地域農業振興のための技術と経営問題について 調査のねらい. 農業をとりまく杜会的、経済的環境は、農産物の輸入外圧、兼業化、高齢化等困難な間題が多 い。このような条件下で地域農業の振興と農業経営の安定化をはかるには、作目別生産技術の改 善にとどまらず、地域農業として作目を位置づけた総合的な技術開発が必要となる。 ところで、市町村レベルで緊急に解決を要する技術や経営間題を地域間題として摘出し、必要 な技術開発の積極的推進をはかるための資料を得る。 調査方法と調査対象地域 行政と試験研究との連携をはかるべく、関東農政局と本県とが共同で実施している拠点的な地 域農業指導と相呼応して、58年から61年まで4町村を対象に、場内プロジェクト班によって 調査・検討した。 表一1 農業技術間題調査訴究対象地域の概況 調査研究項目の解決方向にお ける、導・改・開・行は下記の 意味を示すものである。 導:現状の技術に新たに導入 を要する技術事項名 改:現状の技術に改善を要す 舟塩谷郡塩谷町 (昭58)総世帯数3,499総農家数1988(専161, I兼530,皿兼1297)、農業粗生産額53,28 億円(%米5ユ.1、畜産32.1、野菜7.1、麦類 3.5、花き3.3)生産農業所得率40.2% 共那須郡南那須町 (昭61)総世帯数2,809総農家数1,773(専144, I兼335、』兼1294)農業粗生産額102.54 る技術事項名 億円(%、米21.7、畜産67.9、野菜3.7、果 実2.4、花き0.2)生産農業所得率28.9% 新たに試験研究を要する 1兼612、皿兼1,092)農業粗生産額93.37 間題名 麦類2.9、花き1.O、雑穀1.4)、生産農業所得 祈芳賀郡二宮町 開:現状の技術間題解決には、 (昭60)総世帯数3,880総農家数2,095(専388, 行:技術間題は行政面で解決 すべき問題が含まれるた 億円(%、米38.8、畜産15.4、野菜36.9、 率44.7% 共下都賀郡藤岡町 (昭59)総世帯数4,762総農家数2,004(専116, め、行政部局への提言事 I兼679、皿兼1,024)農業粗生産額4387 項 3 調査結果及び考察 億円(%、米45.7、畜産10.8、野菜ユ6.9、 麦類18.0、いも類2.2、雑穀2.1)生産農業所 得率44.4% 調査町村の農業の特徴と問題点、その解決 のために今後取り組む必要のある研究問題とその対応、行政への提言などについて検討した。主 な事項(概要)は表一2のとおりである。成果については、緊急に解決すべき間題であり・研究 を実施中か計画中の事項もある。また同’地帯でも町村の立地条件によって、間題の種類とその 重要度が少なからず変化している。対象の町村について、必要とされる農業技術情報の提供をは かる意味から、調査繕果の概要を整理した。 注.本課題は本場の各部長(企画経営部・作物部・野菜部・果樹部・花き部・土壌肥料部・病理 昆虫部)で構成したプロジェクト班が担当した。 (執筆老 企画経営部塩谷 民一) 一39一 表一2 調査研究成績の概要 調査研究項目 58年塩 谷 調査研究項目の解決方向 町(農山村) 水稲(麦)一花き一畜産 ’ ユ.ほ場整傭跡地の対策 導:簡易暗渠の施工(籾穀暗渠) 行:施肥対策は、普及所の土壌診断事業を活用して推 進する。 2.良質米の作付拡大 3.野菜作の拡大 行:水・地温の上昇と農作業及ぴ管埋技術の同上を図 るために、基盤整傭の推進と灌排水路の整傭 改:夏ニラを増やして、労力の配分を行い、栽培面積 の増加を図る。 4.キク栽培を基幹とし 導:リンドウその他宿根・切花類の導入拡大 た花き生産の安定生 産 5.