【コンデンサー】
☆金属(導体)の性質
陽イオン:規則正しく配列し移動できない
自由電子:多数存在し移動できる
E
-
E=0
-
+
-
+
+
+
+
+
+
+
外部から電場がかかると自由電子が移動する。最終的に導体内部の電場が0になるまで移
動する。この現象を静電誘導という。
重要ポイントは導体では最終的に
・電荷は表面にのみ分布
・内部の電場は0になる
・電場がないので内部は等電位になる
☆電池
電位を上げる装置
→起電力 V [V] の電池なら +1[C] の電荷は V [V] の仕事をされる
→ q[C] の電荷が電池を通過すると qV のエネルギーを持つ
☆電流
実際は金属中では負の電荷を持つ自由電子が流れるが今後は自由電子とは逆向きに正の電
荷が流れると考える。詳しくは次単元で。
☆コンデンサー…電荷をためる装置
・広い平面に分布した電荷による電場
広い面積 S の平面に電荷 Q が一様に分布しているとする
E
Q
S
E
Q
d
E
-Q
1
ガウスの法則より電場が貫く面積が 2S となることに注意して
E ・2S =
Q
ε0
Q, −Q が蓄えられた平面を間隔 d の距離で向かい合わせると内部電場は2倍,外部電場
は打ち消し合い0となる。
内部の電場は
E=
Q
ε0 S
となる。
電場が存在すれば電位の差(電位差)が生じ
V = Ed =
Q
d
ε0 S
となる。Q について解けば
S
Q = ε0 V ≡ CV
d
よって Q と V は比例することが分かる。その比例定数を電気容量 C と呼ぶ。C は間隔 d
が狭い程,面積 S が広いほど大きくなる。
この 2 枚の平面(金属板)に電池をつなぐ(電圧をかける)と電荷を蓄えることができる
Q
q
V
V
V
v
-Q
-q
電池により導線内の電荷は V の電位を得て動き出し金属極板にたまっていく。金属板間
の電位差が V になったところで電荷は移動を終える。
2
☆コンデンサーへの金属(導体)の挿入
Q
V
E
-Q
E
Q
V
-Q
コンデンサー間に電場が生じると静電誘導より導体内部の自由電子が移動する。内部は電
場0,等電位になる。
図より極板間隔 d,金属板の厚み
d
3
とすると
2
Q 2
V = E・ d =
d
3
ε0 S 3
S
C = ε0 2
3d
これは極板間隔が導体分だけ減ったものと同じ現象である
すなわち金属の挿入のときは金属部を導線に置き換えてもよいことがわかる。
☆誘電体(不導体)の挿入
誘電体では自由電子はないので電子は原子内でしか動けない
外部電場により内部の自由電子の分布が偏る現象を誘電分極と呼ぶ。
誘電体内部の電場は弱まる。内部の電場は
ず弱まるので εr > 1 である。
1
εr
倍になり εr を比誘電率と呼ぶ。電場は必
また εr ε0 = ε とし (物質の) 誘電率と呼ぶ。
Q
E
-q
E
q
E
V
-Q
図より極板間隔 d,誘電体の厚み
V =
d
3
とすると
Q 2
Q 1
d+
d
ε0 S 3
εS 3
3
V
☆コンデンサーの静電エネルギー
極板に電荷 Q が蓄えられているときコンデンサーはエネルギーを持っている。その大き
さを算出する。
v
q
0
dq
0
Q
v
-Q
2
U=1/2CV
-q
U=0
Q
C
q
C
0
ΔU
q
q
微小電荷 ∆q の電荷を右から左極板に移動させるとき外力のする仕事は
v
q
∆q × d = v∆q = ∆q
d
C
となる。ここで q = Cv を使った。
∆U =
q を 0 から Q までの範囲で ∆U を足し合わせると図の三角形の面積がコンデンサーの内
部エネルギー U に相当する。
数学的には
!
dU =
よって
U=
!
