公開特許公報 特開2015

(19)日本国特許庁(JP)
〔実 4 頁〕
公開特許公報(A)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-168677
(P2015−168677A)
(43)公開日 平成27年9月28日(2015.9.28)
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A01N 25/10
(2006.01)
A01N
25/10
4H011
A01N 25/08
(2006.01)
A01N
25/08
A01N 55/02
(2006.01)
A01N
55/02
B
審査請求
(21)出願番号
特願2014-47005(P2014-47005)
(22)出願日
平成26年3月11日(2014.3.11)
未請求 請求項の数4 OL (全6頁)
(71)出願人 398007483
壽工業株式会社
栃木県下都賀郡野木町大字野木144番地
(72)発明者 青柳
潤
栃木県下都賀郡野木町友沼6612−4
Fターム(参考) 4H011 AA03
BA01
BB16
BC19
BC20
DA07
DC05
DC10
DD05
DF03
DH10
(54)【発明の名称】抗菌防カビ壁紙及び施工方法
(57)【 要 約 】
【課題】壁紙における抗菌性、防カビ性が持続性があり製造直後の性能が施工された後も
維持されるように作られた壁紙及び施工方法。
【解決方法】抗菌防カビ薬剤として非昇華性薬剤を選択して塗料或いは塩ビペーストに混
合する。薬剤は菌に接触して効果のあるものと昇華性の有る薬剤を無機層状物で包み込ん
で徐放性を持たせて持続性を持たせたものが有る。壁紙原紙としては裏紙と表紙の2層か
らなるものが有るが各層を貼り合わせる接着剤に前記薬剤を含有させて薬剤成分を紙間に
持たせてカビの繁殖を防ぐ。1層の壁紙は壁紙施工の糊の中に前記薬剤を混合して施工す
ることにより紙間に薬剤成分が行き渡りカビの侵入を防ぐ。
【選択図】なし
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A
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【特許請求の範囲】
の規格が耐久性について論じてないために初期の効果が
【請求項1】
いいもので作られている。
抗菌防カビ性壁紙において化粧層を形成する材料に混合
【0006】
される薬剤に非昇華性の薬剤を用いたことを特徴とする
発明者らは壁紙の抗菌性、防カビ性は製造直後の性能が
抗菌防カビ壁紙。
壁紙が建物の壁面天井で使用されている期間性能が発揮
【請求項2】
されることが必要であると考え抗菌防カビ剤の選定を行
請求項1の薬剤が非昇華性のジンクピリチオン系、昇華
なった。
性薬剤を無機層状化合物でインターカレートしハイブリ
【0007】
ッド化して徐放性を持たせて防カビ効果、抗菌効果を持
カビの発生は石膏ボード、合板、珪酸カルシウム板等の
続させるように薬剤を用いたことを特徴とする抗菌防カ 10
ボード側の湿気によることが原因と考え壁の内部の通気
ビ壁紙。
が重要と考えるが既に出来上がった建物の場合使用され
【請求項3】
る壁紙にカビが生えないこと及び施工する接着剤にカビ
請求項2に記載の壁紙の原紙が表紙と裏紙の2層からな
が生えないことが重要と考えた。
り、各層を貼り合わせる接着剤に請求項2の薬剤が混合
【先行技術文献】
された原紙を用いて作られた抗菌防カビ壁紙。
【特許文献】
【請求項4】
【0008】
請求項1∼3に記載の抗菌防カビ壁紙を施工するに当た
【特許文献1】特開2010-94378
り接着剤に請求項2に記載の薬剤を0.1%から0.5
【非特許文献】
%混合して施工する抗菌防カビの施工方法。
【0009】
【発明の詳細な説明】
20
【非特許文献1】塗装と塗料No.553塗膜に用いる銀
【技術分野】
等抗菌剤について
【0001】
【非特許文献2】壁紙工業会ホームページ機能性壁紙の
本発明は、抗菌、防カビ性の機能を長期にわたって発揮
概要
するようにした壁紙についての技術に関する。
【発明の概要】
【背景技術】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
【0010】
近年住宅、病院、老人ホーム等の福祉施設、学校建築等
抗菌、防カビ性能は壁紙が製造された時点で評価され抗
の内壁、天井に壁紙が一般的に使用されるようになって
菌壁紙、防カビ壁紙として販売されている。しかしこれ
来た。これは施工性がよく、見栄えもよく、且つ価格も
らの性能は建物に施工されてから使用されている期間効
手ごろであることに起因する。性能面においても技術が 30
能が持続することが必要である。
進歩して機能性壁紙と称していろいろな機能を特別に強
【課題を解決するための手段】
化したものも有る。例えば防カビ壁紙、抗菌壁紙、汚れ
【0011】
防止壁紙、表面強化壁紙等が有る。
ここにいう壁紙とは基体シートである壁紙原紙の表面に
