(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 有効成分としてデオキシリボ核酸(DN;pdf

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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 有効成分としてデオキシリボ核酸(DN
A)を含有する血圧降下剤。
【請求項2】 デオキシリボ核酸が、エンテロコッカス
・フェカリス菌体から得られたものである請求項1記載
の血圧降下剤
【請求項3】 デオキシリボ核酸が、胸腺等の動物の臓
器から得られたものである請求項1記載の血圧降下剤
【発明の詳細な説明】
【0001】
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【産業上の利用分野】この発明は、細胞より抽出された
デオキシリボ核酸(DNA)を有効成分として含有する
血圧降下剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、高血圧症の予防もしくは治療のた
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めに様々な種類の血圧降下剤(降圧剤)が使用されてい
る。現在臨床で使用されている降圧剤は、降圧利尿剤、
β遮断剤、交感神経抑制剤、血管拡張剤、カルシウム拮
抗剤等多種類存在するが、それぞれの薬剤には多種多様
な副作用が存在する。本態性高血圧症の治療において
は、高脂血症、電解質異常による腎障害、性機能障害、
神経障害等、薬剤の長期投与の副作用による二次疾患が
問題となっている。又、原因疾患があることで起こる二
次性高血圧症の治療においては更に上記薬剤投与による
副作用が重篤である。すなわち、二次性高血圧症は、原
因基礎疾患が改善されなければ高血圧症の改善は見られ
ず、副作用のある降圧剤の使用は困難である。
【0003】血圧降下剤は長期にわたって投与される薬
剤である。そのため、副作用がなく、且つ薬理作用の強
力な血圧降下剤の開発が求められている。
(2)
特許2889491
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【0004】最近副作用のない降圧剤として微生物由来
* いる。しかし、最近の研究によると、食品由来核酸成分
のものが注目されている。微生物由来の血圧降下剤とし
が体内に入ると、体内合成にフィードバック機構が働
ては、本発明者らによるエンテロコッカス・フェカリス
き、体内の核酸量は一定に保たれることが証明されつつ
の菌体又はその処理物(特開平5−201871号)、
ある。したがって、遺伝性の痛風患者あるいは染色体異
クロレラ藻体から分離された分子量1万以上の糖蛋白質
常によるプリン体代謝異常によって起こる高尿酸血症患
(特公昭60−45603号)、乳酸桿菌の高分子画分
者は別として、本発明剤使用による副作用は生じない。
中の多糖類(M.Furushiro et al., Agric. Biol. Chem.,
【0011】本発明のDNAを含有する画分は、水溶性
54, 2193-2198(1990))等が知られている。
であるため、容易に任意の剤形とすることができる。ま
【0005】
た、投与方法も経口投与(舌下投与も含む)と、非経口
【発明が解決しようとしている課題】副作用の少ない降 10 投与(静脈内注射、点滴等)のいずれもが可能である。
圧剤としての従来の微生物細胞の高分子画分は、多種多
経口投与のための錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤など
様の構成成分を含むので品質を一定にすることが難し
にする場合は、製剤化に当たり、一般に使用されている
く、臨床的使用に際して問題が生じやすい。本発明は、
結合剤、抱含剤、賦形剤、潤滑剤、崩壊剤、湿潤剤等を
血圧降下作用を有する構成成分を微生物から分画するこ
必要に応じて用いることができる。又、経口投与用液体
とにより、均質な降圧剤を得、更にこれを処理すること
製剤の場合も、任意の補助成分を用いて、内用水液、振
によって、よりすぐれた降圧剤を提供するものである。
とう合剤、懸濁液剤、乳剤、シロップ剤等の形態とする
【0006】
ことができる。
【課題を解決するための手段】本発明者らはこの課題を
【0012】使用量は症状年齢等により異なるが、有効
解決するため、微生物細胞から抽出した高分子画分を分
成分として1日0.001∼0.1g/kg体重を通常
子量分画やカラム吸着法など公知の分画法を使用して各 20 成人に対して1日1回又は数回に分けて投与することが
種構成成分に分画した。それらの成分をヒトの本態性高
できる。
血圧症のモデル動物として繁用されている高血圧自然発
【0013】
症ラット(以下SHRという)に適用したところ、DN
