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PUROLITE APPLICATION GUIDE
硝酸除去用樹脂
APPLICATION GUIDE
イオン交換樹脂による
硝酸除去
硝酸態窒素・亜硝酸態窒素については、その健康および
自然環境への影響懸念から、水質規制を強化する世界的
に広がっている。イオン交換樹脂は、これら硝酸類を効率
的に除去し、低い運転コストを実現する技術である。
1 January 31, 2014 PUROLITE APPLICATION GUIDE
硝酸除去用樹脂
次の要因を考慮しながら好適に選択する
必要がある。
a. Ⅰ型アニオン交換樹脂はⅡ型に対比
して強い刺激臭を伴う
b. Ⅰ型・Ⅱ型いずれのアニオン交換樹
脂も有する過剰通液時の硝酸ダンピ
ングの潜在的可能性
c. 原水中の硫酸化合物が多い場合の
硝酸選択性強塩基アニオン交換樹脂
の使用
d. 高交換容量強塩基アニオン交換樹脂
の使用による運転コストおよび廃棄
物量の極小化
e. 硝酸・砒素の同時除去の必要性(この
場合には硝酸選択性強塩基アニオン
交換樹脂は使用しない)
f. 弱塩基性アニオン交換樹脂の使用に
よる廃棄物量極小化
背景
水処理システムにおける硝酸態窒素レベ
ルは人体の健康に有害な影響を及ぼす潜
在的な有害性が懸念されている。地表水は
例えば、特に肥料の使用量増加など、いく
つかの要因により、徐々に硝酸態窒素濃
度レベルが増大する影響を受けやすいも
のである。アメリカ合衆国ネブラスカ州、カ
ンザス州、オハイオ州、カリフォルニア州、
ニューヨークなどは既にその影響が顕在化
しており、その問題は世界的に拡大してい
る傾向にある。このため、米国環境保護庁
と世界保健機構は飲料用水中の最大許容
濃度レベルを それぞれ 45 、 50 mgNO3/L として設定した。イオン交換技術は
このような規制を遵守するのに有効な手段
として認識されている。
イオン交換による硝酸除去
臭気および硝酸ダンピング挙動
硝酸除去処理により排出される廃水廃液
量は、その処理システムや原水組成による
が、逆浸透膜での 20~25%と対比して、イ
オン交換樹脂では通常 0.2~3%と極めて少
なく、効率的な処理技術と言える。
イオン交換処理システムにて廃水廃液量を
最小限化するためには、)原水の化学的組
成の確認とイオン交換樹脂の好適選択、お
よび最適なプラント設計が重要である。
3級アミンを官能基として有する強塩基性
Ⅰ型アニオン交換樹脂は、その付加濃度
が ppt レベルであっても、敏感な使用者
にはアミン臭が感じられるものである。
そのため、家庭用や小型公共処理施設
においてはこのような臭気の発生が無い
樹脂を選定することが重要になってくるが、
この場合には、高交換容量タイプも含め
て強塩基性Ⅰ型アニオン交換樹脂は使
用すべきでは無く、PUROLITE® A300 の
ようなジメチルエタノールアミンを官能基と
して有する強塩基性Ⅱ型アニオン交換樹
脂が好ましい。
また、プラント設計において、イオン交換樹
脂塔には、並流再生方式・向流再生方式・
パックドベッド向流再生方式・連続床式など
のいくつかの選択肢があり、使用するイオ
ン交換樹脂の粒度分布について考慮しな
がら選定する必要がある。
Ⅰ型およびⅡ型アニオン交換樹脂につい
ては、誤って過剰通液をした場合や不適
切な再生処理を施した場合などには、樹
脂内へ吸着蓄積した硝酸が処理液中にリ
ークしてしまうことが考えられる。
運転初期に吸着した硝酸は、硝酸より樹
脂への親和性が高い他のアニオン、例え
ば硫酸などにより押し出されてしまう硝酸
ダンピング挙動が見られる。このような硝
酸・硫酸の挙動は Fig-1 に示した各アニ
オンのブレイク曲線に見ることができる。
樹脂選定
硝酸除去を行うためのイオン交換樹脂の
選定には以下の通りの選択肢が考えられ、
1. 硝酸選択性強塩基アニオン交換樹脂
2. 強塩基Ⅰ型アニオン交換樹脂
3. 高交換容量強塩基Ⅰ型アニオン交換
樹脂
4. 強塩基Ⅱ型アニオン交換樹脂
5. 弱塩基性アニオン交換樹脂
2 January 31, 2014 PUROLITE APPLICATION GUIDE
硝酸除去用樹脂
Fig-1 強塩基性Ⅰ型・Ⅱ型アニオン交換樹脂におけるアニオンブレイク曲線
アニオン交換樹脂の飲料水製造用途に
おいて共存するアニオンは、硫酸、硝酸、
重炭酸と塩素が一般的であり、強塩基性
アニオンⅠ型およびⅡ型のイオン交換樹
脂におけるこれらのアニオンに対しての
選択性は、硫酸>硝酸>塩素>重炭酸
の順となる。
A520E における各アニオンに対しての選
択性は、硝酸>硫酸>塩素>重炭酸とな
る。Fig-2 に、この硝酸選択性樹脂におけ
る各アニオンのブレイク曲線を示す。
処理原水中の硫酸イオン濃度の全体ア
ニオン濃度に対する比率が高い場合、一
般的には次の式で求めた硫酸イオン比率
が 60%以上となる場合には硝酸選択性樹
脂の利用が好ましい。
硝酸ダンピングが発生した場合、処理水
中の硝酸濃度はイオン交換樹脂処理前
よりも高くなる。このようなダンピングは硝
酸ブレイクポイントを超えて通水された場
