機械工学基礎 I 補充問題 その 2(力のつり合い,平面運動) 解答例

機械工学基礎 I 補充問題 その 2(力のつり合い,平面運動)
解答例
2-1. 斜面上に置かれた物体に水平力 F をを加えると,F が小さすぎれば物体は斜面を滑り落ち,F が大き
すぎれば物体は斜面を登ることとなる.従って,物体が動かないための水平力 F の大きさは,物体と
斜面との間の摩擦力が斜面に沿って (a) 上向きに作用する場合と,(b) 下向きに作用する場合の二通り
の場合の間の値となる.
(a)摩擦力が斜面に沿って上向きに作用する場合
Fig. 2-1-1
図 2-1-1 に示す通り,斜面に置かれた物体に作用する力は重力 W ,垂直抗力 N ,摩擦力 R,水平
力 F である.
まさつ力の大きさは次式の通り.
R = µN
(1)
重力 W を斜面に平行な方向の分力 Wh と垂直な方向の分力 Wv に分解する.Wh と Wv の大きさ
はそれぞれ次式の通り.
Wh = W sin θ
Wv = W cos θ
(2)
(3)
同様に,水平力 F を斜面に平行な方向の分力 Fh と垂直な方向の分力 Fv に分解する.Fh と Fv の
大きさはそれぞれ次式の通り.
Fh = F cos θ
(4)
Fv = F sin θ
(5)
N = Wv + Fv = W cos θ + F sin θ
(6)
斜面に垂直な方向の力のつりあいより,
である.
斜面に平行な方向の力のつりあいより,
Wh = F h + R
W sin θ = F cos θ + µ(W cos θ + F sin θ)
(7)
(8)
式 (8) を F について解けば,物体が滑り落ちないよう支える水平力 F の最小値が求まる.
F =
sin θ − µ cos θ
W
cos θ + µ sin θ
(b)摩擦力が斜面に沿って下向きに作用する場合
1
(9)
Fig. 2-1-2
図 2-1-2 に示す通り,摩擦力の向きが逆であることに注意して斜面に平行な方向の力のつりあい
より,
Wh + R = F h
W sin θ + µ(W cos θ + F sin θ) = F cos θ
(10)
(11)
式 (11) を F について解けば,物体が斜面を登らない水平力 F の最大値が求まる.
F =
sin θ + µ cos θ
W
cos θ − µ sin θ
(12)
以上より,物体が斜面上で動かないために必要な水平力 F の大きさは次式の通り.
sin θ − µ cos θ
sin θ + µ cos θ
W ≤F ≤
W
cos θ + µ sin θ
cos θ − µ sin θ
(13)
なお,質量 m の物体に作用する重力 W は重力加速度を g として,W = mg で表される.
2-2. 問題文は次の通り.
「図 H に示す通り,重量 W の球が水平で滑らかな床の上に置かれている.球の中心には 2 本の糸 AB
と AC が取り付けられ,それぞれ摩擦のない滑車 B と C を介して荷重 P と Q がかけられている.糸
AB が水平である場合,球がつりあいの状態となるときの糸 AC と水平面とのなす角 α を求めよ.ま
た,球と床面との間の圧力 R を求めよ.」
球に作用する重力を W とし,荷重 P ,Q もそれぞれ力として解くこととする.糸 AC に作用する張力
の大きさは Q に等しい.糸 AC に作用する張力の水平方向の分力が P とつりあい,糸 AC に作用する
張力の鉛直方向の分力と床面から球に作用する抗力の合力が W とつりあう.
P = Q cos α
(14)
より,cos α = P/Q を得る.
圧力 R は,床面から球に作用する抗力の大きさに等しい.従って,
R = W − Q sin α
sin α =
(15)
√
√
1 − cos2 α より,R = W − Q2 − P 2 を得る.
2-3. 自動車は加速度 0.2g で等加速度運動すると考える.静止している状態から時刻 t[s] が経過したときの
速度 v(t)[m/s] は次式で与えられる.
v(t) = 0.2gt
(16)
時速 1km は 1000/3600[m/s] であることに注意して,時速 60km の速度に達するまでの時間を求め
ると,
t=
60 × 1000
v
=
= 8.50 [s]
0.2g
3600 × 0.2 × 9.8
2
(17)
静止している状態から加速度 0.2g で等加速度運動する自動車が,時刻 t[s] 経過したときの際の変位
x(t) は,
∫
x(t) =
∫
0.2gtdt = 0.1gt2 + C
v(t)dt =
(18)
積分定数 C は x(0) = 0 であることより,C = 0 である.式 (17) を式 (18) に代入し,
(
2
x = 0.1gt = 0.1g
v
0.2g
)2
=
602
v2
=
= 70.9 [m]
0.4g
3.62 × 0.4 × 9.8
(19)
を得る.
2-4. 問題文は次の通り.
「図 D を参照し,バイクに乗ったスタントマンが 15◦ の斜面上の B 点から堀を飛び越えるために必要
な最小速度 v0 を計算せよ.」
問題文には断りがないが,空気抵抗は無視できるものとして解答する.
B 点を原点とし,水平方向に x 軸,鉛直方向に y 軸を取る.問題文の図 D より,堀を飛び越えた着地
点 C の x 座標は +10[ft],y 座標は −5[ft] である.
バイクが B 点を飛び出した後はバイクには y 軸負の方向に重力のみが作用するため,x 軸方向には等
速度運動し,y 軸方向には等加速度運動する.バイクが B 点を飛び出した後に時刻 t[s] が経過した後の
バイクの速度と位置を議論する.
t = 0 のときの速度は v0 であり,それを x 軸方向と y 軸方向に分解し,それぞれ v0x ,v0y とすると,
v0x = v0 cos θ
(20)
v0y = v0 sin θ
(21)
である.
時刻 t[s] における x 軸方向の速度 vx (t) = v0x なので,時刻 t[s] における x 軸方向の変位 x(t) は,
∫
x=
v0x dx = v0x t + C
(22)
である.積分定数 C は,x(0) = 0 より,C = 0 である.着地点 C の x 座標は x(t) = 10[ft] なので,着
地点 C にバイクが到達する時刻 t = 10/v0x [s] である.
時刻 t[s] における y 軸方向の速度を vy (t) とすると,重力加速度 g[ft/s2 ] を用いて
∫
(−g)dt = −gt + C
vy (t) =
(23)
である.積分定数 C は,vy (0) = v0y より,C = v0y である.
時刻 t[s] におけるバイクの y 軸方向の変位を y(t) とすると,
∫
y(t) =
∫
vy (t)dt =
1
(−gt + v0y )dt = − gt2 + v0y t + C
2
(24)
である.積分定数 C は y(0) = 0 より,C = 0 である.
着地点 C の y 座標は −5[ft] なので,式 (24) にバイクが着地点 C に到達する時刻 t = 10/v0x [s] を代入
すると,
1
− g
2
(
10
v0x
)2
+ v0y
3
10
= −5
v0x
(25)
となる.式 (25) に式 (20),(21) を代入して v0 について整理すると,
1
− g
2
(
10
v0 cos θ
v02 =
)2
+ v0 sin θ
10
= −5
v0 cos θ
100g
2 cos2 θ(10 tan θ + 5)
(26)
(27)
となる.1[ft]= 0.3048[m] に注意して,g = 9.8/0.3048[ft/s2 ],θ = 15◦ を用いると,v0 = 14.98[ft/s]
を得る.
4