ケーススタディ

SABICイノベーティブプラスチックス、航空機の
内装パネルの性能要求水準を満たし、軽量化と製
造効率を向上するソリューションを提供
Ultem*樹脂をハニカムコアパネルに使用する
ことにより時間のかかる2次加工が不要に
原油価格の上昇に伴い、航空機メーカーは製造する航空機の燃
費向上のための新技術に目を光らせている。その一つとして、
積層パネルにアラミド繊維ハニカムコア素材を使用して、航空
機の重量を大幅に減らす方法がある。しかし、これらの素材は
厳格化が進む火炎(Flame)、煙(Smoke)、毒性(Toxicity)、すな
わちFSTの基準に適合しなければならない。熱可塑性のハニカム
コア技術の先端企業であるTubus Bauer社は、従来のポリカーボ
ネート(PC)とポリプロピレン(PP)では航空機用途に準ずるFST基
準を満たすことができないことを認識していた。Tubus Bauer社
とTen Cate Advanced Composites B.V.社は、2つの課題の解決
策、1)コアで使用されているアルミニウムと熱硬化性樹脂代
替、2)パネル全体のサーモフォーミングを可能にする熱可塑性
樹脂を提供できるパートナー企業としてSABICイノベーティブプ
ラスチックスと作業を行った。
課題
航空機内装パネルの性能、安全性、コスト効率を
改善する
より多くの積荷を高価な燃料を節約しながら運ぶた
めに、航空機OEMメーカーは機体重量を減らす新し
い方法を懸命に探している。床張り材、側壁、パー
ティション壁、貨物室などの内装パネルの場合、有
望なアプローチは熱可塑性のハニカム技術を用いる
ことである。軽量でありながら強度と剛性を備えた
ハニカムコア構造は、従来はアラミド繊維ベースハ
ニカムとアルミニウムで作られる。
航空宇宙産業への事業拡大を目指していたドイツ
のハニカムコア素材メーカー、Tubus Bauer社は、
性能面でさまざまな問題に直面していた。大手
航空機OEMメーカーと取り引きする中で、Tubus
Bauer社は、航空機内装パネルに使用する素材の
重要な要求事項を突き止めた。それはすなわち、
FST基準に適合すること、素材と部品が航空機仕様
を満たす能力を持つこと、優れた機械的性能、お
よび軽量であることだった。
ハニカムコアを内装パネルに適した構造にするた
めには両側から積層する必要があるため、Tubus
Bauer社は、航空宇宙産業向けの高度な積層素材
の世界的なサプライヤーであるTen Cate Advanced
Composites社と協同して作業を行った。しかし、
積層化することでさらなる課題が生じた。熱硬化
ケーススタディ
性樹脂の使用に伴う時間のかかる工程手順と高い
システムコストを避けるために、2次加工の必要が
ない代替素材が必要になったのである。さらに熱硬
化性複合材やアルミニウムでは得られない、サーモ
フォーミングによる設計の柔軟性も必要だった。
Tubus Bauer社の取締役を務めるフランク・フィス
チャー氏は次のように語っている。「要求が多岐
に渡ったため、次世代を担う熱可塑性樹脂を幅広
く揃え、際立った技術的専門知識を持つ素材サプ
ライヤーが必要でした。この用途における主要な
2つの課題を解決するため、私たちはSABICイノベ
ーティブプラスチックスを選択しました。SABICイ
ノベーティブプラスチックスは、私たちが本当に
求めていたものを提供してくれました」
解決策
樹脂自体が難燃性を持ち、高い剛性を備える
Ultem樹脂
SABICイノベーティブプラスチックスのサポートに
よって、Tubus Bauer社とTen Cate社は、この課題
の優れた解決策となるUltem樹脂を選択した。こ
の非晶性の熱可塑性ポリエーテルイミド(PEI)樹脂
は、樹脂自体が難燃性を持ち、高い強度と剛性、
幅広い耐薬品性を提供する。Ultem樹脂グレード
は、FAR25.853やOSU規格などの低FSTおよび放熱
に関する航空宇宙業界の要求水準を満たす。
Ultem*樹脂/Tubus Bauer社
ハニカムコアは、Ultem樹脂を中空チューブに押出成形して一定
の長さに切断し、熱接合工程により接着してつなぎ合わせて製
造される。積層では、ガラス繊維またはカーボン繊維のマトリ
クス複合材に低粘度Ultem樹脂を混練する。サンドイッチ構造に
組み立てた後、2次元または3次元の形状にサーモフォーミング
し、直接塗装を施す。
SABICイノベーティブプラスチックスのトランスポーテーション
・インダストリアル・マネージャーを務めるジョン・ダーリン
トンはこう述べている。「Ultemは、燃料の経済性を実現する軽
量化や環境に有害な添加剤の排除など、今日私たちが直面する
課題をターゲットとした非常に用途の広い素材です」
一方で、SABICイノベーティブプラスチックスの用途開発マネー
ジャーである ヒルマ-・バッカ- はこう述べる。「多数のグレ
ードを持つUltem樹脂は、航空宇宙業界などの非常に要求の厳し
い業界のさまざまな性能および設計の課題を解決できます」
利点
より低いシステムコストで性能と設計の自由度を向上する
PCまたはPPをUltem樹脂に置き換えることで、Tubus Bauer社
は、乗客の安全に関する航空機および運輸業界の要求水準を満
たす新しいハニカムコア製品を製造することが可能になった。
Ultem樹脂は樹脂自体が難燃性を持つため、欧州連合やその他の
国々で有害な素材として規制されているハロゲン系添加剤を必
要としない。
この素材はとても軽量で非常に優れた剛性(曲げ弾性率
3300Mpa)を備え、燃料経済性の改善にも貢献している。
Ten Cate社が複合材にUltem樹脂を使用することには、数々のメ
リットがあった。まず、熱硬化性樹脂の代わりに熱可塑性樹脂を
使用することによって、工程時間が大幅に短縮された。最大で
1時間もレイアップ、組み立て、硬化、研磨、下塗りに費やす代
わりに、Ten Cate社は組み立て済みのサンドイッチシートを数分
のうちにサーモフォーミングすることが可能になった。さらに、
保管中の熱硬化性樹脂が硬化するのを防ぐ冷却ユニットが不要に
なる。また、Ultem樹脂は表面仕上げが優れているため、積層し
たものを前処理なしで塗装できる。
性能が向上すると同時に、加工時間と製造設備のコストが減るこ
とで、連携各社が複合製品で競合における差別化を図ることがで
きる。熱可塑性樹脂が実現するより高い設計の自由度によって、
新しい用途や市場が現実のものとなる可能性がある。
Ten Cate社の事業開発マネージャーを務めるニック・ティフィ
ン氏はこう語る。「このSABICのソリューションの重要なメリッ
トの1つは、競合での優位性です。サンドイッチパネルを熱硬化
性樹脂や金属では不可能だった形状にサーモフォーミングでき
るようになりました。それに加えて、当社は急速に成長する航
空宇宙産業に対応して加工時間を短縮し、生産能力を向上させ
ています。これらの要因によって、ダクト系統、積荷コンパー
トメント、調理室などの内装パネル以外の航空宇宙用途向けだ
けでなく、他の産業での成功に向けて当社の複合製品を採用で
きるようになりました」
詳細は、以下のウェブサイトをご覧ください。
www.tubus-bauer.com
www.tencate-ac.com
詳細は下記までお問い合わせください。
John Darlington
Industry Manager, Transportation
SABIC Innovative Plastics
T +31 164 292227
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