PDFファイル(2.4MB)

メインベルト小惑星の
アルベド分布
臼井 文彦
東京大学大学院 理学系研究科 天文学専攻
木星
太陽
火星
地球
小惑星562,788個の太陽系内の分布
緑: メインベルト小惑星
緑
赤: 近地球型小惑星
青: 木星トロヤ群小惑星
天文観測から得られる小惑星の
さまざまなデータ
• 小惑星の位置
– 既知の小惑星については、軌道要素(と時刻)で位置を決定できる。
– MPCORB (Minor Planet Center), Horizons (NASA/JPL), astorb.dat (Lowell
Observatory) など…
– 小惑星族は、軌道要素の関係性から決められる。
小惑星族は 軌道要素の関係性から決められる。
小惑星の軌道要素の分布
離
離心率
562,788天体 (軌道の不定性が大きいものを除く)
既知小惑星の
既知小惑星の94.4%はメインベルト小惑星
はメイン ルト小惑星
Apollos
Atens
Amors
Cybeles
Hungarias
inner
middle
outer
軌
軌道傾斜
斜角
Main
a belt
be t asteroids
aste o ds
(MBAs)
軌道長半径 [AU]
Hildas
Trojans
天文観測から得られる小惑星の
さまざまなデータ
• 小惑星の位置
– 既知の小惑星については、軌道要素(と時刻)で位置を決定できる。
– MPCORB (Minor Planet Center), Horizons (NASA/JPL), astorb.dat (Lowell
Observatory) など…
– 小惑星族は、軌道要素の関係性から決められる。
小惑星族は 軌道要素の関係性から決められる。
• 小惑星の大きさ
– あらゆる手法で小惑星の大きさが測られている
あらゆる手法で小惑星の大きさが測られている。
– 直接撮像、探査機によるその場計測、レーダーエコー、掩蔽観測、…
– 赤外線サーベイ衛星のデータから、大規模なカタログが作られている。
小惑星の大きさ
• 「大きさ」は、天体の一番基本的なデータの1つ
「大きさ は 天体の 番基本的なデ タの1
– 最大
最大のものは直径1000km、小さいものは数10m以下
直径
、小
数
以下
– 現在までに小惑星は64万個以上が知られているが、
大きさがわかっているものは、ほんのわずか
• 小惑星は「小さい」ので、大きさを測るのが難しい
偏光観測、スペックル干渉法
ックル干渉法 、レ
、レーダー観測、掩蔽観測、
ダ 観測、掩蔽観測、
• 偏光観測、ス
ハッブル宇宙望遠鏡などによる直接撮像、探査機によるその場観測、
etc…
– 赤外線を用いた小惑星観測
• 赤外線による観測と可視光のデ
赤外線による観測と可視光のデータを組み合わせることで、小惑星
タを組み合わせることで 小惑星
の大きさを決めることができる
• ただし、地上の望遠鏡では地球大気の影響で赤外線の観測は難しい
→ 地球大気の外=宇宙空間で観測をすればよい
赤外線全天サーベイ衛星
IRAS
Infrared Astronomical Satellite
WISE
(アメリカ, オランダ, イギリス)
Wide-field Infrared Survey Explorer
1983年打ち上げ、高度
年打ち上げ 高度 900km
k
観測期間:9ヶ月半
(アメリカ)
2009年打ち上げ、高度 525km
観測期間:9 月
観測期間:9ヶ月
赤外線全天サーベイのパイオニア
赤外線全天サ
ベイのパイオニア
非常に高感度の赤外線カメラを搭載
「あかり」
(日本+ヨーロッパ)
2006年打ち上げ、高度 750km
観測期間:16ヶ月
16ヶ月間の連続したサーベイ観測を実施
赤外線全天サーベイに基づいた
小惑星のサイズ・アルベド カタログ
• IRAS (Supplemental IRAS Minor Planet Survey: SIMPS)
– NASA/Planetary Data Systemにて一般公開 (Tedesco+2004)
http://sbn.psi.edu/pds/resource/imps.html
(最終更新は2006年2月)
• AKARI (Asteroid catalog using AKARI: AcuA)
– ISAS/DARTS(Data ARchives and Transmission System)にて一般公開 (Usui+2011)
http://darts.jaxa.jp/ir/akari/catalogue/AcuA.html
(2011年9月公開)
• WISE/NEOWISE
– 論文のonline tableとして掲載 ( preliminary version )
•
•
•
•
Main belt asteroids : Masiero+2011,
Masiero+2011 Masiero+2012
Jovian Trojans : Grav+2011, Grav+2012
Near Earth objects : Mainzer+2011, Mainzer+2012
Hilda group : Grav+2012
– 最終版はNASA/Planetary Data Systemで公開予定(2014年?)