経営間補完方法の確 改:肉用牛の適正頭数算定と経営モデルの策定 立 59年藤 岡 町(平地農村) ユ、客土によるほ場整傭 跡地の対策 導:礫層地における圧縮型心土破砕機 の利用 改:葉色などによる簡易なコシヒカリ の生育診断技術の確立 改:簡易排水及ぴ土壌改良による生産 基盤の整傭 導:スプレーギク品種の導入と施設栽 培の推進 改:ライスセンター、堆厩肥センター の設置 水稲(麦)一野菜一果樹一畜産 導:簡易暗渠の施工(弾丸暗渠、籾殻暗渠) 改:土層の透水性を改善するため、麦 の導入と有機物(堆肥)を積極的 に施用する。開:良質な縞葉枯病抵坑性晶種の選定 21水稲作の安定 3.野菜作の安定拡大 開:葉色などによる簡易な生胃診断技術の確立 開:縞葉枯病低抗性品種導入による病害虫防除体系の 見直しと確立 開:サヤエンドウの運作障害軽滅対策 導: 〃 のトンネル栽培導入による早期出荷 により、高収益と労力の分散 導:なすのアブラムシ防除技術の導入を図る 4・プドウ作の安定. 導:晶種更新の推進、キャンペルゥ巨峰群の優良系統 開:ハウス巨峰の管理法(基準化技術確立) 5.観光甘藷の安定 導:簡易貯歳法の確立 行:渡良瀬遊水池の開発と結ぴつけた観光農業の展望 60年 二 宮 町(平地農村) 開:ニラの定植作業の省力化 導:ニラの乾燥防除技術の導入をはか る 導:ニラの草丈7∼8㎝時に除草剤を 使用する 行1施設栽培への誘導(技術及ぴ資金) 行:キャンペルの勇定の強さと適正着 果量の確傑 行:観光客受入れ施設の整備拡充 水稲(麦)一野菜一畜産 ユ.ほ場整傭跡地の対策 改:裏作麦等の導入をすすめることにより、早期に土 層の改良をはかる 2.良質米低’コスト生産 開:湛水直播栽培技術の向上 の安定 開:倒伏軽滅技術の確立 3.野菜作の安定拡大 開:イチゴ女峰の着色不良果防止対策 開: 〃 栽培における有機質肥料の影響 行: 〃 栽培についてウオーターカーテンの導入促進 改: 〃 無病親株の利用、苗床の消毒 4.経営間補完による副 行:堆厩肥と稲わらの交換規定を設ける 産物の利用 行:堆肥盤の増設をはかる 61年南那須町(平地農村) 開:良質な縞葉枯病低抗性品種の選定 行:受委託作業の促進 開:ニラ株養成期間の倒伏防止対策 開:ニラハウス被覆資材の検討 行:夏どりニラの増加に対する予冷施 設の導入 改:ニラの病害対策 改:地域内で、より適正な組織間の補 完関係をつくる 水稲一畜産一野粟・果樹・花き 1.農耕地土壌の現況と 対策 2.良質米低コスト生産 の安定 行:水田整備率の向上 改:土壌診断に基づく改良資材の施用 開:水稲の強稗・良食味品種の育成 開:平置き出芽法の確立 開:鳥害に対する有効な防除法の確立 3.特産品の育成・開発 開:加エトマトの9月上旬までに収穫完了させる栽培 と流通対策 法の確立 導:インゲンの栽培にっいて、パンチフィルム利用に よる作期の前進 行:花き新規導入種類の検討 開:〃 球根腐敗の原因と技術対策 4.経営間補完による副 開:堆肥管理センターの設置条件とコスト 産物の利用 行:大規模堆肥センターの設置 一40一 改:等高線栽培による浸蝕の軽滅 開:簡易な生育診断技術の確立 開:湛水直播栽培の生産安定技術の確 立 開: 〃 におけるイネミズゾウムシ の防除対策 開:サトイモ石川早生等の早生品種の 適応性検討 改: 〃のウイルス病防除のための 親株選定 導:果樹栽培農家の後継者育成. 導:花きの土壌病害対策と適性切花率 の励行 開:稲切藁収集機の改良
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