光通信工学 1. 位相速度・群速度(復習) 2. 半導体とは(復習) 3. Photodiode:前半 光通信工学309-1 コヒーレント光:位相速度とは? 伝搬定数 注意:単一角周波数(波長)、振幅は時間変化しない。 どこまでも同じ波: E z 0, t A cos t E z 0, t A cos t z 進行波 距離:z z 0 A cos t 送信者 z 0 A cos t z 受信者 等位相面 一例 平面進行波 z軸 変数置換:送信者から受信者 t t z z t t z t vp 位相速度:201 vp β 送信者:時刻 t に等位相面(青色)を送る 受信者:時刻 t に等位相面(青色)は受け取れない。 遅延のため 逆に言えば z vp だけ過去のものを受け取る。 だけ待たなければ等位相面(青色)は受け取れない。 光通信工学309-2 光パルス:振幅が時間変化する場合 z z' 時刻 包絡線:Envelope 電場E振幅 t t' 平面波近似:203 光強度は電場E振幅の自乗に比例 t t ' t 位相速度:等位相位置が移動する速度 v p z t z z ' z 位相速度と群速度が等しい場合 群速度:包絡線(最大値:明)が移動する速度 vg z t v p vg 光通信工学309-3 アニメ:位相速度と群速度が一致 位相速度 群速度 光パルス電場E 位相速度と群速度が等しい場合 • • • v p vg 包絡線の最大値と位相の山が常に一致(注意:別に山でなくてもよい。) 等位相位置は位相速度で移動(但し、群速度と同じ) 光強度(明暗の情報)は群速度で移動 光通信工学309-4 光パルス:位相速度と群速度が異なる場合 z z' 時刻 包絡線:Envelope 電場E振幅 t t' t t ' t 位相速度:等位相位置が移動する速度 v p z p z z ' z p t z z ' zg zg z p 位相速度と群速度が異なる場合 群速度:包絡線(最大値:明)が移動する速度 vg z g t v p vg 逆も可 光通信工学309-5 アニメ:位相速度と群速度が不一致 一例 vg v p 2 位相速度 群速度 光パルス電場E 位相速度と群速度が異なる場合 • • • • v p vg 包絡線の最大値と位相の山が常に一致とはならない 等位相位置は位相速度、光強度(明暗の情報)は群速度で移動。 但し、パルス波形(包絡線形状)は不変 自然界はこのような光パルス電場Eを許す。(理由:マクスウエルの方程 式を満足するから) 光通信工学309-6 参照:201 波の速度(位相速度) z z' 時刻 t t' z軸 t t ' t z z ' z cos t kz 1 :山 位相速度 t ' kz ' 2n @ t t ', z z ' k v p k t ' t k z ' z 2n v p k0 c0 自由空間:真空中 v p c0 n nk0 自由空間:屈折率 @ t t ' t , z z ' z z t k z 0 v p lim t 0 t k 約束:下ツキ「0」=真空中 伝搬定数 等位相位置が移動する速度なので位相速度と呼ぶことも ある。位相速度と群速度の違いとは? 光通信工学309-7 位相・群速度と伝搬定数の関係:真空中(自由空間) 伝搬定数:309-7 位相速度と伝搬定数 参照:308-20 群速度と伝搬定数 参照:308-20 k0 c0 約束:下ツキ「0」=真空中 v p vg c0 c0 3 108 m / s v p c c c0 位相速度:真空中の光速 v vg c0 c 1 g 群速度:真空中の光速 真空中:位相速度と群速度は一致 z exp v t vg 2 exp jc t z vp 包絡線:群速度 搬送波の角周波数: 搬送波:位相速度 c 光通信工学309-8 希望:振幅が時間変化する場合(例えば、光パルス) • 少なくとも光の速度には位相速度と群速度という2種 類の速度があることを理解してほしい。 