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研修会・超音波からのメッセージ(予習資料)
2015年3月26日(木)開催
第22話 装置の設定とアーチファクト②
「膵臓と脾臓」疾患の診かた
アーチファクトは、画像を霞ませたり(ノイズ)、ゆがめたり(虚像)という本来の画像
に対して悪さをします。診断の時にはとても煩わしいじゃまものですが、その発生機序を知
れば、ある程度は回避することは可能です。
後半は、膵臓と脾臓のルチン検査での観察ポイントをお話しします。
会場: 国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟417(セミナーホール)
会場へのアクセスはホームページに掲載しております。
受講料: 2000 円
パスポート持参者は無料
.....
受付票:このページの下部の受付票に記入して、切り取ってご持参ください。スムースな受
付にご協力ください。
◆ 講義は、この「予習資料」で予習してあることを前提に行います。忘れずにご持参くださ
い。会場での資料の頒布は行いませんので、ご承知おきください。
◆ ホール内は飲食が禁止されております。勉強前の飲食は休憩室をご利用ください。
◆ 会場へのアクセス、プリンタがない方の事前資料のコンビニでのプリント方法などの案内
はホームページに掲載しております。必ずホームページをご覧になって参加してください。
........
(特にはじめての方)
研修会のホームページ http://homepage3.nifty.com/musef/index.htm
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れます。そしてFacebookのサポートページ「超音波検査が上達したい」で開催案内や質問
への回答などのサポートを行っています。研修会を聴いて帰るだけではダメですよ。しっか
り復習をして、知識を自分の経験に換えてください。
超音波検査が上達したい https://www.facebook.com/stepup.us
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氏 名
装置の設定とアーチファクト−その2
三宿病院 診療技術部
鶴岡尚志
はじめに
先生の写真はきれいだなぁ・・・どうして?
先輩に代わったら病変が映った・・あれっ?
超音波検査はあなたが映した画像で診断します。正しい診断をするためには、
『映せる/映
せない』
『きれい/きたない』は重要です。
「きれいに映す」検査のためには?
映せなかったり、映していても気がつけなかったりするのは何故でしょうか?
.... ............
映せない、映していても気がつかないのには、描出の技術、病変についての知識などさまざ
まな理由があります。今回は、前回の装置の調整に続き、アーチファクトの知識について勉
強します。
映 して気 付 くための装 置 の設 定
まず超 音 波 の性 質 と装 置 がしている画 像 の作 り方 を知 る
この検査をして診断するなら、概要だけでも知りましょう。
原則1
超音波画像は反射波を使って画像を作る
原則2
反射波は音線に垂直な反射面でよく反射する
原則3
体内で音波は直線上を進み帰ってくることを前提に画像を作っている
原則4
ヒトは画像上の白黒の差で認識する
原則5
アーチファクトは画像を汚す。でも診断にも使える。
他にもたくさんありますが、まず頭に入れておいてください。
(1)
アーチファクト
ⅰ)虚像に惑わされないために
(ノイズ)、ゆがめたり(虚像)という
....
診断の時にはとても煩わしいじゃまも
.
のですが、その発生機序を知れば、ある
本来の画像に対して、悪さをします。診
程度は回避することは可能です。(表 1)
アーチファクトは、画像を霞ませたり
表 1 代表的なアーチファクト
現象
多重反射
音線に対して垂直に存在する反射率の高い面が二か所
以上あると、その間で繰り返し反射を起こして虚像(ノイ
ズ)を生じる。
ビームの副極からの反射があたかも主極上にある反射
サイドローブ のような虚像となる。また反射率の高い反射体の反射
が、横方向に広がる(横ににじむ)。
屈折
音線上に斜めにある音速の異なる媒質を通過するときに
屈折し、画像上は虚像や散乱、減衰を生じる。
1
ⅱ)アーチファクトを使った診断
体内の組織の情報を読み込むことも可
超音波画像は、超音波パルスが音線上
を直進し、反射し、直線上を戻ってくる
..
