KH渦の合体成長過程に関する研究(仮)

2次元MHDシミュレーションを用いた
KH渦の合体成長過程に関する研究
藤本研 下村直子
2009/12/09
修論中間発表@STPセミナ
目次
要旨
目次
第一章 序論
・ Kelvin-Helmholtz(KH)不安定
・ 宇宙プラズマにおけるKHI
・ 地球磁気圏での観測例
・ 本研究の目的
第二章 シミュレーション
・ MHDシミュレーション
・ 設定
第三章 周期境界
・ Boxsizeが2*λFGMの場合
・ Boxsizeが8*λFGMの場合
第四章 自由境界
・ 1波長を流す場合
・ 順に成長する場合
第五章 議論
・ 合体の仕組み
・ 観測との対応
付録
謝辞
参考文献
2
イントロダクション
• Kelvin-Helmholtz(KH)不安定


密度・流速の異なる2つの流体の
境界面で発生する流体不安定
非線形状態に入ると渦構造を形成
• 自然界で見られるKH渦の例
渦は単独では存在
しない
(複数個が連続して
発生する)
Image Credit: UCAR/NCAR
地球の雲
Image Credit: NASA/JPL/Space Science Institute
カッシーニで撮影された土星の縞
3
地球磁気圏でのKH渦
KH渦の役割
KH渦を通して、
太陽風プラズマの運動量を
地球磁気圏内に輸送
(Miura, 1984)
太陽風プラズマの質量輸送・混合
(Fujimoto & Terasawa, 1994; Faganello et al., 2008)
→ 地球脇腹で観測されるCDPSの原因?
[Hasegawa et al., 2004]
太陽風と磁気圏の脇腹の境界:KH不安定領域
MHDスケールの巨大な渦
4
[Kivelson & Chen, 1995]
本研究の目的
• 地球磁気圏でのKH渦
Cluster, Geotailによる観測 → KH-likeな構造の発見
線形理論(Miura & Pritchett, 1982 )から予想される最大成長波長よりも
大きな波長の表面波を観測(Hasegawa et al., 2004, 2006)
最大成長波長(理論値); λFGM= 15D (D:初期速度勾配層の厚さの半分)
2D=1000kmの時
λFGM= 7500km << 数Re(観測値)
長波長の渦が観測される原因
① 長波長モードが純粋に成長
② 最大成長波長モードの渦合体
③ 流れに乗ることによって生じる波長の伸び ・・・など
⇒ 非線形段階で起こる渦合体に着目
渦合体の過程を調べる
5
MHDシミュレーション
• シミュレーションの種類
本研究で扱う渦合体のスケー
ルは数1000km以上でありイ
オン慣性長(数100km)よりも
十分大きいため、イオン・電子
を単一流体として扱うMHDシ
ミュレーションを用いた。
6
設定
コンター:密度
矢印:速度ベクトル
y
• 2次元MHD
• 磁場:Bzのみ(Bx=By=0)
• 境界条件
y方向:自由境界
2D
y=0
• 初期条件
速度差 V0 = 1
β = 0.5 (一定)
全圧(プラズマ圧+磁気圧)一定
Lx=15D*(整数)
初期擾乱の与え方
Vy0(y=0) = 0.01*exp(-(y/D)^2)*sin(2πx/15D)
注:以降 Boxsize=X方向の幅
Y=0にランダムノイズ(1/100の振幅)を乗せたうえで左端に1波長分Vy0の揺らぎ加える
⇒ アンバランスな状況をつくる
7
周期境界
Boxsize が 最大成長波長の2倍 の時
コンター:密度
コンター:全圧
8
0
5 10 15 20 25 30
0
T(D/VA)
50
100
150
200
赤:高圧中心
緑:低圧中心
最後まで残る高圧から低圧が
離れていく
→ 2つの渦が接近し合体して
mode1を形成
9
T=70あたりで非線形
渦の間(高圧部)
高
圧
の
成
長
度
合
⊿P
X(D)
T(D/VA)
位相速度
0.4
後から生じた高圧は、
初期擾乱で生じた高圧
より大きくなることがで
きない
Y(D)
T(D/VA)
T(D/VA)
片方の高圧が無くなると、
y方向に大きく変動する
10
