平成 26 年 6 月 17 日 ベンチマークに勝てない外国株式型ファンド 主要先進国の株式を投資対象とする投信信託(以下、外国株式型ファンド)の売れ行きが好調 である。直近 2 年間(2012 年 6 月~2014 年 5 月)の資金流入額は 2 兆 8,187 億円と、不動産投 資型(REIT)の 2 兆 4,472 億円を上回ってカテゴリートップの水準である。ちなみに 3 位はハイイー ルド債券型(1 兆 9,144 億円)、4 位が国内株式型(1 兆 5,012 億円)となっている。同期間において 外国株式市場のパフォーマンスが日本株式市場のそれを上回ったことが主因であろう[MSCI 世 界株式(配当込み、円ベース)のリターン 97.2%、TOPIX(配当込み)のリターン 74.1%]。 このようにトータルリターンベースでは良好なパフォーマンスを示す外国株式型ファンドである が、市場対比でみると運用成績の芳しくないファンドが多い。以下ではアクティブに運用される外 国株式型ファンド※を対象に、その要因を探ってみた。 (※ 弊社区分で「外国株式(先進国)・グローバル、アクティブ運用、ヘッジなし」に分類される国 内籍の公販ファンド) (要旨) ¡ 直近 5 年間の運用実績を見ると、1 年リターンが市場リターン(以下、BM(ベンチマーク) リターン)を上回る外国株式型ファンドは平均で約 3 割、5 年リターンでは 1 割強に過ぎな い。 ¡ 5 年リターンでBMリターンを上回るには、1 年リターンの大きさよりも毎年コンスタントにB Mを上回ることの方が重要である。 ¡ BMリターンを上回る可能性の高いファンドを選ぶ視点としては、運用管理費用よりもアク ティブリスクの方が重要。直近 5 年間を見る限り、運用管理費用の低いファンドは超過リタ ーンを獲得していない。一方、アクティブリスクの高いファンドの中にBMリターンを上回る ファンドが存在する。 1/7 1. 市場対比の運用実績 直近 5 年間について外国株式型ファンドとBM[MSCI 世界株式(配当込み、円ベース)]のリタ ーンを比較すると次の特徴が見られる(表 1、図 1)。 ① 1 年リターンを見るといずれの期間においてもファンドの中央値はBMを下回る。BMをア ウトパフォームしたファンドの割合も 16.6%~46.8%、5 年平均で 30.2%と総じて低位。 ② 5 年リターンではファンドの中央値がBMを▲32.1%も下回り、アウトパフォームしたファン ドの数は 12.4%と 1 割強に過ぎない。 表 1:ファンドパフォーマンスの市場比較 1年リターン 5年 リターン ~2010/3 ~2010/9 ~2011/3 ~2011/9 ~2012/3 ~2012/9 ~2013/3 ~2013/9 ~2014/3 ~2014/3 BM フ 47.5% 0.1% 2.1% -10.5% -0.5% 22.2% 29.2% 52.2% 30.1% 151.7% 最大値 96.1% 30.4% 24.6% -1.6% 12.4% 42.5% 44.8% 82.5% 59.5% 290.7% 平均値 43.8% -0.1% 1.5% -13.6% -5.3% 15.5% 22.7% 44.6% 24.9% 117.4% 中央値(MED) 41.9% -0.3% 1.0% -13.4% -3.4% 17.5% 24.7% 45.2% 24.8% 119.6% -5.6% -0.4% -1.1% -2.9% -2.9% -4.7% -4.5% -7.1% -5.2% -32.1% 1.4% -26.6% -12.6% -37.0% -44.8% -7.7% -28.1% -35.2% -25.8% -21.9% 27.9% 46.8% 35.7% 33.9% 32.0% 16.6% 21.2% 31.3% 26.3% 12.4% 147 156 157 171 172 175 179 176 175 121 ァ MSCI世界株式 (配当込み、円ベース) ン ド MED-BM 最小値 アウトパフォームした ファンドの割合 ファンド数 ※1 年リターン:各計測時点における直近1年間のリターン 図1:ファンドパフォーマンスの市場比較 100% 2% 80% 0% 60% -2% 40% -4% MED-BM(右軸) 20% 0% -6% アウトパフォームした ファンドの割合 ~2010/3 ~2010/9 ~2011/3 ~2011/9 ~2012/3 ~2012/9 ~2013/3 ~2013/9 ~2014/3 -8% 1年リターン 2/7 2. 市場に勝つ頻度と 5 年リターンの関係 表 1 で使用した 5 年リターンが計測できる 121 ファンドの1年リターン(各 9 回分)について調べ てみる。 ① 9 回の 1 年リターンデータの内、BMを上回った回数が 4 回以下のファンドは約 8 割(96 フ ァンド/121 ファンド)に上る。 ② 5 年リターンがBMを上回るのは 9 回中 5 回以上勝ったファンドに限られる。1 年リターンで 6 回以上BMを上回る(勝率 67%)と 5 年リターンも市場を上回る確率が高くなる。5 年リタ ーンでBMを上回るためには 1 年リターンでコンスタントにBMを上回ることが必要である。 