回路の勉強会 第4回 MOSトランジスタ 回路の勉強会 Nicodimus R. @ 2014 MOSトランジスタの構造 酸化膜(oxide) 金属(metal) 酸化膜(oxide) 金属(metal) p型半導体 p型半導体 n型半導体 n型半導体 p型半導体基板 semiconductor S (ソース) D (ドレイン) G (ゲート) G (ゲート) D (ドレイン) S (ソース) nチャネルMOS トランジスタ 回路の勉強会 pチャネルMOS トランジスタ Nicodimus R. @ 2014 2 用語の説明 D (ドレイン) ソース(source)端子は多数キャリアを放出する端子 ID VGD G (ゲート) VDS VGS ドレイン(drain)端子は多数キャリアを回収する端子 ゲート(gate)端子はソースからドレインへと流れる多数 キャリアの量を調整するための端子 VGS : ゲート・ソース間電圧 S (ソース) VGD : ゲート・ドレイン間電圧 VDS :ドレイン・ソース間電圧 I D :ドレイン電流 回路の勉強会 Nicodimus R. @ 2014 3 MOSトランジスタの仕組み VDS 0V VGS 0V VGSとVDSがともに0Vの時はpn接合 であるソース・バルクおよびドレイン・バ ルク間の接合部分に空乏層が形成され る。この時、ドレインとソースは絶縁され、 ドレイン電流も流れない。 ゲート バルク ソース ドレイン 空乏層 nチャネルMOSトランジスタ VDS 0V VGS 0V (小) + バルク +++ ゲート ソース --- ドレイン - 次にVGSを徐々に上げていくとゲート 端子には正の電荷が蓄積されるが、そ れと同時にゲート直下のバルクには負 の電荷が蓄積される。 空乏層 nチャネルMOSトランジスタ 回路の勉強会 Nicodimus R. @ 2014 4 MOSトランジスタの仕組み VDS 0V VGS 0V (大) VGS VDS ゲート バルク ソース ドレイン 反転層 (チャネル) VGSがある値を超えるとバルクに蓄積 されている負の電荷によって元々p型 半導体だったゲート直下のバルクがn 型半導体のようになる。反転したバルク の部分を反転層、もしくはチャネルと言 う。これによってドレインとソース間に導 体が作られる。 nチャネルMOSトランジスタ VDS 0V (小) VGS 0V (大) バルク ゲート ソース ドレイン ドレイン電流 次にVDSを徐々に上げていくとドレイン の電位がソース電位よりも高くなるため 導体であるチャネルの抵抗とドレイン・ ソース間電圧に比例するドレイン電流 が流れ始める。ドレイン・ソース間電圧 を上げるとドレイン電流も増加する。 nチャネルMOSトランジスタ 回路の勉強会 Nicodimus R. @ 2014 5 MOSトランジスタの仕組み VDS 0V (大) VGS 0V (大) VGS VDS ゲート バルク ソース ドレイン チャネルが途切れる (ピンチオフ) さらにVDSを上げると、今度はドレイン・ バルク間の空乏層も広がり、ドレイン側 のチャンネルが狭まる。あるところで チャンネルが途切れてしまい、ドレイン 電流がドレイン・ソース間電圧に依存し なくなる。 nチャネルMOSトランジスタ MOSトランジスタの動作を決めるのはゲート・ソース間電圧VGSと ドレイン・ソース間電圧VDSである。 回路の勉強会 Nicodimus R. @ 2014 6 MOSトランジスタの動作領域 1. 遮断(オフ)領域 2.非飽和(線形)領域 VGSがある固有の電圧(閾電圧)より小さい 時に反転層(チャネル)は形成されていない ためトランジスタは動作しない。この状態を 遮断状態と言い、この動作領域を遮断領域 と言う。 遮断領域の条件 回路の勉強会 VGS VT トランジスタがオンかつドレイン電流がドレイ ン・ソース間電圧に比例する領域のことであ る。これは反転層が形成され、チャネルがピ ンチオフになるまでの動作領域である。 非飽和領域の条件 VT : 閾電圧 Nicodimus R. @ 2014 VGS VT 0V VDS VGS VT 7 MOSトランジスタの動作領域 2.飽和領域 各領域におけるドレイン電流の式 1.遮断領域 ID 0 2.非飽和領域 I D 2 K (VGS VT 3.飽和領域 VDS )VDS 2 I D 2 K (VGS VT ) 2 チャンネルのピンチオフが発生し、ドレイン電 但し、 流がドレイン・ソース間電圧に依存しない動 0COX W K 作領域のことである。この時、ドレイン電流は 2 L ゲート・ソース間電圧のみに依存する。 0 飽和領域の条件 回路の勉強会 VGS VT VDS VGS VT COX W L Nicodimus R. @ 2014 :キャリアの移動度 :ゲート酸化膜の単位面積容量 :チャネル幅 :チャネル長 8 MOSトランジスタとバイアス ID VDS VGS MOSトランジスタを動作させるには適切な 電圧を掛けたり、適切な電流を流す必要が ある。これらの電圧や電流をバイアス電圧も しくはバイアス電流という。 