プレス発表資料 平 成 27 年 4 月 17 日 秋 田 大 学 「甲状腺がん悪性化の機構を解明」 米国科学誌「Cancer Discovery」に研究成果を発表 秋田大学生体情報研究センター・大学院医学系研究科 微生物学講座の佐々木 雄彦 教授らは、 甲状腺癌が悪性化する機構を発見しました。 この発見は、甲状腺癌をはじめ、特定の脂質の蓄積が引き金となる様々な癌の悪性化に関わるこ とが予想され、その治療への応用も期待されます。本研究は、内閣府の最先端・次世代研究開発支 援プログラム(NEXT Program)「病態関連膜脂質代謝の最先端研究-医薬応用への戦略的展開-」 (研究代表者:佐々木雄彦) 、並びに独立行政法人科学技術振興機構(JST)/日本医療研究開発機 構(AMED)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST) 「疾患における代謝産物の解析お よび代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」 (研究総括:清水孝雄、研究代表者:新井洋由) の一環として行われ、2015 年 4 月 16 日に米国癌学会誌「Cancer Discovery」のオンライン速報版 で公開されました。 なお、本論文についてご質問等がある場合は、佐々木雄彦教授の研究室で対応いたします。 Cancer Discovery OnlineFirst:http://cancerdiscovery.aacrjournals.org/content/early/by/section 16 Apr at 12:00 US Eastern Time ・Kofuji et al. Cancer Discovery; Published OnlineFirst April 16, 2015; doi:10.1158/2159-8290. ・Chew et al. Cancer Discovery; Published OnlineFirst April 16, 2015; doi:10.1158/2159-8290. 【参考】 癌抑制遺伝子産物 PTEN は、細胞膜を構成するリン脂質の一種である“PIP3”を分解します。 PTEN を欠損するマウスでは甲状腺に良性の腫瘍が認められますが、発癌には至りません。 今回、佐々木雄彦教授らは、INPP4B という新たな PIP3 分解酵素を見出しました。PTEN に加 えて INPP4B を欠損する二重欠損マウスを作製したところ、全てのマウスが遠隔転移する悪性 の甲状腺癌を発症しました。さらに、この二重欠損マウスの甲状腺で PIP3 が異常に蓄積して いることが、新しい脂質解析技術の開発により明らかとなりました。また実際に、ヒトの甲状 腺癌や子宮内膜癌などで、PTEN と INPP4B 両遺伝子の異常や発現低下が起きていることも明ら かになりました。 本研究により、PTEN と INPP4B は協調して PIP3 の異常蓄積を防ぐことで、癌の悪性化を抑 制するブレーキの役割を担うことが明らかになりました。今後、INPP4B を作用点とした新し い医薬や、PIP3 測定による新しい診断法の開発につながることが期待されます。 【本研究に関するお問い合わせ】 秋田大学大学院医学系研究科 医学専攻 微生物学講座 TEL:018-884-6080/6290 【資料に関するお問い合わせ】 秋田大学広報課 TEL:018-889-2854 Kofuji et al. INPP4B is a PtdIns(3,4,5)P3 phosphatase that can act as a tumor suppressor. Cancer Discovery; Published OnlineFirst April 16, 2015; doi:10.1158/2159-8290.CD-14-1329 Chew et al. In vivo role of INPP4B in tumor and metastasis suppression through regulation of PI3K/AKT signaling at endosomes. Cancer Discovery; Published OnlineFirst April 16, 2015; doi:10.1158/2159-8290.CD-14-1347 健常な甲状腺 細胞膜リン脂質 PIP3 の分解機構破綻による癌の悪性化 PIP3 レ ベル PTEN PTENとINPP4Bの欠損により発症した甲状腺がん 血管内に浸潤した甲状腺がん細胞 INPP4B PTEN INPP4B PTEN INPP4B PIP3 PIP3 PIP3 正常 過形成 悪性腫瘍 秋田大学 生体情報研究センター・大学院医学系研究科 佐々木 雄彦 Takehiko Sasaki, Ph. D. *Professor, Department of Medical Biology Graduate School of Medicine *Director, Research Center for Biosignal Akita University 1-1-1 Hondo, 010-8543, Akita, Japan TEL: (Japan : 81) 18-884-6080 E-mail : [email protected]
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