地方交付税制度の概要(PDF:309KB)

地方交付税制度の概要(1)
1 地方交付税とは
現在、我が国では国民に身近な行政サービスの大半を各地方公共団体が提供しています。
しかし、地方公共団体が置かれている地勢や都市の形成過程などによって、行政サービスの財源である税収には、団体間で大きな開きがあり
ます。
こうした状況であっても、どの地域に住む国民にも一定の行政サービスが提供されるよう、地方交付税制度が設けられています。
(1)役割
地方公共団体間の財源の不均衡を調整(財源調整機能)し、どの地域に住む国民にも一定の行政サービスを提供できるよう財源を保障(財源
保障機能)するためのものです。
(2)性格
本来地方の税収入とすべきところ、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分する、いわば「国が地方に代わって徴
収する地方税」であり、地方の固有財源です。
地方交付税の使途は、地方公共団体の自主的な判断に任されており、国が使途を制限したり、条件を付けたりすることは禁じられています。
2 地方交付税の種類
(1)普通交付税
財源不足が生じる地方公共団体に対して、地方交付税総額の94%が普通交付税として交付されます。
(2)特別交付税
普通交付税で補足されない特別の財政需要に対して、地方交付税総額の6%が特別交付税として交付されます。
地方交付税制度の概要(2)
3 地方交付税の総額
地方交付税の総額は、国税である所得税・酒税の32%、法人税の34%、消費税の22.3%、たばこ税の25%、地方法人税の全額とされて
います。
財源不足が生じない地方公共団体には
普通交付税が交付されません。
4 普通交付税の算出方法
普通交付税額
=
基準財政需要額(※1)
-
基準財政収入額(※2)
=
財源不足額(※3)
※1 基準財政需要額とは
地方公共団体が標準的な水準の行政サービスを実施するために必要と見込まれる一般財源です。国が定めた基準に基づいて算出するも
のであり、実際の決算額や予算額ではありません。(具体的な算出方法については「5 基準財政需要額の算出方法」を参照。)
※2 基準財政収入額とは
標準的な市税収入(個人市民税、固定資産税、軽自動車税など)の75%と地方譲与税などを足し合わせたものです。
※3 財源不足額とは
基準財政需要額が基準財政収入額を超える部分です。この分が普通交付税として交付されます。(実際には財源不足額の一部が普通交
付税として交付され、差額は臨時財政対策債(「7 臨時財政対策債について」を参照)により補てんされています。)
基準財政需要額
「6 留保財源の役割」を参照
臨時財政
対策債
普通交付税
財源不足額
基準財政収入額
(標準的な市税収入の75%)
標準的な市税収入
留保財源
地方交付税制度の概要(3)
5 基準財政需要額の算出方法
基準財政需要額は、消防費、道路橋りょう費、小学校費など地方交付税法で定められた費目ごとに下記算式によって算出された合計額です。
基準財政需要額
=
単位費用(※1)
×
( 測定単位(※2)
×
補正係数(※3) )
※1 単位費用とは
道路延長1㎞当たり経費など費目ごとの単価です。なお、単位費用は、法令、全国水準などを基に客観的に毎年度法定されています。そ
の理由は、全ての地方公共団体の財政需要を合理的に算定し、衡平に交付税を交付するためです。
※2 測定単位とは
各行政項目の経費増減に影響を与える指標です。主として人口ですが、道路の延長・面積や児童・生徒数なども用いられています。なお、
公正な算定となるよう、人口は国勢調査の数値を用いることなど、測定単位の根拠が法定されています。
※3 補正係数とは
測定単位の多少だけでは反映できない行政経費を反映するために用いる乗率です。例えば、都市化が進むほど道路の損傷が激しくなり、
同じ道路面積に要する維持補修費が高額になるため、乗率が大きくなります。
6 留保財源の役割
基準財政収入額に関しては、地方税法などによって地方公共団体における税収の全体をとらえることが容易ですが、基準財政需要額に関して
は、1,700以上の地方公共団体で様々な行政サービスが提供されており、全てを把握することは困難です。
こうした基準財政需要額でとらえきれない行政経費に対応する財源として、留保財源が設けられています。
また、留保財源は交付税の減額要因にならない反面、税収が増すごとに増加するものですから、税収を増やす意欲を高める効果も期待されて
います。
地方交付税制度の概要(4)
7 臨時財政対策債について
地方公共団体の財源不足額に対して地方交付税総額が恒常的に不足する場合、地方交付税の原資である国税の法定率を引き上げる
のが本来の姿です。
しかし、原資となる国税収入も不足しているため、不足分を国と地方が折半で負担しており、地方の負担分は「臨時財政対策債」という
借金により賄っています。
地方交付税と同様、臨時財政対策債の使途は自由であり、また、その元利償還金は後年度の基準財政需要額に算入されます。しかし
ながら、臨時財政対策債の本質は借金であり、安定的な財政運営の妨げになるため、国に対して法定率引上げによる本来の対応を訴え
ていく必要があります。
基準財政需要額
臨時財政
対策債
普通交付税
財源不足額
本来は普通交付税として交付されますが、
原資が不足しているため、地方が臨時財
政対策債という借金で賄っています。
基準財政収入額
(標準的な市税収入の75%)
標準的な市税収入
地方交付税の原資となる国税の
法定率引上げによる不足分への
対応を、強く求めていきます。
留保財源