合にのみ発生するものであり、硝酸飽和
ピーク前に運転サイクルを停止する必要
がある。
硫酸/(硫酸+硝酸) >60%
注)上記の式においては、例えば硫酸・
硝酸の各濃度を CaCO3 換算とする
ことが必要である。
硝酸選択性樹脂
上記において硫酸比率が 60%未満の場合
においては、樹脂価格含めた経済性を考
慮して、強塩基性Ⅰ型あるいはⅡ型アニオ
ン交換樹脂と硝酸選択性樹脂といずれの
使用が好適かと判断する必要があるが、
強塩基性Ⅰ型アニオン交換樹脂を使用す
る場合には、一般的な強塩基性Ⅰ型アニ
硝酸選択性強塩基性アニオン交換樹脂
PUROLITE® A520E は、前述のようなダン
ピング問題を解決するために開発され、
原水中の硫酸濃度が高い場合において
も硝酸ダンピングを発生することなく十分
な運転交換容量を発揮するものである。
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硝酸除去用樹脂
オン交換樹脂よりも 12-15%高い運転交換
容量を発揮する PUROLITE® A600E/9149
を選択することで廃水廃液量を低減するこ
とが可能である。
従来の樹脂使用時の廃水廃液量 1~3%に
対して、特殊弱塩基性アニオン交換樹脂の
利用時には 0.2%以下まで低減可能である
というものである。
なお、特殊な弱塩基性アニオン交換樹脂を
使用する方法についての特許も存在するこ
とを付記しておく。この特許技術においては
各アニオン交換樹脂の特徴比較を表 1 に
まとめる。
Fig-2 硝酸選択性樹脂のアニオン・ブレイク曲線
表1:硝酸除去に使用可能な樹脂タイプの特徴比較 樹脂タイプ 臭気レス 硝酸ダンピング発生可能性 高運転交換容量 硝酸選択性樹脂 Yes No No 強塩基性Ⅰ型アニオン交換樹脂 No Yes No 高交換容量・強塩基性Ⅰ型アニオン交換樹脂 No Yes Yes 強塩基性Ⅱ型アニオン交換樹脂 Yes Yes No 弱塩基性アニオン交換樹脂・特許技術 Yes No No 4 January 31, 2014 PUROLITE APPLICATION GUIDE
硝酸除去用樹脂
各種アニオン樹脂の比較例
硝酸・砒素の同時除去
高交換容量強塩基性Ⅰ型アニオン交換樹脂、
強塩基性Ⅱ型アニオン交換樹脂、および硝
酸選択性樹脂を原水水質・再生条件を統一
して比較した結果を表 2 に示す。
砒素など硝酸以外の汚染物質も同時に除去
することを求められるケースもあり、例えば米
国においてはそのニーズは高い。
しかしながら、硝酸選択性樹脂は、その硝酸
への高い選択性により、砒素が硝酸よりも早
いブレイクポイントを示すことから、この様な
硝酸・砒素同時除去の用途には不適である。
・原水水質
1 meq/l (62 mg/l) NO3,
1 meq/l (48 mg/l) SO4,
2 meq/l (122 mg/l) HCO3
1 meq/l (35.5 mg/l) as Cl
砒素については硝酸よりも有害性が高いこと
から、このような硝酸・砒素同時除去には強
塩基性Ⅰ型あるいはⅡ型のアニオン交換樹
脂を用いることが好ましい。
・再生条件
120g-NaCl/L-R、向流および並流
米国環境保護庁ウェブサイトにて、このよう
な硝酸・砒素同時除去技術の実用プラントが
公表されており、バレー、オレゴン、マックック、
ネブラスカなどでの各プラントでは、
塩水再生複層樹脂塔により、硝酸・砒素・ウ
ラニウムおよび TOC を同時に除去する技術
が使用されている。
例えば、最大許容濃度が 45mgNO3/L(=10mg-N/L)である米国においては、
基準値の 80%、すなわち 36mg-NO3/L を処
理目標値として運転することが多く、この場
合には原水の一部をイオン交換樹脂塔を介
さずにバイパスした後にイオン交換樹脂で処
理した水と混合することで運転効率化を図る
ことが多い。
表2:高交換容量強塩基性Ⅰ型アニオン交換樹脂・Ⅱ型アニオン換樹脂、 および硝酸選択樹脂の比較 樹脂名 *PFA200E, PFA520E は 均一粒径グレード Ⅰ型・高
交換容量 Ⅱ型 硝酸選択
性樹脂 再生 通水量 NO3 リーク
方式 (BV) (mg/l) A600E/9149 並流 293 10.35 A600E/9149 向流 321 5.53 廃水廃液量 バイパス 生産水量に
押出し 高速 塩水 量(%) 対する廃水
通液量 リンス リンス (BV) (BV) (BV) (BV) 廃液量 % 1.12
1 3 5.12 50 0.87 1.12
2 0 3.12 54 0.45 A200E 並流 257 10.35 1.12
1.5 5 7.62 50 1.48 PFA200E* 向流 282 5.53 1.12
2 0 3.12 54 0.51 A520E 並流 272 8.15 1.12
1.5 5 7.62 52 1.34 PFA520E* 向流 250 4.35 1.12
2 0 3.12 55 0.56 5 January 31, 2014 PUROLITE APPLICATION GUIDE
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