SrAl4 の Al NMR による研究

SrAl4 の Al NMR による研究
琉球大理 神戸大理 A
黒島裕子, 比嘉野乃花, 通事樹, 與儀護, 二木治雄,
仲村愛, 辺土正人, 仲間隆男, 大貫惇睦
播磨尚朝 A
Al NMR studies of SrAl4
Univ. of the Ryukyus and Kobe Univ.A
H. Kuroshima, N. Higa, T. Toji, M. Yogi, H. Niki,
A. Nakamura, M. Hedo, T. Nakama, Y. Ōnuki, and H. HarimaA
SrAl4 は図 1 のような体心正方晶の BaAl4 型 (空間群 I4/mmm) の結晶構造をとり,Al
は結晶学的に異なる 2 つのサイトに存在する。SrAl4 は,電気抵抗の測定から TCDW = 242 K
付近で CDW 転移があると報告されており,T = 100 K 以下では構造相転移と思われる転移
が観測されている。この 2 つの転移を微視的見地から調べるため,我々は Al 自己フラック
ス法で育成した極めて純良な単結晶を用いて,約 6.5 T の外部磁場 H0 を ab 面に平行にか
け,4.2 ~ 300 K の温度範囲で Al NMR ( I = 5/2 ) を行った。また,単結晶を粉末化した試料
についても測定を行った。
単結晶の Al NMR スペクトルは,図 2 のように 300 K では鋭い共鳴線を示す。300 K の
Al NMR スペクトルの解析から,核四重極周波数 νQ は,Al(I)で νQI = 925 kHz,Al(II)で νQII =
427 kHz と求まった。理論計算より,Al(I)で νQI = 925.9 kHz,Al(II)で νQII = 421.1 kHz である
ので,測定値と比較することにより Al のサイトを同定した [1]。図 3 に 300 ~ 120 K にお
ける単結晶の Al(II)の第一サテライトのスペクトルを示す。300 K では 1 本であったスペク
トルが,TCDW = 242 K 付近から温度が下がるにつれて,2 つに分かれる。このスペクトルの
変化は,CDW によって原子核の位置での電場勾配が変調を受けるためである。温度が下が
るにつれて CDW 転移および構造相転移を経るため,4.2 K では複雑な構造を持つスペクト
ルが観測された。このことは,複数の電場勾配を有する Al サイトが低温において存在する
ことを示唆していると考えられる (図 2) 。
単結晶のスペクトルから求めたナイトシフトの温度依存性を図 4 に示す。ナイトシフト
は,Al(I)において TCDW 以下の温度では徐々に負側にシフトし,構造相転移温度 100 K 以下
では上昇に転じ,70 K 付近からは下降に転じる。一方,Al(II)の高温では変化が小さくほぼ
一定値を示し,100 K 以下でやや上昇し,低温ではほぼ一定値を示す。
粉末試料の Al NMR スペクトルを図 5 に示す。300 K でのスペクトルでは,H0⊥VZZ に対
応するサテライトピークが強調されていることがわかる。これは試料が配向していること
を示し,磁化率に異方性があることを示している。結晶構造から VZZ // c 軸であることをふ
まえて,粉末試料と単結晶のスペクトルを比較解析し,磁化容易軸は ab 面内にあることを
見出した。4.2 K では複数の Al サイトが存在すると考えられるので,粉末試料のスペクト
ルは単結晶と同様に複雑な形状を示した (図 5)。
[1] H.Harima: private communication.
Sr
Al (II)
Sr
Al (I)
Al (II)
Al (I)
c
b
a
SrAl4
SrAl4
H0 // ab plane
T = 300 K
71.5
Intensity (arb.units)
Intensity (arb.units)
図 1 SrAl4 の結晶構造
72.0
72.5
Frequency [MHz]
(a) T = 300 K
図 2 73.0
H0 // ab plane
T = 4.2 K
71.5
72.0
72.5
Frequency [MHz]
(b) T = 4.2 K
SrAl4 の単結晶の Al NMR スペクトル
73.0
SrAl4
300 K
240 K
230 K
200 K
180 K
Knight shift [%]
220 K
0.12
SrAl4
0.10
H0 // ab plane
lower
raise
lower
raise
Al (I)
0.08
Al (II)
160 K
0.06
120 K
71.96
71.98
72.00
72.02
72.04
0
72.06
100
150
200
250
300
Frequency [MHz]
Temperature [K]
図 3 単結晶の Al(II)第一サテライトの
図 4 単結晶試料による
ナイトシフトの温度依存性
スペクトルの温度依存性
SrAl4
Intensity (arb.units)
Intensity (arb.units)
50
T = 300 K
71.5
72.0
72.5
Frequency [MHz]
(a) T = 300 K
73.0
SrAl4
T = 4.2 K
71
72
73
Frequency [MHz]
(b) T = 4.2 K
図 5 SrAl4 の粉末試料の Al NMR スペクトル
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