ことを前提に作られています。しかし現
能です。(表 2)
実では、体内に発射されたパルスは、そ
おわりに
のような単純な反射だけではなく、拡散
モニタ画面に映っている画像を、よく見る
や減衰、屈折などさまざまな作用を受け
だけでは体内の構造や体内で起きているこ
て戻ってきます。アーチファクトのほと
..
んどは、このような前提通りでない音波
とを知るには限界があります。より深い読み
の体内での振る舞いによって生じます。
体内から情報を集めてきてくれる超音波の
したがって、アーチファクトは、単に画
こと、それを画像化する装置のこと、もちろ
像診断の邪魔をするだけでなく、それ自
ん検査対象の臓器や組織のことなどを知る
体が体内で音波が受けた作用を読み手
ことが不可欠です。画面をよく見るだけでな
である私たちに伝えてくれる情報です。
く、超音波が何を表現しているのかを知るこ
込みを行うためには、私たちの手先となって
そこで、アーチファクトの発生機序を
とが、診断情報を得る基礎となります。
知ることで、アーチファクトから推測し、
表 2 役立つアーチファクト
ときどき診断に役立つアーチファクト
推測できる所見
音響陰影(Acoustic shadow)
結石の診断、被膜などでの屈折や散乱の結果
後方音響増強(posterior echo enhancement)
嚢胞や液体、均一な組織の存在
コメット・エコー(comet-like echo)
小結石や小嚢胞による多重反射
カラー・コメット(twinkle artifact)
結石やガスの存在
サイドローブ(side lobe)
ガスの存在
2
「膵臓と脾臓」疾患の診かた
三宿病院 診療技術部
鶴岡尚志
(1)「膵臓」のルチン検査での観察ポイント
「部分的に厚い」はアヤシイ
1) 形態と実質エコー、主膵管の観察
形態の観察のポイント
実質の厚みを測ることはルチン検査に於
いては無意味である。
頭部の厚みがある例、尾部の幅のある例な
ど、形態は個人差があるが、厚み(幅)の変
化は滑らかに変化するのが通常である。
したがって一部が突出して見えたり、急に
厚みが変わるのは異常を発見する糸口とな
る所見である。
膵臓の実質エコーの評価は、内部エコーに
高・低の斑があるのは要注意所見である。全
低エコー域はアヤシイ・・・
体的な高エコーレベル化は、種々の原因が分
かってはいるが、臨床上問題となることはあ
まりない。
低エコー域は、部分的あるいは全体的であ
っても腫瘍もしくは組織障害を現す所見の
ことがあるので要注意所見である。
また慢性膵炎に見られる点状高エコー(SE
spot)の散在は微少な膵石を示す所見である。
2) 膵管の観察と評価
*膵管の流れの滞りは、
膵管の観察は「まず縦走査(輪切り)」で
① 腫瘍
確認する。
② 膵石
膵管は恒常的に 3mm を超えれば膵管拡張
であり、重要な異常所見である。3∼4 ㎜の
③ 膵液内の粘液
疑診域は再検査で確認する。ただし一時的に
④ 膵管自体が腫瘍
などの原因が推定される所見である。
径が 4mm 程度になる所見は正常でも見られ
る生理的変化である。
*膵管と間違いやすい構造
膵管が目立つと感じたら、必ず頭部側へ追
跡する。その際に横走査での「拡張の形状(不
①脾動脈:頭側へ追跡すると腹腔動脈に連続
整拡張か)
」の観察も大切。
②胃後壁:縦断像で輪状となる
膵管拡張は「膵液の流れの滞り」を示す所
見である。
*膵管であることの確認方法
3
①縦断層(膵臓の輪切り)で膵臓の中央を
り,膵癌から患者を救うことはできない。
走行することを確認する。
4)膵臓の充実性腫瘤の分類と鑑別診断
膵管拡張と腫瘤のパターン
※ 超音波上、
「充実性」に見えるものを分
小膵癌
類した
1.膵癌(膵管癌)
*副所見,リンパ節転移,肝転移,後腹膜浸
潤,門脈・脾静脈閉塞に気をつける。
*1cm 以下の腫瘤の鑑別は困難
膵癌
2. 腫瘤形成慢性膵炎(炎症性腫瘤)
*duct penetrating sign
3.膵内分泌腫瘍(島細胞腫瘍)
腫瘤形成慢性膵炎
4.solid-pseudopapillary tumor(Solid an
d Cystic tumor;SCT)
*若い女性,症状は乏しい(組織は嚢胞性
成分も多いが超音波上は充実性腫瘤に描
出される)
慢性膵炎
5.転移性膵腫瘍
6.漿液性嚢胞腺腫
*高エコーで粗い内部エコーの腫瘤(組織
..
