図 4-12 水質調査結果(EC) 図 4-13 水質調査結果(流量) 4-9 (3)事後調査における影響評価 事業の影響については、評価書で示された予測結果を含め、本調査結果などと対比して 評価を行った。 A.コンクリート打設工事及び地盤改良によるアルカリ排水の影響 ○ 予測結果と本調査結果 評価書による予測結果 本調査結果 一般的に「地盤が有するアルカリ中和能力が比較 本工事(仮設進入路工)の開始以降 的高いことから、アルカリの地盤中での浸透距離 (平成 25 年 10 月∼) が数十 cm 程度である」とされており、地盤改良 pH:7.3∼7.9 箇所から周辺地盤へ浸透することによる影響は 少ない。 ○ 環境保全措置 ・排水処理施設での中和処理 ・事後調査の実施による監視 ○ 評価基準 ・環境基準(pH:6.5∼8.5) 今年度は貯留構造物のコンクリート打設を行っていないものの、セメント系固化剤が含 まれる地盤改良を行っており、環境保全措置として排水処理施設による中和処理を実施し て pH の上昇を抑制している。本調査結果では、本工事開始以降、pH が 8 未満と低い値で 推移しており、評価基準との整合が図られていたことから、本事業が周辺環境に著しい影 響を及ぼした可能性は無いものと考えられる。 B.土地の造成及び工事用道路等の建設に伴う濁水の影響 ○ 予測結果と本調査結果 評価書による予測結果 本調査結果 造成に伴う裸地面が最大となる時期にお ける降水量が 1.96∼35mm/h とした場合 仮設沈砂池放流口の流下直近地点 地点 4(調整池下)の SS:49∼223mg/l 地点 3(八手俣川下流)の SS:140∼1200mg/l 本工事(仮設進入路工)の開始以降(平成 25 年 10 月∼)の調査結果 地点 4(調整池下)の SS:<1∼4mg/l 地点 3(八手俣川下流)の SS:<1∼1mg/l ○ 環境保全措置 ・仮設沈砂池の設置 ・事後調査の実施による監視 ○ 評価基準 ・環境基準(SS:25mg/l)、現況水質等 今年度は伐採を行ったものの、主に仮設進入道路を施工しており、本格的な土地造成の 施工段階ではない。したがって、最も濁水が発生しやすい時期(造成による裸地面積が最 大時)ではないものの、環境保全措置としては仮設沈砂池を設置して SS 等の濁水発生を抑 制している。本調査結果では予測値を下回る低い濃度に抑えられており、その他の項目に おいても現況水質と大きな変化は確認されておらず、評価基準との整合が図られていたこ とから、本事業が周辺環境に著しい影響を及ぼした可能性は無いものと考えられる。 4-10 (4)今後の保全措置 今後の保全措置については、表 4-3 に示した事後調査を計画している。本調査で実施し てきた調査内容を引き続き実施することにより、水質の動向を監視し、必要に応じて適切 な環境保全措置を講ずることとする。 表 4-3 今後の事後調査計画 種別 内容等 調査項目 水質(一般観測項目・生活環境項目) 調査方法 現地にて試料採水を行い、環境庁告示に定める方法により室内分析を実施 流量については、流速計測法もしくは容器法等により観測 調査地点 調査地点(6 箇所) 1(八手俣川上流) 2(八手俣川合流前) 3(八手俣川下流) 4(調整池下) 5(取水施設 1) 6(取水施設 2) 調査時期・頻度等 毎月(H26.4~H27.3 の計 12 回) 評価基準 現況水質等 注)環境庁告示: 「水質汚濁に係る環境基準について」(昭和 46 年 12 月 28 日、環境庁告示第 59 号) 4-11 5.地下水の水位及び水質 (1)調査対象 A.工事の実施に伴う地下水位の変化、地下水流動方向に対する影響 B.土地の造成工事による降雨時の濁水の影響、並びにコンクリート打設及び地盤改良に よるアルカリ排水の影響 (2)調査結果 ①調査実施状況 調査実施状況は表 5-1 に示すとおりである。 表 5-1 地下水に係る調査実施状況 種別 内容等 調査項目 地下水位及び水質 調査方法 地下水位 ・自記式水位計による測定(連続測定) ・携帯型触針式水位計による測定(実測測定) 水質 ・一般観測項目:携帯型水質計による測定(水温等) ・簡易水質:携帯型水質計による測定(pH、電気伝導度、濁度) ・健康項目(28 項目):環境庁告示に定める方法による室内分析(公定法) 調査地点 観測井戸(4 箇所) ・観測井戸 No.1~No.4 民家井戸(3 箇所) ・民間井戸 No.1 ・民間井戸 No.4 ・民間井戸 No.17 (図 5-1 参照、地点詳細は資料Ⅲ-1 参照) 水位 ・観測井戸:連続観測(H25.4~H26.3) ・民家井戸:携帯型触針式水位計による毎月観測(H25.4~H26.3 の計 12 回) 調査時期・頻度 水質 ・一般測定、簡易測定(H25.4~H26.3 の計 12 回) 等 ・健康項目(H26.1 の年 1 回) 調査実施日 4/26、5/17、6/14、7/12、8/9、9/20、10/24、11/8、12/3、1/7、2/5、3/3 評価基準 工事前の調査結果との比較 注)表中の「健康項目」を以下に示す。 カドミウム、シアン、鉛、六価クロム、ヒ素、総水銀、アルキル水銀、PCB、ジクロロメタン、四塩化炭素、塩化ビニルモノマー、 1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラク ロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、 ふっ素、ほう素、1,4-ジオキサン 5-1 民間 17 民間 1 民間 4 図 5-1 地下水調査地点位置 :民間井戸(No.1,4,17) 5-2 ②調査結果 地下水の水位調査結果は表 5-2、水質調査結果は表 5-3、観測井戸水位は図 5-2、観測井 戸水位から推定される地下水流動方向は図 5-3、民間井戸水位は図 5-4、観測井戸及び民間 井戸の水質は図 5-5~図 5-12 に示すとおりである(地点ごとの詳細結果は資料Ⅲ-2 参照)。 水位は、民間井戸 No.4 で 12 月~2 月にかけて水のない状態であったものの、3 月には回 復した。