媒質中(屈折率 n):自由空間 伝搬定数:310-8 nk0 n c0 c0 n c c0 vp c n c 位相速度と伝搬定数 vp 群速度と伝搬定数 1 1 n c vg c v p c0 c 重要:屈折率に角周波数(波長)依存性があると:位相速度と群速度は異なる 興味があれば.... • 情報は「位相速度」ではなく「群速度」で伝わると主張したいと ころであるが、厳密には言えば「波頭速度」が情報伝達速度にな る。因果律によって真空中の光速を超える情報伝搬は不可能とな るが、これは「波頭速度」に関しての制約である。実は、位相速 度や群速度にこの制限はない。参考文献:北野・中西「風変わり な光たち」応用物理, 72, 6, 681 (2003) • 但し、本講義では情報は「群速度」で伝わるとしましょう。 1. 2. 3. 屈折率:角周波数依存性 例:プリズム 位相速度:例えば、ガラス 位相速度は角周波数で異なる 群速度:例えば、ガラス 群速度は角周波数で異なる n 0 vg v p よく注意すれば スラブ導波路の位相速度:304 瞬時に情報が伝わることはない! vp ~ 2 k0 cos 位相速度:搬送波の等位相位置移動速度。コヒーレント光(単色光:角周波数・波長)。 群速度:包絡線の移動速度。光強度の移動速度。 波頭速度:情報伝達速度 但し、本講義では「群速度」と「波頭速度」を区別しない。 大事なことは、位相速度を情報伝達速度と考えてはいけないこと。 光通信工学309-9 参考資料:説明省略 セルマイヤー Sellmeier の分散式 屈折率の波長(角周波数)依存性 Fused Silica(溶融石英:光ファイバの原材料)の場合: a3 2 a1 2 a2 2 n 1 2 2 2 2 2 2 l1 l2 l3 2 a1 0.69616630 a2 0.40794260 1.5 n 1.46 a3 0.89747940 l2 0.11624140 l3 9.8961610 1.44 屈折率 l1 0.068404300 n 0 vg v p 1.48 1.42 1.4 0.5 1 in m, Temperature 20 C 1.5 2 2.5 in m 様々な材料の屈折率波長依存性がセルマイヤー係数を代入するこ とで求められる。Wikipedia, the free encyclopediaがお勧め 結論:屈折率に角周波数(波長)依存性があると:位相速度と群速度は異なる。真空中でのみ一致。 光通信工学309-10 3 この説明は直感的である。結晶中の電子の振る舞い(エネルギーバン ド)に関しては若干量子力学の知識が要る。 高橋「半導体工学」森北出版 バンド構造:結晶(絶縁体) また、半導体レーザに関しては 池上、土屋、三上「半導体フォトニクス工学」コロナ社などを参照 伝導帯 エネルギー準位 高 低 価電子帯 禁制帯:Band gap エネルギー準位 ● ● エネルギー 高 禁制帯 低 バンド内エネルギー 高 結晶(固体)はバンド(帯)状の準位構造が特徴 ● ● 全準位に電子 エネルギーバンドの形成 エネルギー準位の分裂 ● ● 低 価電子帯:Valence band 充満帯:Filled band バンド内の全エネルギー準位に電 子が存在する。 伝導帯:Conduction bandは空 結晶(固体) 原子間距離 気体など、もしくは、原子1個 特徴:結晶(固体) • 同種の原子が多数集まると、隣接原子の影響を受けてエネルギー準位は分裂 • 固体は1m3当たり1028~1029程度の多数の原子を含む。多数の分裂エネルギー準位が近接して、エネルギーバンド (帯)構造が実現される • 上図は簡略化したモデルです。実際のバンド構造は複雑です。 光通信工学309-11 半導体の種類:真性半導体、n型半導体、p型半導体 Si Ne 3s 3 p 2 2 真性半導体:シリコン(周期表:Ⅳ族) 最外殻電子数4:sp3混成軌道 結晶:ダイヤモンド構造 P Ne 3s 3 p 2 3 不純物:リン(周期表:Ⅴ族) ドナーイオン 最外殻電子数5:電子1個余る B He 2 s 2 p 2 1 不純物:ホウ素(周期表:Ⅲ族) アクセプタイオン 最外殻電子数3:電子1個不足 電子1個不足:正孔1個 Si Si Si Si Si Si Si Si Si Si Si Si Si P Si Si B Si Si Si Si Si Si Si Si Si Si 余剰電子 真性半導体 n型半導体 p型半導体 余剰電子(-):半導体内を自由に移動できる。