q
Q2
dq ∴ U =
C
2C
1
Q2
1
CV 2 =
= QV
2
2C
2
となる。これは3つすべて暗記しておこう。
回路方程式を用いると i =
dq
dt
をかけて
q dq
d Q2
= (
)
C dt
dt 2C
としても導くことが可能である。
☆コンデンサーの極板間引力
Q
E
F
F
-Q
4
上板の Q は
下板の Q は
E
2
E
2
から引力
から引力
をうける。よって2つの極板は
FK =
1
1 Q2
QE =
2
2 ε0 S
の力で引き合っている。この力を極板間引力と呼ぶ。
※ エネルギーに関しての議論
今,極板を極板間引力につり合う外力 F外 をはたらかせ, ∆x 広げることを考えると,
∆U = F外 ∆x
となる。今 FK + F外 = 0 より,
∆U = −F ∆x = −WK
つまり,極板間引力のする仕事の負号をとったものが静電エネルギーの変化量となる。
すなわち,極板間引力は保存力である。
☆回路の扱い
次の2つの原理のみで解く。詳しくは抵抗を学習する次回に統一的に学習する。
(i) 電荷保存則
電流と電荷を仮定する
コンデンサー回路の場合は孤立系に着目して電荷を仮定する。出来るだけ未知数を減らす
ようにすることが重要。
Q
-Q Q
-Q
0
(ii) 回路方程式
回路(ループ)の数だけ立式する
1 周あたりの電圧上昇の和= 1 周あたりの電圧降下の和
5
-Q Q
Q
C
C
-Q
V
V=Q/C+Q/C
6
【直流回路】
☆電流
導体のある断面を ∆t の間に通る電気量を ∆Q として
I=
!
"
∆Q
dQ
[C/s] I =
∆t
dt
すなわち断面を単位時間に通る電気量である。
ミクロでは
v
n
e
S
v
より電子の電気量(電気素量)を e, 電子数密度 n[個/m3 ] を定義すれば
I = vsne
と表される。
☆抵抗
電流の流れにくさを表す。
R=ρ
l
S
となる。ρ は抵抗率と呼ばれ物質固有の値である。また抵抗は長さ l に比例し,断面積 S
に反比例する。
☆オームの法則
電流 I が抵抗 R を通過するとき電位が V さがる。このときの電位の差を電位差(電圧)
と呼ぶ。このときこの3つの変数の間には
V = RI
という関係が成立する。これをオームの法則と呼ぶ。
1
☆回路の扱い
次の2つの原理のみで解く
(i) 電荷保存則
電流と電荷を仮定する
コンデンサー回路の場合は孤立系に着目する。
I1
I1+ I2
-Q Q
Q
I2
-Q
0
コンデンサーに電流が流れ込んでいるときの電荷保存則は, 電流×微小時間=微小電荷増
分であるので,
dq = idt ∴ i =
dq
dt
となることは非常に大切である。なお, コンデンサーから電流が出て行くときの電荷保存
則は,
dq = −idt ∴ i = −
dq
dt
である。
(ii) 回路方程式
回路(ループ)の数だけ立式する
1 周あたりの電圧上昇の和= 1 周あたりの電圧降下の和
V2
V1
R
R
I V2
2I
R
-Q Q
Q
I
V
C
C
V1
V1
V
V=R(2I)+RI
-Q
V=Q/C+Q/C
☆合成抵抗
4
I1
R1
V
I2
I
R1
R2
R2
V
V
I
V
直列
V = R1 I + R2 I = (R1 + R2 )I
∴ R = (R1 + R2 )
並列
I=
V
V
1
1
+
=(
+
)V
R1
R2
R1
R2
∴R=
R1 R2
R1 + R2
☆合成容量
最初電荷が蓄えられていないことが条件 (直列のとき) なので回路問題ではあまり有用で
ない。誘電体の挿入問題のときに有用になる。
Q1
Q
-Q1
-Q
Q
-Q
C1
Q2 C2 -Q2
V
直列
Q
Q
V =
+
=
C1
C2
∴C =
!
