39-28 AlドープZnO薄膜およびカーボンナノチューブのXPS分析

熊本大学工学部附属工学研究機器センター報告
−第39号−
39-28 Al ドープ ZnO 薄膜およびカーボンナノチューブの XPS 分析
大学院自然科学研究科
教授
蛯原健治
〃
教授
池上知顕
〃
後期課程
朴相武
〃
後期課程
上田剛
パルスレーザデポジション(PLD)法を用いて、酸素ガス圧力を変化させながら Al ドープ ZnO(AZO)薄膜の作製を行い、
その組成の変化を XPS により分析した(図 1)。XPS スペクトル(図 1 左)から、いずれも Zn2s および O1s、C1s、Al1s に
対応するピークが観測された。O1s のピーク(図 1 右)はいずれも 538.30±0.30 および 536.51±0.20 eV の 2 つのガウス分布
によりフィットされた。538.30±0.30eV の成分は ZnO の酸素欠損領域中の O2-イオンに由来する。従って、この成分の強
度の変化は酸素欠陥濃度の変化と関連が強いと考えられる。酸素ガス圧力 10~50mTorr において、薄膜中のこの成分の
減少が見られる。536.51±0.20 eV の成分は六方晶系 Zn2+アレイのウルツ鉱型構造上の O2-イオンに由来する。
Fe/Al 触媒層を形成させた Si 基板から、熱 CVD 法を用いてカーボンナノチューブ薄膜を直接成長させた。800℃(配向
性が良くない)、900℃(配向性が良い)で成長させた CNT 薄膜の XPS スペクトルを図 2 に示す。900℃のサンプルの C1s
スペクトルはグラファイト由来のピーク(284.5eV)が鋭く現れ、純度の高い CNT が出来ている様子が見て取れる。一方
で 800℃のものは高エネルギー側へのピークシフトが見られる。これは不純物に起因する C-H 結合などが堆積している
ことを示唆している。また、Al2p のスペクトルでは、いずれも AlxOy へのシフトが見られた。AlxOy は Fe の微粒子化を
促進する働きをするとの報告がある。本実験で作製した CNT 薄膜は、Fe 触媒微粒子が密に詰まっているために、直径
の細い CNT が互いに絡まりながら基板と垂直方向に成長しているものと考えられる。
Zn2p
(a) 3 mTorr
Oxygen 1s peak
(b) 5 mTorr
O1s
(e) 50 mTorr
C1s
(c) 10 mTorr
Intensity (counts)
Al1s
(d) 20 mTorr
(d) 20 mTorr
(c) 10 mTorr
(e) 50 mTorr
(b) 5 mTorr
(a) 3 mTorr
542
540
538
536
534
532
Binding energy (eV)
1200
600
0
Binding Energy (eV)
図 1 酸素ガス圧力を変化させながら作製した AZO 薄膜の XPS スペクトル
3000
2000
Al O
2
T =800C
d
300
(b) Al 2p
T =900C
d
3
250
2
Al O
d
200
Al-73eV
T =900C
(a) C 1s
Intensity (arb. units)
Intensity (arb. units)
4000
286.5eV
d
284.5eV
T =800C
3
350
5000
150
100
1000
50
0
299 297 295 293 291 289 287 285 283 281 279 277 275
Binding Energy (eV)
0
84
80
76
72
68
64
Binding Energy (eV)
図 2 作製したカーボンナノチューブの XPS スペクトル (a)C1s (b)Al2p