【0003】
塩ビペーストをコーテングした所謂塩ビ壁紙、水性塗料
抗菌性、防カビ性の壁紙の規格は壁紙工業会の機能性壁
をコーテングした紙壁紙をいい織物で作られる壁紙は除
紙に規定されている。性能は製造直後の性能が示されて
く。抗菌防カビ性の賦与は抗菌防カビ薬剤をコーテング
いる。効能の持続性については触れていない。抗菌、防
剤に混合することにより発揮する。抗菌防カビ薬剤には
カビ性は通常抗菌、防カビ薬剤を塩ビペースト、塗料に
有機系薬剤(ハロゲン系、ピリジン系、イソチアゾロン
混合して塗布して発揮させる。
【0004】
系、イミド系、界面活性剤系)と無機系抗菌剤(銀、銅
40
、亜鉛系)及び有機無機ハイブリッド系が有る。一般的
抗菌防カビ剤には無機系薬剤と有機系薬剤、有機無機ハ
に無機系薬剤は大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSA等菌に対
イブリッド系薬剤が有る。無機系抗菌剤は銀、銅、亜鉛
して有効で黒コウジカビ、アオカビ、酵母等カビに対し
等金属及びそれらの化合物を無機物に担持させた無機の
ては効きが悪いが効果の持続性が高い。有機系薬剤は菌
粉体で耐久性が有るがカビには効きにくい。一方有機系
にもカビにもよく効くものがあり速効性が高いが昇華性
薬剤は昇華性があり効果は速効性が高く菌にもカビにも
があり効果が持続しないと言われている。
効きやすい。効果は比較的短時間(1年から2年位)で
【0012】
無くなる。
従来の壁紙は抗菌防カビ性機能壁紙といえども効果が何
【0005】
時まで有るものか全く分からなかった。これは壁紙の抗
壁紙に用いられる抗菌防カビ剤は単一薬剤で菌にもカビ
菌防カビの規格が製造時の効果について規定するだけで
にも効く有機系の薬剤が用いられている。又抗菌防カビ 50
効果の持続性について何も規定してないことにもよる。
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壁紙は製造されてから実際に施工されるまでに1年∼2年
iumcitrinum, Chaetomium globosum, Myrothecium verr
経過して施工される場合が多々有る。施工されたときに
ucaria の4種類である。1.バクテライトMP-102SVC13
は既に抗菌防カビ性能が失われていることすらありうる
はカビの生育が認められたがそれ以外は抗菌防カビ性は
。
良好であった。
【0013】
【0018】
これらの問題点を回避するためには昇華性のない或いは
2年室温で経過させた後抗菌防カビテストを行った。結
昇華のスピードを遅くした薬剤を抗菌防カビ薬剤として
果は表3のとおりである。
選択することが重要である。発明者らは抗菌防カビ薬剤
【0019】
として銀系薬剤としてバクテライトMP−102SVC13(富士
【表3】
ケミカル)、バイオカットZH−40(日本曹達)、カビノ 10
ン900(東亞合成)、抗菌防カビ塗料スーパーテラ(大
日技研工業)を使用して壁紙を作り製造後2週目に抗菌
性、防カビ性のテストを行った。カタログ等の説明によ
ればバクテライトMP−102SVC13は無機系の抗菌剤で効能
は塗膜がある限り持続するがカビには効きが悪い。バイ
オカットZH-40は有機無機複合タイプで菌にもカビにも
【0020】
効き効能は常温で昇華しないので長持ちする。菌に接触
上記テスト結果から1.バクテライトMP−102SVC13は大
することにより菌を死滅させるので菌と接触する部位に
腸菌、黄色ブドウ球菌に対しては2年以上の有効性が確
配置する。カビノン900は有機無機複合タイプで菌、
認できた。しかし防カビ性は無い。2.バイオカットZH
カビに効き徐放性が有るので長持ちする。スーパーテラ 20
-40は初期の抗菌防カビ性、2年後の抗菌防カビ性共に良
は有機系の薬剤を使用した抗菌防カビ機能を有する塗料
好な結果を得た。3.カビノン900は初期の抗菌防カビ性
で塗料の有効期間(1年)程度の期間有効である。
及び2年後の抗菌防カビ性は良好であった。薬剤は昇華
【0014】
性のトリアゾール系化合物と銀系化合物を無機層状化合
壁紙は下記の要領で作成した。原紙は広明製紙KY120
物にインターカレートしたものであり徐放性が有るので
を使用した。塗料は大日技研工業のスーパーテラの抗菌
2年後の効果は確認はされたがどれくらい効果が持続す
防カビ薬剤の入ってない塗料(ベース塗料と称する)に
るかは継続して確認する必要が有る。スパーテラは2年
薬剤を添加したものおよびスーパーテラクロス用を用い
後には抗菌、防カビ性共になくなってしまった。
2
エアースプレーで40g/m (固)塗付した。
【0021】
試料のスペックは表1のとおりである。
カビの発生は下地の石膏ボードに裏側から湿気が回り紙
【0015】
30
【表1】
の部分にカビが発生し成長して表面に出てくることが一
般的である。この点を考えると壁紙の表紙と裏紙を張り
合わせる接着剤に防カビ剤を配すること及び壁紙を張り