1
1
+
C1
C2
I
V
"
Q
C1 C2
C1 + C2
並列
Q = C1 V + C2 V = (C1 + C2 )V
∴ C = C1 + C2
※コンデンサーへの誘電体の挿入
この手の問題のときはまず合成容量を押さえるのが定石になる。
5
Q
Q
d-x
x
d
-Q
Q
a-y
x
-Q
-Q
y
d
a-y
y
V
V
直列挿入
C=
s
ε0 d−x
ε xs
s
ε0 d−x
+ ε xs
並列挿入 (極板を1辺 a の正方形とする)
(a − y)a
ya
+ε
d
x
C = ε0
☆エネルギーについて
(i) ジュール熱
抵抗で発生する熱エネルギー
1 [s] 当たりだと消費電力という。
1 [s] 当たりに発生する熱量は抵抗を通過するとき 1[C] の電荷では V 電位が下がるので
I[C/s] では位置エネルギーは V I 下がる。このエネルギーの減少分がジュール熱となり
外部に放出される。
よって 1s あたりのジュール熱 PJ はオームの法則を用いて
PJ = IV = RI 2 =
V2
[J/s]
R
の3種類で表せる。すべて暗記しよう。
(ii) 電池のする仕事
電池の起電力 V [V ] とすると 1[C] の電荷が通過すると電位は V あがるので Q[C] 通過す
るとき位置エネルギーは
WD = QV [J]
あがる。1[s] 当たりでは Q →I として発生する電力は
PD = IV [J/s]
となる。
(iii) 外力のする仕事
6
主にコンデンサーへの誘電体の挿入問題,電磁誘導における摩擦面をすべる問題で出現
まとめると
電磁気学におけるエネルギー原理
∆U = WD + W外 − WJ
が得られる。左辺は内部エネルギー(運動エネルギー+位置エネルギー)の変化,右辺は
外力のした仕事になるわけだが電磁気では外力のする仕事が3パターン出てくることに注
意しよう。なおジュール熱は常に外部に逃げるエネルギーなので内部エネルギーを減らす
ので負になる。
U :運動エネルギー+重力・コンデンサー・コイル・バネの位置エネルギー
★ 正確には,,
∆U = V
!
Idt +
!
F外・vdt +
!
RI 2 dt
より,微小時間当たり,
dU = V Idt + F外 + v ・dt + RI 2 dt
dU
= V I + F外・v + RI 2
dt
これが単位時間当たりのエネルギー原理である。この式も非常によく使うので押さえてお
こう。
7
☆コンデンサーへの誘電体の挿入
C0
V0
コンデンサーを用いて図のような回路を考える。スイッチを入れた後コンデンサーに右
から比誘電率 εr の誘電体を挿入することを考える。初めコンデンサーには電荷が蓄えら
れていないとし,コンデンサーは 1 辺の長さ a の正方形であり,電気容量を C0 とする。
挿入距離が x のときのコンデンサーの合成容量は
C=
a−x
x
x
C0 + εr C0 ={(εr − 1) + 1}C0
a
a
a
さらに ∆x( << 1)挿入するときのコンデンサーの静電エネルギーの変化と電池のする
仕事は,
1
1
1
∆x
∆U = ∆( CV02 ) = ∆CV02 = (εr − 1)
C0 V02
2
2
2
a
WD = ∆QV0 = (∆CV0 )V0 = (εr − 1)
∆x
C0 V02
a
エネルギー原理を考えてコンデンサーから誘電体に働く外力の大きさと向きを求めると,
エネルギー原理から ∆U = WD + W外 より
1
∆x
1
1
W外 = − (εr − 1)
C0 V02 < 0 F外 = − (εr − 1) C0 V02
2
a
2
a
F外 < 0 であるので,コンデンサーには誘電体を引き入れる向きに力がはたらいているこ
とが分かる。
なお,コンデンサーに誘電体が完全に挿入されるとこの力は消失し,安定する。
★ ∆x 挿入するときジュール熱が無視できる理由
x から x + ∆x まで誘電体を挿入するとき
∆Q = (∆CV0 ) = (εr − 1)
∆x
C0 V0
a
ここで
i=
∆Q
C0 V0 ∆x
