裏っちゃんの人生学 よっシャー.com 平成 26 年 1 月 31 日 第38号 (通巻 108 号) 吉川区 教育目標: 向上心に燃え、心身ともにたくましく実践力のある生徒 上越市立吉川中学校長 裏田道夫 入試の変革と求められる人材 来週から暦の上ではいよいよ「春」ということになります。 3 年生は実質あと 1 か月となりました。 日本では、春の代名詞として「卒業」「入学」がありますが、諸外国では 200 近い国のうち、6 割近くが 6 月「卒業」、9 月「入学」です(出典:ユネスコ統計局 UIS)。 来年度、新潟県の公立高校入試が大きく変わろうとしています。推薦入試に代わる特色化選抜(募集定員の 10% 以内) 、学校独自検査(2 日目)導入などです。変革の根本理由は、従来の国家・社会が求めていた人材とは違う 人材を育てる必要がでてきたからです。戦後「欧米先進国に追いつき追い越せ(Catch up)」を目標にしてきた 日本では、知識・技能の多さが国をリードする人材を決定していました。しかし、いまやグローバルネットワ ーク社会では、知識・技能を多くもつ者だけでは通用しなくなっています。つまり、知識や技術自体が日進月 歩で、すぐに古くなってしまいます。最新の知識は、学校以外でもインターネットなどで直ちに学べるように なり、技術革新も日を追って進歩しています。身に付けた知識・技術の多さを誇っても、それらが生かされな いと全く意味がありません。ここで重要なのは「戦略性(Strategy)」です。 「戦略性」というと、軍師黒田官兵衛をイメージしますが、ここでは、特定の目標に向かって、最適な材料 と方法によって達成する道筋を示せる能力のことです。①「知識・技術(Knowledge, Technology)」は、戦略 性にとって 1 つの必要条件ではあっても、それだけで十分条件とはいえないわけです。もっと他の要素、たと えば②目標達成の道筋を描く「企画力(Planning)」 、③知識・技術を「有機的に組織する力(Organization)」、 ④目標や達成の道筋について仲間どうしの意思疎通を図り、分担・協働して動くための「コミュニケーション 力(Communication)」 、さらに⑤計画や方法を評価・修正・再構築する「改善力(Improvement)」などが必要 です。 憲法第 26 条第 1 項では、社会権の 1 つとして、すべての国民が「能力に応じてひとしく教育を受ける権利」 を保障すると同時に、同条第 2 項では、すべての国民が社会生活を送る能力の「基礎」を培う普通教育、いわ ゆる「義務教育」を保障しています。 したがって義務教育は、 「戦略性」をもつ人材の「基盤」となる頭(A)=知識・技能、心(K)=社会性・規 範意識、体(B)=健康・体力を培うためにあるわけです。義務教育で培った A・K・B をどうやって生かすか は、それぞれの人が自分自身で決めていかなくてはなりません。 そこで、高校(中等後期課程含む)以上の「自由(任意)教育」段階では、 「戦略性」をもって世界で活躍でき るグローバル市民(Global Citizenship)を育てるため、教育内容や卒業・修了条件を変えようとしています。 まず、高校段階では、義務教育段階より高度な知識・技術を習得し、自己の目標設定やその目標達成のため の道筋を描く能力=戦略性をつけること。そして大学以上の段階では、自分の戦略性をグローバル社会で発揮 できる人材を育てること、さらに外国の大学・諸機関と連携して人材交流がグローバルに行われる「大学の開 国」をめざして改革が急ピッチで行われているのです。 その具体的な表れが、新潟県の公立高校入試改革であり、大学の入試改革です。とはいえ、入試制度の変革 =入口改革をしても入学後に「たるんで」しまっては無意味なので、卒業・修了要件の変革=出口改革もこれ から厳しく見直されていくと思います。 一昨日、東京大学が平成 28 年度入試から「推薦入学」枠(総定員約 3,000 人中 100 人)の導入を公表したの をご存じの方もいるでしょう。概要は下のようなものです。京都大学も AO(Admissions Office)入試を検討し ているようです。早稲田・慶應両大学では、すでに AO 入試や春(4 月) ・秋(9 月)の 2 期入学制を始めており、 あるいは MOOCS(MOOC:Massive Open Online Courses =ハーヴァード・MIT など世界有数の大学や東・京・早・ 慶 各大学で実施されている「大規模オンライン公開講座」。