岩手医科大学歯学会 第 78 回例会プログラム

岩手医科大学歯学会
第 78 回例会プログラム
日時:平成 27 年 2 月 28 日(土)午後 1 時より
会場:岩手医科大学歯学部第四講義室(C 棟 6 階)
12:30
13:00
受付開始
13:05
歯学会長挨拶
13:05 13:25
一般演題
座長
藤村 朗
1.表情筋に分布する下歯槽神経の枝
○藤澤 慶子、小幡 健吾、島田 崇史、鈴木 莉絵、安藤 禎紀※、藤原 尚樹※※、藤村
朗※
(歯学部 2 年、解剖学講座機能形態学分野※、解剖学講座発生生物・再生医学分野※※)
2.大臼歯部に検出された過剰埋伏歯について
○東海林 理、泉澤 充、佐藤
仁、高橋 徳明、星野 正行、大堀 壮一、定岡 哲哉、
小豆嶋正典 (歯学部口腔顎顔面学講座歯科放射線学分野)
休憩(会長特別賞投票)
13:35 14:15
優秀論文賞受賞講演
座長
小林 琢也
1.歯周炎を有さない若年者の口臭に対する歯肉の状態と歯垢および舌苔中細菌の関与
○松井 美樹(歯学部口腔医学講座予防歯科学分野)
2.咀嚼に対する意識の強化が摂食時の舌運動、下顎運動、食物搬送に与える影響
○原
14:15
淳(歯学部補綴・インプラント学講座)
会長特別賞発表
(担当:機能形態学分野、口腔外科学分野)
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一般演題(13:05 13:25)
座長
藤村
朗
1. 表情筋に分布する下歯槽神経の枝
歯学部 2 年、解剖学講座機能形態学分野※、解剖学講座発生生物・再生医学分野※※
○藤澤 慶子、小幡 健吾、島田 崇史、鈴木 莉絵、安藤 禎紀※、藤原 尚樹※※、藤村
朗※
平成 26 年度歯学部 2 年生の臨床解剖実習において下顎骨外斜線上から出現した神経が大・小
頬骨筋に分布する一例に遭遇した。年齢 92 歳、男性(死因:急性下肢動脈閉塞症)の左側下顎
骨離断の際に外斜線上の孔から出現した太さ約 1mm の神経は顔面静脈の浅層を前上方に走行し、
大・小頬骨筋の筋腹後縁下方から侵入していた。本神経が下歯槽神経の枝であることは確認でき
たが、下歯槽神経の枝が表情筋の特に上顎部に分布するとの記載は我々が渉猟した成書の中には
認められなかった。また、表情筋についての感覚神経の分布についての記載も確認できなかった。
本神経が筋肉の感覚神経として分布しているのであれば、大・小頬骨筋の位置から考えて上顎神
経の眼窩下神経の分布が妥当と考えた。すなわち、本神経が大・小頬骨筋に分布することはあり
えないことになる。これらの疑問点を考察したい。
2. 大臼歯部に検出された過剰埋伏歯について
歯学部口腔顎顔面学講座歯科放射線学分野
○東海林 理、泉澤 充、佐藤 仁、高橋 徳明、星野 正行、大堀 壮一、定岡 哲哉、小豆嶋正典
大臼歯部における過剰歯は、第三大臼歯の遠心部に発現する臼後歯または第四大臼歯および頬
側に見られる臼旁歯に分類されており、それぞれの発生起源については諸説がある。第三大臼歯
が正常に萌出することすら少なくなってきた近年において、大臼歯部の過剰歯の発現はまれであ
る。しかし近年のパノラマエックス線撮影機器の進歩により得られる画質が向上し、高精細ディ
スプレーを用いて読影を行っているため、日常臨床での検査で偶然発見されることがある。また
頭部用コーンビーム CT の導入より、他の歯や骨に重複して観察が困難な例においても検出され
るケースがある。
今回我々は、近年本学附属病院歯科医療センター歯科放射線科外来において、パノラマエック
ス線撮影装置または頭部用コーンビーム CT で大臼歯部に検出された過剰埋伏歯について集計し
検討を行った。
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優秀論文賞受賞講演(13:35
14:15)
座長
小林 琢也
【一般論文】
1. 歯周炎を有さない若年者の口臭に対する歯肉の状態と歯垢および舌苔中細菌の関与
歯学部口腔医学講座予防歯科学分野
○ 松井 美樹
目的:口中気体のVolatile Sulfur Compounds(VSC)濃度,歯肉炎、歯垢と舌苔試料における口
腔微生物の量との間の関連性を検討することを目的とした。
対象と方法:対象者は全身的に健康な成人男性13名、女性5名の18名(平均年齢22.7
3.1歳)