【実施例】以下実施例を示すが、本発明はこれらの実施
A画分に顕著に血圧を下げる作用があることを見いだ
例の記載によってなんら制限されるものではない。
し、本発明を完成するに至った。
【0014】実施例1.(エンテロコッカスの培養)
【0007】すなわち、本発明が提供する血圧降下剤
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecali
は、細胞内のDNA画分を有効成分とするものである。
s)NF−1011(微工研菌寄第12564号)を以下
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【0008】この画分の抽出法としては、細胞を破壊
に示す組成のロゴサ液体培地に接種し、(菌数:10
し、有機溶媒で除タンパク後、遠心分離法もしくは巻き
個/ml)、37℃で10∼16時間培養し、生菌数約
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取り法で該当画分を採取する方法が主であるが、DNA 30 10 個/mlの培養液を得た。得られた培養液を1
を分画する操作であればどのような方法を使っても差し
2,000×gで20分間遠心分離して集菌し、蒸留水
支えない。
で2回洗浄して菌体を得た。
【0009】実施例に示すとおり、DNAを含有する画
【0015】ロゴサ液体培地の組成を示す。
分は、SHRを用いた実験において顕著な血圧降下作用
トリプチケース
10g
を示し、更にその降下作用は持続性を有することが確認
酵母エキス
5g
された。また、実施例に示すように、微生物由来のDN
トリプトース
3g
Aだけでなく、動物細胞由来のDNAであっても同様に
リン酸一カリウム
3g
血圧降下作用が見られることにより、種特有のDNAの
リン酸二カリウム
3g
構造に関係なく血圧降下作用がある。DNAを含む画分
クエン酸三アンモニウム
2g
は腸内常在微生物又は食用可能な物質から抽出している 40 ツイーン80(界面活性剤)
1g
ため、毒性はほとんどなく、SHRに対して経口及び静
グルコース
20g
脈内に投与してもなんら異常は見られなかった。また、
システイン塩酸塩
0.2g
自然物からの精製物でも、合成物でも毒性はほとんどな
塩類溶液(1のとおり)
5ml
い。
蒸留水
1000ml
【0010】核酸(DNA及びRNA)を多量に含む食
(pH7.0に調整、121℃で15分間加熱滅菌)
物の大量摂取は、高尿酸血症の原因の一つと考えられて*
(1)塩類溶液:MgSO4 ・7H2 O
11.5g
FeSO4 ・7H2 O
0.68g
MnSO4 ・2H2 O
2.4g
蒸留水
100ml
(3)
特許2889491
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【0016】実施例2.(生菌体よりのDNA抽出)
* 測定)
実施例1で得られた菌体80gをpH7に調整した0.
実施例2で得られたDNA画分の核酸量を測定した。核
5M塩化カリウム、40mM酢酸アンモニウムおよび1
酸は分光光度計(日立製作所社製 U−2000型)で
mM酢酸マグネシウム混合溶液1Lに懸濁し、リゾチー
波長260nmにおいて1OD260 =20μg/ml
ムを終濃度1,330μg/mlになるよう加え、37
DNAに換算して計算した。該画分の核酸含有量は1m
℃で2時間保持した後、生じたプロトプラスト細胞を
l当たり0.8mgであった。
4,750×gで20分間遠心分離して回収した。
【0020】実施例2で得られたDNA画分及び酵素処
【0017】プロトプラスト細胞に50mM Tris
理(RNase A、DNase I(宝酒造社製)に
・HCl溶液(pH8.5)800ml、0.5M E
て消化)を行った実施例2のDNA画分について、1%
DTA(pH8)80ml及びSLS(サルコシンナト 10 アガロースゲル電気泳動を行った。その結果を図1に示
リウム)(Fluka社製)80mlを加えて溶菌させ、こ
す。DNA画分をDNase Iで処理したものにはD
れを4℃で一晩放置後、等量のフェノール/クロロホル
NA画分と同位置に泳動バンドが現れなかった。
ム(1:1(v/v))混液と混和し、10,000×
【0021】実施例2のDNA画分20mgをアンプル
gで20分間遠心分離により水層と有機溶媒層に分離し
に取り、1N−H2 SO4 を2ml加え、減圧下で封管
た。回収した水層を等量のフェノール/クロロホルム
し、100℃で18時間加水分解を行った。その後開封
(1:1(v/v))混液と混和し、分離させる操作を
しBaCO3 にて中和し、遠心でBaSO4 を除去した。
2回繰り返し、核酸画分を抽出した。得られた水層に等
この処理物10μlを薄層(Whatman silicagel K5)にス
量のクロロホルムを混和し、不純物を除去する操作を2
ポットし、酢酸エチル:イソプロピルアルコール:水=