= (εr − 1)
∆t
a ∆t
8
この式から ∆x/∆t << 1 つまりゆっくりと誘電体を挿入すると発生するジュール熱は無
視できるとわかる。
9
映像:
(導入)コンデンサー1
コンデンサー原理 ★★★
極板 A,B からなる平行板コンデンサーの間隔を最初 4d とし,起電力 V0 の電池で充電する。真空の誘電率を
ε0 , コンデンサーの表面積を S とする。
x
A
V0
4d
d
B
0
(1) このとき A に蓄えられる電荷と AB 間の電場の大きさを求めよ。
次にスイッチを切った。そして B から距離 d のところに図のように間隔 d の金属を挿入する。また B から A
向きに x 軸をとる。
(2)AB 内に生じる電場 E の大きさと B を基準とする電位 V のグラフをかけ。ただし x を横軸とする。
次に金属を取り除き,同じ場所へ比誘電率 2 の誘電体を挿入する。
(3)AB 内に生じる電場 E の大きさと B を基準とする電位 V のグラフをかけ。ただし x を横軸とする。
次に (3) の状態からスイッチを入れた。
(4)AB 内に生じる電場 E の大きさと B を基準とする電位 V のグラフをかけ。ただし x を横軸とする。
(創作問題)
1
映像:
(典型)コンデンサー
コンデンサー回路 ★★★
図のような電圧 V0 の電源,電気容量 C のコンデンサー 1,2,スイッチ S1 , S2 を用いて回路をつくる。ス
イッチ1,2は連動されており,左側に同時に接続するか,右側に同時に接続するか,どちらにも接続しない
かいずれかである。初めスイッチはどちらにも接続されておらずコンデンサーには電気は帯電していないもの
とする。以下の問いに答えよ。
C1
C2
C
S1
C
S2
V0
連動スイッチを左側に接続した。
(1) 十分時間が経ったときのコンデンサー2にかかる電圧を求めよ。
次に,連動スイッチを右側に接続した。
(2) 十分時間が経ったときのコンデンサー2にかかる電圧を求めよ。
次に,連動スイッチを左に倒した後,右に倒す。
(3) 十分時間が経ったときのコンデンサー2にかかる電圧を求めよ。
この操作を多数回くり返す。
(4) このときコンデンサー2にかかる電圧はどのような値に近づくか。
(東大)
2
コンデンサーのエネルギー収支 ★★★
A
面積 S, 間隔 d の平行板コンデンサーに電荷 Q, −Q が蓄えられている。真空の誘電率を ε として以下の問い
に答えよ。
今,外力を加えゆっくりと極板間隔を ∆x だけ広げた。
(1) 静電エネルギーの変化を求めよ。
(2) エネルギー原理を利用して,平行板コンデンサーに働いている極板間の力が引力で大きさが
F =
Q2
2εS
となることを示せ。
映像:(導入)直流回路2
B
コンデンサーを用いて図のような回路を考える。スイッチを入れた後コンデンサーに右から比誘電率 εr の誘
電体を挿入することを考える。初めコンデンサーには電荷が蓄えられていないとし,コンデンサーは 1 辺の長
さ a の正方形であり,電気容量を C0 とする。
C0
V0
(3) 挿入距離が x のときのコンデンサーの合成容量を求めよ。
(4) さらに ∆x 挿入するときのコンデンサーの静電エネルギーの変化と電池のする仕事を求めよ。
(5) エネルギー原理を考えてコンデンサーから誘電体に働く力の大きさと向きを求めよ。ただし,∆x << 1
よりこの過程で発生するジュール熱は無視してよい。
(6)x = 0 から x = a までゆっくりと誘電体を挿入するとき,誘電体を完全に満たすまでに外力がした仕事を
求めよ。
(7) スイッチを切った後に同様の操作をしたときのコンデンサーから誘電体に働く外力の向きがコンデンサー
に引き入れる向きとなることを示せ。
(創作問題)
3
コンデンサースイッチ切り替え ★★
起電力 E で内部抵抗のない電池,電気容量 C のコンデンサー C1 , C2 , C3 ,および抵抗1,2とスイッチ S1 , S2
からなる回路がある。はじめスイッチは開いており,各コンデンサーには電荷はたまっていないとする。
