妊婦検体から抗 Bg 抗体の存在が示唆された一症例

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妊婦検体から抗 Bga 抗体の存在が示唆された一症例
◎金海 仁在 1)、瀬口 周 1)、川村 知織 1)、児玉 真由美 1)、河合 健 1)、初田 和由 1)、佐野 道孝 1)
独立行政法人 国立循環器病研究センター 1)
【はじめに】赤血球抗原 Bennett-Goodspeed-Sturgeon(以
【考察】健常人において多数の症例では Bg 抗原の赤血球
下;Bg)は HLA-ClassⅠ抗原が赤血球表面に発現したもの
上への発現はない、もしくは発現していても極めて微量で
として知られる。一般的に
B17、Bgcは
Bga は
HLA-B7、Bgbは
HLA-
HLA-A28 と関連する。今回、不規則抗体同定
不能検体から抗
Bga 抗体を推定し得たので報告する。
ある。また、発現量に個体差が見られること、抗 Bg 抗体
の力価に違いがあることも要因となり、抗原表に表示され
たパターン通りに反応することは珍しい。これらの要因で
【症例】28 歳女性、輸血歴なし。既往帝王切開後の経産婦。
抗 Bg 抗体は同定不能と判定される事が多いと考えられる。
他院にて不規則抗体検査を行うも同定できず、妊娠 32 週時
本症例における抗 Bga 抗体も、当初は特異性が不明な抗体
に当センター紹介となった。
として検出されたが、経産婦であるという情報をもとに
【結果】患者の ABO 式血液型は A 型、Rh 系血液型は
HLA 抗体が検出されたことにより存在が示唆された。患者
R1R2 であった。不規則抗体スクリーニング検査、同定検査
HLA 抗体は、HLA-B7 抗原を含む交差反応性グループ
ともに間接抗グロブリン法のみ陽性。抗原表を用い消去法
(Cross reactive group; CREG)で陽性と判定されており、抗
を行ったが、特異的な反応パターンは認められず抗体同定
Bga 抗体として交差反応した可能性も考えられる。
不能であった。DAT は陰性。HLA 抗体検査ではスクリー
【結語】抗 Bga 抗体の赤血球抗体としての臨床的意義は、
ニング検査陽性、Single Antigen による同定検査では、B7
ほとんどないものとされている。しかしながら、HLA 抗体
抗原を含む多くの B-Locus において陽性。さらに B7 抗原
としての臨床的意義は重要であり、血小板輸血時には
陽性の自家製パネル血球を用いた LISS-間接抗グロブリン
HLA 適合血小板の使用が必要である。
法でも陽性であった。
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