⊿P=P-P0: P0 全圧の初期値
渦中心(低圧部)
X(D)
低
圧
の
成
長
度
合
⊿P
T(D/VA)
位相速度
mode1
Y(D)
T(D/VA)
T(D/VA)
T=100あたりで勾配層から
外れる
11
周期境界
Boxsize が 最大成長波長の4倍 の時
12
T=070
T=170
T=090
T=190
T=110
T=210
赤:高圧中心
緑:低圧中心
:渦合体
T=130
T=150
T=230
T=250
最後まで残る高圧から
低圧が離れていく
→ 渦が接近し合体を
繰り返してmode1を形
成
13
0.5
T=70あたりで非線形
高
圧
の
成
長
度
合
⊿P
位相速度
Y(D)
T(D/VA)
T(D/VA)
Y=±6Dまで変化
(2倍のときは±3D)
Y方向へのずれ
14
高
圧
の
成
長
度
合
ΔP
T=70まで2倍と4倍はほぼ同じ成長
T=70で高圧は非線形になり合体へと進む
周期系での渦の位相速度:Vph ~0.2VA であるからT=150(D/VA)の間に進む距離 L = 75D
2倍の場合:Lx=150Dより高圧が十分成長する必要なく合体して安定状態に入る
4倍の場合:渦の可動範囲に余裕があるので高圧がより成長しないと+X方向の合体が
起こらない
15
周期境界
Boxsize が 最大成長波長の8倍 の時
コンター:密度
コンター:全圧
16
T=050
T=300
T=100
T=350
T=150
T=400
T=200
T=250
初期擾乱で生じた高圧
が最後まで残る
赤:高圧中心
緑:低圧中心
17
×4の場合
T=150
高
圧
の
成
長
度
合
ΔP
×8の場合
T=150
T=150まで4倍と8倍はほぼ同じ成長(T=150の時 ΔP~0.5 で頭打ち)
T=200
4倍の場合はT=200手前で弱い方の高圧が消え、T=240で
mode1へ合体が進む
一方、8倍の場合は強い高圧の影響が届かないため次の
合体がなかなか起こらない
×4
×4
18
高圧の最高値のBoxsize依存
グラフのばたつきはy方向境界の影響ではない
高
圧
の
成
長
度
合
⊿P
T(D/VA)
boxsizeが1の場合(合体なし):高圧はΔP = 0.35程度まで成長
boxsizeが2の場合(1回合体): 初期の高圧はΔP=0.4まで成長し、最大でΔP~0.45まで成長
しかし合体するとΔP=0.3-0.4の間に落ち着く
boxsizeが4以上の場合:T=150でΔP=0.5の極大値をとる。合体の数が多いほど高圧は成長
19
合体ごとに増減を繰り返すが最大でもΔP=0.7程度
周期境界
観測との対応
磁気圏 N= 1/cc B=10nT とすると VA~200km/s
初期速度勾配層の厚さ 2D ~ 1000km
1規格化時間 T = D/ VA ~ 3 sec
渦の位相速度 Vph = 0.7 V0 ~150km/s
boxsize
mode1の波長(Re)
mode1までにかかった時間
(D/VA)
進んだ距離(Re)
1
1
80
4
2
2
140
8
4
5
240
13
8
10
370
20
16
20
750
40
32
40
計算中
-
太陽風の流線と超音速・亜音速境界の位置
引用元 http://mis.edu.yamaguchi-u.ac.jp/kaisetu/
太陽風
種擾乱
地球近傍XGSM=6~-8で3-8Reの渦が観測
20
[Kivelson & Chen, 1995]
周期境界のまとめ
•
初期擾乱によって発生する高圧部分が大きく成長し、mode1が形成されるま
で存在し続ける (高圧の成長=渦のy方向への変位に影響)
•
この高圧は λFGM=4 以上のボックスサイズになるとT=150の時にΔP = 0.5の
極大値をとる
•
合体する直前、間の高圧が消えるときにΔPのグラフは極大値をとり、合体す
ると減少する様子がみられる
•
渦4つの合体が高圧の影響が届く限界?
4つ以上になるとランダムノイズによる最大成長程度の渦が複数個y=0面に発生
バランスを保つ領域が生じて合体のスピードが遅くなる
渦が4つ合体する(λ~4*λFGMの大きさになる)と安定になりやすい?