S1
A
C1
S2
C
C2
B
C3
C
G
1
C
2
E
まず S1 のみを閉じる。十分時間がたったとき
(1)C1 の電気量と電圧を求めよ
(2)C1 と C2 の静電エネルギーの和を求めよ
(3) この間に抵抗1で発生したジュール熱を求めよ
次に,S1 を開き,S2 を閉じる。十分に時間がたったとき
(4) 点AとBの電位を求めよ。接地点Gの電位を0とする。
(5) この間に抵抗2で発生したジュール熱を求めよ。
(創作問題)
1
組み合わせコンデンサー回路 A
空間に電荷が存在すると,電場が生じ,電荷のまわりの空間は電荷がなかったときと異な
る状態となる。電場は単位電荷あたりにはたらく力のベクトルで表すことができ,真空中
で電荷 Q(> 0) の点電荷から距離 r だけ離れた点での電場の大きさ E はクーロンの法則
に関する比例定数を k として( 1 )で与えられる。
ある点における電場の大きさをその点近傍において,単位面積当たりを垂直に貫く電気力
線の本数とすると,Q の電荷からは( 2 )本の電気力線が出ていることになる。この
電気力線の本数は真空の誘電率 ε0 を用いると( 3 )本と表すことができる。
このことは,対称性のある電場の大きさを求めるときに有効である。真空中に太さの無視
できる長さ l の直線状の導体棒があり,この導体棒に Q の正電荷を一様に分布させたと
き,導体棒に垂直な方向に距離 r だけ離れた位置での電場の大きさは,( 4 ) と求めら
れる。ただし,電気力線は導体棒に対し,垂直に出ているものとし,導体棒両端での電場
の乱れはないものとする。
問1 (1) から (4) に正しい数式を入れよ。
1
B
以下,真空の誘電率を ε0 とする。
問2
図 1 のように,真空中において平行に4枚の厚さが無視できる1辺の長さが l の正方形の
金属板を間隔 a で平行に配置する。極板間に電圧 V の電源をつないだところ,コンデン
サーは充電された。図 1 におけるコンデンサーの電気容量はいくらか(全帯電量と電源電
圧の比)はいくらか。ただし,電源をつなぐ前は,コンデンサーに電荷は蓄えられておら
ず,金属板はじゅうぶん大きく,端の電場の乱れは無視してよい。
問3
図 1 において,コンデンサーに蓄えられている全静電エネルギーはいくらか。
問4 電源を接続したまま図 1 から図 2 の状態になるまで極板をゆっくり
a
だけ移動さ
2
せる。このとき,電池を負極から正極に通過した電気量,および外力がした仕事を求めよ。
2
コンデンサー原理 ★★★★★
十分広い金属平板を図のように3枚用意する。上から平板 I,II,III とする。平板間の間隔はそれぞれ D で
固定されている。平板 I の上側極板を a, 下側極板を b, 平板 II の上側極板を c, 下側極板を d, 平板 III の上側
極板を e, 下側極板を f とする。最初これらに電荷は蓄えられていないとする。今,平板 I に電荷 Q, 平板 II に
電荷 2Q の電荷を与えると,平板内で電荷の移動が起きた。十分時間が経過すると,平板表面に電荷が分布
し,向かい合う極板同士 (b と c,d と e) には逆符合で同じ大きさの電荷が溜まるようになる。これを定常状態
とする。3極板の面積を S, 真空の誘電率を ε0 とする。極板からの電場の漏れはないとし以下の問いに答えよ
問1 定常状態では,向かい合う極板に逆符合,同じ大きさの電荷が溜まる理由を簡潔に述べよ
問2 定常状態では平板 I,II,III 内部の電場は0となることを利用して,最終的に極板 a,b,c,d,e,f に溜まる
電荷を全て求めよ
次に f を図2のように接地させたところ再び電荷の移動が起きた。
問3 定常状態で極板 a,b,c,d,e,f に溜まる電荷を全て求めよ
問4 平板 III の電位を0として平板 I,II の電位をそれぞれ求めよ
さらに,図3のように平板 I と平板 III を導線でつないだ。
問5 定常状態で極板 a,b,c,d,e,f に溜まる電荷を全て求めよ
問6 平板 III の電位を0として平板 I,II の電位をそれぞれ求めよ