正孔(+):半導体内を自由に移動できる 正孔とは(イメージ):正電荷を持った粒(質量)のように振る舞う。 • 水の中の泡をイメージして欲しい。泡自体は水と比較すれば質量は無視できるが、あたかも質量を持った粒子のように泡は水の中 を加速・減速しながら移動する。 光通信工学309-12 エネルギーバンド:多数キャリア・少数キャリア n型半導体 伝導帯 ● ● ● ● ●● ● ●●●● ● ● ●● ● ●●● ● 禁制帯 Band gap ● ● ● p型半導体 ● ● 禁制帯 Band gap ● ● 価電子帯 ● ● ●● ● ● ● ● ● ● ● ● ●●●●●●●●● ●● 真性半導体 真性半導体 • 絶対零度で真性半導体は絶縁体 真性、n、p半導体:熱励起 • 価電子帯と伝導帯のエネルギー差が比較的小さいため熱励起可能 キャリア • 真性半導体:電子・正孔は同数 • n型半導体:多数キャリア(電子)、少数キャリア(正孔) • p型半導体:多数キャリア(正孔)、少数キャリア(電子) 重要:Band gapの大きさは不純物に依存しない。 シリコン、ゲルマニウムなどの真性半導体の種類で決る 光通信工学309-13 ドナー・アクセプタイオン • • • 純粋なシリコン、ゲルマニウム = 真性半導体(最外殻電子数4) 最外殻電子数5のリンや砒素などが不純物 = n型:電子1個を放出して+イオン 最外殻電子数3のホウ素やアルミニウムなどが不純物 = p型:正孔を放出して-イオン シリコン原子の一部をアクセプタ・ドナーイオンで置換 但し、シリコン原子は省略 ㊀:アクセプタ(ホウ素) 。 。 。。 ㊀ 。㊀ ㊀。 。㊀ 。 ㊀ ㊀ ㊀ ㊀。 。 ㊀ ㊀ 。 ㊀。㊀ 。 ㊀。㊀ ㊀。㊀ 。 p型半導体 ㊉:ドナー ・ ・ ㊉ ㊉ ㊉・㊉・ ㊉・㊉・㊉・㊉ ・ ・ ・ ・ ㊉ ㊉ ㊉ ㊉ ・ ㊉ ㊉・㊉ ㊉ ・ ・・ n型半導体 p型半導体とn型半導体をくっつける(接合)とどうなる? p-n接合 拡散電位 。 。。 ㊀ 。㊀ 。 。㊀ ㊀ ㊀ ㊀ ㊀ ㊀ 。 。㊀ ㊀ 。㊀ 。㊀ ㊀。㊀ 。 ㊀ ㊀ ㊉ ㊉ ㊉ ㊉ ・ ・ ㊉ ㊉・㊉・ ㊉・㊉・㊉・ ・ ・ ・ ㊉ ㊉ ㊉ ・ ㊉・㊉ ㊉ ・・ n型半導体 p型半導体 空乏層 一例 ㊉:ドナーイオン ㊀:アクセプタイオン(ホウ素) 。:正孔(自由に移動) ・:電子(自由に移動) 注意:シリコン原子は省略 空乏層:電子がn型半導体からp型半導体へ移動する際に障壁(電 位:ポテンシャル)を感じる。同様に、正孔がp型半導体からn型 半導体へ移動する際にも障壁を感じる。移動が困難になる。電流は 流れない。 水色の領域:正孔、灰色の領域:電子、白色の領域:キャリア無 光通信工学309-14 注意:空乏層のために電子がn型半導体からp型半導体へ移動 する際に、障壁(電位:ポテンシャル)を感じるため、エネ ルギーの高い電子のみ移動可。正孔も同様。 p-n接合のエネルギー準位図 高 電子のエネルギー 伝導帯 熱励起による電子 も少々あり 少数キャリア ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・・・・・ ・ ・・・・・・・ ・・ 熱励起 低 上り坂:障壁 右側の電子から見れば壁 リンが手放した電子 。。。 。。。 。 。 。。 。。。。。 ホウ素が手放した正孔 低 ・ ・・ 。。 。 熱励起による正孔 も少々あり 価電子帯 正孔のエネルギー(電子と逆) 。。。。。 。 。。 。 。。。 。。 。 下り坂:障壁 左側の正孔から見れば壁 n型半導体 。 。 。。 ・ ・ 。 ㊀ ㊀ ㊀ ㊀ ㊉ ㊉ ㊉・㊉・ 。 。。 。 ㊀ ㊀ ㊀ ㊀。 ㊉・㊉・㊉・㊉ 。 ・ ・ ・ ・ ㊀ ㊀ ㊀ ㊀ ㊉ ㊉ ㊉ ㊉ 。 。 。 ・ ㊀。㊀ ㊀。㊀ 。 ㊉ ㊉・㊉ ㊉ ・ ・・ ㊀:アクセプタ(ホウ素) ・・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・・ ・・ ・ 熱励起 高 p型半導体 少数キャリア ㊉:ドナー 。。。 