右の回路の例では、MOSトランジスタの ゲート・ソース間電圧VGSをバイアス電圧、そ してドレイン電流IDがバイアス電流である。 1.遮断領域(VGS<VT) ID 0 2.非飽和領域(VGS>VT , VDS<VGS-VT) V I D 2 K (VGS VT DS )VDS 2 バイアス電圧もしくはバイアス電流は一般的 に直流電圧または直流電流であり、MOSト ランジスタの動作領域を決定する。 3.飽和領域(VGS>VT , VDS>VGS-VT) I D K (VGS VT ) 2 回路の勉強会 Nicodimus R. @ 2014 9 MOSトランジスタの電圧・電流特性 ID ID 非飽和領域 非飽和領域 または 飽和領域 遮断領域 VT VDS VGS ゲート・ソース間電圧対ドレイン電流 回路の勉強会 飽和領域 ドレイン・ソース間電圧対ドレイン電流 Nicodimus R. @ 2014 10 大信号の概念 ID VDS 式(1)と展開すると I D K (VGS 0 VT ) 2 2 K (VGS 0 VT )VGS KVGS2 バイアス成分 VGS 変化成分 とドレイン電流がバイアス成分と変化成分で 表すことができる。 MOSトランジスタの入力電圧は一般的に ゲート端子から加われている。この際、ゲー ト・ソース間電圧が変化することになる。バイ アス状態のゲート・ソース間電圧をVGS0、そ の変化分を VGSとするとドレイン電流IDは I D K (VGS 0 VGS VT ) 2 (1) ただし、MOSトランジスタが飽和領域で動作 すると仮定している。 回路の勉強会 この結果は入力電圧の変化をデバイスの特 性であるドレイン電流に直接代入した結果で あり、入力した電圧に関係なく、上の式で求め ることができる。 上の式からも分かる通り、ドレイン電流は VGS2の成分を持っており非線形な関数であ る。 Nicodimus R. @ 2014 11 大信号だけで解析すると ドレイン電流の式 I D K (VGS VT ) 最後の項に着目すると KVGS2 sin(ω1t ) sin(ω 2t ) 2 2 KVGS2 sin 2 (ω1t ) KVGS2 sin 2 (ω 2t ) ここでVGSが二つの周波数成分を含む信号と 仮定し VGS VGS 0 VGS sin(ω1t ) sin(ω 2t ) と表すと I D K (VGS 0 VT ) 2 2 K (VGS 0 VT )VGS sin(ω1t ) sin(ω 2t ) KVGS2 sin(ω1t ) sin(ω 2t ) 2 が得られる。 回路の勉強会 KVGS2 sin(ω1t ) sin(ω 2t ) 1 KVGS2 (1 cos(2ω1t )) 2 1 KVGS2 (1 cos(2ω 2t )) 2 1 KVGS2 cos([ω1 ω 2 ]t ) cos([ω1 ω 2 ]t ) 2 が得られる。これらの周波数成分を見ると、入 力したものとまったく違い、所望の周波数とは 別の周波数を考慮しなければいけないことが 分かる。規模の大きい回路では非常に困難な 解析である。 Nicodimus R. @ 2014 12 小信号(交流信号)の概念 回路を小信号特性で表す際に、電圧および電 流は一般的に小文字で表す。 ドレイン電流の式 I D K (VGS 0 VT ) 2 2 K (VGS 0 VT )VGS KVGS2 id 2 K (VGS 0 VT )v gs ここで VGSが微小な変化とし、 VGS<<VGS0 -VTと仮定する最後の項を無視 することができ、 バイアスで決まる定数 I D 0 K (VGS 0 VT ) 2 I D K (VGS 0 VT ) 2 2 K (VGS 0 VT )VGS と近似できる。ここで、ドレイン電流をバイアス 成分ID0と変化成分 IDとして表すと バイアス時の微分値(傾き)であることが分か る。 大信号 ID0+ ID I D 0 K (VGS 0 VT ) 2 I D 2 K (VGS 0 VT )VGS 小信号 id ID0 が得られる。回路の特性を変化成分である IDと VGSのみで表すのが小信号解析である。 回路の勉強会 I D 0 2 K (VGS 0 VT ) VGS 0 Nicodimus R. @ 2014 vgs VGS0 VGS0+ VGS 13 MOSトランジスタの小信号等価回路 MOSトランジスタの微小信号を加えた際のド レイン電流の変化分は 小信号解析の際に、MOSトランジスタを表す ために小信号等価回路を用いる。 id 2 K (VGS 0 VT )v gs g m v gs ゲート ここでgmはトランスコンダクタンスといい、 MOSトランジスタの小信号特性を表す係数で あり、入力電圧を出力電流に変換する係数で ある。 ドレイン gmvgs vgs よって、 トランジスタとは 入力電圧を出力電流に変換する 素子である。 回路の勉強会 ro ソース MOSトランジスタの小信号等価回路 gm ro Nicodimus R. @ 2014 :トランスコンダクタンス :出力抵抗(小信号抵抗) 14
© Copyright 2024 ExpyDoc