3
a
a
I
b
I
D
c
c
c
II
II
d
d
f
e
e
e
d
D
D
D
III
b
b
D
D
II
a
I
III
III
f
f
図1 図2 図3
(創作問題)
4
コンデンサー単振動 ★★★★
面積 S の同じ形状を持つ導体極板 A と B が間隔 d で向かい合わせに配置された平行板コンデンサーを,真
空中に置く。このコンデンサーの極板間に,導体極板と同じ形状を持つ面積 S の金属板 P を,極板 A から距
離 x を隔てて極板に対して平行に置く
。真空の誘電率を ε0 として以下の問いに答えよ。ただし,極板端および金属板端における電場の乱れはなく,
電気力線は極板間に限られるとする。導線,極板,金属板の抵抗,重力は無視する。また,金属板の厚さも無
視する。
A
d
A
P
B
x
図1のように,極板 A と B はスイッチを介して接続され,極板 A は接地されている。
(a) スイッチが開いているとき,極板 A,B 間の電気容量を求めよ
(b) スイッチを閉じた後,金属板 P を電気量 Q の正電荷で帯電させる。この電荷によって極板 A と B に誘
導される電気量をそれぞれ求めよ。
(c) 問 (b) において,コンデンサーに蓄えられている静電エネルギーを求めよ
(d) 問 (b) の状態から,金属板 P を電気量 Q の正電荷で帯電させたまま,金属板の位置を x から x + ∆x
まで微小変位させる。この変位による,コンデンサーに蓄えられている静電エネルギーの変化量を求めよ。た
だし,x, d にくらべて |∆x| は十分小さく,(∆x)2 は無視できるものとする。微小変位によりエネルギーが変
化するいうことは,金属板 P は力を受けていることを意味する。微小変位の間は金属板 P にはたらく力の大
きさは一定であるとみなして,この力を求めよ。ただし,極板 A から B に向かう力の向きを正の向きとする
5
B
次に,質量 m の金属板 P を電気量 Q の正電荷で帯電させたまま,図2のように自然長 d2 , ばね定数 k の2つ
の同じ絶縁体のばねに接続する。ばねの他端は,固定された極板 A と B にそれぞれつながれている。この金
属版は,極板 A,B と平行を保ったまま,極板に垂直な方向にのみ動くことができる。極板 A と B は電流計
を介して接続され,極板 A は接地されている。ばねを接続したことによる電気容量の変化,電流計の抵抗,金
属板の振動による電磁波の発生は無視する。
d
A
P
B
x
A
(e) 金属板 P の位置を x =
d
4
に移動させてからはなす。このとき,金属板 P が単振動するために必要と
なる Q に求められる条件を k, ε0 , S, d を用いて表せ。また,この条件を満たすとき,単振動の角振動数を求め
よ。
(f) 問 (e) の条件で金属板 P が単振動をしているとき,電流計には振動電流が観測される。この電流の最大
値 Imax を求めよ。導線を流れる電流 I は微小時間 ∆t の間に導線の断面を ∆q の電荷が通過するとき I =
と定義される。
∆q
∆t
(12 東工大)
6
極板引力 ★★★★
図のように、2個の平行平板コンデンサーを左右におく。それらの電気容量は、極板間隔が d のとき、ともに
C0 である。右のコンデンサーは極板間隔を d に固定する。左のコンデンサーの下の極板を固定し、上の極番
A をばね定数 k のばねでつり、ばねの上端を絶縁物に固定する。極板間隔が d のとき、極板 A に働くばねの
力と重力がちょうど釣り合う。左右のコンデンサーの下の極板は接地され、上の極板どうしはスイッチを通し
てつなぐことができる。
以下の設問に答えよ。極板は広く、極板の周辺部の影響や、ばねをつけることによる電気容量の変化は考えな
くてもよい。
A
x
d
I
一般に、平行平板の極板が Q, −Q の電気量を持つとき、極板間の電界の強さを E とすると極板同士が引き合
う静電気的な引力は 12 QE で与えられる。その理由を述べよ。
II