であり、彼らは自発的に研究に参加した。口腔診査結果によって被験者を歯肉炎有所見者(歯肉
炎群)と歯周組織健全者(健全群)の2群に分けた。ベースライン時Winkel tongue coating index
(WTCI)を評価した後にガスクロマトグラフィを用いて硫化水素(H2S)とメチルメルカプタン
(CH3SH)濃度を測定した。続いて舌苔は舌背中央付近舌根部からマイクロスパーテルで3回擦過
し、歯垢は下顎両側第一大臼歯から歯科用探針を用いて全量採取した。さらに被験者は軟毛ブラ
シを用いて丁寧に自分の舌を清掃した。3日後、同様に口臭測定を行いベースラインと同一部位
から歯垢と舌苔試料を採取した。採取した試料からゲノムDNAを精製し、総細菌とF.nucleatum
を定量するためreal‐timePCRに供した。
結果:ベースライン時、歯肉炎群ではCH3SH濃度、歯垢中総細菌量が健全群よりも有意に高かっ
た。舌清掃3日後には、ベースラインと比較してH2S濃度は歯肉炎群で有意に減少していた。被験
者全体では、単相関分析において歯垢申の総細菌密度とF.nucleatum量密度の間に高い相関が認
められた。口中気体のVSC濃度を目的変数とした重回帰分析では、ベースライン時のBleeding on
Probing(BOP)歯数3mmの歯周ポケットの存在、WTCI、F.nucleatum密度が口中気体のVSC濃度と
有意に関連していた。
結論:口中気体の VSC 濃度は、舌苔のみならず歯肉の状態や歯垢中細菌にも影響されることが示
された。
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【学位論文】
2. 咀嚼に対する意識の強化が摂食時の舌運動、下顎運動、食物搬送に与える影響
歯学部補綴・インプラント学講座
○原
淳
目的:近年の研究から、咀嚼中に食塊は咽頭へと侵入し、その後、口腔と咽頭の食塊がまとめて
嚥下されることが明らかとなり、咀嚼と嚥下は連続した1つの運動として捉えることが重要であ
ると考えられている。咀嚼は central pattern generator (CPG)によって制御され、摂食中に
咀嚼を特に意識しなくても行うことができる。しかし、加齢変化により嚥下機能の低下が生じや
すい高齢者では、不良な咀嚼による食塊形成が嚥下障害のリスクを高める可能性があり、良好な
咀嚼は嚥下機能低下に対する有効な代償法になりうると考えられる。特に、咀嚼は随意的に制御
可能な運動でもあるため、十分な咀嚼を意識して摂食することで、口腔の運動や咀嚼嚥下動態が
変化すると考えられるが、その詳細は不明である。
そこで本研究の目的は、咀嚼に対する意識の強化が摂食時の舌運動、下顎運動、食物搬送に及
ぼす影響を明らかにすることとした。
方法:被験者は個性正常咬合を有するボランティア 27 名とした。日常通りの咀嚼で摂食させた場
合(通常摂食条件)と、咀嚼を意識して摂食させた場合(咀嚼強化条件)の 2 条件下で 40%硫
酸バリウム含有寒天ブロックを摂食させ、嚥下造影側面像を記録した。口腔・咽頭領域を、口腔
領域(OC)、口腔咽頭上部領域(UOP)、喉頭蓋谷領域(VAL)、下咽頭領域(HYP)の 4 つに区分し、
咀嚼回数、舌による食塊の押し戻し運動(Push forward 運動)、各領域の食塊通過時間、咀嚼周
期時間を分析した。
結果・考察:咀嚼強化条件では、嚥下までの咀嚼回数および Push forward 運動の発生回数は有意
な増加を認めた。また、食塊通過時間は OC、UOP、VAL において有意に延長した。また、咀嚼周
期時間は食塊が OC に存在する間は有意に短縮し、VAL へ搬送されると延長した。
咀嚼中には、舌の Stage II transport によって食塊が咽頭に搬送されるが、摂食時に咀嚼を
意識することで、舌が食塊を口腔に押し戻し、口腔での食塊保持を向上させることが明らかとな
った。さらに、食物が口腔にある間の開閉口運動を速め、また、嚥下反射が遅延することで、口
腔における十分な食塊形成を保証することが明らかとなった。以上より、摂食中の咀嚼意識の強
化は、咀嚼中の下顎運動や舌運動を変化させた結果、食物搬送動態を変化させて、一連の咀嚼嚥
下運動に影響を及ぼすことが示唆された。
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