直径
径 [km]
サイズ分布と検出限界
IRAS: 2,470
軌道長半径 [AU]
AKARI: 5,199 WISE: 137,789
天文観測から得られる小惑星の
さまざまなデータ
• 小惑星の位置
– 既知の小惑星については、軌道要素(と時刻)で位置を決定できる。
– MPCORB (Minor Planet Center), Horizons (NASA/JPL), astorb.dat (Lowell
Observatory) など…
– 小惑星族は、軌道要素の関係性から決められる。
小惑星族は 軌道要素の関係性から決められる。
• 小惑星の大きさ
– あらゆる手法で小惑星の大きさが測られている
あらゆる手法で小惑星の大きさが測られている。
– 直接撮像、探査機によるその場計測、レーダーエコー、掩蔽観測、…
– 赤外線サーベイ衛星のデータから、大規模なカタログが作られている。
• 小惑星の色
– 主に地上望遠鏡の可視∼近赤外線観測によって、小惑星の色による分類
(スペクトルタイプ)が行われている。
– アルベドも小惑星表面の色や物理状態を反映している。
小惑星
小惑星のスペクトルタイプ分類
クトルタイプ分類
• Eight-Color Asteroid Survey (ECAS)
– 0.3--1.1
0 3 1 1 µm (8バンド)の撮像データを解析
(8バンド)の撮像デ タを解析
– 589個の小惑星を14タイプに分類
((Tholen
o e 1984;
98 ; Tholen
o e 1989;
989; Tholen+Barucci
oe
a ucc 1989)
989)
• Small Main-Belt Asteroid Spectroscopic Survey II (SMASSII)
– 0.44--0.92 µmの分光サーベイ
µ の分光サ
イ
– 1447個の小惑星を24タイプに分類
(Bus 1999; Bus+Binzel 2002)
• Small Solar System Objects Spectroscopic Survey (S3OS2)
– 0.49--0.92 µmの分光サーベイ
– 820個の小惑星を分類
惑
類 (Tholen/Bus分類に準拠)
類 準拠
(Lazzaro+2004)
• Sloan Digital Sky Survey Moving Object Catalog (SDSS
(SDSS-MOC)
MOC)
– 0.354--0.913 µm (5バンド)の撮像データを解析
– 63,468個の小惑星を9タイプに分類
63 468個の小惑星を9タイプに分類
(Carvano+2010)
小惑星のスペクトルタイプ分類
小惑星の
クトルタイプ分類
Tholen 1984
L
Lazzaro+
2004
Bus 1999
L
Lazzaro+
2004
Carvano+ 2010
S-type
S
type
S O
S,
O, Q
Q, K
K, A
A, R
A, K, L, Ld, O, Q, R, S,
Sa, Sk, Sl, Sq, Sr
A, AQ, L, LA, LQ, LS, O,
Q, QO, S, SA, SO, SQ
C-type
C, B, F, G
B, C, Cb, Cg, Cgh, Ch
X-type
61,683 天体分の
デ
データが存在
が存在
C
X, M, E, P
X, Xc, Xe, Xk
X
D-type
D, T
D, T
D
V-type
V
type
V, J
V
V
天文観測から得られる小惑星の
さまざまなデータ
• 小惑星の位置
– 既知の小惑星については、軌道要素(と時刻)で位置を決定できる。
軌道が既知の小惑星
(2014年5月14日現在
) (Lowell
– MPCORB
(Minor Planet Center), Horizons
(NASA/JPL), astorb.dat
Observatory) など…
642,348天体
– 小惑星族は、軌道要素の関係性から決められる。
小惑星族は 軌道要素の関係性から決められる。
• 小惑星の大きさ
– あらゆる手法で小惑星の大きさが測られている。
あらゆる手法で小惑星の大きさが測られている
赤外線サーベイ衛星によるサイズ・アルベドのデータ
赤外線サ
ベイ衛星によるサイズ アルベドのデ タ
– 直接撮像、探査機によるその場計測、レーダーエコー、掩蔽観測、…
138,237天体
– 赤外線サーベイ衛星のデータから、大規模なカタログが作られている。
• 小惑星の色
– 主に地上望遠鏡の可視∼近赤外線観測によって、小惑星の色による分類
スペクトルタイプ分類されているもの
(スペクトルタイプ)が行われている。
61,683天体
– アルベドも小惑星表面の色や物理状態を反映している。
軌道・サイズ・タイプ情報が揃っている小惑星の数
軌道が既知
642,348
サイズ情報
あり
138,237
サイズ+タイプ
サイズ+
タイプ
26,036
タイプ情報
あり
61,683
タイプごとサイズ・アルベドの分布
S‐type (10,548)
アルベド
サイズ・アルベドが
測定されている
小惑星は
138 237個
138,237個
タイプ情報があるのは
26,036 天体
C‐type (10,939)
d > 5 kmに注目
12 593天体
12,593天体
直径 [km]
V‐type
V
type (711)
(711)
X‐type (2,377)
D‐type
D
type (1,461)
(1 461)
水色線:アルベドのメジアン値
地球近傍小惑星(NEAs)の起源
low delta-v
NEAs
軌道傾斜
斜角 [deg]
CとSの存在比率
離心率
※ NEAsの起源の候補となる領域 (Bottke+2002):
ν6 Resonance、Mars-Crossing、3:1 Resonance、Outer Main Belt
entire Main Belt
軌道長半径 [AU]
ν6 Resonance
Mars-Crossing
3:1 Resonance
Outer Main Belt
まとめ
• 天文観測から得られているデータ
– 軌道要素 (642,348
(642 348 )), サイズ・アルベド (138,237),
(138 237) スペクトルタイプ (61,675)
(61 675)
– 26,036天体は、軌道・サイズ・スペクトルタイプのデータが揃っている
• メインベルト小惑星のアルベド分布
– タイプ
タイプごとのアルベド平均値
とのアル ド平均値 (d > 5
5km,, 11,787
, 8 天体)
C‐type
<pv>
S‐type
X‐type
D‐type
0.067
0
067±0.034 0
0.219
219±0.082 0
0.099
099±0.075 0
0.088
088±0.062
– メインベルトの中で、 S-type・C-typeの存在割合 (個数分布) は大きく異なる
– 小惑星の多様性がみられる (成因や進化の過程の違いを反映したもの?)
• 地球近傍小惑星の起源
– NEAsの C : S の存在割合は、メインベルト周辺では土星の永年共鳴ν6付近の
(
)
ものに近い (それ以外の領域ではCの割合が卓越する)
→ NEAsの起源がν6付近に由来する可能性を示唆する