図の装置で最初スイッチは開いていてコンデンサーは左右ともに帯電していない。まず右のコンデンサーの
上、下極板にそれぞれ Q0 , −Q0 (Q0 > 0) の電気量を与える。次に左のコンデンサーの極板間隔を x に保った
ままでスイッチを閉じる。極板 A の帯びる電気量 Q(x) の値はいくらか。またこのとき左の極板間の電界の
強さはいくらか。
III
設問 II で述べた操作の後、スイッチは閉じたままで、極板 A を上下に移動し、極板 A にはたらくばねの力、
重力、静電気的な引力の3つの力だけでつりあう極板間隔をさがす。間隔が 34 d でつりあうのは Q0 がいくら
のときか。
IV
Q0 がある値 Q※ 以上の場合には、設問 III と同じようにして、つりあう間隔を探しても、つりあう間隔は存
在しない。その値 Q※ を求めよ。
7
(83 東京大)
8
極板が振動するコンデンサー ★★★★★
図のように向かいあった2枚の極板 A、B は平行板コンデンサーを作っている。質量 m の極板 A は質量の無
視できるばねにつながり、絶縁体の床の上を摩擦なく運動できるとする。また極板 B は固定されている。ば
ねの長さが自然長のときの2枚の極板間の距離を d、そのときの電気容量を C0 とする。コンデンサーに電荷
がない状態で A を自由振動させたときの角振動数は ω0 であった。A の変位を x で表し、バネが自然長のと
き x = 0 とする。ただし、A から B への方向を正とする。また、この問題では常に x/d の絶対値は1に比べ
て十分小さいとする。スイッチを閉じることにより導体のバネを通じて電圧 V0 を両極板にかけることができ
るが、バネのインダクタンスは無視できるとする。
V0
h
a
g
i
b
A
B
I バネが自然長で静止している状態で突然スイッチを閉じたところ、A は単振動を始めた。A の変位が x
のときに極板 A に蓄えられている電荷を Q(x), コンデンサーの内部で A から B に向かう電場の強さを E(x)
とする。Q(x) および E(x) を x の関数として表せ。
II A に働く電気的な力の強さは x の関数であり、 12 Q(x)E(x) と表される。これを利用して I の単振動に
おける振幅 a1 と角振動数 ω を求めよ。ただし、|s| < 1 なら (1 + s)α ≈ 1 + αs という近似式を用いよ。
III 振動している A が、最も左に寄る直前、および左端から右へ動き始めた直後の2つの場合において、回
路に流れる電流 i(図に示した矢印の向きを正とする)は正、負、ゼロのいずれか。理由を付して答えよ。また
図の回路のそばにコイルを置いたところ、コイルの両端に振動電圧が現れた。A が最も左に寄ったとき、コイ
ルの両端に生じる電圧(b を基準にした a の電位)は正、負、ゼロのいずれかであるか、理由を付して答えよ
9
IV 次に、振動している A が x = 0 の位置にきたとき、急にスイッチを開いた。この時刻を t = 0 とす
る。その後の A の単振動の振幅を a2 , 角振動数を ω2 とし、スイッチの両端に現れる電圧 v(t)(g を基準にし
た h の電位) を時間の関数として表せ。また角振動数 ω2 はいくらか。
(90 東大)
10
3 極板コンデンサー回路 ★★★★
図のように一辺 L の正方形で厚さが d の 3 枚の電極板 P1,P2,P3 がある。P1-P3 間には起電力 V0 の電池
B が接続されていて、P3 は接地されている。3 枚の板は平行である。P1 と P3 は固定されており、その間の
距離は D + d である。P2 は、P1 と P3 の間で上下に動くことができ、P1 と P2 の間隔は x とする。P2 の動
く速さ v は、十分にゆっくりであり、その速さで電荷が動くことにより発生する磁界などは無視できるほど小
さい。また板間の距離が 0 のときは、板同士が接触しており、電気的に互いに同電位になるとする。電池の内
部抵抗は無視できるものとする。
L は P1-P3 間の距離に比べて十分大きく、電極間は真空であり、その誘電率は ε0 であるとする。
