平成27年漁期イカナゴシンコ(新子)漁況予報 平 成 27 年 2 月 16 日 兵庫県立農林水産技術総合センター 水産技術センター 1. 産 卵 親 魚 の 調 査 結 果 産 卵 親 魚 の 調 査 は 、 播 磨 灘 北 東 部 の 鹿 の 瀬 で 12 月 10 日 か ら 26 日 に か け て 延 4 回実施し、採集は文鎮漕ぎで行った。 (1) 親 魚 密 度 文 鎮 漕 ぎ 1 曳 当 た り の 採 集 尾 数 は 27.0 尾 で 、 昨 年 の 0.5 倍 、 平 年 の 0.12 倍 に な っ た 。 年 齢 組 成 は 1 才 魚 が 79.6%、 2 才 魚 以 上 が 20.4%で 、 昨 年 と 比 較 す る と 2 才 魚 以 上 の 割 合 が や や 減 少 し た ( 表 1)。 表1 親魚密度(文鎮漕ぎ1曳当たりの採集尾数) 1才魚 年 2才魚以上 全 体 今 年 21.5尾 (79.6%) 5.5尾 (20.4%) 27.0尾 昨 年 40.6尾 (75.2%) 13.4尾 (24.8%) 54.0尾 平 年 163.0尾 (72.4%) 62.3尾 (27.6%) 225.3尾 (平年:1987~2013年漁期の平均値) (2) 親 魚 の 全 長 組 成 採 集 さ れ た 親 魚 の 全 長 組 成 を 図 1 に 示 し た 。 親 魚 全 体 の 平 均 全 長 は 106.4mm で 、 昨 年 の 110.1mm を や や 下 回 っ た 。 1曳当たりの採集尾数 10 【今 年】 親魚密度 27.0尾 平均全長 □1才魚:94.2mm ■2才魚以上:153.9mm 全体:106.4mm 8 6 4 2 0 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200 1曳当たりの採集尾数 10 【昨 年】 親魚密度 54.0尾 平均全長 □1才魚:99.3mm ■2才魚以上:142.7mm 全体:110.1mm 8 6 4 2 0 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200 全 長 (mm) 図1 親魚の全長組成 -1- (3) 産 卵 量 指 数 今 年 の 産 卵 量 指 数 は 0.48 に な り 、昨 年 の 0.50 倍 、平 年 の 0.12 倍 に な っ た( 表 2)。 *産卵量指数:総産卵量の目安となる数値。1 尾当たりの産卵量は親魚の大きさによっ て異なるため、毎年の親魚密度と全長組成から算出しています。 表2 産卵量指数(1987年漁期の産卵量を”1.00”とした場合の相対値) 年 1才魚 2才魚以上 全 体 今 年 0.18 (37.3%) 0.30 (62.7%) 0.48 昨 年 0.41 (42.7%) 0.55 (57.3%) 0.96 平 年 1.59 (39.4%) 2.45 (60.6%) 4.05 (平年:1987~2013年漁期の平均値) (4) 産 卵 盛 期 今 年 の 雌 親 魚 の 生 殖 腺 ( 卵 巣 ) 熟 度 指 数 は 12 月 19 日 か ら 26 日 に か け て 減 少 し た ( 図 2)。 19 日 の 調 査 で は 14%の 雌 親 魚 が 完 熟 卵 を 持 っ て い た が 産 卵 は 始 ま っ て い な か っ た 。 し か し 、 26 日 の 調 査 で は す べ て の 親 魚 が 産 卵 を 終 え て い た 。 以 上 の こ と か ら 、 鹿 の 瀬 に お け る 今 年 の 産 卵 盛 期 は 、 昨 年 と 同 じ 、 12 月 20 日 か ら 25 日 の 間 と 推 察 さ れ た 。 *完熟卵は産卵可能な状態の卵を指します。 35 30 1才魚(昨年) 2才魚以上(昨年) 1才魚(今年) 2才魚以上(今年) 生殖腺熟度指数 25 20 15 10 5 0 12/5 12/10 図2 12/15 12/20 12/25 雌親魚の生殖腺熟度指数の変化 12/30 (昨年12月11日と今年12月12日の調査では、2才以上の雌親魚が採集されなかったため グラフには掲載していません。) -2- 2. 稚 仔 の 調 査 結 果 稚 仔 の 調 査 は 1 月 21 日 、22 日 、26 日 に 実 施 し た 。採 集 は 、表 層 か ら 底 層 ま で の 往 復 傾 斜 曳 き ( 口 径 60cm の ボ ン ゴ ネ ッ ト 使 用 ) に よ り 行 っ た 。 採 集 結 果 を 図 3 に 示 し た 。 1 地 点 当 た り の 平 均 採 集 尾 数 は 播 磨 灘 が 3.9 尾 で 昨 年 の 値 ( 播 磨 灘 6.8 尾 ) を 下 回 っ た 。 大 阪 湾 は 9.9 尾 で 昨 年 の 値 ( 10.0 尾 ) と ほ ぼ 同 じであったが、同時期に大阪府の水産技術センターが実施した調査では、平均採集 尾 数 が 昨 年 を 下 回 っ て い た 。紀 伊 水 道 は 2.4 尾 で 昨 年 の 値( 1.7 尾 )を 上 回 っ た が 、 分布量としては低水準であった。 各 海 域 の 稚 仔 の 全 長 組 成 を 図 4~6 に 示 し た 。 