は嚢胞性成分が主だが超音波上は充実
.
性腫瘤に描出される)
膵管内腫瘍
7.膵周囲のリンパ節腫大
8.近接臓器の腫瘤性病変
5)膵臓の嚢胞性腫瘤の分類と鑑別診断
*嚢胞の 3 条件を確認する。
後方エコーの増強,内部無エコー,嚢
3)膵腫瘤の存在診断
胞壁
膵管の拡張や閉塞性黄疸の症例では膵腫
*膵臓のものか確認する。
瘤を想定して、拡張した胆管もしくは膵管を
近傍臓器のものと紛らわしい
追跡する。
beak sign,呼吸性の移動などを利用
膵管や胆管の拡張の無い症例もあるので,
とにかく膵実質全体を観察するのが目標。
2cm 以下の腫瘤を見つけようとしない限
4
膵嚢胞性病変
3-3
3-4
エコースポット、低エコーのムラなども評価
1.先天性
-1.単純性嚢胞(これは少ないと言われている)
の情報となる。生化学データはあまりあてに
-2.多発性嚢胞(polycystic disease, von
ならない。
Hippel-Lindau など)
(2)急性腹症での「膵臓」の観察ポイント
2.後天性
1) 急性膵炎
-1.いわゆる貯留性嚢胞
-2.悪性腫瘍に伴う二次性嚢胞
膵腫大の判定は、体部の縦断像(輪切り)
-3.膵管上皮の過形成や幽門腺上皮化性を
で観察し,断面が丸ければ腫大,扁平で容易
伴う嚢胞
に形が変われば正常とするのが実用的な判
定方法である。
3.腫瘍性
∴横断面で厚みを計測し、頭部:2.1cm
*3cm を超える嚢胞は悪性を疑う!
部:1.8cm
-1.serous cyst neoplasm(漿液性嚢胞腫
-2.mucinous cyst neoplasm(粘液性嚢胞
*臨床的に診断できる症例がほとんど
腫瘍;腺腫∼腺癌)
intraductal
papillary
尾部:2.1cm 超えたら腫大・・
・??
これはあくまで目安です。
瘍;腺腫∼腺癌)
-3.
体
除外診断が目的のこともある
mucinous
*副所見の方が病勢の判断として重要
neoplasm(膵管内乳頭粘液性腫瘍)
なことが多い
-4.solid-pseudopapillary tumor(solid
膵周囲浸出液貯留,膵実質の低エコ
and cystic tumor)
ーのムラ,腹水,胸水
鑑別を要する超音波像としては全体癌が
4.仮性嚢胞
ある。
-1.急性膵炎もしくは慢性膵炎による嚢胞
*臨床的には急性症状がない
-2.外傷による嚢胞
体重減少,糖尿病の悪化,背部痛な
どの症状がある
6)慢性膵炎の診断
*副所見にも気をつける.