優秀な人材なら世界中のどこからでも各大学の講義の聴講可。 MOOCS のサイト運営管理者のスポンサー企業が MOOCs 受講生から採用する動きもある)を実施するなど、日本のリー ディング 4 大学がいち早く自己変革を行い、世界トップレベルの大学を目指す動きを始めたことは、他大学に も大きな影響を及ぼすでしょう。 *一般入試は後期日程を廃止し前期日程に一本化。後期日程枠 100 名分を推薦枠に変更。 <東大推薦入試の概要> 7月 募集要項公表 推薦入試で 2 次を通過した者は、センター試験で一定レベル以上の得点が合格条件。 10 月 11 月 12 月 センター試験出願 1 次選考 2 次選考 推薦書類受付 1月 (書類選考) (面接等) 2月 センター試験受験 推薦合格発表 (正答率 80%以上?) *不合格者は *各高校男女 1 名(男子校・女子校は各1名) 一般入試受験可 世界・全国大会コンテスト等の成績優秀者、 (センター試験成績+2 次試験) 国際ボランティア等の功労者・優良者、 TOEFL スコア 100 点/120 点 以上(例示) *東大 HP「入学案内」のプレスリリース(H26.1.29)参照 ☆東大の求める人材: 学校の授業の内外で、自らの興味・関心を生かして幅広く学び、その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い 視野、あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人材 こうした動きとは別に、正規の高校の教育課程を経ずに大学進学を志す人間もでています。その典型例がス キー女子ジャンプで世界的に注目されている高梨沙羅さんです。 彼女は、2 年前の 2012 年 3 月に地元 北海道・上川町(葛西紀明、伊藤大貴 両選手の出身地)の上川中学校(原 田雅彦さんは同校卒業生)を卒業し、旭川市にあるミッション系のフリースクール「グレースマウンテン・インタ ーナショナルスクール」を選び、入学しました。現在も在学中で、学年でいえば高校 2 年にあたりますが、こ の学校は正式な高校ではありませんので「高等学校卒業程度認定試験*」に合格して大学や短大に進まなくては 最終学歴が中学校卒業となります。しかし、沙羅さんは中学校時代から世界を転戦しながら移動中にも猛勉強 して高校の学習内容を身に付け、入学後わずか 4 か月の 2012 年 8 月、認定試験に合格。大学受験資格をとり ました。その上で、外国語の習得に力を入れ、英語でのインタビューにも答えられるようにしています。 *旧 大学入学資格検定(大検)が平成 17 年度から制度変更されたもの。 年 2 回(8、11 月)各回 2 日間で、高校の 6 教科 8(9)科目の学 科試験を実施。毎回の受験者は約 2.5 万人で合格率は 30~35%程度 = 文科省 HP に実施要領・過去問等掲載 沙羅さんはひょっとしたら、フィギュアスケートの金 妍児(キムヨナ)さんのように、ソチ五輪後はカナダや ヨーロッパの大学へ進学して学業と選手生活を両立させようとしているのかも知れません。 いずれにしても、これからの高校・大学は、 「戦略性」が育つ人材をどうやって入試で選別し、教育するかが 重要な課題となってきます。そうした入試変革の動きに対して、受験生側も、自分が高校(大学)でどういう 目標をもって学ぶか、その目標達成のためにどの学校が一番適しているか、志望校の3年(大学は4~6年) 間のカリキュラム(学習課程)はどうなっているのか、しっかり予備知識をもって受験に臨む必要があります。 さらに、これまでの授業・家庭学習の取組を見直し、改善することも必要です。 2月の主な予定 3 日(月) NRT(社・理=1・2 年) 5・6 日(水・木)1 年スキー授業 7・10 日(金・月)3 年定期テスト 12 日(水)公立推薦入試 17 日(月)学校運営協議会③ 3/3(月)三送会 3/7(金)卒業式 19 日(水)2 年 学年 PTA 21・24 日 1・2 年定期テスト 27 日(木)生徒総会 28 日(金)同窓会入会式 3/11(火)公立一般入試 3/13 合格発表 3/13-15 2 年修学旅行
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