免疫関連遺伝子再構成検査について ◎長尾 美穂 1) 医療法人社団神鋼会 神鋼病院 検査科 1) 【はじめに】 悪性リンパ腫をはじめとするリンパ増殖性疾患の診 断の場合、リンパ球の増殖が腫瘍性なのか、あるいは 反応性であるのかは、形態やフローサイトメトリーに よる表面抗原分析のみでは判定が難しい症例も少なく ない。免疫関連遺伝子再構成検査は、増殖しているリ ンパ球のクローナリティを検出する検査であり、腫瘍 性か否かの診断に非常に有用である。神鋼病院では PCR 法による IgH(免疫グロブリン重鎖)遺伝子再構成 と TCR(T 細胞受容体 γ 鎖)遺伝子再構成検査を行って いる。 【IgH 遺伝子再構成検査について】 B 細胞では分化成熟段階で、多様な抗体レパートア を生み出すために免疫グロブリン遺伝子の再構成が生 じる。この再構成による遺伝子の多様性を用いて、 B 細胞のクローナリティの検索を行うことができる。 多様な抗体レパートアを生み出す機構の1つとして、 未分化幹細胞からプレ B 細胞の分化の過程で、IgH 遺 伝子セグメントの組換え(gene rearrangement)が生じ る。IgH 遺伝子の可変領域は多数の VH 遺伝子群、 DH 遺伝子群、JH 遺伝子群から構成され、初めに DH,JH 遺伝子群からそれぞれ 1 個の断片が選択され再 構成を起こし、続いて VH 遺伝子群内の 1 断片と DHJH 結合遺伝子が再構成される。また、組換えの際に 鋳型遺伝子には存在しない塩基の挿入(junctional diversity)、抗原刺激により再構成された VH 遺伝子 に生じる体細胞変異(somatic mutation)などの機構か ら無数の抗原に対応する B 細胞が生み出される。ある B 細胞集団の IgH 遺伝子の再構成が単一のパターン (モノクローナルな再構成)であれば腫瘍性、多様な 再構成パターン(ポリクローナルな再構成)であれば 非腫瘍性と診断できる。 PCR 法では再構成の途中にある DH-JH 遺伝子、再構 成が完了した VH-JH 遺伝子、さらに somatic mutation にも対応できるように、様々なプライマー を使用する multiplex PCR で行う。検出感度は約 1% である。しかし、細胞が分化成熟する程 somatic mutation の頻度は高くなるので、濾胞性リンパ腫や びまん性大細胞性 B 細胞リンパ腫などの成熟 B 細胞リ ンパ腫では偽陰性がしばしばみられるので注意が必要 である。 【TCR 遺伝子再構成検査について】 T 細胞でも B 細胞と同様に分化過程において、抗原 認識の多様性を生み出すため、TCR 遺伝子の再構成を 生じるので、multiplex PCR でクローナリティの検索 を行うことができる。 TCR 遺伝子は α,β,γ,δ の 4 鎖があり、TCRγ 鎖 遺伝子では T 細胞の分化に伴って、特に胸腺内での分 化の過程で遺伝子再構成が生じる。γ 鎖と δ 鎖遺伝 子は α 鎖と β 鎖遺伝子に先立って再構成され、それ ぞれ複合体を形成し T 細胞レセプターとして発現され る。TCRγ 遺伝子は Vγ 遺伝子群、Jγ 遺伝子群のみ で構成されており、その遺伝子群の数も限られている。 また、TCRγ 遺伝子は αβ 型 T 細胞、γδ 型 T 細胞 の両方で発現しているので、αβ 型 T 細胞リンパ腫 でも検出可能であるが、TCRγ 遺伝子のモノクローナ ルな再構成が γδ 型 T リンパ腫を意味するものでは ない。 T 細胞では、B 細胞で見られるような体細胞突然変 異は見られない。これらの理由から、使用されるプラ イマーの種類も少なく、Vγ 側で 4 種類、Jγ 側で 2 種類のプライマーが使用される。しかし、EB ウイル ス・サイトメガロウイルス感染で少数のリンパ球レパ ートアが反応する場合や、リンパ球のレパートアが少 数になる同種移植後の患者などで偽陽性がみられるこ とがある。また、急性リンパ性白血病(B-ALL,TALL)の場合は IgH、TCRγ 再構成が両方陽性になるこ とが多く、T、B どちらの腫瘍であるかを PCR のみで は決定できないことがある。 【まとめ】 少量の検体でクローナリティの有無が決定できる PCR 法による免疫関連遺伝子再構成検査はリンパ増殖 性疾患の診断に非常に有用である。さらに、院内で検 査を施行することで、検体が提出された次の日には結 果を出せるので、診断、治療方針、寛解の判定、およ び再発の有無等に役立つ検査結果を迅速に提供するこ とができる。 神鋼病院 TEL : (078)261-6711
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