超音波の診断基準で確診所見は、①膵管拡
張
と
②膵石
門脈や脾静脈の閉塞,後腹膜リンパ
が見られること。ただしい
節の腫大など
ずれも見つけにくいケースがある。
*癌部に膵管拡張が見られないことも
ある
膵実質の菲薄化、内部エコーの粗造化や高
5
2) 脾腫
(3)「脾臓」のルチン検査での観察ポイント
ルチン検査で全例の脾臓の大きさを測る
1) 「脾臓」の解剖とスキャニング
のは、あまり意味がない行為である。
脾臓は体表から見ると左側の中腋窩線か
Spleen index は、脾腫の判定には使わな
ら後腋窩線の辺りにあり、ここの肋間走査で
い。
最大断面が得られる。
脾腫か否かの判定は、簡便的には左腎と大き
脾臓の形状は「椀を伏せたような形状」と
さを比べる判定で十分である。
言われるが、この椀は「いびつ」である。
脾腫を疑う場合に spleen index を計測
脾門部に脾動脈と脾静脈が交通する。
内部エコーは肝臓に似ている。肝臓よりも内
することは、主に経過観察のための意味があ
部に見える脈管は少なく、線維化や脂肪化す
る。
ることは稀なので内部エコーは整で均一、エ
■ Spleen index の問題点
コーレベルも変化が少ない臓器である。
Spleen index は「ちゃんと計れる場合」
脾の動静脈は膵後面を併走して、脾門部か
には実際の脾臓の重量(=体積)とよく相関
ら脾内に入る。脾内でもこの両者は併走しな
する index である。
がら分岐してゆく。
しかし、体格や年齢を加味していない
脾臓を観察するためには、半座位(座位)、
index であり、この正常範囲は「目安」と考
左肋間走査がベストアプローチである。
えるべきである。
実際の走査は脾臓の映る肋間は全て行う。正
さらに、脾腫の場合には脾臓の形態は歪
常大の脾臓では2∼3肋間から観察するこ
(いびつ)になるので、index の適応に無理
とになる。
がある。
ただし脾臓は座位でおこなっても、横隔膜側
その上、ある程度以上の脾腫は超音波では
は肺によって映らない。アプローチや呼吸を
断面からはみ出るので計測ができない。
工夫しても、脾臓の場合全体が映ることは稀
である。
3)
副脾
副脾は脾臓の分葉(先天変異)の一種で、
脾臓のベストアプローチは「座位・左肋間
剖検例では 10∼30%程度に認めるとの報告
走査」である。
がある。おそらく超音波検査で映らない程度
のものを含めた値だが、興味深い。
通常は臨床的にはほとんど意味を持たな
い所見である。
脾門部に最も多く(75%)見られ、膵尾部や
脾の支持組織にもしばしば見られる(20%)。
サイズは、数 mm∼数 cm 大が多いが、脾摘
後や門脈圧亢進よって肥大することがある。
血小板減少性紫斑病などに対する脾摘後
に副脾が増大し疾患が再発することがある
半座位か座位
ので、この場合には術前にその存在を知る意
味がある。
6
また、副脾と鑑別を要する所見も押さ
えておく必要がある。
膵 臓 の 疾 患 画 像
*復習ページにもっとたくさんアップします
■副脾と鑑別すべき所見
1.体部の小膵癌
① 脾門部にある転移性リンパ節
② 膵臓の島細胞腫瘍
③ 副腎腫瘍
④ 脾門部付近の膵臓などの嚢胞性病変
4) 腫瘤性病変
脾臓の腫瘤性病変の頻度はそれ程多くは
ない。良性のものでは過誤腫、嚢胞、リンパ
管腫、血管腫などがある。悪性のものでは悪
半座位
性リンパ腫、リンパ管肉腫、転移性腫瘍など
がある。
5) 脾外傷
交通事故などでの脾臓の外傷は、血腫の有
無を確認することが大切である。血腫のない
場合の脾実質の損傷は、受傷直後にはBモー
ドでは分かりにくい。カラードプラを併用す
るか、Bモードでは数日後に低エコー域とし
右側臥位
て認めることがある。
2.右側臥位でのみ映った膵癌
6) 慢性肝疾患での脾臓の観察
門脈圧亢進症に於ける脾腫の程度の評価
は、治療の選択などで有用である。ただし、
脾腫と門脈圧は必ずしも相関しているわけ
ではないので、脾腫の程度イコール門脈圧の
程度(あるいは肝臓の線維化の程度)ではな
いことは知っておく必要がある。
脾腫だけでなく、脾周囲の側副血行路(脾
腎静脈短絡路、脾後腹膜静脈短絡路など)の
半座位
存在や、ドプラでの脾静脈の血流の方向の確
次ページに右下側臥位
認も大切である。
*復習ページにもっとたくさんアップします
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