平 均 値 は 播 磨 灘 が 11.2mm、 大 阪 湾 が 9.4mm、紀 伊 水 道 が 9.9mm に な り 、昨 年 の 値( 播 磨 灘 10.4mm、大 阪 湾 8.7mm、 紀 伊 水 道 8.3mm) を 上 回 っ た 。 ま た 、 播 磨 灘 で は 全 長 8mm 台 、 11mm 台 に モ ー ド が み ら れ た が 、 昨 年 出 現 し た 20mm 前 後 の 個 体 は み ら れ ず 、 6mm 以 下 の 小 型 群 も ほ と ん ど 採 集 さ れ な か っ た 。大 阪 湾 で は 、全 長 8~ 11mm の 個 体 が 過 半 数 を 占 め た 。 これらのことから、播磨灘、大阪湾ともに全長組成のばらつきが昨年に比べ小さい と考えられた。 上段:今年 (単位:尾/m2) 下段:昨年 0 0 0 0 1 32 9 6 2 0 0 3 6 0 1月21・26日 1月23・24・27日 16 15 18 5 0 6 21 20 1 10 12 6 17 3 7 2 7 1 1 2 0 1 8 11 2 3 1月21日 1月23日 図 3 稚 仔 の採 集 尾 数 -3- 2 6 5 7 4 20 1月21・22日 1月23・24日 2 13 20 【今 年】 1月21・26日 平均 11.2mm 頻度(%) 15 10 5 0 頻度(%) 15 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 【昨 年】 1月23・24・27日 平均 10.4mm 10 5 0 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 全 長 (mm) 図4 表層から底層までの往復傾斜曳きで採集された稚仔の全長組成(播磨灘) 25 【今 年】 1月21・22日 平均 9.4mm 頻度(%) 20 15 10 5 0 頻度(%) 20 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 【昨 年】 1月23・24日 平均 8.7mm 15 10 5 0 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 全 長 (mm) 図5 表層から底層までの往復傾斜曳きで採集された稚仔の全長組成(大阪湾) -4- 30 【今 年】 1月23日 平均 9.9mm 頻度(%) 25 20 15 10 5 0 30 3 5 7 9 11 13 15 17 19 23 25 【昨 年】 1月23日 平均 8.3mm 25 頻度(%) 21 20 15 10 5 0 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 全 長 (mm) 図6 表層から底層までの往復傾斜曳きで採集された稚仔の全長組成(紀伊水道) 3. 稚 仔 の 成 育 の 見 通 し 稚仔の成長速度は水温の影響を強く受け、水温が高いほど成長速度は速くなると 考 え ら れ る 。今 年 の 明 石 海 峡 部 の 水 温 は 、1 月 上 旬 は 平 年 、昨 年 よ り 低 め だ っ た が 、 1 月中旬は平年並みで推移した。1 月下旬になると水温は横ばいとなり、昨年、平 年 を 上 回 る 形 で 推 移 し た が 、 2 月 に 入 り 昨 年 並 み に な っ て き て い る ( 図 7)。 2 月 5 日に大阪管区気象台から発表された 1 ヶ月予報(一週目は平年並み、二週 目は高めか平年並み)から判断すると、今後の水温は平年より高めで推移すると予 測されることから、稚仔の成長速度も平年よりやや速めになると考えられる。 14 今年 13 昨年 平年(H16~H25) 水温(℃) 12 11 10 9 8 7 1/1 1/6 1/11 1/16 1/21 1/26 1/31 2/5 2/10 2/15 2/20 2/25 図7 明石海峡部2.5m層日平均水温の推移 -5- 4. シ ン コ 漁 の 予 測 昨年は、産卵量や稚仔の分布量は少なかったが、網おろし日を遅くしてシンコの 漁獲開始サイズを大きくした。その結果、大阪湾では不漁であった2年前を上回り 平 年 * 1 並 み の 漁 獲 量 と な っ た 。播 磨 灘 の 西 部 で は 2 年 前 が 好 漁 で あ っ た た め 、 昨 年 はそれを下回ったが平年並み、東部でも平年並みの漁獲量であった。紀伊水道は2 年続いて不漁であった。 今 期 は 昨 年 よ り さ ら に 産 卵 量 や 稚 仔 の 分 布 量 が 少 な い こ と 、備 讃 瀬 戸 * 2 の 親 魚 量 も少ないこと(香川県水産試験場の親魚調査結果より)から “今期のシンコ漁獲量は、播磨灘、大阪湾では昨年及び平年を下回る、紀伊水道は 平年を下回り昨年並み”と予想される。 *1:平年値は標本漁協における 1987~2013 年の 2、3 月のシンコ漁獲量の平均値を基準としている。 *2:播磨灘で漁獲されるイカナゴの一部は備讃瀬戸発生群と考えられている。 注)シンコの網おろし日は各地区漁業者の自主的判断によるが、過去の経験から網 下ろしが早過ぎた場合には不漁になる可能性が高い。網おろし日の決定にあたっ てはこの点を十分に考慮されたい。 -6-
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