 採 取 で き ず 2 1 50% 3. 特定 分娩前 10 分房、分娩後 15 分房の乳汁を EZ MEDIA 2 で細菌培養したところ、12 分房から環境性ブドウ球菌(CNS) が検出され、13 分房は不検出だった。(表 2)この 25 分房に泌乳期用軟膏セファメジン QR を注入し治療を行った。 また、H24 年度と比較すると出荷停止日数が 1 頭当たり 7 日短縮できた。 表2 乳房炎乳の細菌培養数(分房) 分娩前 分娩後 培養分房数 10 15 原因菌検出 6 6 原因菌不検出 4 9 図 3 CNS が検出された寒天培地 【考察・まとめ】 前産でも乳房炎を経験した牛にはヨード系ディッピング剤による予防効果がなかった。 分娩予定日 10 日前の乳汁検査で乳房炎の発症する可能性を予測できる。特に性状観察で、水様状または採取できない 分房はその可能性が高い。また、分娩前乳汁の糖度(Brix 値)が高くても発症した分房があることから、糖度だけでの予測 は難しいと考える。 細菌培養による原因菌の特定を行うと、有効な抗生物質注入による早期治療ができるため治療期間の短縮や経費の節 減に役立つ。 農大では搾乳衛生、牛床衛生の徹底で乳房炎の予防や発症数の低減ができる。
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