この地点は 4 月当初(工事開始前)から過年度範囲を下回っており、その他の地点 を含め、本工事開始以降で大きな変化は確認されなかった。 水質は、本工事開始以降、概ね過年度範囲で推移しており、期間を通じて大きな変化は 確認されなかった。また、健康項目(28 項目)については、表 5-4 に示すとおり全項目とも 地下水環境基準を満足する値であった。 表 5-2 地下水の水位調査結果 項目 調査結果 観測井戸 水位の変動は降雨量と一致しており、その他に大きな変化は確認されなかった。 水位の結果から推定した地下水流動方向は、対象事業実施区域から高山川沿いに 下之川地区(民間井戸調査地点)方面へ向かって流下していると考えられる。 民間井戸 No.17 では水位変動は降雨量と一致しており、その他の地点では降雨に よる顕著な水位変動は確認されなかった。民間井戸 No.4 は 12 月~2 月にかけて水 のない状態であったが、3 月には回復した。なお、この地点は本調査開始当初(4 月)から過年度範囲を下回る水位高さであった(詳細は資料Ⅲ-3 参照)。 民間井戸 表 5-3 地下水の水質調査結果 項目 一般測定 水温 観測井戸 水素イオン濃度(pH) 簡易測定 電気伝導度(EC) 濁度 公定法 一般測定 民間井戸 簡易測定 公定法 健康項目 調査結果 ・期間を通じて 7.3~16.3℃の範囲で推移していた。 ・過年度範囲と概ね同程度であった。 ・期間を通じて 5.82~7.08 の範囲で推移していた。 ・過年度範囲であった。 ・期間を通じて 6.20~19.0mS/m の範囲で推移していた。 ・8 月以降は過年度範囲であった。 ・期間を通じて 0.0~>20 NTU の範囲で推移していた。 ・4、5 月は、やや高い値が確認されたものの、6 月以降 は過年度範囲であった。 ・全項目ともに地下水環境基準を満足していた。 ・期間を通じて 7.6~22.9℃の範囲で推移していた。 ・過年度範囲であった。 ・期間を通じて 6.12~7.05 の範囲で推移していた。 水素イオン濃度(pH) ・過年度範囲であった。 ・期間を通じて 8.17~15.03mS/m の範囲で推移していた。 電気伝導度(EC) ・過年度範囲であった。 ・期間を通じて 0.0~1.9 NTU の範囲で推移していた。 濁度 ・5 月以降は過年度範囲であった。 水温 健康項目 ・全項目ともに地下水環境基準を満足していた。 注)民間井戸 No.4 は井戸が 2 か所あり、12~2 月は水がある方の井戸より揚水し、水質調査を実施した。 5-3 400 120 降水量(mm) 観測孔No.1水位 390 観測孔No.2水位 110 観測孔No.3水位 観測孔No.4水位 観測井戸No.4(上流側尾根部・南) 100 370 360 90 観測井戸No.2(上流側尾根部・西) 80 地下水位(標高m) 350 70 観測井戸No.3(上流側尾根部・東) 340 60 330 50 観測井戸No.1(計画地内・最下流部) 320 40 310 30 300 20 290 10 280 H25.4.1 H25.5.1 H25.6.1 H25.7.1 H25.8.1 H25.9.1 H25.10.1 H25.11.1 H25.12.1 H26.1.1 H26.2.1 図 5-2 観測井戸水位(自記水位計)調査結果 図 5-3 推定される地下水流動方向(対象事業実施区域内) 5-4 H26.3.1 0 H26.4.1 時間降雨量(mm) 380 図 5-4 民間井戸水位調査結果 5-5 図 5-5 観測井戸水質調査結果(水温:一般観測項目) 図 5-6 観測井戸水質調査結果(pH:簡易水質) 5-6 図 5-7 観測井戸水質調査結果(EC:簡易水質) 図 5-8 観測井戸水質調査結果(濁度:簡易水質) 5-7 図 5-9 民間井戸水質調査結果(水温:一般水質) 図 5-10 民間井戸水質調査結果(pH:簡易水質) 5-8 図 5-11 民間井戸水質調査結果(EC:簡易水質) 図 5-12 民間井戸水質調査結果(濁度:簡易水質) 5-9 表 5-4 地下水の水質調査結果(健康項目:室内分析) 観測井戸 調査地点 項目・単位 一 般 項 目 健 康 項 目 採水年月日 民間井戸 No.1 No.2 No.3 No.4 No.1 No.4 No.17 地下水 環境基準 ― H26.1.7 H26.1.7 H26.1.7 H26.1.7 H26.1.7 H26.1.7 H26.1.7 ― 採水時刻 開始時 15:00 13:46 10:20 11:03 11:35 11:53 14:23 ― 当日天候 ― 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ ― 気温 ℃ 3.3 4.0 8.5 4.0 5.3 5.3 5.3 ― カドミウム mg/l <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.003 シアン mg/l 鉛 mg/l <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.01 六価クロム mg/l <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.05 ヒ素 mg/l <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.01 水銀 mg/l <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 アルキル水銀 mg/l 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 検出サレナイコト PCB mg/l 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 不検出(<0.0005) 検出サレナイコト ジクロロメタン mg/l <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.02 