•
3-8Reの渦がよく観測されることに一致
21
自由境界
順々に渦が成長していく場合
■設定■ 初期擾乱:左端(x=0)にランダムノイズ
Vo
↑
種擾乱
22
自由境界
順々に渦が成長していく場合
■設定■ 初期擾乱:左端(x=0)にランダムノイズ
同程度の波長の渦
Vo
↑
種擾乱
X=80D付近で
最大成長波長程度の渦
23
X=80Dでの
Vy(y=0)の時系列プロット
λKH~1.2*λFGM
同程度の波長の渦
Vo
λKH~2.8*λFGM
↑
種擾乱
X=80D付近で
最大成長波長程度の渦
コンター;密度
矢印:速度ベクトル
X=200Dでの
Vy(y=0)の時系列プロット
24
黒点線:位相速度
高圧の振る舞い
必ずしも一番初めに
生じた高圧が最大で
はない
高
圧
の
成
長
度
合
ΔP
T=250でΔP ~0.5
圧力の成長開始を考慮する
と周期境界の場合と同じ
25
自由境界
観測との対応
boxsize
磁気圏 N= 1/cc B=10nT とすると VA~200km/s
初期速度勾配層の厚さ 2D ~ 1000km
1規格化時間 T = D/ VA ~ 3 sec
渦の位相速度 Vph = 0.7 V0 ~150km/s
4Re 8Re
13Re
20Re
mode1の波長 mode1までにかかった
(Re)
時間(D/VA)
進んだ距離
(Re)
1
1
80
4
2
2
140
8
4
5
240
13
8
10
370
20
16
20
750
40
32
40
計算中
-
40Re
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自由境界のまとめ
• 圧力の強弱によって渦の合体が進む(周期境界条件と同じ)
• 高圧が成長を始めてT=150後にΔP=0.5の極大値をとる(周期境界条件と同じ)
• ΔPの最大値が0.7を超えることはなかった
• 最初の高圧が常に最大の高圧で居続けることはないが、最初の高圧を飲み
込めるほどの大きさにはなれないため最初の高圧の勢力が衰えることはない
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まとめ
• 渦合体は初期擾乱によって加えられる圧力のアンバランスで起こる
初期擾乱により生じた高圧が他よりも早く成長することで、近接する渦
は± y方向へ位置が変化し x方向の流れに乗るため合体が進む
• 高圧の成長度合ΔPは0.7を超えない
(本研究の初期設定の全圧P0=1.5 全圧の最大値PMax<2.2)
• 一時的にバランスがとられて合体が停滞することはあるが、全体として
アンバランスが解消されるまで合体は続く
• 最大成長波長の4倍程度の渦がひとつのキーポイント :観測とも合致
今後の予定
16倍・32倍・自由境界の場合の解析
高圧の上限が何で決まっているのか
高圧の成長の増減が合体とどう関連しているのか
高
圧
の
成
長
度
合
ΔP
T(D/VA)
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参考文献
•
•
•
•
•
•
•
•
Kivelson, M. G., and S.-H. Chen (1995), in Physics of the magnetopause, Geophys. Monogr.
Ser., vol. 90, edited by P. Song, et al., pp. 257-268, AGU, Washington, D. C.
Hasegawa, H., et al. , Transport of solar wind into Earth's magnetosphere through rolled-up
Kelvin–Helmholtz vortices, Nature, 430, 755-758, 2004
Hasegawa, H., et al., Single-spacecraft detection of rolled-up Kelvin-Helmholtz vortices at the
flank magnetopause, J. Geophys. Res., 111, A09203, 2006
Miura, A., Nonlocal Stability Analysis of the MHD Kelvin-Helmholtz Instability in a
Compressible Plasma, JGR, VOL. 87, NO. A9, PAGES 7431-7444, 1982
Miura, A ., Anomalous Transport by Magnetohydrodynamic Kelvin-Helmholtz Instabilities in
the Solar Wind-Magnetosphere Interaction, JGR, VOL. 89, NO. A2, PAGES 801-818, 1984
Miura, A. , Self-organization in the two-dimensional magnetohydrodynamic transverse KelvinHelmholtz instability, JGR, VOL. 104, NO. A1, PAGES 395–411, 1999
Nakamura, T.K.M. and Fujimoto, M., Magnetic Effects on the Coalescence of Kelvin-Helmholtz
Vortices, PRL 101, 165002 (2008)
Takagi et al, Kelvin-Helmholtz instability in a magnetotail flank-like geometry:Threedimensional MHD simulations, JGR, VOL. 111, A08202, doi:10.1029/2006JA011631, 2006
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