回繰り返した。得られた水層に2倍量の100%冷エタ
65:22:11(v/v/v)の展開溶媒で薄層クロ
ノールを加え、染色体DNAを析出させた。
20 マトグラフィーを行った。その後、50%硫酸噴霧後1
【0018】ガラス棒で巻きとって回収した析出DNA
00℃、10分間加熱して移動画分を検出した。結果を
に100%エタノールを加え、洗浄した後軽く乾燥し
図2に示す。
た。次に、100mlの水に溶解し、RNase A
【0022】実施例4.(エンテロコッカス生菌からの
(ベーリンガー・マンハイム社製)を終濃度100μg
DNA画分の経口投与による血圧低下作用)
/mlになるように添加して、37℃で1時間反応させ
日本チャールズリバー社より購入した雄性SHR(15
て、混在するRNAを除いた。除タンパクのためにフェ
週齢)を各群の平均体重が一定となるように1群8匹ず
ノール処理とクロロホルム処理を行い、得られた水層に
つに分けた。実施例2で得られたDNA画分を生理的食
400mlの水を加え、さらに全体の2倍量の100%
塩水に溶解し、65mg/kg体重を、胃ゾンデにて経
冷エタノールを加え、再析出したDNAを巻き取り回収
口投与した。対照群には生理的食塩水を投与した。37
した。得られたDNAを水500mlに溶解させた後、 30 ℃で12分間保温したラットの尾動脈収縮期血圧(mm
50mlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)及び2倍
Hg)を投与直前、投与の4、9、24時間後に非観血
量の100%冷エタノールを加え、析出DNAを巻き取
式血圧測定装置(MK−1000:室町機械社製)で測
った。この操作業を2回繰り返し不純物を除去した。得
定した。結果を表1に示す(測定値は平均値±SDを表
られたDNAに100%エタノールを加え、洗浄した
す。)。
後、凍結乾燥した。
【0023】
【0019】実施例3.(抽出物質の構成成分含有量の*
【表1】
────────────────────────────────────
投与後の時間(h)
─────────────────────────
0
4
9
24
────────────────────────────────────
対照
237±12
232±7
233±11
232±9
E. faecalis由来DNA 240±10
220±9** 221±12* 233±9
────────────────────────────────────
(* p<0.05, ** p<0.01)
的食塩水に溶解し、実施例4と同様に経口投与した。尾
【0024】実施例5.(子牛胸腺由来DNA画分の経
静脈収縮期血圧(mmHg)を実施例4と同様に測定し
口投与による血圧低下作用)
た。対照群が240mmHg付近であるのに対し、子牛
日本チャールズリバー社より購入した雄性SHR(15
胸腺由来DNAを投与した群は投与4時間後226.4
週齢)を各群の平均体重が一定となるように1群8匹ず
±9.1mmHg、9時間後211.6±15.8mm
つに分けた。子牛胸腺由来DNA(シグマ社製)を生理 50 Hgと投与前の値に対して有意に低下した。
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特許2889491
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【0025】実施例6.(製剤例)
* 徴を有することにより、医薬品としての使用に限らず、
(1)実施例2で得たDNA画分50mgを、精製でんぷ
日常の食品に添加して高血圧症を予防することも可能で
ん末50mg及び乳糖200mgと混合して、錠剤又は顆粒
ある。また、DNAであれば由来を問わないため、DN
剤にする。
A含量の多い動物及び魚介類の臓器(精巣等)等、廃棄
【0026】(2)実施例2で得たDNA画分100mg
されていたものの有効利用もできる。
を、大豆タンパク100mg及び乳糖200mgと混合し
【図面の簡単な説明】
て、錠剤又は顆粒剤にする。
【図1】実施例2で得られたDNA画分及びその酵素処
【0027】
理物のアガロースゲル電気泳動のパターンを示した図で
【発明の効果】本発明の血圧降下剤は、副作用及び毒性
ある。
が極めて低く、経口投与でも本態性高血圧症に著しい効 10 【図2】実施例2で得られたDNA画分の加水分解物の
果がありかつ即効性であり持続性も有する。これらの特*
薄層クロマトグラムを示した図である。
【図1】
【図2】
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フロントページの続き
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(58)調査した分野(Int.Cl. ,DB名)
A61K 31/70
A61K 35/00 - 35/84
C07H 21/04
WPI(DIALOG)