公共経済学 23. 地方分権と政府間の役割分担 23.1 公共財と地方公共財 23.2 中央集権と地方分権 23.3 地方公共財と「足による投票」 23.4 一般定額補助金と特定定率補助金 23.5 日本の地方財政 23.1 公共財と地方公共財 非競合性と排除不可能性 ⇒ 公共財を特徴付け 非競合性=「追加的な個人がその財を消費 ⇒ 他の個人の消費水準が低下しない」 排除不可能性=「その財を消費しようとする個人を小さい費用で排除することが不可能」 純粋公共財=非競合性 + 排除不可能性 準公共財=非競合性 or 排除不可能性 公共財=純粋公共財 or 準公共財 地域的・空間的な観点に関する配慮は? 一般道路=純粋公共財? 高速道路=準公共財? 東京の住民が北海道にある道路から北海道の住民と同等の便益を得られる? 国防・外交=その公共サービスから個人が得る便益はその居住地に依存しない。 ・図書館・公園 道路(とくに一般道路) =遠くに居住する個人よりも近くに居住する個人のほうがより多くの便益を得られる 地方公共財(local public goods) =便益の水準がその財の存在する場所と居住地との物理的な距離が近いほうが高い公共財 国家公共財(national public goods)=国全体にその便益が及ぶ公共財 国際公共財(international public goods)=世界全体にその便益が及ぶ公共財 (問題 23-1)上に挙げた例以外の地方公共財、国家公共財、国際公共財の例を挙げなさい。 23.2 中央集権と地方分権 地方分権的=地方政府が中央政府から財政的に「自立」している程度が強い 中央集権的=地方政府が中央政府から財政的に「自立」している程度が弱い 財政連邦制(fiscal federalism)=分権的な財政制度 (問題 23-2) 「自立」について親と子の関係を例にして検討する。 入学金・授業料は全て親が支払っており自宅から通学している大学生 ① 生活費は全て自分で稼ぐ & 何に使うかは自由、 ② 本代は全て親が負担 & それ以外の生活費は全て自分で稼ぐ & 使い道は自由、 ③ 本代の半額を親が負担 & 残りの半額とそれ以外の生活費は全て自分で稼ぐ & 使い道は自由 ④ 毎月 5 万円のお小遣いが渡される & 自分で稼いだお金とその小遣いの使い道は自由 ⑤ 毎月のお小遣い=5 万円-稼いだ金額の半分 & 使い道は自由。 財政制度に関する地方分権(あるいは中央集権)の程度の歳出と歳入の両面からの特徴付 中央集権的=「中央政府の歳出/政府の歳出」が大 or「中央政府の歳入/政府の歳入」が大 中央集権度(centralization ratio)=中央政府の歳出/政府の歳出 23.3 地方公共財と「足による投票」 国家公共財=地方政府が供給することは困難 地方公共財=地方政府が分権的に供給することは可能 (問題 23-3)国家公共財を地方政府が供給することの困難性について説明しなさい。 ティボー(Tiebout) 移住コストが小 ⇒「足による投票(voting with the feet) 」⇒ 効率的な地方公共財の供給 居住地選択が自由 ⇒ 「地方政府=企業 & 住民=顧客」 居住地選択が自由 & 全国に多くの地方政府が存在 ⇒ より魅力的な地方公共財の中身と水準、地方税の税目と税率を設定するように競争 ⇒ 「足による投票」 ⇒ 地方政府間の競争 ⇒ 地方公共財の効率的な供給 (問題 23-4) 「選挙における投票」と「足による投票」の相違? (問題 23-5)地方政府が地域内での所得再分配を実施することの困難性? (問題 23-6)地方政府が高速道路を自立的に整備することの問題点? 23.4 一般定額補助金と特定定率補助金 中央政府による地方政府への補助金の効果? 一般定額補助金(unconditional lump-sum grants) =使途の制限は無く、地方政府が自由にその使途を決定できる補助金 特定定率補助金(conditional matching grants) =その使途は指定されており自由に決定することはできない補助金 地方交付税 = 一般定額補助金(一般財源) 国庫補助金 = 特定定率補助金(特定財源) 特定定率補助金の効率性? 地域の住民 = 1 人 地方税 = 一括税 PG T : 地方政府の予算制約式 (23-1) P = 公共財の価格 y =生産量 x =私的財の量 x y T (私的財の価格=1) : 住民の予算制約式 (23-2) (23-1)&(23-2) ⇒ PG x y :(補助金がないときの)地域の予算制約式 L =一般定額補助金 PG T L : L のもとでの地方政府の予算制約式 PG x y L : L のもとでの地域の予算制約式 (23-3) (23-4) (23-5) 補助率 m の特定定率補助金のもとでの地方政府の予算制約式は (1 m)PG T ひもつき補助金 (23-6) だから、地域の予算制約式は (1 m)PG x y :補助率 m のもとでの地域の予算制約式 (23-7) である。 (問題 23-7)地方公共財に対する特定定率補助金の効率性の観点からの問題点について、 一般定額補助金と比較することで検討しなさい。 x PG x y L yL L 一般定額補助金の下での補助金額 y 厚生損失 PG x y (1 m)PG* 特定定率補助金の下での補助金額 (1 m)PG x y P G ** G* (1 m) P G 23.5 日本の地方財政 地方公共団体の財源 =地方税(約 35%)+地方交付税(約 20%)+国庫支出金(約 15%) +地方債(約 15%)+その他(15%) 地方財政計画における歳入・歳出 <地方税> 道府県税=個人道府県民税、法人道府県民税、法人事業税、地方消費税、自動車税など 市町村税=個人市町村民税、法人市町村民税、固定資産税、都市計画税など <地方交付税> =国が地方公共団体の財源の偏在を調整 (地方財政調整) ● 個別地方公共団体について 地方交付税=普通交付税+特別交付税 普通交付税=max(財源不足額,0) 財政力指数=基準財政収入額/基準財政需要額 財源不足額=基準財政需要-基準財政収入額 財源不足額<0 ⇒ 不交付団体 (東京都、愛知県など) (ある行政項目の)基準財政需要=(その行政項目の)測定単位×単位費用×補正係数 (例) 「道路橋りょう費」と「小学校費」の測定単位と単位費用 行政項目(2006 年度) 単位=円, 1000 ㎡, km, 人 道路橋りょう費 小学校費 経常経費 投資的経費 経常経費 投資的経費 道府県 測定単位 単位費用 174,000 道路の面積 2,790,000 道路の延長 6,783,000 教職員数 市町村 測定単位 単位費用 92,800 道路の面積 299,000 道路の延長 41,700 児童数 907,000 学級数 7,692,000 学校数 668,000 学級数 <小学校> 教える内容 ⇒ 国、教員採用 ⇒ 都道府県、学校の建設 ⇒ 市町村 補正係数=種別補正、段階補正、密度補正、寒冷補正、数値急増補正、合併補正など 基準財政需要額=各行政項目の基準財政需要額の和 基準財政収入額=標準(的な地方)税収入×75%+地方譲与税 標準税収入=法定普通税(住民税など)+税交付金(地方消費税交付金など)+・・・ 地方譲与税=地方道路譲与税+自動車重量譲与税+・・・ +所得譲与税 (←「三位一体改革」にともなう暫定措置) (問題 23-8)基準財政需要額が 110 億で地方譲与税が 10 億円であるとする。標準税収入が 100 億円のときと 120 億円のときの、 基準財政収入額と普通交付税を求めなさい。 普通交付税=max(財源不足額,0) 財源不足額=基準財政需要-基準財政収入額 標準税収入 基準財政収入 財源不足額 普通交付税 100 75+10=85 25 25 120 90+10=100 10 10 +20 -15 標準財政規模=標準税収入額+地方譲与税+普通交付税(+交通安全対策特別交付金) 財政赤字/標準財政規模>20%(市町村) ⇒ 財政再建団体 (赤池町、夕張市) ● 国全体について 地方交付税総額=32%×(所得税+酒税)+35.8%×法人税+29.5%×消費税+25%×たばこ税 財源 交付税特別会計借入金等=各地方公共団体の普通交付税の合算額/94%-地方交付税総額 各地方公共団体の普通交付税の合算額=94%×(地方交付税総額+交付税特別会計借入金) 各地方公共団体の特別交付税の合算額=6%×(地方交付税総額+交付税特別会計借入金等) (注)平成 15 年度以降: 「借入金」⇒「一般会計からの特例加算」&「臨時財政対策債」 <国庫支出金> =国庫補助金(公共事業など)+国庫負担金(生活保護費など)+国庫委託金(国政選挙など) 単独事業 vs 補助事業 <国から地方へのおカネの流れ> 国の一般会計 地方自治体 収入 支出 収入 地 方 交 付 税 総 額 地 方 税 等 税 収 等 国 債 費 国 他 債 の 発 行 支 出 一部 交付税及び譲与税 配布金特別会計 一般会計 から繰入 借金 地 方 交 付 税 国 庫 支 出 金 地 方 交 付 税 地 方 債 支出 支 出 23.1 公共財と地方公共財 23.2 中央集権と地方分権 23.3 地方公共財と「足による投票」 23.4 一般定額補助金と特定定率補助金 23.5 日本の地方財政
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