(a) はじめ P2 を P1 と接触 (x = 0) させていたが、時刻 t = 0 から P3 と接触する時刻 t = t1 (=D/v) まで一
定の速さ v で P2 を下向きに動かした。0 < t < t1 での P1 の持つ電荷を、P2 の電位 VD および x の関数と
して表せ。
(b) 0 < t < t1 での P2 の電位 VD を x の関数として表せ。
(c) 時刻 t = t1 において P2 の下の面にある電荷と P3 の上の面にある電荷は打ち消しあう。続いて時刻
t = t1 から、再び P2 を一定の速さ v で上向きに動かし、時刻 t = t2 (= 2D/v) で P1 と再度接触させた。
t1 < t < t2 での P2 の電位 VD を x の関数として表せ。
(d) 0 < t < t2 での P1 の電荷 Q! を時刻 t の関数として図示せよ。
(e) 0 < t < t2 での P1 の電荷 Q! の変化は電池 B から流れこむ電流による。電流計を流れる電流を時刻 t の
関数として図示せよ。ただし、電流計の内部抵抗は無視できるものとする。P1 に向かって流れ込む電流の向
き (図の矢印の向き) を正の向きとする。
7
A
L
P1
x
D+d
d
P2
V0
B
P3
図
(04 東工大)
8
映像:
(難問)コンデンサー
ベルトコンベア上の極板の単振動・エネルギー収支 ★★★★★★
図のように向かい合った2枚の極板A,Bが平行板コンデンサーを形成している。極板Aは質量 m であり,
ばね定数 k のばねにつながれている。また極板Bは動かないように壁に固定されている。ばねの長さが自然
長のときの極板間の距離を d,その電気容量を C0 とする。また極板 A はベルトコンベアの上に乗っており,
ベルトコンベアの上面は左向きの速度 w で動かすことができる。最初ベルトコンベアは動いていないとする。
自然長の位置での A の位置を x = 0 として図のように座標を設定する。ただ変位 x は常に極板間隔 d よりも
十分小さいとしてよい。またこの極板には起電力 V と導線が図のようにつながれておりスイッチを閉じるこ
とにより極板に電圧をかけることができる。ベルトコンベアと A との静止摩擦係数を µ,動摩擦係数を µ ,
!
重力加速度を g として以下の問いに答えよ。また α << 1 のとき (1 + α)n ≈ 1 + nα となり α の 2 乗以上の
項は無視できる。
V
m
k
d
A
B
x
w
0
w
図
I スイッチを閉じてコンデンサーを充電させた後,バネが自然長の位置で A を静かに置き,ベルトコンベアを
動かした。すると A は左向きにベルトコンベアに運ばれて速度 w で動き出しある位置でベルトコンベアに対
し滑り始めた。
(1) このときの A の座標 x0 を求めよ。
ただし A に働く電気的な力(極板間引力)の大きさはたまっている電荷の大きさ Q と極板内の電場の強さ E
を用いて 12 QE で表される。
II ベルトを動かした状態で,x = x0 で静かに A を離す場合を考える。すると A は右向きにすべり出しその
後,x = x1 を振動中心とする単振動を行った。
(2)x1 の値と A がもっとも B に近づくときの A の座標 x2 を x0 ,x1 を用いて表せ。
(3) ベルトコンベアの速さ w がある値 w0 より小さくなると A は単振動を行わなかった。w0 を求めよ。ただ
し x0 ,x1 を用いてよい。
1
III II の単振動で x = x0 から x = x2 になるまでの過程の物体,回路系のエネルギーを考察する。
(4) コンデンサーの静電エネルギーの変化を求めよ。ただし x0 ,x1 を用いてよい。
(5) 電池のする仕事を計算し,この過程で発生したジュール熱を求めよ。ただし x0 ,x1 を用いてよい。
(創作問題)
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