プレス発表資料 平成27年 3月10日 琉 球 大 学 琉球大学研究成果における取材について 琉球海溝で発生する「ゆっくり地震」の分布を解明 −琉球海溝でのプレート間の固着に関する新たな知見− この度、琉球大学理学部の中村衛准教授が、「ゆっくり地震」の一種で ある超低周波地震の解析から、琉球海溝でのプレート間カップリング(巨 大地震発生領域)に関する新たな知見を明らかにしました。 超低周波地震の活動が過去の巨大津波発生域で低く、また異なるタイプ の「ゆっくり地震」(スロー地震)に連動して活発化する現象を発見しま した。これらの成果は、琉球海溝付近での広域的なプレートの固着・滑り状況 を明らかにできる可能性を示したものであり、琉球海溝で発生する巨大地震津 波のメカニズムを探る上で重要な意義をもつものです。成果は米国地球物理学 連合のジオフィジカル・リサーチ・レターズに 2015 年 2 月 24 日に掲載さ れました。 つきましては、下記の要領で取材してくださるよう、お願いいたします。 記 日 内 時 容 : : 随時連絡可 別紙参照 【問い合わせ】 琉球大学理学部 物質地球科学科(地学系) 中村 衛 電話:098−895−8571 FAX:098−895−8552 E-mail:[email protected] 琉球海溝で発生する「ゆっくり地震」の分布を解明 ー琉球海溝でのプレート間の固着に関する新たな知見ー 琉球大学理学部 物質地球科学科 准教授 中村衛 琉球大学理学部物質地球科学科の中村衛准教授と砂川尚也(2014 年 3 月理学部卒業)は、 九州・沖縄に設置されている防災科学技術研究所広帯域地震観測網(F-Net)、および台湾・ 中国に設置されている広帯域地震計(IRIS)の地震波形データを解析し、2002 年から 2013 年に南西諸島で発生した「ゆっくり地震」の一種である浅い超低周波地震(注1)の分布 (6670 個)を決定しました。 その結果、超低周波地震は琉球海溝(南西諸島海溝)で約 12 年間定常的に活発に発生し ていることを明らかにしました。その中で西表島から与那国島の南方沖で発生する「超低 周波地震」は、西表島直下で約半年おきに繰り返し発生するスロー地震(注2)によって 活発化することも判明しました(図3)。これは「超低周波地震」の発生域が小さな応力で 滑りやすくなっていることを示しています。 また超低周波地震の活動は、巨大津波が度々襲来してきた石垣島から宮古島付近では少な く、巨大津波の襲来が見られない沖縄島から奄美大島にかけて多く発生しています。これ にはプレート間のカップリング(固着・接着度)の強さが関与しており、プレート間カッ プリングの弱い地域では超低周波地震などの「ゆっくり地震」で歪が適時解放されている 場所が多いのではないかと考えています。 この成果は、琉球海溝付近での広域的なプレートの固着・滑り状況を明らかにすることが できる可能性を示したものであり、琉球海溝で発生する巨大地震津波のメカニズムを探る 上で重要な意義をもつものです。 研究結果は米国地球物理学連合(American Geophysical Union)発行の学会誌であるジ オフィジカル・リサーチ・レターズ(Geophysical Research Letters)で 2015 年 2 月 24 日に掲載されました。 雑誌:Nakamura, M. and N. Sunagawa (2015), Activation of very low frequency earthquakes by slow slip events in the Ryukyu Trench. Geophysical Research Letters, doi:10.1002/2014GL062929. (注1)超低周波地震 「ゆっくり地震」の一種。地下で断層が破壊すると、そこから地震波が周囲に広がってゆ く。地震波の揺れがだいたい1秒より短い周期で振動するとき、私たちはその振動を敏感 に感じることができる。普通の地震は短い周期の波を多く含むために有感地震となる。し かし断層の破壊が通常より非常に「ゆっくり」と起こる場合、短い周期の波が放出されず 長い周期の波だけが放出されるため、私たちは揺れを感じとりにくい。このような地震の ことを「ゆっくり地震」という。断層の破壊に要する時間は、普通の地震では地震の規模 がマグニチュード 4 程度のとき 1 秒以下であるが、超低周波地震では約 1 分と非常に長い。 短い周期の揺れは放出されないため、超低周波地震による揺れは全く感じられない。 「ゆっくり地震」は南海トラフ(東海地方から四国地方沖)で浅い超低周波地震(深さ 10km より浅い)、深い超低周波地震(深さ約 30km)を含めて様々なタイプがこれまでに 発見されている。巨大地震の発生領域の周辺で起こる地震であり、巨大地震の発生とどの ように関係しているのか注目されている。 (注2)西表島直下の繰り返しスロー地震 八重山諸島付近では、フィリピン海プレートが琉球海溝から北方向へ沈み込んでいる。西 表島直下では、沈み込んだフィリピン海プレートの深さは約 30∼50km に達する。この沈 み込んだフィリピン海プレートの上部でスロー地震が発生している。スロー地震とは「ゆ っくり地震」の一種であり、超低周波地震よりもさらに断層破壊に要する時間が長い。西 表島直下のスロー地震の場合、破壊に要する時間は約 1∼2 ヶ月である。断層破壊の大きさ を地震の規模に置き換えると、マグニチュード 6.6 に相当する。この規模のスロー地震が 約 6∼7 ヶ月に 1 回、規則的に繰り返し発生している。 図1 琉球海溝で 2002 年から 2013 年に発生した超低周波地震の分布図(赤 丸)。黄色い点線の長方形領域で発生する超低周波地震は、西表島繰り返しスロ ー地震により繰り返し活発化する。また、過去の大津波発生域(1771 年八重山 地震津波波源域、黄色い長方形)付近では超低周波地震の発生が少ない。 図2 左上:波照間島で観測された西表島繰り返しスロー地震による地表面の動 き(数字はスロー地震ごとの番号)。右上:図1の黄色い長方形で囲んだ領域で 発生した超低周波地震の累積個数(数字は左上のスロー地震ごとの番号と同じ)。 下:スロー地震毎に作成した超低周波地震の一日あたりの発生数を合成したも の。 図3 西表島スロー地震と超低周波地震の位置関係。琉球海溝全域で超低周波地震は沈 み込んだフィリピン海プレート面上で発生している。西表島付近ではプレート面上でス ロー地震が発生し(青い矢印)、生じた応力変化(点線の青い矢印)によってプレート 面付近で超低周波地震が活発化する。
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