図2:1年リターンがBMを上回る頻度と 5年リターン 棒グラフ ファンド数 40 折れ線グラフ 5年リターン 250% 34 30 200% 22 BM(152%) 20 150% 14 10 15 11 9 7 9 100% 0 50% 0回 1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 9回 BMを上回った頻度 ※計測時点は図 1 と同様で計 9 回、5 年リターンは該当ファンドの算術平均値 棒グラフ:青は 5 年リターンがアンダーパフォームしたファンド数、赤は同じくアウトパフォームしたファンド数 図 2~図 6 の対象ファンドは 60 ヵ月以上の運用実績があるファンド 図 2 および図 4~図 6 のリターン測定期間は直近 5 年間(2009 年 4 月~2014 年 3 月) 3/7 3. 運用管理費用と超過リターン 外国株式型ファンドの運用管理費用は平均で 1.65%、中央値で 1.70%と他カテゴリーに比べ て総じて高い水準にある(図 3)。運用管理費用がどの程度影響を与えているか見るために、 運用管理費用控除前の 5 年リターンとBMリターンを比較してみる(図 4)。運用管理費用控 除前のリターンで見ても7割以上のファンドがBMを下回っており、BMを凌駕できない理由 はそれだけでは説明できない。 図3:運用管理費用分布 ファンド数 30 25 20 15 10 2.1%~ 2.1% 2.0% 1.9% 1.8% 1.7% 1.6% 1.5% 1.4% 1.3% 1.2% 1.1% 0 ~1.0% 5 運用管理費用 ※緑線:平均値 1.65% ※緑線:MSCI 世界株式(配当込み、円ベース)5 年リターン(152%) 4/7 運用管理費用と超過リターンの関係を見たのが図 5。BMに負けているファンドの数は、運用管理 費用が高い側にやや多く見られるが運用管理費用が低い側にも相応存在し、これからも運用管 理費用との明確な関係は見出せない。むしろ、BMリターンを上回ったファンドはその大半が運用 管理費用の高い側にある点に注目すべきであろう。 (年率)超過リターン 20% 図5:運用管理費用と超過リターンの関係 10% 0% 運用管理費用 (%) -10% -20% -30% 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 ※青マーク:アウトパフォームしたファンド、 赤マーク:アンダーパフォームしたファンド 緑線は平均値(1.65%)、運用管理費用は実質的な費用 4. アクティブリスク*1 と超過リターン*2 BMを上回るリターンを得るためにどの程度のアクティブリスクが必要だったのか見てみる (図 6)。 ① アクティブリスクは 1.5%~30.8%の幅広い範囲に分布しているが、2.5%~7.5%近辺に集 中している。 ② アクティブリスクが 5%程度以下(同リスク 5%以下のファンドは全体の 44.6%)のファンド にはBMリターンを上回るファンドが見られない。高いアクティブリスクを取ればBMを上回 るリターンが得られるとは限らないが、一定のアクティブリスク(5%程度)を取らない限りB Mリターンを上回る可能性はないということは明らかに見える。 ※1 アクティブリスク:ベンチマークに対してファンドのリターンがどの程度乖離しているかを示す指標。月次超過 リターンの標準偏差。 ※2 超過リターン:ベンチマークのリターンとファンドのリターンの差 5/7 超過リターン (年率) 図6:アクティブリスクと超過リターンの関係 15% 10% 5% 0% アクティブリスク -5% -10% -15% -20% -25% -30% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% ※青マーク:アウトパフォームしたファンド、 赤マーク:アンダーパフォームしたファンド アクティブリスク:超過リターンの(年率)標準偏差 超過リターン:5 年超過リターンを年率換算 5. 結論 アクティブに運用する外国株式型のファンドを選ぶ定量的な視点として直近 5 年間の分析か ら言える事は以下のとおり。 ① 長期投資を前提とした外国株式型ファンドを選ぶには、1 年リターンの大きさよりも同リタ ーンがコンスタントに市場を上回っているか否かを重視すべき。 ② 運用管理費用の低い外国株式ファンドが市場を凌駕する可能性は低い。 ③ BMリターンを上回る可能性を見るにはアクティブリスクが重要。一定のアクティブリスク を取っているファンドでない限り、BMリターンを上回る可能性は低い。 6/7 【照会先】 本件に関するお問い合わせ 三菱アセットブレインズ株式会社 アドバイザリーグループ 西村 TEL:03-6721-1037 E-mail: inquiry@mab.co.jp ●本レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘のために作成されたものではありません。 ●本レポートは、信頼できる情報源から入手した本レポート作成日現在における情報をもとに作成しておりますが、当該情報 の正確性・完全性を保証するものではありません。 ●本レポート中のグラフ・数値等は、あくまでも過去の実績を示すものであり、将来の傾向・数値等を保証するものではありま せん。 ●本レポートは、許可なく複製、転載、引用、転送することを禁じます。 7/7
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