四塩化炭素 mg/l <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.002 塩化ビニルモノマー mg/l <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.002 1,2-ジクロロエタン mg/l <0.0004 <0.0004 <0.0004 <0.0004 <0.0004 <0.0004 <0.0004 <0.004 1,1-ジクロロエチレン mg/l <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.1 シス-1,2-ジクロロエチレン mg/l <0.004 <0.004 <0.004 <0.004 <0.004 <0.004 <0.004 ー 1,1,1-トリクロロエタン mg/l <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <1 1,1,2-トリクロロエタン mg/l <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.006 トリクロロエチレン mg/l <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.03 テトラクロロエチレン mg/l <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.01 1,3-ジクロロプロペン mg/l <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.0002 <0.002 チウラム mg/l <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.0006 <0.006 シマジン mg/l <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.0003 <0.003 チオベンカルブ mg/l <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.02 ベンゼン mg/l <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.01 セレン mg/l <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.002 <0.01 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素 mg/l 0.1 1.3 1.4 <0.01 0.2 0.9 0.9 <10 ふっ素 mg/l 0.1 <0.08 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 <0.8 ほう素 mg/l <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.0 <0.01 <1 1,4-ジオキサン mg/l <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.05 不検出(<0.1) 不検出(<0.1) 不検出(<0.1) 不検出(<0.1) 不検出(<0.1) 不検出(<0.1) 不検出(<0.1) 検出サレナイコト 5-10 (3)事後調査における影響評価 事業の影響については、評価書で示された予測結果を含め、本調査結果などと対比して 評価を行った。 A.工事の実施に伴う地下水位の変化、地下水流動方向に対する影響 ○ 予測結果と本調査結果 評価書による予測結果 本調査結果 工事の実施によって樹木の伐採、土地の造成を行う ことから、雨水流出係数が大きくなり、沢水流量が 大きくなるものと考えられる。しかし、高山川の集 水域を変更するものではないことから、対象事業実 施区域から排出される水量は大きな変化がないも のと考えられる。また、仮設沈砂池下流の高山川が 護岸されていない河川であるため、表流水が増加し たとしても地下水を涵養するものと考えられる。 本工事(仮設進入路工)の開始以降 (平成 25 年 10 月~) ・観測井戸 水位低下等大きな変化なし 降雨量と水位変動は概ね一致 ・民間井戸 水位低下等大きな変化なし 降雨量と水位変動は概ね一致 ○ 環境保全措置 ・事後調査の実施による監視 ○ 評価基準 ・工事前の調査結果との比較 今年度は伐採等を行ったものの、大規模な地下掘削を行っていないため、地下水流動方 向に影響を及ぼすことはない。環境保全措置として実施している本調査結果では、観測井 戸水位および民間井戸水位とも工事前と同程度で推移しており、降水量との連動性も維持 されている。したがって、評価基準との整合が図られていたことから、本事業が周辺環境 に著しい影響を及ぼした可能性は無いものと考えられる。 B.土地の造成工事による降雨時の濁水の影響、並びにコンクリート打設及び地盤改良に よるアルカリ排水の影響 ○ 予測結果と本調査結果 評価書による予測結果 本調査結果 工事用道路等その他工事区域に関しては、造成工時 を実施するため、裸地が出現するが、仮設沈砂池で の沈降処理等の措置により濁水発生の抑制、濁水の 濃度の低減化が図られる。 埋立地等の構造物の建設では、コンクリートミキサ ー車でコンクリートを打設する。そのため、 「排水 処理施設での中和処理」 、 「コンクリート打設面のシ ートによる被覆」等の環境保全措置が重要となる。 これら対策を講じることにより、環境保全措置を適 切に講じることにより影響は最小限に留められる と予測される。 本工事(仮設進入路工)の開始以降 (平成 25 年 10 月~) ・観測井戸 水質に大きな変化なし ・民間井戸 水質に大きな変化なし 5-11
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