Interview : Shoukichi KINA

web Special Issue
Oct,16. 2014
Interview : Shoukichi KINA
web Special Issue Oct,16. 2014
Interview : Shoukichi KINA
辺野古埋め立て承認の取り消し・撤回。
しているかもしれません。どうも、大きなチカラに作ら
れているんじゃないか、という考えも持っています。ア
沖縄からはじめる、地球ルネッサンス。
喜納昌吉氏 インタビュー
文 :菊地 崇
写真:依田 恭司郎
片岡一史(ライブ)
喜納昌吉さんが、参議院選挙に立候補し、当選を果た
–––– 9 月 24 日、11 月に行なわれる沖縄県知事選
メリカの本音はどこにあるのか。中国、台湾、韓国、北
に立候補することを喜納さんは表明いたしました。現
朝鮮、日本という東アジア。今は非常に危険な状態です。
職で辺野古への移設を進める仲井真弘多知事、移設に
それを作っているのは誰なのか。紛争が起こって喜ぶの
は反対を訴えている翁長雄志那覇市長、そして県民投
は誰なのか。ちょうど 10 年前の夏、普天間基地近くの
票による決着を訴えている下地幹郎元郵政民営化担当
大学にヘリコプターが墜落するという事件がありました。
相の 3 人が出馬を表明しているなかで、なぜ立候補す
そしてその直後に、辺野古ではボーリング調査に着手し
ることにしたのでしょうか。
ようとした。沖縄に対する同情や共感を、ニュースによ
喜納昌吉 翁長氏が、辺野古への移設反対という立場
って日本人に植えつけていく。基地はいらないという声
をとっています。けれど反対だけでは、辺野古沿岸部
を、沖縄だけではなく日本からも盛り上げていく。アメ
の海底ボーリング調査がはじまってしまった今におい
リカの真意は、沖縄から軍を引き上げること。そして隣
て、埋め立て、そしてその後の基地建設という流れは
人をケンカさせ、ケンカして両者とも弱ったところに入
止められません。辺野古の埋め立て承認を取り消し・
っていくという構図なんじゃないかと私は思っているん
撤回することが、その流れを止める方法なんです。翁
です。アメリカが自分から出ていくと言わなければ、日
長氏の口から「撤回」という文字は出てきませんでし
本に負担をかけさせることもできる。沖縄側から反対さ
た。
せて、日本もそれに同調して、お金も出してもらって、
–––– 翁長氏は、2010 年の前回の沖縄県知事選にお
出ていく口実を作るという戦略をたてているんじゃない
いて、仲井真氏の選対本部長を務めていました。
かと思っています。もちろん、沖縄に基地を作らせない
喜納 仲井真氏にしろ翁長氏にしろ、予定調和のなか
ことや沖縄から基地をなくすことは、沖縄の願いです。
に入っているんです。だから私が出ると表明したこと
で、多くの人が困っているわけです。困っている人か
ら見たら私は異端児。ただ自分では、もっともノーマ
ルな人間じゃないかと考えています。沖縄の未来のこ
とを本気で考えているノーマルな私のほうが、異端児
だと思われている。みんながアブノーマルになってい
し「政治」の世界に入ったのがちょうど 10 年前。政
るし、みんなが病気になっているんです。
治家になる以前から、一貫して訴えているのが「武器
–––– 沖縄から伝えられる報道を見ていると、反対
のない平和な世界」を作ることだ。
そんな喜納さんが、沖縄県知事選への立候補を表明し
た。夢を語り、夢を実現するために前を向いて歩き続
派が盛り上がっているような印象です。前回の沖縄知
事選では、仲井真氏も「県外への移設」を訴えていま
したから、反対が沖縄の声であるんだという認識を持
ける。音楽家〜アーティスト、あるいはひとりの地球
っていますが。
人として、そのスタンスは変わっていない。
喜納 普天間基地返還と辺野古基地反対。報道が突出
Photo
沖縄戦終焉の地、摩文仁の丘から見た
東シナ海。第二次世界大戦で敗戦が濃
厚になり、後退していた軍司令部が最
後にここに辿り着いた。
沖縄の悲願です。沖縄を喰いものにされずに、そこに生
–––– グローバルビジョンを沖縄から発信する道筋
地球が喜ぶんです。心の持ち用や生き方によって、人類
きる私たちの手に戻すこと。それが問われているのです。
を教えていただけませんか。
も地球と一体になれるんです。
喜納 我々がどこから出発したらいいのか。日本はも
ちろんのこと、今の世界を俯瞰すると、問題がはじめ
地球とダンスする。
地球を健康にするための政治。
にあって答えを導いていくという習性があります。で
–––– 今回の立候補表明に限らず、喜納さんの行動から
もそれじゃ、何も解決にならない。今後は、それを反
–––– 知事選に立候補すると決心したのは、いつだった
は沖縄に対する強い想いが伝わってきます。どんな沖縄
対にしていかないといけない。答えがありきで、その
のでしょうか。
にしていきたいと思っているのでしょうか。
答えに持っていくために問題を解決する。もし永遠と
喜納 ずーっと待っていた、というのが正直な気持ちで
喜納 人類がなしえなかったビジョンを沖縄で実験して
いう言葉を人類が使うのであれば、生き延びていくた
す。出るという決心をした勇気より、待っていた忍耐力
みようじゃないか。それが私のビジョンです。実験とい
めには、この地球の上で暮らしていかなければならな
を評価してもらいたい(笑)
。予定調和の選挙。それは沖
