MM現代物理学 量子力学と科学技術 1. 量子力学の必要性 1-1) 現代物理学の位置づけ 量子論 (量子力学・量子化学) 原子・分子・原子核・素粒子 半導体・超伝導・光工学 生物物理学 など 相対性理論 重力の起源・ブラックホール などの宇宙論・宇宙の構造 など 現代物理学 現代の科学技術の理解を深めるためには、量子論や相対性理論が重要 ・量子力学と相対性理論は共に重要。 ・テーマによって重要度が変わってくる。 MM現代物理学 量子力学と科学技術 1. 量子力学の必要性 1-2) 先端技術と量子力学 最先端技術・・・・ IT技術 バイオ ナノテク 環境工学 (Information Technology) (Biotechnology) (Nanotechnology) (Eco technology) など 最先端技術の多くは ・電子や光の振る舞いを利用した技術 ・微小な物を扱う技術 が中心となっている。 量子力学(量子論)を使う場合が多い MM現代物理学 量子力学と科学技術 1. 量子力学の必要性 1-2) 先端技術と量子力学 IT技術と量子力学 ・・・・・光通信・ 通信技術における半導体の利用 生命科学と量子力学 ・・・・・DNAの構造や働きの解析 NMR(核磁気共鳴)などによる医療診断技術 ナノテクノロジーと量子力学・・・・・マイクロマシン技術、半導体加工技術 エネルギー工学と量子力学 ・・・・・超伝導技術や核融合技術など など このように、現代の日常生活と密接に関わっている部分から、 21世紀を支える技術まで、さまざまな技術が量子力学と関わりを持っている。 MM現代物理学 量子力学と科学技術 電子の振る舞いの理解のために(1) 原子の間の引力と斥力 原子核-原子核 電子-電子 電子-原子核 斥力 引力 適切な距離で 安定する。 分子・結晶を形成する 孤立原子の場合と異なり エネルギーバンドを形成する。 電子の振る舞いが、 物質のさまざまな性質を支配する。 量子力学と科学技術 MM現代物理学 電子の振る舞いの理解のために(1) エネルギーバンドの形成・・・・・原子が一定距離に近づくと、 エネルギーバンドを形成する。 孤立電子の ポテンシャルカーブ 井戸形ポテンシャル MM現代物理学 量子力学と科学技術 2. 量子力学と先端技術との関わり さまざまな分野や技術が量子力学と関わりを持っている。 半導体技術を題材に、量子力学との関わりを解説する。 具体的には、次の内容について、簡単に説明する。 『半導体技術』 ・半導体とは? ・半導体の種類と電気伝導 ・(内部)光電効果の利用 MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 1. 半導体とは? 絶縁体・半導体・導体の区別 絶縁体・半導体・導体の違いは、電気伝導度(→電気伝導度の逆数は電気抵抗率) 違いで考えられている。 半導体・・・・・ 電気伝導度が導体と絶縁体の間になり、 “半導体”と呼ばれている。 電気伝導度の違いは電子状態の違いに起因している。 • 量子力学と科学技術 1. 半導体とは? MM現代物理学 絶縁体・半導体・導体の区別 《電子状態の違い》 導体の場合、半満帯や充満帯と空帯との重なりがあるため、電場に対して容易に 電子が移動するため、電気が流れやすく“導体”として説明できる。 絶縁体の場合、充満帯と空帯とのバンドギャップが大きく、大きな電圧をかけない と電流が流れないため、電気伝導度は小さくなる。 半導体の場合は、バンド構造は絶縁体と同様の構造をしているが、価電子帯(充 満帯)と伝導帯(空帯)とのバンドギャップが小さいため、比較的小さい電圧で電流 が流れる。 MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 2.半導体の種類と電気伝導 半導体には、真性半導体と不純物半導体がある。 さらに不純物半導体には、n形半導体とp形半導体がある。 真性半導体 半導体 n形半導体 不純物半導体 p形半導体 MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 不純物を含まない半導体 真性半導体: 真性半導体の電気伝導 ① 熱エネルギーにより価電子が自由電子になる ・電界に従って移動する。 ・電子が抜けて孔ができる。 ② 電界にそって孔に電子が移動してくる。 孔も移動する。(②) ③ 孔が-電極に到達し電極から電子が飛び込む 正の電荷を持った荷電粒子と考えることができる = 正孔(ホール) 電荷の移動の担い手は『正孔(ホール)』と『電子』。 • 量子力学と科学技術 MM現代物理学 真性半導体 不純物等を含まず、伝導の電子数とホール(正孔)数とが同じ半導体のこと。 この半導体のフェルミ準位は価 電子帯と伝導体の真中にある。 この半導体について、エネルギ ー帯図やキャリアの分布を示す と右図のようになる。 図1 真性半導体におけるエネルギー帯図・状態密度・ フェルミ-ディラック分布関数・キャリアの分布 • 量子力学と科学技術 n形半導体: MM現代物理学 最外殻の電子が5個の15族(N、Pなどの元素)を不純物として添加 n形半導体の電気伝導 Siと共有結合していない電子があるので 熱エネルギーにより多数の自由電子ができる。 