高エネルギー原子核衝突時の強磁場による 仮想光子偏光検出に最適な運動学変数の考察 目的 クォーク物理学研究室 B100495 上田 庸資 高エネルギー原子核衝突時には強磁場の発生が予測されている。 強磁場は直接検出出来ないため、間接的な検出に使用する運動学変数が複数考案されている。 本研究では運動学変数をシミュレーションを用いて検討し、強磁場検出に適した運動学変数を考察する。 背景 強磁場の発生 原子核の衝突 崩壊面の偏り 高エネルギー原子核衝突時、衝突部(Spectators)と衝突周辺部(Participants)に強磁場が発生する。 周辺部はすぐに飛び去ってしまうが、衝突部はy軸を中心に回転し続けるため衝突部はy軸を中心に比較的長寿命な磁場を持つ。 この強磁場によりシンクロトロン放射や実光子崩壊の様な物理現象が発生すると予想されている。 磁場中を衝突時に発生する仮想光子が通過すると、崩壊して生じるe+ ,e− の成す崩壊面が磁場に対して偏りを持つ。これを偏光と呼ぶ。 この偏光度を検出することで強磁場の存在を検証する。 手法 結論 運動学変数:磁場ベクトルをY’軸、ビーム軸をZ’軸とした座標系で γ∗ の e− , e+ 崩壊面に垂直なベクトル(Pe+ × Pe− )と 下の変数ベクトル間の角度をとったもの 結果より、強磁場検出に適した運動学変数は2と4である事が分かる。 変数の定義より、ビーム軸という絶対的な基準をより直接的に 使用している 変数4が最も適した運動学変数である と考えられる。 ・磁場に無関係に崩壊した場合 仮想光子が・磁場に対して垂直に崩壊した場合 ・磁場に対して平行に崩壊した場合 の各場合における偏光度(PV)を運動学変数を用いて求め、結果を比較する。 結果が区別しやすいものが強磁場検出に適した運動学変数である シミュレーション結果 ・acceptanceが影響しない状態 ・PHENIX検出器のacceptanceが影響する場合 でPVを比較する。 ・ALICE検出器のacceptanceが影響する場合 また仮想光子の質量・運動量は固定している。 X’軸:Y’,Z’軸に直交方向、Y’軸:磁場ベクトル方向、Z’軸:ビーム軸方向 横軸:運動学変数,縦軸:偏光度(PV) ○:磁場に無関係 ,▲:磁場に垂直,▼:磁場に平行 としたヒストグラムを下に挙げる。 運動量:1.5GeV,質量:150MeV PV 運動学変数ベクトル1 (eX × eZ ) 運動学変数ベクトル2 (Pe+ +Pe− ) × eZ PV PHENIX acceptance PV ALICE acceptance PV 運動量:3.0GeV,質量:200MeV PHENIX acceptance PV ALICE acceptance PV 運動学変数ベクトル4 eZ 仮想光子を 実験室系 から 重心系 へローレンツ変換し、 電子陽電子対に崩壊させる。 この時、磁場に対する制限を加える。 電子陽電子対を再び 重心系 から 実験室系 へ変換する。 その結果より運動学変数を求める。 PVの導出 でPVを比較する。 X軸:Y,Z軸に直交方向、Y軸:上空方向、Z軸:ビーム軸方向 実験室系 ALICE acceptance PV 運動量:1.5GeV,質量:500MeV PV 運動学変数ベクトル3 (Pe+ +Pe− ) × (Pe+ + Pe− )X′Z′ PHENIX acceptance PV 重心系 𝐏𝐕⊥ − 𝐏𝐕∥ 𝐏𝐕 = 𝟏 − 𝐏𝐕⊥ 𝐏𝐕|| γ∗ をX’Y’平面に射影した際に Y’軸との角度ω𝑝𝑟𝑜 が45°~135°の時のみ 偏極が生じると考え 45°~135°での計算結果をPV⊥ 、 それ以外での計算結果をPV∥ とする。 崩壊面が磁場に平行ならばNa 、 磁場に平行ならばNb とする。 この区別に運動学変数を用いる。 モンテカルロシミュレーションから PV⊥ とPV∥ 、及びPVを求める。 𝐍𝐚⊥ − 𝐍𝐛⊥ 𝐍𝐚|| − 𝐍𝐛|| 𝐏𝐕⊥ = 𝐏𝐕|| = 𝐍𝐚⊥ + 𝐍𝐛⊥ 𝐍𝐚|| + 𝐍𝐛||
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