うよりも、適応させるという表現のほうが近いかもしれ
い。他の惑星に住めることがあるかもしれないけど、
縄の人が望んでいる選挙ではありません。今、立たずし
ません。東日本大震災により福島で原発が爆発した。災
当分は考えられない。この地球が悲鳴をあげているん
ていつ立つのか。そんな気持ちです。私は政治家になる
害への智慧を出して、再生エネルギーに対して総力をあ
です。その悲鳴の原因がなんなのか考えるべきなんで
ために、選挙に勝つために政治の世界に入り込んだので
げて動いていく。それを実現できるのが、原発がない沖
す。地球の悲鳴のもっとも大きな要因は、人類による
はありません。地球を健康にしたい。そのために沖縄県
縄なんです。
地球破壊なんですから。
知事選に出るんです。健康を取り戻すこととは、懐かし
–––– 沖縄から未来を築いていくということですね。
–––– 地球に病がある。そのためには、国単位では
さを取り戻すこと。懐かしいものに戻っていけば、自然
喜納 勤勉な日本人の智慧と技術を再生可能な社会のた
なく地球規模を視野にいれなければならないというこ
に大地に還るはずなんです。この地球から、ロケットで
めに使う。日本が持っている潜在的な可能性をそこに注
とですね。これは、喜納さんがずっと発信し続けてき
飛び出した先だけが宇宙じゃないんです。宇宙の彼方か
ぐ。沖縄で証明できれば、日本全体が再生可能な社会に
たことです。
ら見れば、この地球も宇宙。この地球を健康にするために、
流れていく。日本が変わっていけば、アジアも変わるし
喜納 地球に病があるから、人間にも病が落ちてくる。
取り合うのではなく、分け合えばいい。取ったものを自
世界も変わる。そうなることができたのなら、日本が人
我々は地球というひとつの生命体の一員です。あらゆ
分のものとしてしまいこんでいるから、循環がなくなる。
類の希望の星になると思います。今の科学は、地球から
る食物連鎖の頂点にいるのが我々人類。人類だけが国
人と、そして地球と分け合えば、循環は必ず生まれるん
奪うことしか想定していない。この古い科学を新しい科
境を持っているんです。海も、山も、鳥も、魚も、雲
です。
学にルネッサンスする。それを沖縄からやろうと思って
も、風も、国境を持っていない。我々が作った携帯電
–––– 例えば昨年の参議院選挙に立候補した三宅洋平さ
いるし、沖縄だからこそ可能なんです。現住所は沖縄で
話にだって、本来は国境がない。生命の本質というの
んなど、喜納さんの想いを受け継ぐ人がどんどん現れて
本籍は地球。その想いを蘇らせる。沙漠化にしろ温暖化
は国境がないものなんです。だから、すべての病める
きています。
にしろ、病気は地球規模。国家単位で考えていたのでは
根源は国境にあるんです。国境がない地球。それは、
喜納 「春が来れば、自然に花は咲く」。そんな言葉があ
小さいんです。国家で治せるほど、今の地球の病気は軽
人類が待ち望んでいたステージだと思います。沖縄は、
るじゃないですか。時期がきたら、パンパンと咲いてい
くないんです。地球の視点、さらに宇宙の視点を持って、
そのステージにもっとも近い存在なんです。地球規模、
くんです。そういう時期に来ているんだと思います。冬
沖縄で実践し発信していく。そのグローバルビジョンを
人類規模の夢を唱えるようなところがあってもいいじ
の時代から、春に移り変わろうとしている時期なんです。
沖縄で作っていきたいんです。沖縄なら、それができる
ゃない。地球を健康にしよう。地球が健康になったら、
今は、祭りの季節に入ってきているんです。
んです。
私たち人類の心も健康になる。地球とダンスしたら、
(インタビュー 2014 年 9 月 26 日)
web LINK
普天間基地の辺野古移設(MEDIA WATCH JAPAN)
http://mediawatchjapan.com/ 普天間基地の辺野古移設 - 論点整理 /
翁長氏支持辺野古基地反対市民に広がる疑念(植草一秀の『知られざる真実』)
profile Shoukichi KINA 喜納昌吉
1948 年沖縄県コザ市(現・沖縄市)に沖縄民謡界の重鎮、喜納昌永と妻千代の間に生まれる。68
年喜納昌吉&チャンプルーズを結成。『ハイサイおじさん』『すべての人の心に花を』など数々のヒ
ットを生む。また音楽活動だけでなく、世界を舞台に平和活動を展開。イラク・ピース・アクショ
ンやサバニ・ピース・コネクションなどのムーブメントも牽引してきた。2004 年第 20 回参議院議
員通常選挙比例区に民主党から出馬し当選。一期を務める。現在、11月に行われる沖縄県知事選
に出馬を表明している。
音楽家、平和活動家、政治家3つの顔を持ちながらも、つねに4つのメッセージを発してきた。
「すべての武器を楽器に すべての基地を花園に 戦争よりも祭りを すべての人の心に花を」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-c091.html
喜納昌吉 地球に愛を!(喜納昌吉 後援会「花の会」公式ブログ)
http://kinaokinawa.ti-da.net
喜納昌吉&チャンプルーズ WEBSITE
http://www.champloose.co.jp
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Interview : Shoukichi KINA