合わせる接着剤に防カビ剤を配することがカビに対して
はより効果的である。この際使用する薬剤は効果が持続
性の有る薬剤を使用することが必要である。
【0016】
【0022】
試料の表面の2週目の抗菌防カビ試験の結果を表2に示
昇華性のない抗菌防カビ薬剤たとえば銀系薬剤、ジンク
す。抗菌試験はJISZ
ピリチオン系薬剤は菌と接触することにより効果が発現
2801に準拠して行い評価は抗菌活
性値で表し2.0以上であること。防カビ試験はJISZ
291
1カビ抵抗性試験に準拠して行い14日後のカビの生育常
するので表層に存在することが必要条件となる。したが
40
って塗装が複層になる場合は最上層に薬剤を混合するこ
態を観察した。
とが必要となる。
【0017】
【発明の効果】
【表2】
【0023】
本発明で得られた抗菌防カビ壁紙は抗菌防カビ薬剤が常
温で昇華しない或いは昇華しにくい薬剤を塗装の表層及
び紙間に配合しているので効果が2年以上薬剤が露出し
ている期間有効である。例えば流通段階で2年保管され
て使用されても抗菌防カビ性能は製造直後の性能が保持
できている。一般住宅、マンション等において湿気のた
カビテストに用いたカビはAspergillusniger、Penicill 50
まりやすい場所に施工された壁紙にはたまにカビが発生
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することが有る。従来の抗菌防カビ壁紙は施工してしば
防カビ剤カビノン900(徐放タイプ薬剤)を0.5%混
らくの間はカビが発生しないが時間が経過するとカビが
合して30g±3g/m 塗付して張り合わせた。貼り合わ
生えてくる。これは薬剤の有効成分が昇華してなくなっ
せに引き続きエンボスロールを通して布目エンボスを行
てしまった結果である。或いは裏側からカビが生えて紙
った。貼り合わせの接着剤に除法タイプの薬剤を用いる
の層間に繁殖したためである。
のは紙間全体に薬剤を長期間行き渡らせるためである。
【発明を実施するための形態】
【実施例2】
【0024】
【0026】
壁紙の機能として抗菌性能、防カビ性能を長期にわたり
第1工程として壁紙原紙YK-120(広明製紙製120
付与するための最良の方法は使用する抗菌防カビ薬剤を
g/m )に実施例1で使用した塗料を同一配合、同一
無機系薬剤、有機無機ハイブリッド薬剤、常温で昇華が 10
塗布量でコートを行い乾燥して巻き取った。第2工程と
極めて少ない薬剤を選択して塗料、ペースト中に混合す
して布目エンボスを行った。
ること、防カビ性については裏紙と表紙を張り合わせる
【実施例3】
接着剤中に前記薬剤を配合すること、壁紙を施工すると
【0027】
きの糊の中に前記薬剤を配合することがよい。無機系抗
実施例1および2で作られた壁紙を抗菌防カビ工法で施
菌剤としては銀、銅、亜鉛及びその化合物を無機物に担
工する。壁紙施工用接着剤ウォールボンド105(矢沢
持させたものが有るが菌にはよく効くがカビには効きに
化学工業製)に抗菌剤カビノン900を0.5%添加し
くい。有機無機複合タイプとしては有機の薬剤をセラミ
70%の水を加えて十分攪拌しのり付け機に投入する。
ックで包み込んだものもあり薬剤の有効成分の昇華は大
のり付け機で140g∼160g/m 壁紙裏面に均一
幅に遅らせられる。有機薬剤の中には常温では昇華しな
に接着剤を塗布する。10∼30分のオープンタイムを
かったり水に溶けにくいものも有る。これらは菌が接触 20
取った後で張り合わせる。実施例1で作られた壁紙には
することにより効果が発揮されるので塗膜の最上層に配
抗菌性能が長持ちするジンクピリチオン系のZH-40が適
合されることが必要となる。最上層には接触タイプの薬
当である。実施例2で作られた壁紙には紙の部分に防カ
剤、紙間には徐放性の有る薬剤、接着剤には徐法制タイ
ビ成分が無いので徐放性の有るカビノン900が防カビ
プ、接触タイプのいずれでも良い。
成分が紙全体に行き渡るので適している。このようにし
【実施例1】
て施工された壁紙は湿気の多い部位でもよりカビが生え
2
2
2
【0025】
にくくなる。
2
第1工程として壁紙原紙YK-70(広明製紙製70g/m )に
【産業上の利用可能性】
白色のスーパーテラクロス用塗料(大日技研工業製)を
【0028】
次の配合例1のように調合してナイフコーターで125
本発明の効果の持続する抗菌防カビ壁紙及び施工法は施
2
g±5g/m 塗付する。
30
工してからの効果が長持ちするように設計されているの
乾燥して巻き取る。配合例1スーパーテラ90、水8、
で病院の診察室、待合室、老人ホーム、幼稚園、学校関
バイオカットZH−40
係の内装、一般住宅のトイレ、台所、脱衣場などカビの
0.3、増粘剤0.7
撥水剤 1
2
第2工程として50g/m の裏紙(YK-50広明製紙製)
発生しやすい場所などに適した壁紙および施工法である
と第1工程で作られたコート紙をラミネーターで張り合
。
わせる。貼り合わせはコート紙側に酢ビ系接着剤に抗菌