電気伝導の担い手は、『電子』が中心 n形半導体 (negative) • 量子力学と科学技術 MM現代物理学 n形半導体 第15族(第Ⅴ族)の不純物(=ドナーという。N,PやSbなどの元素)を含み、ホール(正孔)数 よりも伝導電子数の方が多い半導体のこと。 不純物の添加により不純物準位としてドナー準位が伝導帯の直下にできる。この半導 体のフェルミ準位はドナー準位の直下にある。 この半導体について、エネル ギー帯図やキャリアの分布を示す と右図のようになる 図 n形半導体におけるエネルギー帯図・状態密度・ フェルミ-ディラック分布関数・キャリアの分布 • 量子力学と科学技術 p形半導体: MM現代物理学 最外殻の電子が3個の13族(B,Alなどの元素)を不純物として添加 p形半導体の電気伝導 Siと結合が完成していない所がある。 ① 熱エネルギーによって自由電子になった 価電子が不完全な所に入り結合を一時的に 完成させる。 ② 正孔の移動よって電荷が移動する 電気伝導の担い手は、 『正孔(ホール)』が中心 p形半導体 (positive) • 量子力学と科学技術 MM現代物理学 p形半導体 第13族(第Ⅲ族)の不純物(=アクセプタという。B,Al,やInなどの元素)を含み、伝導 電子数よりもホール(正孔)数の方が多い半導体のこと。 不純物の添加により不純物準位としてアクセプタ準位が価電子帯の直上にできる。 この半導体のフェルミ準位はアクセプタ準位の直上にある。 この半導体について、エネル ギー帯図やキャリアの分布を示す と右図のようになる 図 p形半導体におけるエネルギー帯図・状態密度・ フェルミ-ディラック分布関数・キャリアの分布 MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 半導体の種類とエネルギー状態(まとめ) MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 (内部)光電効果の利用 光と半導体の間には ・電気抵抗の変化 ・光起電力の発生 ・発光 などのオプトエレクトロニクス(光工学)技術を支える興味深い現象がある。 半導体における 光電効果の利用は、 光を電気へ 電気を直接光エネルギーへ 変換できる技術 エネルギー変換や情報信号の変化に利用可能である。 MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 (内部)光電効果の利用 光電効果を利用した半導体技術には次のようなものがある。 ① 光伝導セル ・・・・・ 光の照射によって電気抵抗が変化 ② 光電池や太陽光発電(太陽電池) P形とn形を 組み合わせ てデバイス にして利用 できる。 ・・・・・光の照射により起電力を発生 フォトダイオードやフォトトランジスタ ・・・・・光の照射によって逆バイアス電流の増加 ③ ルミネッセンス ・・・・・光照射や電界の印加によって 別の波長の光を発生する。 ④ 発光ダイオードやレーザーダイオード ・・・・・半導体結合(pn結合)に電流を流すと接合部から発光する。 MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 (内部)光電効果の利用 MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 p-n接合 P-N接合による整流作用 図1 接合前 図2はp-n接合した半導体に順方向の電流を流した場 合の模式図を示している。 順方向に電圧を印加するとp形半導体中の多数キャ リアであるホールがn形の領域へ移動しn型の多数 キャリアである電子がp形の領域へ移動する。 そのため、順方向に電圧を印加すると 多くの電流が流れる。 図2 順方向に電圧を印加 (n形半導体を-極側、p形半導体を+極側) MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 p-n接合 P-N接合による整流作用 図3はp-n接合した半導体に逆方向の電流を流し た場合の模式図を示している。 逆方向に電圧を印加するとp形半導体中の少数 キャリアである電子がn形の領域へ移動しn型の 少数キャリアであるホールがp形の領域へ移動す る。 図3 逆方向に電圧を印加 (n形半導体を+極側、p形半導体を-極側) そのため、逆方向に電圧を印加すると流れる電 流が少なくなる。 電圧の印加(電界)の方向によって、 図4のように電流値が異なる。 図4 ダイオードの電圧-電流特性 MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 どの様な場合に量子力学を使うのか? →量子統計と古典統計の比較をふまえて考えればよい。 量子統計と古典統計 MM現代物理学 • 量子力学と科学技術 終わり
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