拡散電位 - 。 。。 ㊀ 。㊀ 。 。㊀ ㊀ ㊀ ㊀ ㊀ ㊀ 。 ㊀ 。 ㊀ 。㊀ 。㊀ ㊀。㊀ 。 ㊀ ㊀ p型半導体 + ㊉ ㊉ ㊉ ㊉ 空乏層 ・ ㊉ ㊉・㊉・ ㊉・㊉・㊉ ・ ・ ・ ㊉ ㊉ ㊉ ・ ㊉・㊉ ㊉ ・・ n型半導体 注意:下図では少数キャリアを省略している。 光通信工学309-15 p-n接合はダイオード:電子・正孔密度の高い領域から低い領域へ拡散 平衡状態 ・・・ p 。。。。 。。 。。 。 。。 。 。。。 移動量相殺 電子拡散 ・・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・・ 右側の電子から見れば 障壁が低くなる p 。。 。。。 。 。 。 。。。 。 。 。。。 n 。。。 拡散ほとんど無し ・・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・・ p 。 。。。 。 。 。 。 。 。 。。 。 。。。 n 。。。 正孔拡散 順バイアス:電子はn型からp型に電流 p型からn型に電流 - - + p n 。。。 - + 拡散電位 p n + 拡散電位 p n 青:バイアス 無バイアス = 電流・電圧零 ・・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ 逆バイアス: p型からn型に電流不可 電流は(ほとんど)無 + 拡散電位 右側の電子から見れ ば障壁が高くなる 順バイアス = 拡散電位と逆 障壁を下げる効果 - n + 青:バイアス 逆バイアス = 拡散電位を強調 障壁を上げる効果 注意 • 順バイアスダイオードの電流は電子拡散と正孔拡散が寄与。電子のみ、正孔のみの寄与ではない。 • 電流のイメージが「金属(自由電子)」と「半導体(電子・正孔)」では異なる。 光通信工学309-16 再結合発光:半導体が光る! 電子拡散 ・・ ・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・・ p 電子拡散 障壁が低くなる 。。 。。。 。 。 。 。。。 。 。 。。。 正孔拡散 p 光子: 紙面前 n 。。。 。。 。。。 。 。 。 。 。。。 。 。。。 。 。。。 正孔拡散 p型からn型に電流 p ・・ ・・ ・ ・ ・・・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ n 光子:紙面後 n p型からn型に電流 p n 光子 順バイアス • • • = 障壁を下げる効果 電子が「そのまま」、p型半導体へ拡散 正孔が「そのまま」、n型半導体へ拡散 発光なし 順バイアス = 障壁を下げる効果 • • • • • 接合部で電子と正孔が再結合 再結合発光:電子が正孔と結合して光エネルギーを放出 もともと存在している光があれば、誘導放出可能。 再結合発光回数が多ければ光は増幅。 反転分布はどこ? 光通信工学309-17 レーザ領域 p-n接合:光吸収による効果 電流-電圧特性 電子・正孔対の生成 ・・・ ・・・ ・・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ 電子がダイオードか ら出る=電流発生 p 。。。。 。。 。。 。 。 。。 。 。。。 。。。 n 順方向電流 光子:光エネル ギーの最小単位 順方向電圧が負 逆方向電圧 0 順方向 電圧 降伏電圧 省略 - + 拡散電位 p n 順方向電流が負 逆方向電流 光強度大 ほぼ比例 電子 電流(逆方向) p 1. 2. 3. 無バイアス = 電流発生・電圧零、電流 = 逆方向 電流の大きさ = 光強度(エネルギー)に比例(入射光子数 に比例) 電子1個の励起 = 光子1個を吸収 Anode 陽極 順方向電流:半導体レーザ 逆方向電流:Photodiode 但し、材料は多種(省略) n Cathode 陰極 光通信工学309-18
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