微積分 I 2014 25 9 対数関数の微分 関数 y = ex は定義域が R,像が R++ = (0, ∞) である単調増加関数であっ たからその逆関数を考えることができる.x に対し,y は ex と定まるのだか ら,この y に対応する x は loge y であることは対数の定義から自明なことで ある.すなわち,x と y は方程式 y = ex を満たす関係にあるということと, 方程式 x = loge y を満たす関係にあるということは同じことを言っているに 過ぎない.習慣に従い,独立変数を x で従属変数を y で書くことにすると, 指数関数 y = ex の逆関数は y = loge x である.この関数を e を底とする対数関数という.上記の思考の推移をグラ フで書くと以下のようである. y y = ex e 1 1 図6 y = ex のグラフ ⇓ x 微積分 I 2014 26 x x = loge y 1 1 e y 図 7 x = loge y のグラフ ⇓ y y = loge x 1 1 e x 図 8 y = loge x のグラフ そして,y = loge x と y = ex のグラフを同一の座標平面に描くと以下のよ うになる. 微積分 I 2014 27 y y = ex e y = loge x 1 1 e x 図 9 y = loge x と y = ex のグラフ さてここで対数関数 y = loge x の導関数を求めてみよう. 対数関数の中で e を底とするものが最も重要であり,他の底の対数関数の情報は e を底とする 対数関数のそれから容易に得ることができることが後に分る.従って e を底 とする対数関数には単純な記号を与えることが習慣となっており,底 e の表 記を省略し,単に y = log x と表す.この講義でも以後この習慣に従うことにする. 微積分 I 2014 28 この関数 y = log x の逆関数は x = ey でありこの導関数はすでに求めてあ るので, 逆関数の微分法が適用できる. y′ = 1 1 1 1 = y = log x = y ′ (e ) e e x より, y = log x のとき y ′ = 1/x であることが証明できた. さらに考察を進め,一般に 1 とは異なる正数 a について, 指数関数 y = ax の逆関数は a を底とする対数関数とよばれ, x = loga y と表記される. 問 15 ここでなぜ a は 1 とは異なると条件がついているのだろうか. 対数関数 y = loga x の導関数を求めてみよう. これは簡単で,y = loga x = log x/ log a と変形して, y′ = 1 x log a をうる. また,y = ax の逆関数が x = loga y であることに注意し,逆関数の 微分法を使うことにより, y′ = 1 = (loga y)′ 1 1 y log a = ax log a が成立する. 前節の指数関数と本節の対数関数の考察を定理の形にまとめると, 定理 16 a > 0, a ̸= 1 に対し, y = ax の導関数は y ′ = ax log a であり, y = loga x の導関数は y′ = 1 x log a である. 特に, y = ex の導関数は y ′ = ex であり, y = log x の導関数は y′ = である. 1 x 微積分 I 2014 29 10 対数微分法 ある関数 y = f (x) を微分するときにそのままでは難しいが log f (x) は容 易に微分できることがある.この場合まず f (x) > 0 の範囲でのみ対数をとれ ることに注意しなくてはならない.この条件が満たされたとき,y = f (x) の 両辺の対数をとることにより,log y = log f (x) となり,両辺を微分すること により, y′ = (log f (x))′ y となる.これより, y ′ = y(log f (x))′ = f (x)(log f (x))′ となって,y ′ を求めることができることがある. 例 17 y = ax の導関数は前節で求めているが,ここでは対数微分法を使って みる.両辺の対数をとり,log y = log ax = x log a となる.ここで,両辺を 微分して,y ′ /y = log a となるので, y ′ = y log a = ax log a が求まる. 例 18 y = xa の導関数を求めてみる.ここで,a は実数.両辺の対数をと り,log y = log xa = a log x となる.ここで,両辺を微分して,y ′ /y = a/x となるので, y ′ = ya/x = axa−1 が求まる. 例 19 y = xx の導関数を求めてみる.両辺の対数をとり,log y = log xx = x log x となる.ここで,両辺を微分して,y ′ /y = log x + x(1/x) = log x + 1 となるので, y ′ = y(log x + 1) = xx (log x + 1) が求まる. 微積分 I 2014 30 計算練習 2 以下の関数を微分しなさい. 1. (log x)5 5(log x)4 x 2. log(x2 + 1) 2x 1 + x2 3. log(ex + x) ex + 1 x + ex 4. (x2 + 1)ex 2xex + (x2 + 1)ex 5. log x x2 + 3 3 + x2 − 2x2 log x x(x2 + 3)2 6. (x3 − 1)(e3x + 5x) 20x3 − 5 + 3e3x (x3 + x2 − 1) 7. 4 (x 3 − ex )(2x + 1) 4x1/3 + 14x4/3 − ex (2x + 3) 3 微積分 I 2014 31 8. e3x 2 +8 6xe3x 9. 2 +8 1 log(x4 + 1) − (x4 4x3 + 1)(log(x4 + 1))2
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